「働いていると障害年金をもらえないのですか」というご質問をよくいただきます。
結論から申し上げますと、働きながら障害年金を受給することはできます。
しかし、就労の有無が重要なポイントとなることも事実です。
就労している継続年数や、就労形態についても審査では見られます。
本記事では、働きながら障害年金が受給できる人とはどのような人なのかをわかりやすくご説明したいと思います。
この記事を読むとわかるポイント
- 障害年金の概要
- どのような人が働きながら障害年金をもらえるのか
- 働きながら障害年金を受給できた人の事例
- 更新時に働いていた場合の注意点
- 働きながら障害年金を受給できた人の感想
目次
障害年金とは
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。(日本年金機構HP:「障害年金」より)
この「仕事などが制限される」という部分を「働いているということは、仕事が制限されていないから障害年金を受給できない」と思われている方もいらっしゃいます。
しかし、就労していることは審査に影響はありますが、日常生活や就労状況から判断して、「病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった」と判断された場合は障害年金を受給できる場合もあります。
(※障害年金の制度は『障害年金とは』のページで詳しくご説明していますので、障害年金の制度に関して知りたい方はご参照ください。)
障害年金の種類
障害年金には、障害基礎年金、障害厚生年金の2種類があります。
障害年金を受給するには、初診日の時点で年金制度に加入している必要があります。
障害年金制度の仕組みは2階建て構造となっており、1階部分には「障害基礎年金」、2階部分には「障害厚生年金」があります。
2階部分の障害厚生年金を申請する場合は、同時に1階部分の障害基礎年金も申請する形となります。
2種類のうち、どちらの障害年金を受給できるのかは、申請する傷病の初診日に加入していた年金で決まります。
障害年金を受給するための要件
働いているか働いていないかに関わらず、障害年金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。(日本年金機構ホームページ:障害基礎年金の受給要件)
【受給要件1】初診日要件
障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にあること。
- 国民年金加入期間
- 20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
【受給要件2】保険料納付要件
初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。
【受給要件3】障害状態要件
障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること。
障害年金の受給可否は、症状の重症度だけでなく、日常生活や就労への支障度を総合的に判断されます。
症状が比較的軽度であっても、日常生活や就労に著しい制限がある場合は、障害年金を受給できる可能性があります。
以下は、統合失調症で障害年金を受給できるかの目安です。
- 1級:著しい日常生活の制限があり、常時介護を必要とする
- 2級:日常生活に著しい制限があり、介護が必要
- 3級:日常生活に制限があり、介護が必要な場合がある
働きながら障害年金をもらえる人
「働きながら障害年金をもらえるの」というご質問をよくいただきます。
働きながら障害年金を受給できる可能性はあります。
令和5年(2023年)6月23日の第5回社会保障審議会年金部会の資料「障害年金制度」によると、2019年では障害年金を受給されている方の中で、身体障害48.0%、知的障害58.6%、精神障害34.8%の方が就労しながら障害年金を受給されているというデータになっています。
2019年の障害年金受給者の就労率
身体障害 | 知的障害 | 精神障害 | |
---|---|---|---|
障害厚生年金1級 | 24.7% | – | – |
障害厚生年金2級 | 50.9% | – | 28.9% |
障害厚生年金3級 | 73.5% | – | 4.7% |
障害基礎年金1級 | 39.1% | 32.4% | 17.2% |
障害基礎年金2級 | 51.4% | 75.3% | 36.4% |
全体 | 48.0% | 58.6% | 34.8% |
つまり、身体障害の方は約2人に1人、知的障害の方は2人に1人以上、精神障害の方は3人に1人が働きながら障害年金を受給されています。
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就労が審査に影響がない傷病
障害年金の等級は障害の種類と程度によって決められますが、特定の傷病に対して原則的に設定されている場合があります。
以下は、障害年金の等級が決まっている主な傷病の例です。
等級が決まっているので働いていることは審査に影響はありません。
- 人工透析:2級
- 人工関節:3級
- 心臓移植や人工心臓:1級
- 人工弁、心臓ペースメーカー、人工肛門:3級
また、視力や聴覚、手足の障害など、検査結果の数値で障害の程度が測れる傷病についても、障害等級が決まっています。
客観的な検査数値で審査されますので、働いていることは審査に影響はありません。
- 視覚障害: 両眼の視力がそれぞれ0.03以下の場合、1級に該当します。
- 聴覚障害: 両耳の聴力レベルが100デシベル以上の場合、1級に該当します。
- 上肢の障害: 両上肢の全ての指を欠く場合、1級に該当します。
- 下肢の障害: 両下肢を足関節以上で欠く場合、1級に該当します。
働きながら障害年金をもらえるケース
それでは、どのような人が働きながら障害年金をもらえるのかを事例をもとにわかりやすくご説明したいと思います。
障害認定基準では以下のように定められています。
1 級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。 |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。 |
