
目次
はじめに

障害年金の申請を進めるなかで、「病歴・就労状況等申立書をどう書けばよいか分からない」「どう書けば障害の状態がきちんと伝わるのか不安」と悩まれる方は多くいらっしゃいます。
実際に、この書類でつまずいて申請が止まってしまう方も少なくありません。
自由に記述する欄が多い書類のため、何をどこまで書けばよいか迷いやすいのです。
本記事では、病歴・就労状況等申立書の役割から、書き方の9つのコツ、表面・裏面の各欄の記入のしかたまでを、わくわく社会保険労務士法人が順を追って解説します。
病歴・就労状況等申立書とは
病歴・就労状況等申立書は、発病から現在までの症状・治療・日常生活・就労の経過を、申請するご本人の側から伝える書類です。
障害年金を請求する際に必ず提出する書類のひとつです。
どんな役割の書類か
診断書は医師が医学的な所見を記載しますが、診断書だけでは日常生活や仕事での具体的な支障までは伝わりきらないことがあります。
病歴・就労状況等申立書は、その「診断書だけでは伝わらない部分」を補い、障害の全体像を審査担当者に伝える役割を担います。
審査では、診断書と並んで重視される大切な書類とされています。
誰が作成するのか
受診状況等証明書や診断書は医師が作成しますが、病歴・就労状況等申立書は、ご本人またはサポートされるご家族などが作成します。
「文章を書くのが苦手」「病歴が長くて自分では難しい」という場合は、社会保険労務士に作成を依頼することも選択肢のひとつです。
どこで入手するのか
入手方法は2通りあります。
年金事務所や市区町村の窓口で受け取る方法と、日本年金機構のホームページからダウンロードする方法です。
ダウンロード版にはExcel版とPDF版があります。
何度か書き直すことや仕上がりの読みやすさを考えると、パソコンでの作成がおすすめです。
表面の欄が足りない場合は「続紙」を使用します。
様式や記載要領は日本年金機構「病歴・就労状況等申立書を提出するとき」から確認できます。
なぜ重要なのか — 唯一「自分の言葉」で伝えられる書類

病歴・就労状況等申立書は、作成に手間がかかるため負担に感じやすい書類です。
それでも丁寧に作成していただきたいのには理由があります。
提出書類の中で、ご自身の状況を自分の言葉で主張できるのは、この書類だけだからです。
自己主張できる唯一の書類
年金請求書などの他の書類は、氏名や住所のように記入内容がほぼ決まっています。
一方で病歴・就労状況等申立書は、決まった様式の中に、自分の言葉で書き込む自由記述欄が多く設けられています。
そのため、「どう生活に支障が出ているか」「どんな配慮を受けて働いているか」といった、数字や所見だけでは見えにくい実情を伝えられる、貴重な書類だといえます。
診断書との整合性が見られる
審査では、病歴・就労状況等申立書と診断書の内容に矛盾がないかも確認されます。
申立書の記載が診断書とかけ離れていると、書類全体の信ぴょう性が問われることがあります。
なお、障害年金の審査でもっとも重視されるのは診断書だとされています。
診断書の重要性については障害年金の申請は「診断書」で9割が決まる!?で詳しく解説しています。
書き方の9つのコツ
ここからは、病歴・就労状況等申立書を作成するときに意識していただきたい9つのコツを紹介します。
書き方ひとつで、伝わり方が変わってくる書類です。難しい言葉を使う必要はありません。
ポイントを押さえることが大切です。
【コツ1】最初から完璧を目指さない

「うまく書けない」という理由で申請が止まってしまうのは、とてももったいないことです。
特に事後重症請求の場合、障害年金は請求した月の翌月分から支給が始まり、過去にさかのぼって受け取ることはできません。
そのため、書類の作成に時間がかかって請求が遅れると、その分の受給開始も後ろにずれてしまいます。
まずは通院した病院を書き出すところから始め、時期や出来事を少しずつ肉付けしていけば大丈夫です。
何度か書き直して完成させるものだとお考えください。
具体的な年金額の目安は【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額でご確認いただけます。
【コツ2】読み手(審査担当者)への配慮

