障害年金という言葉を聞くと、どのような物をイメージされますか?
一般的にはこのようなイメージが多いのではないでしょうか。
「身体障がい者の方の制度?」
「年金というからには65歳以上の方の制度?」
などなど・・・。
ここでは、障害年金に関する基礎的な知識をご説明し、イメージ掴んで頂ければと思います。
目次
障害年金って、何?
日本年金機構のホームページでは以下のように障害年金を説明しています。
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。
また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。
(日本年金機構 障害年金)
現役世代の方も受け取ることができる年金
年金と聞くと、原則65歳以上で支給される「老齢年金」を連想される方も多いと思います。
年金には3つの年金があります。
一つは原則65歳以上で支給される「老齢年金」。
つぎに配偶者が亡くなった場合に支給される「遺族年金」。
そして最後に、病気やけがにより障害を負ったことにより労働・日常生活に困難がある人に支給される「障害年金」です。
老齢年金は「原則65歳以上」で支給されるのに対して、障害年金は「現役世代」の病気やケガなどに備えられた救済制度であり、若年層のための年金と言えます。
漫画で見る公的年金
公的年金制度の意義については、厚生労働省のHPにわかりやすい解説漫画がございます。
⇒『第1話 公的年金の意義~どうして日本には「年金」があるの~』をご覧ください。
障害年金の対象となる傷病は?
障害年金は「病気やケガなどで労働・日常生活に困難がある人」に対して支給される公的年金であることはご説明しました。
それでは「どのような」病気・ケガであれば、障害年金を申請することができるのでしょうか?
一部「原則として対象外」とされる傷病もありますが、基本的にはどのような傷病でも対象となります。
※代表的な傷病であり、上記に限られるものではありません。
障害年金って何級まで?
障害年金は「病気やケガにより障害を負ったことにより労働・日常生活に困難がある人」に対する年金ですが、病気やけがであれば必ず受けられる訳ではありません。
障害年金の等級は「障害等級1~3級」まで用意されており、「障害の状態」が最も重い場合を1級、軽くなるに従って2級・3級となります。
そして障害等級に当てはまらない程度、つまり「障害の状態が軽度の場合」は、たとえ障害年金を請求したとしても受給することができません。
障害等級1~3級までは「障害年金」として月々一定金額が支給されます。
また障害等級が上がるにつれて「受給額も多く」なり、障害状態が重いほど手厚い保護が受けられる仕組みとなっています。
さらに3級には満たないものであっても一定の基準を満たす場合については、一時金として「障害手当金」を支給されることがあります。
なお障害年金を支給するまでもないと判断された場合には、「不支給」とされ障害年金を受け取ることはできません。
【POINT】身体障害者手帳との違いに注意
「身体障害者手帳」とは、身体障害者福祉法に基づき、身体に障害をお持ちの方を対象に都道府県等が発行する手帳をいいます。
障害者手帳の等級は「1~7級」まであり、6級以上に該当すると手帳が発行されます。
よく「障害年金も身体障害者手帳と同様に7級まで存在する」と誤解されるため、誤認しないようにご注意ください。
3つの障害年金
障害年金はひとつの年金制度であると思われがちですが、実は3つの種類に分かれています。
それでは、どのように分かれているのかを見てみましょう。
障害年金の種類
じつは「加入していた年金制度」により、請求できる障害年金が主に3つあります。
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(※1)…共済年金に限らず、各組合等も含まれます。
どの障害年金を請求するのかは、病気やけがで「初めて医師の診察を受けたときに加入していた年金制度」により決まります。
病気やケガになった際、初めて病院を受診した時に加入していた年金制度によって以下のような年金を請求することになります。
- 国民年金に加入していた方は「障害基礎年金」
- 厚生年金に加入していた方は「障害厚生年金」
- 共済年金に加入していた方は「障害共済年金」
支給される制度による違い
支給される年金が異なることにより、支給額や加算の有無などが変わってきます。
障害基礎 | 障害厚生 | 障害共済等 | ||
---|---|---|---|---|
等級 | 1~2級 | 1~3級 | 1~3級 | |
加算 | 子 | 〇 | 〇 | 〇 |
配偶者 | × | 〇 | 〇 | |
窓口 | 年金事務所 市区町村役場 | 年金事務所 | 共済組合 |
「障害厚生年金」「障害共済年金」の場合は、3級や配偶者加算があります。
「障害基礎年金」には3級や配偶者加算はありません。
つまり同じ3級程度の障害状態なのに、初診日において「国民年金に加入していた方は不支給」「厚生年金または共済年金の方は3級認定」されるといった違いがあります。
【POINT】制度により受給金額も違います!!
