はじめに
双極性障害の治療を続けながら働いている方から、「仕事をしているから障害年金は無理だと思っていた」というお声をいただくことがあります。
躁とうつの波があると、調子のよい時期には働けても、悪い時期には出勤できない日が続くこともあります。
障害年金の審査では、働いているかどうかだけで結論が出るわけではありません。
本記事では、障害認定基準・等級判定ガイドライン・診断書の記載要領の原文をもとに、双極性障害で働いている方の審査の見方を整理します。
あわせて、診断書や病歴・就労状況等申立書の準備、会社員・パートの方が確認しておきたい制度の注意点、当事務所の受給事例をご紹介します。
双極性障害で働いていても障害年金を受給できる可能性はあります
働いていることを理由に障害年金を請求できない、という決まりはありません。
審査では、働いている事実だけでなく、働き方の実態が確認されます。
「働いていること」だけでは判断されません
日本年金機構が公開している診断書(精神の障害用)の記載要領は、診断書の「現症時の就労状況」欄について、次のように説明しています。
就労している事実だけで、障害年金の支給決定が判断されることはありません。
(障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領)
障害認定基準も、精神の障害の認定要領で次のように定めています。
日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
(障害認定基準〔令和4年4月1日改正版〕第3第1章第8節「精神の障害」 認定要領A(3))
確認されるのは「働いているか」ではなく、「どのように働いているか」です。
当事務所でも、正社員として働きながら障害厚生年金3級が認められた事例などがあります(後半の「双極性障害で働きながら受給した事例」でご紹介します)。
等級ごとの障害の状態と「働けること」の関係
障害認定基準は、気分(感情)障害について、等級ごとの障害の状態を次のように例示しています。
| 等級 | 障害の状態(認定要領の例示) |
|---|---|
| 1級 | 高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの |
| 2級 | 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの |
| 3級(障害厚生年金のみ) | 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
3級の例示には「労働が制限を受けるもの」とあります。
働いていても、病状によって労働に制限を受けている状態であれば、3級に当たる可能性があります。
ただし、3級は障害厚生年金にだけある等級です。
障害基礎年金は1級・2級のみのため、初診日に厚生年金保険の被保険者でなかった方は、3級相当では障害年金を受け取れません(詳しくは後半で説明します)。
なお、実際の等級は、例示の文言だけで決まるものではありません。
診断書の「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」や就労状況などを含めて、総合的に判断されます。
双極性障害ならではの審査の見方
双極性障害は、障害認定基準では「気分(感情)障害」として扱われます。
この区分には、症状の現れ方に波があることを前提にした定めがあり、働けている時期の評価にも関わります。
ここでは、障害認定基準・等級判定ガイドライン・診断書の記載要領の3つの資料から、その定めを確認します。
「現症のみによって認定することは不十分」とされています
障害認定基準の精神の障害の認定要領には、気分(感情)障害について次の規定があります。
気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。
(障害認定基準〔令和4年4月1日改正版〕第3第1章第8節「精神の障害」 認定要領A(2)イ)
「現症」とは、診断書に記載される時点の障害の状態のことです。
調子のよい時期に診断書が作成され、その時期には働けていたとしても、その時点だけで判断するのではなく、それまでの経過と生活の状態を考慮するという定めです。
等級判定ガイドラインの気分(感情)障害の考慮要素
平成28年9月から実施されている、厚生労働省の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、総合評価の際に考慮すべき要素の例を示しています。
その〔表2〕①「現在の病状又は状態像」には、気分(感情)障害について次の記載があります。
気分(感情)障害については、現在の症状だけでなく、症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況など)及びそれによる日常生活活動等の状態や予後の見通しを考慮する。
適切な治療を行っても症状が改善せずに、重篤なそうやうつの症状が長期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討する。
2つ目は「可能性を検討する」という書き方で、この状態であれば1級・2級になるという意味ではありません。
ガイドラインは、「考慮すべき要素の具体的な内容例では『2級の可能性を検討する』等と記載しているが、例示した内容だけが『2級』の該当条件ではないことに留意する」としています。
診断書は「現症日以前1年程度」の好転と増悪をふまえて書かれます
診断書の記載要領は、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の欄について、医師に次のように求めています。