障害年金は、原則として提出した書類をもとに判断される審査です(必要に応じて医療機関等への照会が行われる場合もあります)。
内容があちこちに飛んでいたり、字が読みにくかったりすると、伝わりにくくなってしまいます。
パソコンで入力する、手書きの場合は丁寧に書く、文章が苦手なら箇条書きにするなど、さらっと読んでも内容が伝わる工夫を心がけましょう。
【コツ3】長さのバランスを取る
1欄あたりの文字数に決まりはありません。
ただし「しんどかった」の一言だけでは状態が伝わりませんし、逆に長すぎても要点がぼやけます。
目的は、診断書だけでは伝わらない障害の状態を伝えることです。
読み手が理解しやすい、適切な長さを意識してください。
【コツ4】事実をありのままに書く
事実と異なることを書いたり、症状を大げさに書いたりするのは避けてください。
認定されたいというお気持ちは自然なものですが、診断書など他の書類と整合性が取れないと、かえって申立書全体の信ぴょう性を損ないかねません。
ありのままを記入することが、結果的に説得力につながります。
【コツ5】伝えたいことを明確にする
会話ならニュアンスで伝わる言葉も、文章になると誤解を招くことがあります。
曖昧な表現は避け、「何を伝えたいのか」を意識して具体的に書きましょう。
【コツ6】障害認定基準を意識して書く
障害年金の審査では、障害認定基準に照らして等級に該当するかが見られます。
やみくもに書くよりも、ご自身の障害が認定基準でどう評価されるのかを把握したうえで書くと、伝わりやすくなります。
たとえば、日常生活や就労にどのような制限があるかは、認定基準で重視される観点です。
ただし、認定は日本年金機構の審査で、認定医による医学的判断等を踏まえて総合的に行われるものであり、特定の書き方をすれば必ず認定されるというものではありません。
【コツ7】疾病による生活・就労への影響を具体的に書く
請求する傷病によって、日常生活や仕事のどんな場面で、どのように困っているのかを具体的に書きましょう。
障害と、そこから生じる制限の関連性が分かるように書くと、状態が伝わりやすくなります。
【コツ8】関係のないことは書かない
書いているうちに、これまでの不遇な経験や心情を詰め込みたくなることもあります。
お気持ちはよく分かりますが、審査と直接関係のないエピソードは控えましょう。
書き終えたら、ご家族や支援者の方に読んでもらい、意図が正しく伝わるか確認していただくのもおすすめです。
【コツ9】結果に納得できない場合に備える
これはやや上級者向けの視点ですが、当事務所が作成する際に意識しているポイントです。
障害年金には、結果に納得できない場合に再度の審査を求める不服申立て(審査請求・再審査請求)の制度があります。
その際、申立書に記載した内容を引用して主張することがあります。
申立書を丁寧に作っておくことが、後の段階での備えにもなります。
受給要件の全体像は障害年金を受け取るための条件とはもあわせてご確認ください。
【表面】の書き方と記入例

ここからは、具体的な書き方を表面から見ていきます。
病歴・就労状況等申立書はA3用紙で、表面と裏面に分かれています。
先ほどの9つのコツを思い浮かべながら読み進めてください。
枚数・続紙の使い方

申立書は、必要な情報が簡潔に伝わるようにまとめることが大切です。
1枚で収まるなら1枚で問題ありません。
転院が多い、病歴が長いといった場合は1枚で足りないことがあり、その場合は「続紙」を使います。
複数枚になるときは、審査担当者が順番を把握できるよう、用紙右上のNo.(ページ番号)の記入を忘れないようにしましょう。
傷病名

傷病名の欄には、原則として診断書に記載されている病名を記入します。
受診状況等証明書と診断書で病名が異なる場合は診断書の病名を、遡及請求で障害認定日と請求日の診断書の傷病名がそれぞれ違う場合は両方を記入します。
複数の異なる傷病で申請する場合は、申立書も傷病ごとに分けて作成するのが原則です。
たとえば「事故による運動麻痺」と「うつ病」を一緒に請求する場合は、別々の申立書を作成します。
一方で、うつ病と双極性障害のように病名が近い精神疾患では、一つの申立書にまとめて記載できる場合があります。
判断に迷う場合は、年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。
発病日・初診日

この欄には、発病日と初診日をそれぞれ記入します。
両者は意味が異なるため、分けて考えることが大切です。
発病日

発病日は、自覚症状が現れた日を記入します。
先天性疾患の場合は、症状を自覚したとき(または検査で異常が見つかった日)を、生来性の知的障害の場合は出生日を記入します。
初診日
初診日は、障害の原因となった傷病で初めて診療を受けた日を記入します(生来性の知的障害の場合は出生日)。
初診日は受給要件に関わる重要な日付で、その確認は原則として初診時の医療機関による証明で行います。
初診の病院と診断書を作成した病院が異なる場合は、受診状況等証明書で初診日を確認します。
受診状況等証明書・診断書・申立書で日付に食い違いがある場合は、安易にどちらかへ合わせるのではなく、初診日を証明する根拠資料を確認したうえで、年金事務所にご相談ください。
なお、発病日が「●●年ごろ」のようにはっきりしない場合は、その旨を記入して構いません。
病歴状況(4つの記入項目)
病歴状況は、申立書の中心となる欄です。
記入する内容は「期間」「受診の有無」「医療機関名」「当時の様子」の4つに分かれます。
期間

