「障害年金をもらえない人」をわかりやすくご説明します

「障害年金を申請しても、自分はもらえないのではないか」とご不安をお持ちの方は少なくありません。

実際、受給要件を満たしていないために受給できないケースはあります。

一方で、要件を満たしているにもかかわらず、ご自身の状況を「もらえない」と思い込み、申請されていない方も少なからずいらっしゃいます。

本記事では、社会保険労務士の視点から、障害年金がもらえない方の主なパターンと、勘違いされやすいケース、不支給通知が届いた場合の対処法を整理してご説明します。

「障害年金がもらえない人」とは

「障害年金がもらえない人」とは

「障害年金がもらえない人」とは、簡単に申し上げれば 受給要件を満たしていない方 です。

ただし実務上は、それに加えて 「要件を満たしているのに、もらえないと思い込んで申請されていない方」「要件を満たしていることをうまく伝えられず不支給となってしまった方」 も少なからずいらっしゃいます。

障害年金は、現役世代を中心に、病気やけがで生活や仕事に支障が生じた方を支える公的年金制度です(日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)。

受給するためには、後ほど詳しくご説明する3つの受給要件を満たす必要があります。

要件を客観的に満たさない方が受給できないのは制度上の前提ですが、ご自身では「もらえない」と判断しがちな方の中に、実は申請可能なケースが含まれている点が、本記事でぜひお伝えしたいポイントです。

障害年金を受給するための3つの要件

障害年金を受給するための3つの要件

障害年金がもらえない原因を整理するためには、まず受給要件の構造を押さえる必要があります。

障害年金には、初診日要件・保険料納付要件・障害状態要件 の3つの要件があり、原則としてすべてを満たさなければ受給できません。

初診日要件

初診日要件とは、障害の原因となった病気やけがで、初めて医師の診療を受けた日(初診日) に、公的年金制度に加入していたことを求める要件です。

初診日における加入制度によって、受給できる年金の種類が決まります。

国民年金加入中 であれば障害基礎年金(対象は1級・2級)、厚生年金加入中 であれば、1級・2級に該当する場合は障害基礎年金+障害厚生年金が、3級に該当する場合は障害厚生年金のみが支給対象となります。

ただし、20歳前の年金未加入期間 に初診日がある場合や、60歳以上65歳未満で日本国内に居住し年金未加入期間 に初診日がある場合も、障害基礎年金(1級・2級)の対象となります。

保険料納付要件

保険料納付要件は、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間における保険料の納付状況を問う要件です。

原則は 3分の2要件 で、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が被保険者期間の3分の2以上あることが必要です。

これに加えて 直近1年要件(特例) があります。

初診日が令和18年(2036年)3月末日までにあり、かつ初診日において65歳未満 である場合に限り、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ要件を満たすとされています。

なお、20歳前傷病(20歳前の年金未加入期間に初診日がある場合) は、保険料納付要件は問われません。

ただし、20歳前傷病による障害基礎年金は、保険料納付要件がない代わりに 本人の前年所得による支給制限 があります。

扶養親族がいない方の場合、令和7年10月1日改正後の基準で、前年所得が3,761,000円を超えると年金額の2分の1が、4,794,000円を超えると年金の全額が、その年の10月から翌年9月まで支給停止となります(日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」)。

障害状態要件

障害状態要件とは、障害認定日 または現在の症状が、障害認定基準に定める等級に該当することを求める要件です。

障害基礎年金の対象等級は1級・2級、障害厚生年金の対象等級は1級〜3級 です(障害厚生年金には、3級に至らない一定の障害が初診日から5年以内に治った場合の 障害手当金 という一時金もあります)。

障害認定日は、原則として 初診日から1年6ヶ月を経過した日、または その期間内にその傷病が治った日(症状が固定した日を含みます)を指します。人工透析や人工関節など、一部の傷病では特例的に短縮されます。

障害認定日に等級に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化した場合には、現症日(請求日近くの状態)を基準に請求する 事後重症請求 が可能です。

