【事例254】慢性腎不全(人工透析)|障害基礎年金2級(相当因果関係が認められた事例)

慢性腎不全(人工透析)|障害基礎年金2級

対象者の基本データ

病名 慢性腎不全(まんせいじんふぜん)
性別 男性
支給額 年額 約78万円
障害の状態
  • 白血病治療が原因の慢性腎不全による人工透析
  • 透析後は倦怠感が強く、そのまま横になっている
  • 人工透析により就労が制限される為、仕事は短時間アルバイト
  • 身体障害者手帳:1級
申請結果 障害基礎年金2級

 

ご相談までの経緯

17歳頃、原因不明の高熱が1週間も続いたことから、かかりつけ医を受診したところ、白血病の疑いとされました。

翌日には紹介された総合病院にて精密検査を実施。結果『急性リンパ性白血病』と診断されました。

そのまま入院にて化学療法を開始しますが、症状が急激に悪化し、初診からわずか半年で骨髄移植術(臍帯血移植)を行われたそうです。

退院後はとくに支障も無く元の生活に戻りましたが、経過観察のために通院は継続していました。

19歳の頃、定期検査時に『白血病の治療による腎機能の低下』が判明。

当初は投薬治療によりコントロールしていましたが、28歳の時に人工透析となったとの事です。

透析の開始後、勤務していた会社から「人工透析のための時間を確保することが出来ない」と告げられ退職を余儀なくされたそうです。

その後は透析しながら出来るアルバイトに就きましたが、やはり経済的には不安が強く、何らか支援が受けられないかと地域の福祉施設に相談したところ障害年金の申請を勧められ、当事務所を紹介されました。

 

申請結果

人工透析は原則として2級と決められているため、ご相談者さまの状態は等級に該当すると考えられました。(ポイント①)

そのためすぐにお手続きを開始しましたが、今回の申請では課題となる点がありました。

「病気にて初めて医師の診察を受けた日」を初診日と言いますが、障害年金上、初診日は様々な『基準日』となるため、初診日を特定して証明していく必要があります。(ポイント②)

今回は『白血病治療によって腎不全』との事でしたが、初診日の特定において、2つ以上の病気が互いに関連して発症しているケースは『相当因果関係』が問題となります。(ポイント③)

相当因果関係のが認められるが否かによって、初診日が変わってしまうことから、今回の申請では、初診日の特定が大きな問題となりました。

最初は、ご相談者さまのお話を元に白血病の初診病院にて証明書を取得しました。

この証明書を元に、現病院の主治医に確認を取るとやはり「腎不全の原因は白血病の治療である」との事でしたので、提出する診断書内にも反映して頂きました。

しかし『医学的にみた関連』と『障害年金上の相当因果関係』少し異なる為、医師が断定したからと言って、必ずしも相当因果関係が認められる訳ではありません。

これだけでは障害年金の申請においては不十分と考えられたため、別紙の意見書にて『どの程度の強い関連性があるのか』医師に明記して貰い、積極的に相当因果関係があることを主張していきました。

結果は、初診日は主張どおりに認定され『障害基礎年金2級』を得ることが出来ました。

申請内容に疑義が生じると、年金機構から問い合わせや書類の返戻がされ、結果的に審査が遅れてしまうため、少し時間は要しましたが疑義の無い形にて申請していく事が大切です。

 

【ポイント1】障害年金と就労

人工透析は「原則2級」と決められています。
(※)症状によっては上位等級になる可能性もあり。

透析には時間を要するため、どうしても「労働可能時間に制限」が生じます。

また透析後は強い倦怠感を感じる方も多く、肉体労働は避けるようにと指示されることも多く「就労内容にも制限」が出てきてしまいます。

このように透析を行っていることでの制限が多いため『就労の有無に関わらず2級』が認められます。

今回のご相談者様は、会社から「短時間休などの許可・倦怠感などの対策としてこまめな休憩」などの支援が大きかったため、正社員としての勤務が可能でした。

このように「正社員」として勤務している場合であっても、受給が可能です。

 

【ポイント2】初診日が大切な理由

障害年金では、初診日が最も重要とされています。

なぜ重要なのかというと、初診日は以下のように様々な『基準』となる為です。

 

制度加入要件

初診日にどの制度に加入していたかで、受けられる年金が決まります。

 

保険料納付要件

障害年金を申請するには、初診日の前日から数えて一定期間の保険料を納めている必要があります。

 

障害認定日の起算点

原則として『初診日から1年6ヵ月経過した日』に障害の程度を認定します。

これを障害認定日と言い、この日以降で無ければ障害年金の請求が出来ません。

 

【ポイント3】相当因果関係について

「前発の傷病がなければ、後発の傷病は起らなかったであろう」と認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病が同一の傷病として取り扱われます。

つまり、前発の傷病で最初に医師の診療を受けた日が後発傷病の初診日として取り扱われることとなります。

例えば相当因果関係があるものとしては以下のようなものがあります。

  • 糖尿病→糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等
  • 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎→慢性腎不全
  • 肝炎→肝硬変
  • 結核の化学療法による副作用として聴力障害
  • ステロイド投薬→大腿骨頭壊死
  • 事故または脳血管疾患→精神障害

他の傷病でも相当因果関係ありとされる傷病はある為、複数傷病を発症している場合は初診日の取扱いには注意が必要です。

 

その他の腎疾患の事例

 

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