老齢年金の制度をイメージしていただければわかりやすいかと思いますが、障害年金も「障害基礎年金」と「障害厚生年金・障害共済年金」では、受給できる金額が異なります。
受給できる金額について目安を記載しておりますので、詳しくは「障害年金の受給金額」をご覧いただき、参考にしてください。
障害年金を受けられる程度とは?
障害状態が軽度の場合は障害年金が受け取れないと先述しましたが、では「どのような基準」で1~3級または不支給などを認定をされるのでしょうか。
どのような障害状態を何級と認定するのかについては、「障害認定基準」に定めがあります。
今回は認定基準を理解するうえで基本となる「各等級の目安」についてご案内いたします。
下記の図をご覧ください。
上記の図に記載された内容の詳細は「認定基準 第2障害認定に当たっての基本的事項」にてご確認いただけます。
ご興味のある方はクリニックしてご覧ください。
【POINT】目安を確認するうえでの注意点
前述した「等級の目安」は、あくまでもおおよその基準です。
「障害の等級」は、障害の種類・状態または障害の継続期間など「様々な事項を総合的に考慮したうえ決定されるもの」とお考えください。
そのため、上記の基準を満たせない場合であっても、障害等級を満たす可能性もあります。
さらに一部の傷病については日常生活や仕事に困難がなくても受給できる場合があります。
もしも「自分の障害状態は等級に該当するのかな?」と悩んでいる方は、お近くの年金事務所や専門家に相談してみましょう。
障害年金の受給要件
これまで『障害年金の基礎』についてご説明して参りましたが、障害年金とは病気やケガにより障害を負ったからといって誰でも受け取れるという訳ではありません。
障害年金を請求するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
せっかく申請の準備を整えても、要件を満たしていない場合は『不受理』として受付してもらえません。
初診日要件
障害年金を受ける為には年金(国年・厚年・共年)の被保険者期間中に障害の原因となった病気やケガに対して医師または歯科医師の診察を受ける事が必要です。
この初めて診察を受けた日を「初診日」と言います。
この初診日に年金に加入している必要があります。
障害年金の請求において初診日の証明が大変な重要になります。
また、この初診日の証明を使って次項目の要件が審査される為とても大きな意義をもっています。
なお、年金未加入の間に初診日がある場合であっても、次のような場合については障害基礎年金の対象となります。
未加入であっても障害基礎年金の対象 |
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① 20歳前の傷病により障害の状態になった場合 |
② 国民年金に加入したことのある人で、60歳~65歳未満の間に初診日のある傷病により障害の状態になった場合 |
【STEP2】障害認定日要件
障害認定日とは障害の程度を認定する日のことで、原則としては以下の日をいいます。
障害認定日(原則) |
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初診日から1年6カ月を経過した日 |
1年6カ月以内に治った日 ※1 (その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む) |
先天性障害の場合、20 歳に達した日※2 (20 歳の誕生日の前日) |
症状固定についての説明はこちらの『症状固定について徹底解説!』をご覧ください。
※1 症状固定しているか否かは、診断書等をもとに審査されその結果「症状が固定していない」と判断される場合あり
※2 一部例外もあります。
ただし、以下の場合については特例として、上記の内容に関わりなく請求手続きができます。
障害認定日(特例) |
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1.人工透析療法を行っている場合は、透析を受けはじめてから3月を経過した日 |
2.人工骨頭または人工関節を挿入置換した場合は、挿入置換した日
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3.心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)または人工弁を装着した場合は、装着した日 |
4.人工肛門を造設し又は尿路変更術を施術した場合は、それらを行った日から起算して6月を経過した日 |
5.新膀胱の造設をした場合は、造設又は手術施行の日 |
6.切断又は離断による肢体の障害は、原則として切断または離断した日 (障害手当金または旧法の場合は、創面が治癒した日) |
7.喉頭全摘出の場合は、全摘出した日 |
8.在宅酸素療法を行っている場合は、在宅酸素療法を開始した日 |