3級 | 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。 |
このように働いているかいないかは、障害年金の認定基準に直接記載されているわけではありません。
ただし、働いているという事は「日常生活に著しい制限はないのでは」「労働が著しい制限を受けていないのでは」と判断される可能性があります。
働いている場合は、どのような労働環境で、どのような仕事をしているかがポイントになります。
【可能性のある人1】会社から特別な配慮を受けている人
会社から特別な配慮を受けていることで、なんとか働けているという方は働きながら障害年金を受給できる可能性があります。
たとえば、以下のような場合は「特別な配慮」と認められる可能性があります。
- 通常の勤務時間より短い時間しか働けない。
- 特別に柔軟な勤務形態を認められている。
- 本来の業務内容や責任範囲が軽減されている。
- 簡単な業務に配置換えされている。
- 通常の休憩時間よりも長い休憩時間をもらっている。
- 休憩回数を増やして対応してもらっている。
- 障害を補うための特別な器具や設備(例えば、昇降デスク、音声認識ソフト、拡大読書器など)を会社が提供している。
- 業務遂行のために会社が介助者を配置している。
- 休職している。
- 復職支援プログラムを提供されている。
【可能性のある人2】病気の影響で日常生活に制限がある人
また、なんとか頑張って会社に行けても、以下のように病気の影響で日常生活に制限が出ているという方も働きながら障害年金を受給できる可能性があります。
- 帰宅した途端どっと疲れが出て寝込んでしまう
- 休日は家事も一切できない
働きながら障害年金2級を受給できた事例
当事務でサポートさせて頂いた方の中には「自分は働いているから障害年金はもらえない」と諦めていた方もいらっしゃいます。
また、いろいろなところに相談をされて、「働いているから障害年金を申請できない」と言われた方もいらっしゃいます。
当事務所で実際に申請のサポートをさせて頂いた方で、働きながら障害年金2級の受給が決定された方の事例をご紹介します。
【事例1】うつ病|週40時間フルタイムで働いていた方の受給事例
病名 | うつ病 |
就労形態 | 在宅(週40時間フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金2級 |
依頼者様が主治医の先生に相談したところ「週40時間も仕事をしていると受給は難しい」と言われ、申請を諦めていた方の事例です。当事務所で申請した結果、障害厚生年金2級の受給が決定しました。
※詳しくは「うつ病|障害厚生年金2級(週40時間フルタイムで就労している事例)」
【事例2】持続性抑うつ障害|フルタイム・他事務所で断られた受給事例
病名 | 持続性抑うつ障害・神経症性障害 |
就労形態 | 一般雇用(フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金2級 |
依頼者様が他の社労士事務所何ヶ所かにご相談されたところ「現在就労しているので受給は難しい」と断られ続け、もう自分は受給できないのかも知れない…と半ば諦めに近い状態で当事務所にご相談いただいた事例です。当事務所で申請した結果、障害厚生年金2級の受給が決定しました。
※詳しくは「持続性抑うつ障害・神経症性障害|障害厚生年金2級」
その他の働きながら障害年金2級を受給できた事例
ご紹介した事例以外にも、働きながら障害年金2級を受給できた事例はたくさんございます。
- 統合失調症|障害基礎年金2級(約8年間アルバイトをされていた事例)
- 自閉スペクトラム症|障害厚生年金2級(一般企業で正社員として就労している事例)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)|障害厚生年金2級(事実婚で配偶者加算が認められた事例)
働きながら障害年金3級を受給できた事例
当事務所で実際に申請のサポートをさせて頂いた方で、働きながら障害年金3級の受給が決定された方の事例をご紹介します。
【事例1】双極性障害|正社員・フルタイム・一人暮らしの受給事例
病名 | 双極性障害 |
就労形態 | 一般雇用(フルタイム) |
受給が決まった障害年金 | 障害厚生年金3級 |
依頼者様は、正社員としてフルタイムで働きながら一人暮らしをされていました。就労上の配慮や援助の状況や就労の影響による日常生活の状況、一人暮らしであっても日常的に家族からの援助や支援を受けている状況がわかるよう資料にまとめ、 結果、障害厚生年金3級の受給が決定しました。
※詳しくは「双極性障害|障害厚生年金3級(一人暮らしで就労されている事例)」
その他の働きながら障害年金3級を受給できた事例
ご紹介した事例以外にも、働きながら障害年金3級を受給できた事例はたくさんございます。
- うつ病|障害厚生年金3級(一般企業での就労している事例)
- うつ病|障害厚生年金3級(正社員でフルタイムで働いている事例)
- 注意欠陥障害・混合性不安抑うつ障害|障害厚生年金3級(2つのアルバイトを掛け持っていた事例)
働き始めた人の「更新」のポイント
障害年金の受給を始めた時は働いていなかったけれど、受給を開始した後で働き始めたという方もいらっしゃいます。
これまでに、障害年金の更新時に「就労の開始」を理由として等級が下がったり、年金が停止となったという相談が多く寄せられており、就労が審査に及ぼす影響は年々増していると感じています。
しかし、一言で就労といっても、元気いっぱいでフルタイム働けるのか、上司や周りからフォローを貰いながら何とか働いているのかでは大きな違いがあります。
更新の手続きは、一番最初に障害年金をもらう手続き(裁定請求)に比べると必要な書類や手間が少ない分、楽と感じる方も多いと思います。(更新手続きに関しては『障害年金の「更新」をわかりやすくご説明します』で詳しくご説明しています)
しかし、更新であっても手を抜かずに以下のようなポイントをしっかり抑えて手続きを行う必要があります。
- 症状について先生に伝えられているか?