診察時(来院時)の一時的な状態ではなく、現症日以前1年程度での障害状態の変動について、症状の好転と増悪の両方を勘案した上で、当てはまるものをご判断ください。
調子のよい日の状態でも、最も悪い時期の状態でもなく、1年程度の間の好転と増悪の両方をふまえて判断する、という考え方です。
精神障害者保健福祉手帳の診断書とは期間の定めが異なります(下の「よくあるご質問」で説明します)。
働いている場合に確認される「就労の実態」
働いている方の審査では、職場でどのような援助や配慮を受けているか、出勤が安定しているか、仕事以外の生活にどのような影響が出ているかが確認されます。
ここでは、障害認定基準と等級判定ガイドラインが挙げている確認の観点を順に見ていきます。
認定基準が挙げる確認項目
先ほどの認定要領A(3)は、働いている方について、療養状況を考慮するとともに、次の項目を「十分確認」するとしています。
- 仕事の種類
- 仕事の内容
- 就労状況
- 仕事場で受けている援助の内容
- 他の従業員との意思疎通の状況
たとえば、業務量や勤務時間の調整、体調が悪いときに休める配慮、上司による業務の確認などが「援助の内容」に当たります。
同じ「正社員」でも、こうした援助の有無によって、働き方の実態は大きく異なります。
精神障害の考慮要素4項目
等級判定ガイドラインの〔表2〕④「就労状況」には、精神障害について次の4つの考慮すべき要素が示されています。
- 安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
- 発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する。
- 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
- 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。
双極性障害の方では、病相期に欠勤や早退が重なる、休職と復職を繰り返している、発病前と同じ会社にいるが担当業務が変わった、といった状況がこれらの項目に関わります。
障害者雇用・福祉サービス・一般企業での就労の扱い
同じ〔表2〕④の共通事項には、就労やサービス利用の状況について次の記載があります。
表の1行目と2行目は、「相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する」という考慮要素の具体的な内容例です。
| 就労・サービス利用の状況 | ガイドラインの記載 |
|---|---|
| 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労 | 「1級または2級の可能性を検討する。」(就労移行支援についても同様) |
| 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労 | 「2級の可能性を検討する。」 |
| 一般企業(障害者雇用制度による就労を除く)での就労 | 「月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する。」 |
いずれも「可能性を検討する」対象として示された例であり、この区分に当てはまれば等級が決まるという意味ではありません。
なお、就労継続支援B型は雇用契約を結ばない福祉サービス、就労移行支援は就職に向けた訓練などを行う福祉サービスです。
働き方ごとの考え方は『「働きながら障害年金をもらえる人」をわかりやすくご説明します』、ガイドラインの就労状況の項全体は『【精神の障害に係る等級判定ガイドライン】「就労状況」を分かりやすく解説します』で解説しています。
援助や配慮がない場合に予想される状態と、仕事以外の場面
ガイドラインの共通事項には、次の2つの考慮要素もあります。
援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。
就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。
仕事のある日は帰宅後に寝込んでしまう、休日は家事ができないといった状況も、確認の対象になります。
申請のポイント(診断書・申立書)
働いている方の場合、職場での援助や欠勤の状況、仕事以外の生活への影響が書類に表れていないと、その事情が適切に評価されにくくなります。
診断書と病歴・就労状況等申立書は審査の中心となる資料です。
ここでは、それぞれに何が書かれるのかと、準備の際に意識したい点をまとめます。
診断書の「現症時の就労状況」欄に書かれる項目
診断書(精神の障害用)の⑩エ「現症時の就労状況」欄には、次の項目があります。
- 勤務先(一般企業・就労支援施設・その他)
- 雇用体系(障害者雇用・一般雇用・自営・その他)
- 勤続年数
- 仕事の頻度(週に・月に何日)
- ひと月の給与
- 仕事の内容
- 仕事場での援助の状況や意思疎通の状況
記載要領は、休職について次のように求めています。
現症日以前一年間に病気休暇または休職の期間がある場合は、「仕事場での援助の状況や意思疎通の状況」欄に、病気休暇や休職の時期(始期及び終期)及び就労復帰後の状況をできるだけ詳しく記入してください。
また、「仕事場の内外を問わず、就労を継続するために受けている日常の援助や配慮の状況も、できるだけ記入をお願いします」ともしています。
記載要領は、就労の有無を本人や家族などから聴きとって記入するよう医師に求めています。
本人や家族から主治医に伝わった情報が、この欄の記入のもとになります。
時期による生活と仕事の違いを主治医に伝える
