「働いていると障害年金をもらえないのですか」というご質問をよくいただきます。
結論から申し上げますと、働きながら障害年金を受給することはできます。
障害年金の審査では必ずしも「働いている=不支給」とは限りません。
しかし、就労の有無が重要なポイントとなることも事実です。
就労している継続年数や、就労形態についても審査では見られます。
確かに、精神疾患のように「就労」を障害状態の判断基準とされる病気もありますが、就労しながら障害年金を受給できた事例もたくさんありますので、後ほど詳しくご紹介いたします。
それでは、働きながら障害年金が受給できる人とはどのような人なのかをわかりやすくご説明したいと思います。
※動画でご覧になりたい方は『「障害年金と就労」に関する説明動画』でご覧いただけます。
目次
障害年金とは
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。(日本年金機構HP:「障害年金」より)
この「仕事などが制限される」という部分を「働いているということは、仕事が制限されていないから障害年金を受給できない」と思われている方もいらっしゃいます。
しかし、就労していることは審査に影響はありますが、日常生活や就労状況から判断して、「病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった」と判断された場合は障害年金を受給できる場合もあります。
(※障害年金の制度は『障害年金とは』のページで詳しくご説明していますので、障害年金の制度に関して知りたい方はご参照ください。)
障害年金の種類
障害年金には、障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金の3種類があります。
障害年金を受給するには、初診日の時点で年金制度に加入している必要があります。
障害年金制度の仕組みは2階建て構造となっており、1階部分には「障害基礎年金」、2階部分には「障害厚生年金・障害共済年金」があります。
2階部分の障害厚生年金・障害共済年金を申請する場合は、同時に1階部分の障害基礎年金も申請する形となります。
3種類のうち、どちらの障害年金を受給できるのかは、申請する傷病の初診日に加入していた年金で決まります。
働きながら障害年金を受給できるの?
令和5年(2023年)6月23日の第5回社会保障審議会年金部会の資料「障害年金制度」によると、2019年では障害年金を受給されている方の中で、身体障害48.0%、知的障害58.6%、精神障害34.8%の方が就労しながら障害年金を受給されているというデータになっています。
つまり、身体障害の方は約2人に1人、知的障害の方は2人に1人以上、精神障害の方は3人に1人が働きながら障害年金を受給されています。
※『働きながら障害年金を受給されている方に関するデータ』でも詳しくご説明しています。
不支給処分取り消しの判例
2022年4月に、就労していることなどを理由に国の障害年金の支給が認められなかったのは不当だとして、発達障害と軽度の知的障害がある埼玉県内の男性(25)が不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、国の決定を取り消し障害基礎年金2級(月約6万5千円)の支給を命じる判決が出されました。(千葉日報 2022年4月20日)
このように就労していることだけを理由に障害年金の支給が認められないということはありません。
働きながら障害年金をもらえる人
それでは、どのような人が働きながら障害年金をもらえるのかを事例をもとにわかりやすくご説明したいと思います。
うつ病や発達障害などの精神疾患での障害年金の認定審査では就労の有無が大きなポイントとなります。
働いている場合は、どのような労働環境で、どのような仕事をしているかもポイントになります。
会社から特別な配慮を受けている人
会社から特別な配慮を受けることで、なんとか働けているという方は働きながら障害年金を受給できる可能性があります。
たとえば、体調が悪化した場合の早退、通院のための遅刻や、その他、業務を行う上での配慮などです。
病気の影響で日常生活に制限がある人
また、なんとか頑張って会社に行けても、以下のように病気の影響で日常生活に制限が出ているという方も働きながら障害年金を受給できる可能性があります。
- 帰宅した途端どっと疲れが出て寝込んでしまう
- 休日は家事も一切できない
働きながら障害年金をもらえた人の事例
当事務でサポートさせて頂いた方の中には「自分は働いているから障害年金はもらえない」と諦めていた方もいらっしゃいます。
また、いろいろなところに相談をされて、「働いているから障害年金を申請できない」と言われた方もいらっしゃいます。
当事務所で実際に申請のサポートをさせて頂いた方で、働きながら障害年金の受給が決定された方の事例をご紹介したいと思います。
うつ病で週40時間フルタイムで働いていた方の受給事例
病名 | うつ病 |
就労形態 | 在宅(週40時間フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金2級 |
依頼者様が主治医の先生に相談したところ「週40時間も仕事をしていると受給は難しい」と言われ、申請を諦めていた方の事例です。当事務所で申請した結果、障害厚生年金2級の受給が決定しました。
持続性抑うつ障害でフルタイムで働いていた方の受給事例
病名 | 持続性抑うつ障害・神経症性障害 |
就労形態 | 一般雇用(フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金2級 |
依頼者様が他の社労士事務所何ヶ所かにご相談されたところ「現在就労しているので受給は難しい」と断られ続け、もう自分は受給できないのかも知れない…と半ば諦めに近い状態で当事務所にご相談いただいた事例です。当事務所で申請した結果、障害厚生年金2級の受給が決定しました。