- 診断書だけでは見えない仕事の様子を審査に伝えられているか?
(更新での支給停止の割合は『障害年金の更新で落ちる確率はどれくらい?』で詳しくご説明しています)
就労を開始後の更新が認められた事例
障害年金の認定を受けた時点では働いていなかったけれど、更新の前に働き始めたという方もいらっしゃいます。
その場合もどのような就労や日常生活の状況を詳しく説明することが重要になります。
以下に、当事務所で障害年金の認定を受けた時点では働いていなかったけれど、更新の前に働き始めた方の申請サポート事例をご紹介します。
- 双極性障害|障害厚生年金2級(就労を開始後の更新が認められた事例)
- うつ病|障害厚生年金3級(フルタイム勤務を始めた後の更新の事例)
- うつ病|障害厚生年金3級(障害者雇用で働き始めて初めての更新の事例)
- 双極性障害|障害基礎年金2級(一般雇用で就労を始めた後の更新の事例)
障害年金のことを知りたいけど、「説明が長くて読むのが大変・・・」「分かりにくい・・・」「私の場合、どれに当てはまるのか分からない・・・」という方はお気軽にお電話かLINEでお問い合わせください。丁寧にご説明させていただきます。
働きながら障害年金をもらえた人の感想
当事務所でサポートさせていただいた方々から、働きながら障害年金の申請をして受給が決まった方から頂いたご感想をいくつかご紹介します。
他事務所で断られた方
働いている場合は障害年金の受給が難しいと判断されることはあります。
当事務所でサポートさせて頂いた依頼者様も他の事務所から受給は難しいのではと判断された方もいらっしゃいます。
こちらの方々も働いていたことが理由で他の事務所からは断られたとのことでしたが、日常生活や就労に関する状況を細かくヒアリングさせていただいたところ、受給できる可能性があると判断し、申請の結果、受給決定となりました。
※詳しくは【障害年金申請者様の声】T.S様(2021年11月5日)
一般雇用(フルタイム)で働きながら障害年金が受給できた方
この方はフルタイムで働いていたので、他の社労士事務所では障害年金の受給は難しいと判断されていたんですか?
そうです。でも、どのような職場環境でどのような作業をしているか、日常生活の状況はどのようなものか等も審査のポイントになりますので、フルタイムで働いていても障害年金を受給できる可能性はあるんです。
※詳しくは【障害年金申請者様の声】N.H様(2023年8月30日)
障害者雇用(フルタイム)で働きながら障害年金を受給できた方
こちらの依頼者様は「フルタイムで働いているのなら、障害年金はもらえないだろう」と思い込まれていたとのことでしたが、無事受給決定となりました。
※詳しくは【障害年金申請者様の声】N.K様(2023年9月3日)
働きながら障害年金を受給出来た方のご感想
その他、働きながら障害年金が受給できた方から、たくさんのご感想をいただいていますので、是非ご参照下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
働きながらであっても障害年金を受給されている方がたくさんいらっしゃることをご理解いただけたのではないかと思います。
しかし、「働いている」ことは、「障害の程度が軽い」と判断される要因でもあります。
どのような環境で、どのような作業をしているかなど、申請の際には状況を正確に伝えることが非常に重要になります。
「私の場合は障害年金がもらえるの?」と悩まれている方は、当事務所へお気軽にお問い合わせください。
「働いているけど、私は障害年金もらえるの?」とすぐに相談したい方はお気軽にご相談下さい。