診察の時間は限られているため、日々の生活や職場の様子をすべて口頭で伝えるのは難しいことがあります。
次のような内容をメモにまとめて主治医にお渡しする方法があります。
- 調子のよい時期と悪い時期それぞれの、出勤・欠勤・早退の状況
- 休職した時期(始まりと終わり)と、復職後の勤務の内容
- 職場で受けている配慮(勤務時間・業務量・休憩など)
- 仕事のある日の帰宅後と、休日の過ごし方
記載要領が求めているのは、好転と増悪の両方をふまえた判断です。
悪い時期だけを強調するのではなく、両方の時期の様子をありのままに伝えることが大切です。
診断書の内容や医学的な判断は主治医が行うものですので、メモは判断の材料としてお渡しください。
病歴・就労状況等申立書で就労の実態を書く
病歴・就労状況等申立書は、ご本人やご家族が作成できる書類です。
表面には発病から現在までの経過を期間ごとに書く欄があり、様式の注記は、受診していた期間・受診していなかった期間のどちらについても、日常生活状況や就労状況を記入するよう求めています。
裏面には、障害認定日頃と現在(請求日頃)のそれぞれについて、就労している場合に次の欄があります。
- 職種(仕事の内容)
- 通勤方法と通勤時間(片道)
- 出勤日数(障害認定日または請求日の前月・前々月)
- 仕事中や仕事が終わった時の身体の調子
休職中の場合は、裏面の「仕事をしていなかった(休職していた)理由」の欄で、該当する理由(ア〜オ)をすべて〇で囲みます。
裏面の1.(障害認定日頃)と2.(現在)は請求の方法に応じて記入し、障害認定日による請求で障害認定日と請求日が1年以上離れている場合は両方を記入します。
双極性障害の方では、病相期ごとに区切って、休職・復職の時期、欠勤の状況、職場の配慮、帰宅後の生活を書くと、時期による違いが伝わりやすくなります。
診断書の内容と食い違いがないかも確認しておきましょう。
書き方は『「病歴・就労状況等申立書」の書き方|記入例と自分で書く9つのコツ』で詳しく解説しています。
このほか、障害の程度を診査する医師が詳しい日常生活の状況を把握するために、「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」という文書で照会することがあります。
厚生労働省は、この照会文書について、ご本人や家族のほか「日常的にご本人と接していて生活状況をよく把握されている第三者(例えば地域や職場での支援者など)に記載していただくことも可能です」としています。
会社員・パートの方が確認しておきたい制度の注意点
働いている方には、加入している年金制度や健康保険、収入との関係など、確認しておきたい制度上の論点があります。
とくに初診日に加入していた制度は、3級で受け取れるかどうかに関わります。
ここでは、受給要件、収入、傷病手当金、更新、金額の決まり方の順に整理します。
初診日に加入していた制度で3級の有無が変わります
障害年金は、初診日(その病気で初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)に加入していた制度によって、受け取れる年金が決まります。
| 初診日がある期間 | 1級・2級 | 3級 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険の被保険者期間 | 障害基礎年金+障害厚生年金※ | 障害厚生年金のみ |
| 国民年金の加入期間(厚生年金保険の被保険者期間を除く) | 障害基礎年金 | 支給なし |
| 20歳前、または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で、年金制度に加入していない期間 | 障害基礎年金 | 支給なし |
※65歳以上で老齢基礎年金などを受ける権利がある方には、例外があります(次の段落で説明します)。
障害基礎年金の要件にいう「国民年金加入期間」には、厚生年金保険に加入している第2号被保険者の期間も含まれます。
ただし、65歳以上で老齢基礎年金などを受ける権利がある方は第2号被保険者から除かれるため、この場合は1級・2級であっても障害厚生年金のみとなることがあります。
また、老齢基礎年金を繰上げ請求した日以後は、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができません(日本年金機構「年金の繰上げ受給」)。
パートやアルバイトの方は、勤務先で厚生年金保険に加入していたかどうかで扱いが変わります。
初診日当時の加入記録は、年金事務所で確認できます。
あわせて、保険料の納付要件も確認が必要です。原則は、初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間を見ます。
その期間のうち、保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間などを含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることが求められます。
ただし、初診日が令和18年3月末日までのときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとされています。
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です(『障害年金をもらえる人|3つの受給要件をわかりやすく解説』)。
最初はうつ病などとして受診し、のちに双極性障害と診断された方もいらっしゃいます。
診断名が変わったというだけで、初診日が変わるわけではありません。