障害年金がもらえない人の主なパターン

ここでは、障害年金がもらえない、もしくは申請しても不支給となってしまう方の主なパターンを7つに整理してご説明します。

ご自身の状況がどれに該当しそうか、確認の参考にしてください。

① 初診日が証明できない

① 初診日が証明できない

初診日は障害年金の出発点となる極めて重要な情報ですが、自己申告だけでは認められません。

原則として、初診医療機関が作成する 受診状況等証明書 で証明します。

ただし、初診医療機関が廃院していたり、カルテの法定保存期間(原則5年)を経過してカルテが廃棄されていたりすると、受診状況等証明書が取得できないことがあります。

その場合は、受診状況等証明書が添付できない申立書 と、2番目以降の医療機関の証明や 第三者からの申立書 などの参考資料で対応する流れになります(対応の可否は事案により異なります)。

② 保険料納付要件を満たしていない

過去に保険料の未納期間が長く、原則の3分の2要件も特例の直近1年要件も満たさない場合、受給はできません。

注意点として、納付要件は 初診日の前日時点 での納付状況で判断されるため、初診日以降に過去の未納分を追納しても、要件を満たしたことにはならない点に留意が必要です。

③ 障害認定基準に該当しない

③ 障害認定基準に該当しない

障害の状態が、障害認定基準に定める対象等級に至っていないと判断された場合、不支給または却下となります(障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級〜3級)。

検査値・日常生活能力・労働能力などを総合して判定されます。

なお、初診日に国民年金加入中、20歳前傷病、または60歳以上65歳未満で国内在住の年金未加入期間に該当する方の場合、3級相当の症状であっても、原則として障害基礎年金の支給対象にはなりません(障害基礎年金には3級がないため)。

ただし、初回請求で「軽い」と判断されても、その後症状が悪化した場合には、新たな診断書を添えた 事後重症請求 や、決定そのものに不服がある場合の 審査請求 という選択肢があります(なお「額改定請求」は、すでに障害年金を受給中の方が増額を求める手続きで、不支給の場合は対象外です)。

④ 障害認定日要件を満たしていない

初診日から1年6ヶ月を経過していない段階で請求すると、原則として障害認定日に到達していないと判断されます。

ただし、人工透析開始から3ヶ月経過した日、人工関節等の挿入置換日など、傷病ごとに認定日の特例が設けられているケースがあります。

⑤ 診断書の記載が実態より軽くなっている

⑤ 診断書の記載が実態より軽くなっている

診断書は主治医が作成する書類ですが、診察室で見える状態のみで作成されると、ご自宅でのご様子や就労中の困難が反映されない場合があります。

医学的な判断は主治医にご相談いただく前提ですが、日常生活でのお困りごとや就労状況をご本人やご家族から具体的に伝え、診断書に正確に反映していただくことが、申請結果に影響することがあります。

⑥ 病歴・就労状況等申立書に空白や矛盾がある

病歴・就労状況等申立書 は、発症から現在までの病歴・就労状況・日常生活状況を時系列でご本人または社会保険労務士が記載する書類です。

空白期間の説明不足や、診断書との内容の食い違いがあると、審査側が実態を把握しにくくなり、結果に影響する場合があります。

⑦ 老齢年金・遺族年金との併給調整

⑦ 老齢年金・遺族年金との併給調整

公的年金は、原則として1人1年金で、支給事由(老齢・障害・遺族)の異なる年金は、いずれか一方を選択することが原則です。

ただし、65歳以降は例外的に、以下のような組み合わせで併給 することができます。

  • 障害基礎年金 + 障害厚生年金(従来通り)
  • 障害基礎年金 + 老齢厚生年金
  • 障害基礎年金 + 遺族厚生年金

そのため、組み合わせや金額の比較から障害年金を選ばない結果として「障害年金は受け取らない」というケースがある一方、65歳以降にあえて組み合わせを選び直すことで合計受給額が増える場合もあります(日本年金機構「年金の併給または選択」)。

詳しくは 障害年金受給中のあなたへ!老後の年金はこうなる! もご参照ください。

「もらえない」と誤解されやすい3つのケース

ここからは、実際にはご相談で多い「もらえないと思い込んでいた」典型的なケースを3つご紹介します。

これらに該当する方が、実は申請可能だったという例が弊事務所のご相談でも少なくありません。

働いていても受給できる可能性があります

⑤ 診断書の記載が実態より軽くなっている

「働いているから障害年金はもらえない」とのご相談を多く頂きますが、就労していること自体が直ちに不支給につながるわけではありません

特に精神疾患・がん・内部障害などでは、職場の配慮(時短勤務、業務軽減、休憩の確保、定期的な通院)を受けながら勤務を継続されている場合に、就労状況や日常生活能力を踏まえて認定されるケースがあります(個別事案により判断は異なります)。

