【事例97】末期腎不全(人工透析)|障害基礎年金2級 (前発傷病と相当因果関係が無いと認められた事例)

末期腎不全(人工透析)|障害基礎年金2級

対象者の基本データ

病名 末期腎不全(まっきじんふぜん)
性別 女性
支給額 年額 約78万円
障害の状態
  • 週3回血液透析を行っている
  • 永続的に週3日維持透析が必要
  • 日常生活の身の回りのことはある程度自分でこなせるが、疲れやすく、体調も不安定
申請結果 障害基礎年金2級

 

ご相談までの経緯

幼少期より血液疾患を患っており、A病院にて治療を継続されておりました。

20代後半頃、転居に伴い、紹介状を貰い受け転居先のB病院へ転院し、血液疾患に対する治療を継続していました。

B病院初診時の血液検査でこれまで全く指摘を受けたことのなかった軽度の腎障害が認められました。

薬の副作用から軽度であった腎障害は徐々に進行し、人工透析を受けなければいけない程度にまで悪化。

人工透析が始まり、今後の治療と経済的な不安から障害年金の申請を検討するも血液疾患が併存し、幼少期から受診を継続してきていたこともあり、初診日がどの時点になるのか分からず、途方に暮れていたところ、当事務所にご相談を頂きました。

 

申請結果

現在の状態として人工透析をしていたため等級該当は確実でしたが、初診日を確定できないことには申請することが出来ません。

既存傷病の血液疾患と現在の腎障害に相当因果関係があるか否かによって初診日の取扱いが変わってきます。

  • 相当因果関係がある場合:A病院の初診時が初診日として取り扱われ、20歳前障害の障害基礎年金の対象
  • 相当因果関係がない場合:どの地点に初診日があるのか特定が必要

初診日特定のためにこれまでの治療歴・病歴等を詳細にヒアリングし、2つの傷病に相当因果関係はないものとして考え、B病院で受診状況等証明書を取得しました。

取得した受診状況証明書とA病院からB病院に宛てた紹介状の内容を確認することで今回の申請傷病の末期腎不全の初診日は、B病院の初診日時点であると確信を持ち、20歳以降の障害基礎年金として申請を進めました。

申請の結果、申し出た初診日が認められ、『障害基礎年金2級』の受給が決まりました。

 

【ポイント1】相当因果関係

「前発の傷病がなければ、後発の傷病は起らなかったであろう」と認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病が同一の傷病として取り扱われます。

つまり、前発の傷病で最初に医師の診療を受けた日が後発傷病の初診日として取り扱われることとなります。

例えば相当因果関係があるものとしては以下のようなものがあります。

  • 糖尿病→糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等
  • 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎→慢性腎不全
  • 肝炎→肝硬変
  • 結核の化学療法による副作用として聴力障害
  • ステロイド投薬→大腿骨頭壊死
  • 事故または脳血管疾患→精神障害

他の傷病でも相当因果関係ありとされる傷病はある為、複数傷病を発症している場合は初診日の取扱いには注意が必要です。

 

【ポイント2】障害基礎年金

初診日が「20歳前にある障害基礎年金」と「20歳以降にある障害基礎年金」では多少の違いがあります。

1.保険料納付要件

障害年金は初診日前に保険料を一定以上納付していなければ年金を受けることが出来ません。

しかし、20歳前に初診日がある場合はその時点では年金制度に加入していないため、保険料納付要件は問われません。

一方、20歳以降に初診日がある場合の障害基礎年金では当然保険料納付要件が問われます。

2.所得制限

20歳前に初診日がある場合、年金制度に加入しておらず保険料を納めていない無拠出の保険給付となるため、保険料の納付要件の問われる方との公平性を保つために所得制限が設けられています。

一方、20歳以降に初診日があり、保険料納付要件の問われる障害基礎年金では所得制限はありません。

 

その他の腎疾患の事例

 

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