前後の傷病に相当因果関係があり同一の傷病と判断される場合に、変更前の傷病で最初に受診した日が初診日となります(『障害年金の「相当因果関係」とは|「初診日」との関係をわかりやすく解説します』)。
本人の所得による支給制限は、一部の障害基礎年金に限られます
本人の所得による支給制限があるのは、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金です。
前年の所得によって、2分の1または全額が支給停止となる場合があります(停止の期間は10月分から翌年9月分まで)。
それ以外の障害基礎年金と障害厚生年金には、本人の所得による支給制限はありません。
所得の基準は『障害年金に所得制限はありますか?』をご覧ください。
なお、障害基礎年金を受けている方に支給される「障害年金生活者支援給付金」は、前年の所得額が一定額以下であることが支給要件の一つです(日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」)。
休職中の傷病手当金との調整
健康保険の傷病手当金を受けている方が、同じ病気で障害厚生年金を受けられるようになると、傷病手当金は支給されません。
ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときは合算額)が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます(健康保険法第108条第3項)。
比べるときは、年金額を360で割った日額を使います。
過去に傷病手当金を受給した期間に対して、同一の病気やけがで障害厚生年金をさかのぼって受給できることとなった場合も、受給済みの傷病手当金が調整されます(日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」)。
調整されるのは傷病手当金の側で、障害年金が減らされるわけではありません。
障害基礎年金だけを受ける場合は、この調整の対象になりません。
共済組合にも同様の給付がありますので、加入先にご確認ください。
傷病手当金の仕組みは『傷病手当金とは|障害年金との違いをわかりやすく解説』で解説しています。
受給後も働き続ける・働き始める場合の更新
障害年金を受け取り始めた後に働き始めたり、勤務日数を増やしたりした場合も、そのことだけで直ちに支給が止まる仕組みではありません。
ただし、更新(再認定)のときに提出する障害状態確認届(診断書)にも就労状況の欄があり、その時点の働き方が確認されます。
更新の流れは『障害年金の更新|手続きの流れと支給停止を防ぐポイント』で解説しています。
金額の決まり方
年金額は、等級と初診日に加入していた制度によって計算方法が異なります。
障害基礎年金は、等級(1級・2級)と生年月日に応じた定額で、生計を維持されている子(18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子)がいる場合は子の加算があります。
障害厚生年金は、標準報酬額と被保険者期間をもとに計算する報酬比例の年金額で(被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなして計算)、1級はその1.25倍です。
1級・2級では、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に配偶者加給年金額が加算されます(配偶者が一定の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合や、障害年金を受けられる間は支給停止)。
3級には最低保障額があります。
具体的な金額は『双極性障害でもらえる障害年金の金額はいくら?』をご覧ください。
「働いているから」と不支給になったとき
働いている方が不支給の決定を受けた場合、まず決定の理由と、提出した書類に就労の実態が書かれていたかを確認します。
そのうえで、決定そのものに不服を申し立てるか、新たに請求し直すかを検討します。
どちらにも期限や支給開始の時期に関わる注意点があります。
就労状況が書類に十分に反映されていない場合
不支給の決定を受けたら、提出した診断書と申立書の控え(コピー)があれば見直してみてください。
職場で受けていた配慮、欠勤や休職の時期、帰宅後や休日の生活などが書かれていなかった場合、それらの事情が審査で適切に評価されにくかった可能性があります。
当初の決定が誤っていると考える場合は、審査請求を検討します。
審査請求では、証拠となる文書などを提出することができます(社会保険審査官及び社会保険審査会法第10条の3)。
審査の対象となった時期(障害認定日や請求日)の状態を裏づける資料があれば、審査請求の中で示すことができます。
その後に症状が悪化した場合などは、新たに請求し直す(再請求)ことも検討します。
再請求が事後重症による請求となる場合は、請求した月の翌月分からの支給となり、さかのぼっては支給されません。
請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があるため、不必要に期間を空けないことが大切です(『事後重症請求とは|はじめての人にも分かりやすく解説します』)。
なお、障害認定日による請求でさかのぼって受けられる年金は、時効により5年分が限度です。
審査請求・再請求という選択肢
審査請求は、決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、地方厚生局の社会保険審査官に対して行います(文書または口頭・日本年金機構「年金の決定に不服があるとき(審査請求)」)。
