厳密には「うつ病」とは、様々な症状を引き起こす精神疾患の一つで、軽度から重度まで幅広い症状を示すことがあります。
うつ病の症状には、一般的に悲しみや落ち込み、無気力感などの症状が長期間続くもので、睡眠障害、食欲の変化、集中力の低下、自己否定感などの症状も含まれます。
例えば「中等症うつ病エピソード」は「うつ病」と同じ疾患ではありますが、症状の強さや期間が異なることで、診断書に記載する病名としては区別される場合があります。
障害年金の審査はどのような病名であるかという点よりも、どのような症状であるかが重要になります。
うつ病で障害年金を受給する場合のポイントを、障害年金専門社労士がわかりやすくご説明します。
目次
この記事の監修者 社会保険労務士 松岡由将
年間2,000件以上の問い合わせがある「全国障害年金サポートセンター」を運営する障害年金専門の社会保険労務士法人「わくわく社会保険労務士法人」の代表社労士。
障害年金コンサルタントとしてtwitter(まっちゃん@障害年金の悩み解決するよ)やYouTube(まっちゃんの障害年金カフェ)などでも障害年金に関するさまざまな情報を発信している。
ICD-10コードとは?
うつ病で障害年金を申請する際は、診断書の病名の横にあるICD-10コード記入欄へコードの記載が必要になります。
ICD10コードとは、分かりやすく言うと、『精神障害には多くの傷病名があって分かり難いので、国際的にある程度分類してコードで表しましょう』ということです。
うつ病の場合、主に『F3 気分[感情]障害』に該当します。
ICD10コードに関しましては『ICD-10コードとは』で詳しくご説明していますので、ご参照ください。
F3 気分[感情]障害
【事例973】うつ病|障害厚生年金2級(既にカルテが破棄されていた事例)
うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。 …
F32.1 中等症うつ病エピソード
【事例981】中等症うつ病エピソード(過去に別の傷病で不支給だった事例)|障害基礎年金2級
うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。 …
F33 反復性うつ病性障害
【事例812】反復性うつ病性障害|障害厚生年金3級
うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。 …
うつ病の「障害の程度」の判定
うつ病に対する障害年金は、うつ病により日常生活に継続的に制限が生じて支援が必要な場合に、その障害の程度(=日常生活の制限度合いや労働能力の喪失)に応じて障害等級を決定しされ、等級に応じた障害年金が支給されます。
障害の程度は、以下にご説明する「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」を基準に判定されます。
うつ病の申請で不支給になった事例(再申請で受給決定)
この「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」を医師にきちんと伝えられないことで、症状が本来よりも軽いと判断されて、障害年金が受給不可という審査結果になることもありますので、十分注意が必要です。
【事例817】解離性障害・うつ病|障害基礎年金2級(他の社労士事務所で申請して不支給となった事例)
対象者の基本データ 病名 解離性障害・うつ病 性別 女性 支給額 年額 約78万円 障害の状態 1日中ベッドで横たわっている 何を食べても味がせず食事も1日1食程度 他人と…
【事例688】うつ病|障害基礎年金2級(過去不支給になって再申請した事例)
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 女性 支給額 年額 約78万円 障害の状態 一人暮らしのためヘルパーや外出時付添いサポートを利用している。 コンビニ…
【事例723】うつ病|障害基礎年金2級(過去不支給になって再申請した事例)
対象者の基本データ 病名鬱病(うつびょう)性別女性支給額年額 約78万円障害の状態・1年前にご自身で請求した結果、不支給となった・障害者雇用で就労している(社会…
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精神の障害に係る等級判定ガイドライン
精神の障害に係る等級判定ガイドラインは、日本の厚生労働省が策定したもので、精神障害を持つ人々の状態や社会生活への影響を評価し、障害の程度に応じて等級を判定するための基準を示しています。
「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」によって障害等級を判定するための基準が示されています。
「日常生活能力の判定」とは
「日常生活能力の判定」とは、個人が日常生活において自立して行動することができるかどうかを判断することです。
『障害年金の診断書(精神の障害用)』の「⑩障害の状態(ウ 日常生活状況)」部分に記載されます。
具体的には、以下の7つの項目に関してどの程度できるかを記載します。
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応
- 社会性
「日常生活能力の程度」とは
「日常生活能力の程度」とは、個人の日常生活能力のレベルを表す指標です。
「日常生活能力の程度」は、「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における制限度合いを包括的に評価するものです。
- 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
- 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