詳しくは 「働きながら障害年金をもらえる人」をわかりやすくご説明します もご参照ください。

障害者手帳をお持ちでなくても申請できます

障害者手帳をお持ちでなくても申請できます

障害年金と障害者手帳は、根拠法令も認定主体も異なる別制度 です。

障害年金は国民年金法・厚生年金保険法に基づき日本年金機構が認定し、障害者手帳は各法令に基づき自治体が認定します。

そのため、障害者手帳をお持ちでない方でも、障害年金の受給要件を満たしていれば申請が可能です。

逆に、障害者手帳の等級と障害年金の等級は連動しません。

詳しくは 「障害年金」と「障害者手帳」の関係 をご参照ください。

カルテが廃棄されていても諦める前にご相談を

医療機関のカルテは法令上、原則として 診療完結の日から5年間 の保存義務がありますが、それを過ぎると廃棄されていることがあります。

「カルテがないから初診日が証明できず、もらえない」とお考えになる方は多くいらっしゃいます。

ただし、第三者からの申立書、2番目以降の医療機関の記録、お薬手帳、健康診断記録、生命保険の給付記録などの参考資料で初診日が認められるケースもあります。

対応の可否は事案ごとに異なるため、諦める前に専門家へのご相談をおすすめします。

近年の不支給率の動向と申請者への影響

近年の不支給率の動向と申請者への影響

近年、障害年金の不支給率に大きな変化が見られています。

特に精神疾患で申請をご検討の方は、近年の動向と背景を知ったうえで、より丁寧な準備を進めることをおすすめします

厚生労働省年金局が公表した 「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」(令和7年6月11日公表) によれば、令和6年度の新規裁定から抽出した1,000件のサンプル調査において、非該当割合は13.0% と、令和5年度の8.4%から大きく上昇し、統計開始後で過去最高だった令和元年度(12.4%)とおおむね同水準となりました(全請求の確定統計ではなく、サンプル抽出による調査結果です)。

種類別の非該当割合は、精神障害12.1%・外部障害10.8%・内部障害20.6% で、特に精神障害は令和5年度の6.4%から約2倍に増加しています。

また、精神障害の 不支給事案に占める 「等級判定ガイドラインの目安より下位等級に認定され不支給となったケース」(または「目安が2つの等級にまたがるものについて下位等級に認定され不支給となったケース」)の割合が、令和5年度の44.7%から令和6年度は75.3% へと急増しました(厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」概要)。

これを受け、厚生労働省と日本年金機構は、精神障害等の令和6年度以降の不支給事案(既に審査請求で裁決等が行われた事案を除く)について 障害年金センターに配置される常勤医師を中心としたチームによる点検 を進めています。

日本年金機構の点検進捗ページの 2026年5月7日付速報値 によれば、点検済件数は14,841件、うち支給に変更となった件数は444件(約3.0%) で、令和6年度以降の不支給事案については点検が完了したと公表されています(日本年金機構「障害年金の認定状況について」)。

審査の傾向は年度や疾病カテゴリーによって変化することがあり、申請者の側で完全にコントロールできるものではありません。

それでも、ご自身で取り組める準備の質を高めることが、結果に影響する可能性のある領域です。

具体的には、診察時に日常生活の困りごとや就労中の配慮内容を口頭で伝えるだけでなく、メモなどで主治医にお渡しする、病歴・就労状況等申立書を時系列で空白なく記載する、診断書と申立書の内容を整合させるといった工夫が、書類の質を高める観点で重要です。

不支給になった場合の3つの対処法

不支給になった場合の3つの対処法

不支給通知が届いた場合でも、すぐに諦める必要はありません。続けてとり得る選択肢は主に3つあります。

ご自身の状況に応じて適切な道筋を選ぶことが大切です。

審査請求(不服申立て)

審査請求(不服申立て)

不支給の決定に納得できない場合、決定を知った日の 翌日から3ヶ月以内 に、社会保険審査官に対して 審査請求 を行うことができます。

さらに審査請求の決定にも納得できない場合は、決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に、社会保険審査会に対して再審査請求 を行うことが可能です。

審査請求は、提出済みの書類に基づく審査の妥当性を問う制度です。

新しい医学的事実を主張する場合は、後述の再申請の方が適している場合もあります。

再申請(新規の障害年金請求)

