はじめに

会社員や公務員として働いている間に体調を崩し、障害年金について調べ始めた方は多いのではないでしょうか。

初診日に厚生年金保険に加入していた方が請求できるのが、障害厚生年金です。

この年金には、障害基礎年金にはない3級や障害手当金があり、年金額も人によって異なります。

本記事では、障害厚生年金の受給要件、等級、年金額の決まり方、3級の注意点、請求方法を順に解説します。

障害基礎年金との違いを一覧で確認したい方は、障害基礎年金とはもあわせてご覧ください。

障害厚生年金とは

障害厚生年金は、初診日に厚生年金保険に加入していた方が、障害等級1級から3級に該当したときに受け取れる障害年金です。

3級より軽い障害が残った場合には、一時金として障害手当金が支給される制度もあります。

障害基礎年金との関係

公的年金は、国民年金を1階、厚生年金保険を2階とする2階建ての仕組みになっています。

厚生年金保険の被保険者は、原則として国民年金の第2号被保険者でもあります。

そのため、初診日に厚生年金保険に加入していた方が1級または2級に該当すると、障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされます。

3級は障害厚生年金だけにある等級で、3級の場合は障害厚生年金のみが支給されます。

ただし、65歳以上で老齢基礎年金などを受ける権利がある方は、第2号被保険者に含まれません。

そのため、1級・2級でも障害基礎年金が支給されない場合があります(要件1で解説します)。

公務員・私立学校の教職員も対象になります

平成27年10月1日の被用者年金の一元化により、公務員や私立学校の教職員も厚生年金保険の被保険者になりました。

共済組合等に加入していた期間に初診日がある障害厚生年金は、原則として、初診日に加入していた共済組合等が決定と支払いを行います。

請求書の提出先も、原則として初診日に加入していた共済組合等になります(初診日の後に異動した場合の注意点は、請求方法の章の「請求先と年金請求書」で説明します)。

公立学校の教職員の方は、公立学校共済組合の障害年金もご覧ください。

障害厚生年金を受け取るための3つの要件

障害厚生年金を受け取るには、日本年金機構が示す次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

次の1~3のすべての要件を満たしているときは障害厚生年金が支給されます。

1. 厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。

2. 障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していること。ただし、障害認定日に障害の状態が軽くても、その後重くなったときは、障害厚生年金を受け取ることができる場合があります。

3. 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

ただし、初診日が令和18年3月末日までのときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

(日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」〔更新日:2026年4月1日〕)

以下では、それぞれの要件で迷いやすい点を説明します。

要件1 初診日に厚生年金保険の被保険者であること

初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。

どちらの年金の対象になるかは、請求する時点ではなく、初診日に厚生年金保険に加入していたかで判断されます。

厚生年金保険の被保険者として働いていた間に初診日がある方は、その後に退職してから請求する場合も、障害厚生年金の対象です。

休職中や試用期間中でも、厚生年金保険の被保険者であれば同じ扱いです。

働いていても、短時間勤務などで厚生年金保険に加入していなかった期間に初診日がある場合は、障害厚生年金の対象になりません。

一方、退職した後に初診日がある場合も、障害厚生年金の対象になりません。

この場合は、障害基礎年金の対象になるかを確認します。

障害基礎年金の対象になるのは、国民年金の加入期間、または20歳前や日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間(60歳以上65歳未満は、老齢基礎年金を繰上げ受給している方を除く)に初診日がある場合です。

障害基礎年金には、3級と障害手当金はありません。

20歳前であっても、就職して厚生年金保険に加入していた間に初診日がある場合は、障害厚生年金の対象です。

この場合は、保険料納付要件を満たす必要があります。

一方、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある方の障害基礎年金にかかる所得制限は、この場合には適用されません。