期間は発病から、時系列順に空白期間を作らず記入します。
1つの期間が5年を超える場合は、3〜5年ごとに区切って記入します。
同じ病院に長く通っている場合も、前半・後半などに分けて書くと、いつの状況かが分かりやすくなります。
生まれつきの障害では、起算点が変わります。
生来性の知的障害では出生時から、先天性疾患では症状を自覚したとき(または検査で異常が見つかった日)から記入します。
特に生来性の知的障害については、令和2年10月以降、20歳前に初診日がある方を対象に、出生から現在までを大きな変化のあった時期を中心に1つの欄にまとめて記入する簡素化が認められています。
受診の有無

受診していた期間だけでなく、受診していなかった期間についても記入します。
「なぜ受診していなかったのか」も審査に影響することがあるためです。
たとえば、体調が悪くて受診できなかったのか、通院の必要がないほど落ち着いていたのかでは、意味合いが大きく異なります。
受診していない期間も、その理由・症状・生活の様子を記入しましょう。日付は最初から最後までつながるようにします。
医療機関名

受診していた期間は、医療機関名を記入します。
病院ごとに欄を分けると見やすくなります。
受診期間は受診状況等証明書や診断書で確認できればそれを参照し、はっきりしない場合は「●●年ごろ」といったおおよその記載でも構いません。
当時の様子
当時の様子は、おもに「病歴・治療歴」「日常生活の状況」「就労について」の3点を記入します。
病歴・治療歴では自覚症状や通院・入院の状況、治療内容や医師の指示などを、日常生活ではどんな場面でどんな支障があったかや受けているサポートを、就労については勤務の有無や業務上の支障・配慮の内容を記載します。
【裏面】の書き方と記入例

続いて裏面です。
裏面は「障害認定日の頃」と「現在(請求日頃)」の状況を記入する欄に分かれており、請求の方法によって記入する場所が変わります。
記入漏れや記入間違いが起きやすい部分なので、順に確認していきましょう。
請求の方法で記入欄が変わる

公的な制度上、障害の状態に該当した時期に応じた請求の方法は、主に「障害認定日による請求」と「事後重症による請求」の2つに整理されます。
実務では、障害認定日による請求のうち、認定日から間もなく行うものを「本来請求」、認定日から1年以上経ってから行うものを「遡及請求」と呼び分けることがあります。
裏面のどの欄を記入するかは、この請求の方法によって決まります。
- 障害認定日による請求(本来請求):認定日からおおむね1年以内に請求する場合です。上段「障害認定日の頃」のみを記入します(下段の記入は不要です)。
- 障害認定日による請求(遡及請求):認定日から1年以上が経過してから請求する場合です。さかのぼって受け取れる年金は時効により最大5年分が限度となります。上段・下段の両方を記入します。
- 事後重症による請求:障害認定日には認定基準に該当しなかったものの、その後に悪化して該当した場合に、これからの年金を請求する方法です。下段「現在(請求日頃)」のみを記入します。
このほか、複数の障害を併せて初めて1級または2級に該当する場合の「初めて1級・2級による請求」もあります。
請求の方法の選び方に迷う場合は、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。
就労状況

就労状況の欄は、「就労している場合」と「就労していない場合」で記入箇所が異なります。

就労している場合は、仕事の内容・通勤方法・出勤日数・就労中の様子や就労後の状態を記入します。
ここでのポイントは、支援や配慮があって就労が成り立っている場合に、その点をしっかり記載することです。
負担の大きい業務を外してもらっている、保護的な環境で働いている、通勤に送迎や時間調整の配慮を受けている、といった事情は積極的に書きましょう。
出勤日数は、勤務表・給与明細・手帳などで確認できる範囲で記入します。
正確に分からない場合は、分かる範囲で記入し、必要に応じて年金事務所にご確認ください。

就労していない場合は、無職の方だけでなく休職中の方もこちらの欄に記入します。
仕事をしていない理由を選択肢から選び、当てはまらない場合は自由欄に記入します。
なお就労に関する記載は、診断書裏面の「労働能力」欄と整合が取れているかも見られます。
自己評価と医師の評価が大きくかけ離れていると、申請内容全体に疑義が生じることがあるため注意が必要です。
働きながらの受給については働きながら障害年金をもらえる人で詳しく解説しています。
日常生活状況