9.脳血管疾患による肢体障害であって、初診日から6ヶ月経過後の症状固定日 (初診日から6ヶ月経過で一律障害認定となるわけではなく、診断書等に「症状固定」や「回復見込みなし」の等の記載があれば、例外的に障害認定の診査が受けられるもの) |
10.人工血管または人工心臓の装着、または心臓移植の施術を受けた場合は、装着または施術の日 |
※参考※
【STEP3】保険料納付要件
障害年金も生命保険や損害保険と同じで、保険料を納めているから障害年金を受給することができるわけです。
それを「保険料納付要件」と言います。
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち3分の2以上の期間が以下のいずれかを満たしていることが必要となります。
保険料納付要件 |
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① 保険料を納めた期間(第3号被保険者期間も含む) |
② 保険料を免除された期間 |
③ 学生納付特例又は若年者納付猶予の対象期間 |
つまり、『これまでの被保険者期間のうち3分の1以上の保険料の滞納期間がない』ということです。
ただし、上記の要件を満たせなくても、①初診日が平成28年4月1日までにあり、②初診日に65歳未満で、③初診日の属する月の前々月までの1年間において保険料の未納期間がない場合は、要件を満たしたと認められます。
なお、被保険者でない20歳前の傷病により障害の状態になった方については、保険料納付要件は問われません。
障害年金の受給事例
ここでは当事務所にご依頼いただき障害年金を受給できた事例を『全国障害年金サポートセンター』のホームページでご紹介しています。
ぜひ事例を通して「障害年金ってこんな感じ」という具体的なイメージを掴んでください。
なお、ご紹介する事例はご本人の許可を得たうえ個人情報保護のため一部内容を変更しております。
肢体の障害
【POINT】
Sさんはフルタイム勤務で『社会保険に加入』また『人工関節』を入れていることから障害厚生年金の肢体(膝)障害での申請です。 人工関節の場合ですと「日常生活や労働に支障がなくても」障害厚生年金3級を受けられる可能性がありました。 さらに本来「手術日の翌月から」障害年金を受給できる可能性があったためさかのぼって申請しました。 人工関節で障害年金を請求するときは「他の傷病とはルールが違うことが多い」ため、注意して申請してください。 |
人工関節に関する詳しい情報は『人工関節・人工骨頭の障害年金申請で「よくある3つの誤解」』をご覧ください。
※「遡及請求」については『障害年金請求の種類』をご覧下さい。
精神の障害
【POINT】
Tさんが当事務所に相談に来たとき、すでに障害年金を申請した後で「不支給」となっていました。 そのため当事務所では「審査請求」からお手伝いさせていただきました。 「審査請求」とは一度目の申請で不支給となった場合、「結果に不服がある」として再度審査してもらうための制度です。 不支給となった場合でも、審査請求で結果が変わることもありますので、諦めずにチャレンジしてください。 |
よくある疑問・質問のコーナー
これまで障害年金について一通りご説明してきましたがご理解いただけたでしょうか?
最後に「障害年金についてよくあるご質問」にお答えしたいと思います。
Q.1 就職していると障害年金は貰えないんですか?
A.いいえ
障害年金は「けがや病気のために日常生活や労働の支障がある場合」に支給される年金ですが、就職しているからといって必ずしも障害年金の対象外になるわけではありません。
傷病の種類によっては日常生活や労働への支障を問わず支給される場合もあります。
また上記以外の傷病であっても、「就労の状況」などで対象となることもあります。(例:職場からの援助がある等)
当事務所で申請サポートをした事例でも、就労をされていた事例はたくさんございます。(就労をしていて受給できた事例)
「自分は就職しているから…」と障害年金を諦めず、一度専門家等に相談してください。
Q.2 障害年金は一度支給されるとずっと貰えますか?
A.基本的に受給できる期間に期限があります。
そもそも障害年金は「ケガや病気が治った・状態が軽くなった」場合は受給できません。
そのためあらかじめ受給できる期間に期限(1~5年間)を設けてあり、これを『有期認定』と言います。
『有期認定』の場合は、障害年金の受給期間を延ばすための「更新手続き」を行う必要があります。
一方「生涯に渡り状態が変わらない一部の傷病」については『永久認定』とされ、老齢年金を貰えるようになるまで「状態確認されることなく」障害年金が支給され続けます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
障害年金がどのような制度かをご理解いただけたかと思います。
障害年金に関してのご質問がございましたらお気軽にお問い合わせください。