その決定にも不服がある場合は、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に、社会保険審査会に再審査請求ができます。
手続きの流れは『障害年金の「不服申立て(審査請求・再審査請求)」とは|はじめての人にも分かりやすく解説します』で解説しています。
双極性障害で働きながら受給した事例
当事務所がお手伝いした、双極性障害の方が働きながら障害年金を受給した事例をご紹介します。
いずれも個別の事例で、認定の一般的な基準を示すものではありません。
雇用形態や配慮の内容、生活の状況はそれぞれ異なります。
ご自身の状況に近い事例があれば、詳しいページもあわせてご覧ください。
正社員として働きながら障害厚生年金3級が認められた事例
男性・正社員の方です。月に10日ほどしか出勤できず、タクシー通勤の許可などの配慮を受けていた状況を申立書に詳しく記載し、診断書は主治医に実情をお伝えして加筆修正をお願いしました。
【事例544】双極性障害|障害厚生年金3級(正社員として就労している事例)(※個別事案により判断は異なります)
一般雇用・フルタイムで働きながら障害共済年金3級が認められた事例
ADHDと双極性感情障害のある男性で、一般雇用のフルタイム勤務です。
限られたメンバーでのシフトや都度休息をとれる配慮を受けており、就労の影響で家族の支援が欠かせない生活の状況を書類に反映しました。
【事例726】注意欠陥多動性障害(ADHD)・双極性感情障害|障害共済年金3級(正社員でフルタイムで働いている事例)(※個別事案により判断は異なります)
一人暮らしでパート勤務をしながら障害基礎年金2級が認められた事例
女性の方で、体調が悪いときは休ませてもらうなど職場の手厚い配慮のもとでパート勤務をしていました。
ご家族の理解が得られず一人暮らしをしている事情も、診断書に反映していただきました。
【事例397】双極性障害|障害基礎年金2級(一人暮らしで就労されている事例)(※個別事案により判断は異なります)
一般雇用で働き始めた後の更新で2級が継続した事例
障害基礎年金2級を受給中の女性で、初めての更新の約1年前から一般雇用で働き始めていました。
就労の状況と直近1年間の生活をまとめた資料を主治医にお渡しし、等級の変更なく更新が認められています。
【事例872】双極性障害|障害基礎年金2級(一般雇用で就労を始めた後の更新の事例)(※個別事案により判断は異なります)
※個別事案により判断は異なります。
上記は当法人が関与した個別の事例であり、認定の一般的な基準を示すものではありません。
よくあるご質問
双極性障害で働きながら障害年金を検討されている方から、よくいただくご質問にお答えします。
2級と働ける程度の関係、正社員・フルタイムの場合、障害者手帳を持っていない場合の3つを取り上げます。
あわせて、関連する解説ページもご案内します。
Q. 障害年金2級だと、どれくらい働けますか?
「2級なら週何日まで」といった基準は、障害認定基準にはありません。
2級の例示は、病相期があり、それが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため「日常生活が著しい制限を受けるもの」とされています。
働いている場合は、援助の内容や出勤の安定性などを含めて総合的に判断されます。
詳しくは『障害年金2級(精神疾患)でどれくらい働ける?』『障害年金2級で働いてはいけない?』をご覧ください。
Q. 正社員・フルタイムでも申請できますか?
申請できます。雇用形態によって請求が制限されることはありません。
一般企業での就労は、ガイドライン上も「月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する」とされています。
正社員やフルタイムで働きながら3級が認められた事例は、上の事例紹介をご覧ください。
Q. 障害者手帳がなくても申請できますか?
申請できます。障害年金と精神障害者保健福祉手帳は別の制度で、手帳を持っていることは障害年金の請求の要件ではありません。
等級もそれぞれの基準で判定されます。
手帳の診断書は、厚生労働省の通知により、「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」の欄を、現時点のみでなく、これまでおおむね2年間に認められ、おおむね今後2年間に予想される生活能力の状態も含めて判定する扱いです。
障害年金の診断書(現症日以前1年程度)とは期間の定めが異なります。
手帳の判定については『双極性障害で障害者手帳はもらえない?判定基準をわかりやすく解説』で解説しています。
まとめ
双極性障害で働いている方も、障害年金を受給できる可能性があります。
障害認定基準は、気分(感情)障害を現症のみで認定することは不十分とし、働いている方については、職場での援助や意思疎通の状況などを十分確認して判断するとしています。
申請では、調子のよい時期と悪い時期の両方の様子、休職の時期、職場の配慮、仕事以外の生活への影響を書類に反映することが大切です。
初診日に厚生年金保険の被保険者だったかどうかで3級の有無が変わる点もご確認ください。
双極性障害の障害年金全般は『双極性障害で障害年金はもらえる?認定基準と等級・申請のポイント』で解説しています。
障害年金申請のご相談は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年10月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。
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