日常生活状況の欄は、日常生活において本人がどのくらいの不自由さを感じているかを記入するもので、主治医に確認する必要はありません。
請求方法によって記入する箇所が分かれる点は、これまでと同じです。

評価は制限の少ない順に4段階(1:自発的にできる、2:自発的にできるが援助が必要、3:自発的にできないが援助があればできる、4:できない)です。
援助を受けている場合は、援助がないと何が難しいのかも分かるように書くと、日常生活上の支障が伝わりやすくなります。
その下の欄には、日常生活全般で不便に感じていることや困っていることを、ご自身の言葉で記入します。
なお、「単身で生活するとしたら可能かどうか」という視点は、精神の障害用の診断書にある「日常生活能力の判定」で用いられる考え方です。
診断書と申立書で大きく食い違わないよう意識すると、書類全体の整合性が取りやすくなります。
障害者手帳の欄

障害者手帳の欄は、請求方法や手帳の有無にかかわらず、すべての方が記入します。
本来請求の方や遡及のみの方も記入が必要なので、書き忘れにご注意ください。
まず手帳の保有状況(受けている/受けていない/申請中)に丸を付けます。
手帳をお持ちの方は、種類(身・精・療・その他)、交付年月日、等級を、手帳の記載に沿って記入します。日付欄は有効期限と間違えないようにしてください。
障害名についても手帳の記載に沿って記入し、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳など、手帳に該当する障害名の記載がない場合は、空欄でよいか年金事務所にご確認ください。
なお、障害者手帳と障害年金は別の制度で、等級も一致するとは限りません。
両者の関係は「障害年金」と「障害者手帳」の関係で解説しています。
日付・署名・代筆者

最後尾には、作成日と署名の欄があります。
作成日は、提出の直前に記入するのがおすすめです。
作成日と提出日が2〜3か月も離れていると、その間に状況が変わっている可能性があるため、窓口で直近の日付への訂正を求められることがあります。
提出直前に内容を見直したうえで日付を入れると安心です。
署名欄には請求者ご本人の住所・氏名・電話番号を記入し、ご本人以外が記入した場合は、代筆者の氏名・電話番号と請求者から見た続柄(母、など)も記入します。
よくあるご質問
病歴・就労状況等申立書について、当事務所によく寄せられるご質問にお答えします。
Q1:自分ではうまく書けないときはどうすればよいですか?
まずは書けるところから少しずつ進めるのがおすすめです。
それでも病歴が長い、文章をまとめるのが難しいといった場合は、社会保険労務士に作成を依頼する方法もあります。
依頼した場合の費用の目安は障害年金の申請を社労士に依頼した場合の費用でご確認いただけます。
Q2:手書きとパソコン、どちらで作成するのがよいですか?
どちらでも問題ありません。
ただし、何度か書き直すことや読みやすさを考えると、パソコン(Excel版)での作成がおすすめです。
手書きの場合は、丁寧に書くことを意識しましょう。
Q3:申立書だけで等級は決まりますか?
いいえ。障害年金の審査でもっとも重視されるのは診断書だとされており、申立書はそれを補う書類です。
診断書と申立書の整合性も含めて総合的に判断されます。
申立書が結果を左右した事例
当事務所では、病歴・就労状況等申立書の作成支援を含め、障害年金申請を多く手がけています。
申立書の書き方が結果に関わったケースの一部をご紹介します。
- 「在宅での自営業」を詳細な病歴就労状況等申立書で「実態」を伝えた事例
- 複数の医療機関を一つの欄にまとめて病歴就労状況等申立書を作成した事例
- 病歴就労状況等申立書で「躁状態」と「うつ状態」それぞれの生活上の困難を丁寧に記載した事例
これらはあくまで個別の事例です。
※個別事案により判断は異なります。最終的な受給可否や等級は、日本年金機構の審査で、認定医による医学的判断等を踏まえて決定されます。
まとめ

病歴・就労状況等申立書は、提出書類の中でご自身の状況を自分の言葉で伝えられる唯一の書類です。
最初から完璧を目指さず、事実を、診断書と整合する形で、読み手に伝わるように書くことが大切です。
表面では発病からの経過を時系列で、裏面では請求の方法に応じて就労や日常生活の状況を記入します。
書き終えたら、診断書との整合や記入漏れがないかを見直してから提出しましょう。
病歴・就労状況等申立書の作成や障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年6月時点の年金法令・障害認定基準・申請様式に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。
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