- 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
- 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
- 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
うつ病での障害年金の等級
先ほどご説明したように障害年金は病名で等級が決まるのではなく、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」によって障害等級が判定されます。
うつ病で障害年金1級の受給事例
うつ病で1級を受給されている事例は多くはありませんが、実際に受給が認められた事例はあります。
反復性うつ病性障害|障害厚生年金1級
支給額 | 年額 約158万円 |
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障害の状態 |
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【事例223】反復性うつ病性障害|障害厚生年金1級(更新で1級から2級となって審査請求をした事例)
対象者の基本データ 病名反復性うつ病性障害性別男性支給額年額 約158万円障害の状態・ほとんどベッドの上で過ごす・自傷行為による救急搬送が複数回ある・複数回の入…
うつ病で障害年金2級の受給事例
働いていたり、一人暮らしをされている場合でも、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」によっては2級の判定となる場合もあります。
うつ病|障害基礎年金2級(過去不支給になって再申請した事例)
支給額 | 年額 約78万円 |
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障害の状態 |
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【事例688】うつ病|障害基礎年金2級(過去不支給になって再申請した事例)
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 女性 支給額 年額 約78万円 障害の状態 一人暮らしのためヘルパーや外出時付添いサポートを利用している。 コンビニ…
うつ病で障害年金3級の受給事例
3級は初診日の時点で厚生年金又は共済年金に加入されている必要があります。
うつ病|障害厚生年金3級(初診病院が閉院していた事例)
支給額 | 年額 約59万円 |
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障害の状態 |
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【事例500】うつ病|障害厚生年金3級(初診病院が閉院していた事例)
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 女性 支給額 年額 約59万円 障害の状態 抑うつ気分、不安、意欲低下が顕著 食事をする気力もなく、1日1食ようやく食…
うつ病での遡及請求
遡って障害年金の支給を受けることを「遡及請求」と言います。
うつ病で遡及請求が認められた事例もあります。
うつ病|障害基礎年金2級
こちらは過去5年分の遡及請求が認められた事例です。
支給額 | 年額 約106万円 遡及金額 約510万円 |
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障害の状態 |
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【事例641】うつ病|障害基礎年金2級(過去5年分の遡及請求が認められた事例)
対象者の基本データ 病名鬱病(うつびょう)性別女性支給額年額 約106万円遡及金額 約510万円障害の状態 家事や身の回りのことは家族のサポートが欠かせない 通院…
反復性うつ病性障害|障害厚生年金3級(遡及のみ2級)
こちらは事後重症申請では3級の判定でしたが、遡及請求のみ2級を認められた事例です。
支給額 | 年額 約59万円 遡及金額 約583万円 |
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障害の状態 |
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【事例662】反復性うつ病性障害|障害厚生年金3級(遡及請求は2級が認定された事例)
対象者の基本データ 病名反復性うつ病性障害性別女性支給額年額 約59万円遡及金額 約583万円障害の状態・不安が強く、気分の浮き沈みが続いている・病状が悪化した…
うつ病で働きながら障害年金を受給
うつ病を患いながらでも働いている場合には障害年金を受給できないと思われている方もいらっしゃいますが、症状の重さなどの要件を満たす場合には障害年金を受給することができる可能性があります。
(『【社労士が解説】働きながら障害年金を受給するための注意点』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照下さい。)
申請時にうつ病で働いていた事例
うつ病を患われていても、就労の環境を整えている障害者雇用などで働かれている方はいらっしゃいます。
一般企業でフルタイムで働かれている場合でも、職場での配慮などがあることで何とか働くことが出来るという方もいらっしゃいます。
そのように環境のおかげでなんとか就労できているという場合には、障害年金を受給できた事例もあります。
うつ病で正社員でフルタイムで働いて受給できた事例
【事例932】うつ病|障害厚生年金3級(一般企業での就労している事例)
うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。 対象者…
【事例862】うつ病|障害厚生年金2級(週40時間フルタイムで就労している事例)
対象者の基本データ 病名鬱病(うつびょう)性別女性支給額年額 約144万円遡及金額 約97万円障害の状態 他人の咀嚼音が苦手で、家族とも一緒に食事ができない。 対…
【事例785】うつ病|障害厚生年金3級(正社員でフルタイムで働いている事例)
対象者の基本データ 病名鬱病(うつびょう)性別男性支給額年額 約59万円遡及金額 約49万円障害の状態・正社員でフルタイム勤務している・家事は全くできず、保清も…
【事例516】持続性抑うつ障害・神経症性障害|障害厚生年金2級(他の社労士事務所何ヶ所かに断られた事例)
対象者の基本データ 病名 持続性抑うつ障害・神経症性障害 性別 女性 支給額 年額 約120万円 障害の状態 強い抑うつ気分の意欲低下が顕著 生活は同居人の協力により、…
うつ病で障害者雇用で働いて受給できた事例
【事例746】うつ病・広汎性発達障害|障害厚生年金2級
対象者の基本データ 病名 うつ病・広汎性発達障害 性別 男性 支給額 年額 約117万円 遡及金額 約137万円 障害の状態 意欲の低下、倦怠感などが続いており、日常生…
【事例538】うつ病|障害厚生年金3級(障害者雇用で就労している事例)
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 男性 支給額 年額 約59万円 障害の状態 障害者雇用で事務の仕事に従事している。 家族以外とのコミュニケーションは…
障害年金を受給後に働き始めた事例
障害年金を申請した時点では働いていなかった方が受給後に働き始めるというケースもあります。
「働き始めたら更新ができないのでは・・・」と、心配される方もいらっしゃいます。
障害年金の更新手続きでは、「障害状態確認届(更新用の診断書様式)」により引き続き障害年金が受けられる障害状態にあるのかどうか、障害状態(等級)に変更はないか確認が行われます。
更新時の症状の状態やその他の要件が受給要件を満たす場合は、働き始めた後でも更新は可能です。
【事例883】うつ病|障害厚生年金3級(障害者雇用で働き始めて初めての更新の事例)
うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。 …
うつ病で一人暮らしをしながら障害年金を申請
一人暮らしをされている場合も、障害年金の受給はできないと思われている方もいらっしゃると思います。
一人暮らしをされている場合も、働いている場合と同じく、症状の重さなどの要件を満たす場合には障害年金を受給することができる可能性があります。
(『【社労士が解説】一人暮らしで障害年金を申請する注意点』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照下さい。)
うつ病で一人暮らしをしながら受給できた事例
うつ病を患われていても、さまざまな事情で一人暮らしをされている方はいらっしゃいます。
「一人暮らしをしている理由」と「一人暮らしであるが、日常生活において、決して自立できていないこと」の2点を明確にすることが重要になります。
【事例874】うつ病|障害基礎年金2級(精神疾患で一人暮らしの事例)
うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。 …
【事例520】うつ病|障害厚生年金3級(精神疾患で一人暮らしの事例)
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 男性 支給額 年額 約59万円 障害の状態 一人暮らし 自宅に閉じこもりがちで対人交流は全くない 抑うつ状態が継続し…
【事例514】うつ病|障害基礎年金2級(精神疾患で一人暮らしの事例)
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 男性 支給額 年額 約78万円 障害の状態 一人暮らしのため、日常生活が破綻している 引きこもり傾向が強く、通院以外…
【事例463】うつ病|障害厚生年金2級
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 女性 支給額 年額 約103万円 遡及金額 約86万円 障害の状態 病気が原因で就労できない。 精神障害者保健福祉手…
障害年金を受給後に一人暮らしを始めた事例
障害年金を申請した時点では一人暮らしをしていなかった方が受給後に一人暮らしを始めるというケースもあります。
「一人暮らしを始めたら更新ができないのでは・・・」と、心配される方もいらっしゃいます。
これも就労と同じように、更新時の症状の状態やその他の要件が受給要件を満たす場合は、一人暮らしを始めた後でも更新は可能です。
【事例776】うつ病|障害基礎年金2級(一人暮らしと就労を始めた後の更新の事例)
対象者の基本データ 病名 鬱病(うつびょう) 性別 男性 支給額 年額 約78万円 障害の状態 一人暮らしをしているが、日常生活においては親族や知人のサポートを受けて…
動画で解説
うつ病で障害年金を受給するポイントを動画でも説明していますので、是非ご覧ください。
うつ病の障害の事例
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よく読まれるうつ病の障害の事例
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
うつ病で障害年金を申請する場合の注意点をお分かりいただけたかと思います。
特に「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」を医師にきちんと伝えることが重要になります。
障害年金の申請にお悩みの方はお気軽に当事務所にお問い合わせください。