ここまでが原則ですが、65歳以上の方には例外があります。

65歳以上で老齢基礎年金などを受ける権利がある方は、厚生年金保険に加入していても国民年金の第2号被保険者になりません(国民年金法附則第3条)。

そのため、この期間に初診日がある場合は、1級・2級に該当しても障害基礎年金は支給されず、障害厚生年金のみとなります。

この場合の障害厚生年金には、3級と同じ最低保障額があります(厚生年金保険法第50条第3項)。

初診日の考え方は、初診日とはで詳しく解説しています。

要件2 保険料納付要件

保険料納付要件は、引用の3のとおり、初診日の前日の時点で一定以上の保険料を納めているかを確認する要件です。

厚生年金保険に加入していた期間は、保険料を納めた期間として数えられます。

在職前や退職後に国民年金の未納期間がある方は、3分の2の原則か直近1年の特例のどちらかを満たすかを確認します。

直近1年の特例は、初診日が令和18年3月末日までで、初診日に65歳未満の場合に使えます。

なお、国民年金保険料の一部免除を受けた期間は、減額された保険料を納めた期間に限り免除期間として扱われます。

詳しくは、障害年金をもらえる人|3つの受給要件をご覧ください。

要件3 障害認定日に1級〜3級に該当すること

障害認定日とは、初診日から1年6か月を過ぎた日、またはそれまでに病気やけがが治った(症状が固定した)日をいいます。

障害認定日に該当していなくても、その後に重くなって該当したときは、事後重症による請求ができます(請求方法の章で解説します)。

障害認定日の特例などは、障害認定日とはで解説しています。

要件を満たさずに受給できない主なケースは、「障害年金がもらえない人」の特徴で整理しています。

障害厚生年金の等級と障害手当金

1級から3級の等級は、政令の障害等級表と障害認定基準に基づいて判定されます。

障害者手帳とは別の制度のため、手帳の等級と年金の等級が一致しないこともあります。

1級・2級・3級の状態の目安

日本年金機構の説明では、1級は、他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできない程度の状態とされています。

2級は、必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活が極めて困難で、労働によって収入を得ることができない程度の状態とされています。

3級については、次のように説明されています。

労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。

(日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」)

3級は労働に制限がある状態を想定しているため、働いていることだけで対象外になるわけではありません。

実際の等級は、障害の種類ごとに定められた障害認定基準に沿って、診断書などの書類をもとに判定されます。

具体的な症状や状態の評価については、主治医にご相談ください。

3級より軽い障害が残ったときの障害手当金

障害手当金は、3級より軽い一定の障害が残った場合に、一時金として支給されるものです。

主な要件は、厚生年金保険の被保険者である間に初診日があること、保険料納付要件を満たしていること、初診日から5年以内に病気やけがが治っていることです。

あわせて、治った日に、障害厚生年金を受け取れる状態より軽く、政令で定める障害手当金の障害の程度にあることが必要です。

ただし、国民年金・厚生年金などの年金を受ける権利がある方は、原則として障害手当金を受け取れません。

同じ傷病で、労働基準法・労働者災害補償保険法などによる障害補償を受ける権利がある方なども同様です。

詳しくは、障害手当金とはをご覧ください。

障害厚生年金の年金額の決まり方(令和8年度)

障害厚生年金の額は定額ではなく、厚生年金保険に加入していた期間の報酬をもとに計算されます。

ここでは、令和8年度(令和8年4月分から)の額で仕組みを説明します。

障害年金の額は毎年度改定されるため、現在の金額は障害年金でもらえる金額はいくら?をご覧ください。

等級別の年金額(令和8年度)

等級ごとの年金額の計算方法は、次のとおりです。

等級障害厚生年金(報酬比例部分)障害基礎年金加算(対象者がいる場合)
1級報酬比例の年金額×1.251,059,125円配偶者の加給年金額243,800円・子の加算額
2級報酬比例の年金額847,300円配偶者の加給年金額243,800円・子の加算額
3級報酬比例の年金額(最低保障額635,500円)なしなし
障害手当金(一時金)報酬比例の年金額×2(最低保障額1,271,000円)なしなし

1級・2級の方は、障害厚生年金と障害基礎年金をあわせて受け取ります。

ただし、65歳以上で老齢基礎年金などを受ける権利がある間に初診日があり障害基礎年金が支給されない場合は、1級・2級でも3級と同じ最低保障額が適用されます。

表の金額は、昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。

昭和31年4月1日以前生まれの方は、障害基礎年金が1級1,056,125円・2級844,900円です。

同じく、3級の最低保障額は633,700円、障害手当金の最低保障額は1,267,400円です。

配偶者の加給年金額は、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に、1級・2級の障害厚生年金に加算されます。