不支給後でも、新規の請求として再申請することができます。

診断書を取り直し、病歴・就労状況等申立書を新たに作成して、症状の経過や日常生活能力をより的確に反映した請求書類を整え直す形になります。

ただし、障害認定日に該当しなかった方が、その後悪化した症状で改めて請求する場合は 事後重症請求 として位置づけられ、65歳の誕生日の前々日までという期限 があります(後述)。

障害認定日請求として再検討するのか、事後重症請求として進めるのかで、期限と遡及範囲が異なります。

精神疾患・発達障害の方向けの考え方は 発達障害で障害年金を申請して落ちた方へ もご参照ください。

審査請求と再申請のどちらが適しているかは、不支給理由や残された証拠の状況によって異なります。

ご判断に迷う場合は、社会保険労務士へのご相談をおすすめします。

事後重症請求

障害認定日には認定基準に該当しなかった方で、その後症状が悪化して認定基準に該当した場合は、事後重症請求 が可能です。

事後重症請求は、65歳の誕生日の前々日まで に行う必要があります(請求が遅れると、その分受給開始月も遅れる点にご注意ください)。

なお、老齢基礎年金の繰上げ受給を選択すると、事後重症請求ができなくなります。

将来的に障害年金を請求する可能性のある方は、繰上げ受給は慎重にご検討ください。

「もらえないと思っていたが受給できた」事例

「もらえないと思っていたが受給できた」事例

弊事務所では、「もらえないと諦めていた」「他の事務所で断られた」とご相談に来られた方が、改めて書類を整理し直すことで受給に至った事例があります。

以下は実際の事例の一部です。

これらは、受給要件の確認と書類の整理を改めて行い、実態を正確に反映した申請に切り替えられたケースです。

一方で、要件をどうしても満たせないために受給に至らない場合もあります。

※個別事案により判断は異なります。

よくあるご質問

「障害年金がもらえないのでは」とお考えの方からよく頂くご質問にお答えします。関連する詳しい記事への内部リンクも併せてご活用ください。

Q1. 働いているともらえないですか?

働いていることが直ちに不支給につながるわけではありません。

職場の配慮を受けながらの就労や、就労継続支援B型などの福祉的就労については、就労状況や日常生活能力を踏まえて認定されるケースがあります。

詳しくは 「働きながら障害年金をもらえる人」をわかりやすくご説明します障害年金2級(精神疾患)でどれくらい働ける? もご参照ください。

Q2. 障害者手帳がなくても申請できますか?

申請可能です。障害年金と障害者手帳は別制度のため、手帳の有無に関わらず受給要件を満たしていれば請求できます。

詳しくは 「障害年金」と「障害者手帳」の関係 をご参照ください。

Q3. 軽度知的障害でももらえる可能性はありますか?

軽度知的障害(療育手帳B2・C・4度等)の方でも、日常生活能力や就労状況によっては受給につながる事例があります。

詳しくは 軽度知的障害では障害年金をもらえない? をご参照ください。

Q4. 更新で支給停止になった場合はどうなりますか?

更新で等級非該当となり支給停止となった後、再び障害年金を受けられる程度に症状が悪化した場合は、「老齢・障害給付 受給権者支給停止事由消滅届」 を提出する手続きをとります(すでに障害年金を受給中の方が増額を求める額改定請求とは異なる手続きですので、ご注意ください)。

詳しくは 障害年金の更新について障害年金の更新で落ちる確率 をご参照ください。

まとめ

障害年金がもらえない方は、大きく分けて 受給要件を満たしていない方 と、要件は満たしているのに勘違いや書類面の不備で受給に至っていない方 に分けられます。

「働いている」「障害者手帳がない」「カルテがない」といった理由で諦めてしまう前に、3つの受給要件と、ご自身の状況を一度整理してみていただければと思います。

詳しい受給要件は 障害年金を受け取るための条件とは、よくある誤解は 障害年金よくある勘違い20選、令和8年度の年金額は 【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額はいくら? も併せてご参照ください。

不支給通知が届いた場合も、審査請求・再申請・事後重症請求の選択肢があります。

障害年金申請のご相談、不支給後の審査請求・再請求のご相談は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年5月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は 日本年金機構の公式サイト 等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

わくわく社会保険労務士法人

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