統合失調症で8年間アルバイトをしていた方の受給事例
病名 | 統合失調症 |
就労形態 | アルバイト(約8年間) |
受給が決まった障害年金 | 障害基礎年金2級+5年分の遡及 |
新聞配達のアルバイトに関して、配達先を覚えられずお兄さまに手伝ってもらっていることや、人材確保が困難な業種のため上司から手厚い配慮を受けていることで、なんとか続けられていることを詳細に説明して申請した結果、障害厚生年金2級の受給と5年間分の遡及も認められました。
双極性障害でフルタイムで働いていた方の受給事例
病名 | 双極性障害 |
就労形態 | 一般雇用(フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金3級 |
依頼者様は、正社員としてフルタイムで働きながら一人暮らしをされていました。就労上の配慮や援助の状況や就労の影響による日常生活の状況、一人暮らしであっても日常的に家族からの援助や支援を受けている状況がわかるよう資料にまとめ、 結果、障害厚生年金3級の受給が決定しました。
自閉スペクトラム症でフルタイムで働いていた方の受給事例
病名 | 自閉スペクトラム症 |
就労形態 | 一般雇用(フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金2級 |
依頼者様は一般企業に正社員として長期勤務されていました。「病歴就労状況等申立書」には、日常生活や就労状況での支障について診断書に記載されていない事柄を詳細に書き込み申請した結果、障害厚生年金2級の受給が決定しました。
注意欠陥多動性障害(ADHD)での受給事例
病名 | 注意欠陥多動性障害(ADHD) |
就労形態 | 障害者雇用(フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金2級 |
依頼者様は障害者雇用での勤務とはいえ、フルタイムで職種も介護職という決して軽作業とは言えないお仕事をされていましたが、職場での状況を詳しく説明して申請した結果、障害厚生年金2級の受給が決定しました。
その他の働きながら障害年金を受給できた事例
その他、働きながら障害年金を事例を見たい方は以下のページに一覧がございますので、ご参照下さい。
働きながら障害年金を受給できた方の感想
当事務所でサポートさせていただいた方々から、働きながら障害年金の申請をして受給が決まった方から頂いたご感想をいくつかご紹介します。
フルタイムで働きながら障害年金が受給できた方
この方はフルタイムで働いていたので、他の社労士事務所では障害年金の受給は難しいと判断されていたんですか?
そうです。でも、どのような職場環境でどのような作業をしているか、日常生活の状況はどのようなものか等も審査のポイントになりますので、フルタイムで働いていても障害年金を受給できる可能性はあるんです。
他事務所で断られた方
働いている場合は障害年金の受給が難しいと判断されることはあります。
当事務所でサポートさせて頂いた依頼者様も他の事務所から受給は難しいのではと判断された方もいらっしゃいます。
こちらの方々も働いていたことが理由で他の事務所からは断られたとのことでしたが、日常生活や就労に関する状況を細かくヒアリングさせていただいたところ、受給できる可能性があると判断し、申請の結果、受給決定となりました。
障害者雇用(フルタイム)で働きながら障害年金を受給できた方
こちらの依頼者様は「フルタイムで働いているのなら、障害年金はもらえないだろう」と思い込まれていたとのことでしたが、無事受給決定となりました。
障害者雇用(非正規)で働きながら障害年金を受給できた方
こちらの依頼者様には「現状で申請が通るかは微妙ですが、ご納得頂けますか」と最初にお伝えして、ご納得頂いたうえで申請を進め、無事受給決定となりました。
働きながら障害年金を受給出来た方からのご感想
その他、働きながら障害年金が受給できた方から、たくさんのご感想をいただいていますので、是非ご参照下さい。
働き始めた人の「更新」のポイント
障害年金の受給を始めた時は働いていなかったけれど、受給を開始した後で働き始めたという方もいらっしゃいます。
これまでに、障害年金の更新時に「就労の開始」を理由として等級が下がったり、年金が停止となったという相談が多く寄せられており、就労が審査に及ぼす影響は年々増していると感じています。
しかし、一言で就労といっても、元気いっぱいでフルタイム働けるのか、上司や周りからフォローを貰いながら何とか働いているのかでは大きな違いがあります。
更新の手続きは、一番最初に障害年金をもらう手続き(裁定請求)に比べると必要な書類や手間が少ない分、楽と感じる方も多いと思います。(更新手続きに関しては『障害年金の「更新」をわかりやすくご説明します』で詳しくご説明しています)
しかし、更新であっても手を抜かずに以下のようなポイントをしっかり抑えて手続きを行う必要があります。
- 症状について先生に伝えられているか?
- 診断書だけでは見えない仕事の様子を審査に伝えられているか?
(更新での支給停止の割合は『障害年金の更新で落ちる確率はどれくらい?』で詳しくご説明しています)
就労を開始後の更新が認められた事例
障害年金の認定を受けた時点では働いていなかったけれど、更新の前に働き始めたという方もいらっしゃいます。
その場合もどのような就労や日常生活の状況を詳しく説明することが重要になります。
以下に、当事務所で障害年金の認定を受けた時点では働いていなかったけれど、更新の前に働き始めた方の申請サポート事例をご紹介します。
「障害年金と就労」に関する説明動画
障害年金と就労に関しては以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。