子の加算額は障害基礎年金に加算されるもので、生計を維持している子1人につき、2人目までは243,800円、3人目以降は81,300円です。

対象となる子は、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子です。

1級の「1.25倍」がかかるのは報酬比例の年金額と障害基礎年金の基本額で、配偶者の加給年金額と子の加算額は1級・2級で同じ額です。

報酬比例の年金額の計算式

報酬比例の年金額は、平成15年3月以前と平成15年4月以降の加入期間に分けて計算し、合計します。

平成15年3月以前の期間は「平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数」で計算します。

平成15年4月以降の期間は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算します。

平均標準報酬月額は標準報酬月額の平均、平均標準報酬額は標準賞与額も含めた平均で、いずれも再評価率をかけて現在の水準に直してから計算します。

この式で計算した額が平成6年の水準で計算した額(従前額)を下回る場合は、従前額が報酬比例の年金額になります。

共済組合等の加入期間がある方は、その期間ごとに計算します(日本年金機構「報酬比例部分」)。

300月みなしと、障害認定日より後の期間の扱い

報酬比例の年金額の計算では、加入月数について次の扱いがあります。

報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。

(日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」)

加入期間が300月未満の範囲では、加入期間の長さは年金額に反映されず、報酬の水準によって額が変わります。

300月以上加入していた方は、実際の加入月数で計算します。

また、受給を始めた後に厚生年金保険に加入して働いても、その期間によって障害厚生年金の額が増えることはありません。

配偶者の加給年金額と支給停止

配偶者の加給年金額は、1級・2級の障害厚生年金を受ける方に、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。

障害厚生年金の受給権を得た後に結婚した場合も、結婚した月の翌月分から加算の対象になります(厚生年金保険法第50条の2第3項)。

一方、配偶者が老齢厚生年金(加入期間20年以上などのもの)を受け取る権利があるときや、障害年金を受けられる間は、加給年金額は支給停止されます。

令和4年4月以降は、配偶者が在職などで老齢厚生年金を受け取っていなくても、受け取る権利があれば支給停止の対象です(経過措置があります)。

なお、令和7年6月に公布された年金制度改正法により、2028年(令和10年)4月から、1級・2級の障害厚生年金にも子の加算が設けられます(e-Gov法令検索「厚生年金保険法」令和10年4月1日施行版の第50条の2第1項)。

3級は、この子の加算の対象に含まれません。

1級・2級の障害厚生年金と障害基礎年金を受けている方の場合、子の加算は障害厚生年金で行われ、障害基礎年金の同じ子の加算はその分が支給停止されるため、二重には加算されません(e-Gov法令検索「国民年金法」令和10年4月1日施行版の第33条の2第1項第2号)。

改正後の条文では、子の加算額は、子の人数にかかわらず1人につき同じ額とされています。

障害厚生年金の配偶者の加算は、現行の仕組みが維持されます(出典:厚生労働省「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要」)。

同じ資料に示されている子の加算額(年額281,700円)は2024年度価格のため、実際に適用される加算額や手続きは、施行時点の厚生労働省・日本年金機構の案内をご確認ください。

計算例と見込額の確認方法

次の条件で、令和8年度の額を試算してみます。

  • 昭和31年4月2日以後生まれ
  • 再評価後の平均標準報酬額が30万円
  • 加入期間はすべて平成15年4月以降で、加入月数は300月未満
  • 配偶者と子はいない(加算なし)
  • 従前額は考慮しない

この場合、加入月数を300月とみなすため、報酬比例の年金額は30万円×5.481/1000×300月で、493,290円です。

2級は、493,290円に障害基礎年金847,300円を加えた年額1,340,590円になります。

1級は、493,290円×1.25を端数処理した616,613円に、障害基礎年金1,059,125円を加えた年額1,675,738円になります。

3級は、493,290円が最低保障額を下回るため、年額635,500円になります。

障害手当金は、493,290円×2の986,580円が最低保障額を下回るため、1,271,000円になります。

実際の額は、加入期間中の報酬や生年月日、家族の状況によって変わります。

障害厚生年金(1級〜3級)の見込額のおおよその目安は、厚生労働省の公的年金シミュレーターで試算できます(障害手当金は対象外です)。

加入記録は「ねんきんネット」で確認できますが、同サービスの年金見込額試算は老齢基礎年金・老齢厚生年金が対象で、障害年金は対象外です。

個別の年金額については、お近くの年金事務所にご相談ください。

障害厚生年金3級の特徴と注意点

3級は障害厚生年金にだけある等級で、1級・2級とは扱いが異なる点があります。

3級で受給している方や、3級に該当する可能性がある方は、次の3点を確認しておきましょう。

障害基礎年金と加算がつかず、最低保障額がある

3級では障害基礎年金が支給されず、配偶者の加給年金額や子の加算額もありません。

2028年(令和10年)4月から障害厚生年金に設けられる子の加算も、1級・2級が対象で、3級は対象になりません。

その代わり、報酬比例の年金額が少ない場合に備えて、最低保障額(令和8年度は年額635,500円。昭和31年4月1日以前生まれの方は633,700円)が設けられています。

国民年金保険料の法定免除は、2級以上の障害年金を受けている方などが対象です。

過去に2級以上に該当したことがなく、3級の障害厚生年金だけを受けている方は対象外です(障害年金の受給者が国民年金を免除(法定免除)すべき理由)。

障害年金生活者支援給付金も障害基礎年金を受けている方が対象のため、3級のみを受けている方は対象外です。

3級から2級への額改定請求は65歳まで

障害の状態が重くなった場合は、年金額の改定を請求できます(額改定請求)。

額改定請求は、原則として、年金を受ける権利が発生した日または障害の程度の診査を受けた日から1年を経過した日を過ぎてからでないと行えません。

障害の程度が増進したことが明らかな場合として省令に定められているときは、1年を待たずに請求できます。

3級の方には、次のような年齢の制限があります。

3級の障害厚生年金を受けている方(過去に支給事由を同じくする障害基礎年金の受給権を有していた方をのぞく)が65歳以上になったときは、年金額の改定の請求はできませんので、ご注意ください。

(日本年金機構「障害の程度が変わったとき」)

65歳になるまでに障害の状態が悪くなった場合の請求書は、65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります(日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」)。

手続きの詳細は、額改定請求とはをご覧ください。

障害の状態が軽くなったときの支給停止と失権

更新の診断書などにより3級にも該当しないと判断されると、年金は支給停止になります。

支給停止のまま、65歳に達したときと、3級にも該当しなくなってから3年を経過したときの、いずれか遅いほうで受給権がなくなります(厚生年金保険法第53条)。

受給権がなくなる前に再び障害の状態が重くなった場合は、「老齢・障害給付 受給権者支給停止事由消滅届」で支給の再開を求めることができます。

3級で受給するときの注意点は、「障害年金のデメリットは?」でも整理しています。

障害厚生年金とほかの年金・給付との関係

会社員や公務員だった方は、障害厚生年金のほかに、老齢年金や健康保険の傷病手当金を受けられる場合があります。

同じ時期に複数の給付を受けられるときの、主な調整の仕組みを説明します。

65歳以降に老齢年金も受けられるとき

公的年金では、支給事由(老齢・障害・遺族)が異なる2つ以上の年金を受けられるとき、原則としていずれか1つを選びます。

ただし、障害厚生年金を受けている方が老齢年金も受けられるようになると、65歳以降は次のいずれかの組み合わせを選べます。

  • 障害基礎年金+障害厚生年金
  • 障害基礎年金+老齢厚生年金
  • 老齢基礎年金+老齢厚生年金

「老齢基礎年金+障害厚生年金」の組み合わせは選べません。

そのため3級の方は、障害厚生年金(3級)と、老齢基礎年金+老齢厚生年金のどちらかを選ぶことになります。

選ぶときは「年金受給選択申出書」を提出します。

遺族厚生年金を受けられる方は、障害基礎年金+遺族厚生年金の組み合わせを選ぶこともできます。

詳しくは障害年金受給中の老後の年金をご覧ください。

傷病手当金・労災保険との調整

同じ傷病で健康保険の傷病手当金と障害厚生年金を受けられるときは、傷病手当金の額が調整されます(健康保険法第108条)。

年金の額のほうが多い場合は傷病手当金が支給されず、傷病手当金のほうが多い場合は差額が支給されます。

同じ傷病で障害基礎年金も受けられる場合は、障害厚生年金と障害基礎年金の合計額で比べます。

年金がさかのぼって支給され、傷病手当金を受けた期間と重なった場合は、受け取った傷病手当金の返金を求められることがあります。

調整の詳細は、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)にご確認ください。

同じ傷病で労災保険の障害給付を受ける場合は、障害厚生年金は減額されず、労災保険の給付の一部が減額される場合があります。

同じ傷病で労働基準法による障害補償を受ける権利を得たときは、障害厚生年金は6年間支給停止されます(厚生年金保険法第54条)。

傷病手当金との違いは、傷病手当金とはで解説しています。

本人の所得による支給制限はありません

障害厚生年金には、本人の所得による支給制限はありません。

所得による支給制限があるのは、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある方の障害基礎年金です。

賃金と年金額に応じて年金が支給停止される在職老齢年金の仕組みも、老齢厚生年金を対象としたものです(厚生年金保険法第46条)。

ただし、等級の審査では、障害の種類によって就労の状況も考慮されます。

所得制限は「障害年金に所得制限はありますか?」、精神の障害で働きながらの受給は「障害年金2級(精神疾患)でどれくらい働ける?」もご覧ください。

障害厚生年金の請求方法と請求先

請求方法は、障害の状態に該当した時期によって2つに分かれます。

あわせて、請求先と主な必要書類を説明します。

障害認定日による請求と事後重症による請求

日本年金機構は、2つの請求方法を次のように説明しています。

1.障害認定日による請求

障害認定日に法令に定める障害の状態にあるときは、障害認定日の翌月分から年金を受給できます。

なお、請求書は障害認定日以降、いつでも請求できますが、遡及して受けられる年金は、時効により、5年分が限度です。

2.事後重症による請求

障害認定日に法令に定める障害の状態に該当しなかった方でも、その後症状が悪化し、法令に定める障害の状態になったときには請求日の翌月から障害年金を受給できます。

ただし、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。

なお、請求した日の翌月分から受け取りとなるため、請求が遅くなると年金の受給開始時期が遅くなります。

(日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」)

事後重症による請求ではさかのぼっての支給はなく、老齢年金の繰上げ受給を請求した後は、事後重症による請求ができなくなります。

繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができません。(治療中の病気や持病がある方は注意してください。)

(日本年金機構「年金の繰上げ受給」)

それぞれの請求方法は、障害年金の遡及(そきゅう)請求とはと事後重症請求とはで解説しています。

請求先と年金請求書

請求書は「年金請求書(国民年金・厚生年金保険障害給付)様式第104号」です。

提出先はお近くの年金事務所または街角の年金相談センターで、電子申請もできます。

なお、障害基礎年金だけを請求する場合は、様式第107号の年金請求書を使います。

初診日に共済組合等に加入していた方は、原則として、その共済組合等が請求先です。

ただし、初診日の後に別の公務員共済組合へ異動した方などは、請求先が異なる場合があります。

たとえば公立学校共済組合は、初診日が同組合の加入期間中にあっても、障害認定日または事後重症による請求日に他の公務員共済組合に加入していた場合は、その当時加入していた共済組合に問い合わせるよう案内しています(公立学校共済組合「年金Q&A」)。

該当する方は、加入していた共済組合にご確認ください。

主な必要書類

主な必要書類は次のとおりです。

  • 医師の診断書(必要な現症日は、請求方法によって異なります)
  • 受診状況等証明書(初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合)
  • 病歴・就労状況等申立書
  • 戸籍謄本・住民票など生年月日を明らかにできる書類(単身の方は、マイナンバーの登録または記入により原則として添付不要。共済組合等に提出する場合は別に必要になることがあります)
  • 受取先金融機関の通帳など(本人名義。公金受取口座を利用する場合は、通帳等のコピーは不要)

診断書に記載する障害の状態の時点(現症日)は、請求方法によって次のように異なります。

請求方法必要な診断書
障害認定日による請求障害認定日より3か月以内の現症のもの
障害認定日による請求で、障害認定日と請求日が1年以上離れている場合上記に加え、請求日前3か月以内の現症のもの
事後重症による請求請求日前3か月以内の現症のもの

事後重症による請求では、障害認定日当時ではなく、請求日前3か月以内の現症の診断書を提出します(日本年金機構「かけはし」第96号)。

診断書を依頼する前に、請求方法と必要な現症日を年金事務所等でご確認ください。

配偶者や子がいる方は、続柄や生計維持関係を確認する書類(戸籍謄本・世帯全員の住民票・収入が確認できる書類など)も必要です。

これらの書類は、マイナンバーを記入することで省略できるものもあります。

書類の詳細は障害年金の必要書類一覧、診断書は障害年金の診断書とは、申立書は「病歴・就労状況等申立書」の書き方をご覧ください。

請求から受給までの全体の流れは、障害年金の申請から受給までの流れで確認できます。

障害厚生年金のよくあるご質問

よくいただくご質問に、本文の内容をふまえてお答えします。

Q:会社を辞めた後でも、障害厚生年金を請求できますか?

初診日に厚生年金保険に加入していれば、請求する時点で退職していても請求できます。

ただし、退職した後に初診日がある場合は障害厚生年金の対象にならず、国民年金の加入期間などに初診日があれば障害基礎年金の対象になります。

Q:障害厚生年金は月額いくらもらえますか?

年金額は報酬比例のため、加入期間中の報酬などによって人それぞれ異なります。

本記事の計算例(2級・加算なし)では年額1,340,590円で、12で割ると月あたり約11万2千円です。

年金は、原則として偶数月の15日に、前月までの2か月分が支払われます。

Q:障害厚生年金3級はいつまで受け取れますか?

受給を終える年齢の決まりはありません。

有期認定の方は、指定された時期に障害状態確認届(診断書)を提出し、引き続き3級以上に該当するかが確認されます。

3級にも該当しなくなった場合は支給停止となり、65歳に達したときと、該当しなくなってから3年を経過したときのいずれか遅いほうで受給権がなくなります。

更新の手続きは、障害年金の更新で解説しています。

Q:障害厚生年金を受け取ると、老齢年金はどうなりますか?

障害厚生年金を受けていても、老齢年金の受給資格を満たしていれば、65歳から老齢年金も受けられるようになります。

65歳以降は、障害年金と老齢年金を含む組み合わせから、受け取る年金を選びます。

受給中に厚生年金保険に加入して働いた期間は、老齢厚生年金の計算の対象になります。

障害厚生年金の受給事例

当事務所がサポートした、障害厚生年金の受給事例を紹介します。

以下は当法人が関与した個別の事例であり、認定の一般的な基準を示すものではありません。

働きながら受給した方や、初診日の証明に苦労した方の事例もあります。

※個別事案により判断は異なります。

まとめ

本記事のポイントは次のとおりです。

  • 初診日に厚生年金保険に加入していた方が対象で、退職した後でも請求できる
  • 1級・2級は障害基礎年金に上乗せされ、3級は障害厚生年金のみ(65歳以上で老齢基礎年金などを受ける権利がある方は、1級・2級でも障害厚生年金のみとなる場合がある)
  • 年金額は報酬比例で、300月みなしと1級の1.25倍があり、3級(障害基礎年金が支給されない1級・2級を含む)と障害手当金には最低保障額がある
  • 3級は加算がなく、3級のみを受けてきた方の額改定請求は65歳になるまで
  • 請求方法は、障害認定日による請求(さかのぼりは5年分まで)と事後重症による請求(65歳の誕生日の前々日まで)の2つ

初診日や保険料納付要件の確認で迷われている方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にご相談ください。


※本記事は2026年10月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。

法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。

個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。

医学的判断は主治医にご確認ください。

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