双極性障害の症状で働くことが難しく、経済的な不安を抱えている方は少なくありません。「双極性障害で障害年金はもらえるのだろうか」と気になりながらも、制度が複雑で一歩を踏み出せないという声も多く聞かれます。双極性障害は障害年金の対象となる病気の一つで、要件を満たし一定の状態にある場合には受給できる可能性があります。本記事では、双極性障害と障害年金について、認定の考え方・初診日・等級と金額の目安・申請のポイント・もらえなかったときの選択肢を、順番に解説します。
目次
双極性障害とは(障害年金における位置づけ)
障害年金の審査では、双極性障害は「気分(感情)障害」として扱われます。ここでは治療法などの医学的な内容には踏み込まず、障害年金の認定基準のうえでどう位置づけられているかを整理します。
双極性障害は「気分(感情)障害」として認定の対象
双極性障害は、気分が高まる時期(躁・軽躁)と落ち込む時期(うつ)を繰り返す病気です。障害認定基準では「気分(感情)障害」に分類され、うつ病などと同じ枠組みで審査されます。
双極性障害には、激しい躁状態がみられるⅠ型と、軽い躁状態(軽躁)を伴うⅡ型があり、いずれも障害年金の対象になり得ます。Ⅱ型では躁の症状が比較的軽いため、うつ状態のときの生活への支障も含めて伝えることが大切です。診断名そのものよりも、症状によって日常生活や仕事にどの程度の支障が生じているかが重視されます。
症状の波があるという特性
双極性障害は、症状が強く出る時期と落ち着く時期を繰り返すという特性があります。障害認定基準でも、現在の状態(現症)だけで判断するのではなく、症状の経過と、それによる日常生活活動の状態を十分に考慮するとされています。
そのため、申請にあたっては「今の状態」だけでなく、これまでの経過を含めて伝えることが重要になります。
双極性障害で障害年金を受給できる可能性
双極性障害だからといって、自動的に障害年金が支給されるわけではありません。受給には3つの要件があり、そのうえで障害の状態が等級に該当するかが審査されます。ここでは受給の可能性を左右するポイントを整理します。
受給には3つの要件を満たす必要がある
双極性障害で障害年金を受給するには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 初診日要件:障害の原因となった傷病で初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(初診日)が特定できること。初診日にどの年金制度に該当していたか(国民年金・厚生年金など)によって、受給できる年金の種類が決まります。
- 保険料納付要件:初診日の前日時点で、一定期間の保険料を納めている(または免除されている)こと。
- 障害状態要件:障害認定日(原則、初診日から1年6か月を経過した日。1年6か月以内に症状が固定した場合はその日)などの時点で、障害の状態が定められた等級に該当すること。
これらの要件の詳細は <a href="/jukyu-joken/" target="_blank" rel="noopener">障害年金の受給要件</a> で解説しています。保険料納付要件には、初診日が令和18年(2036年)3月末日までにある場合等の特例もあります。
どのような状態が認定されやすいか(傾向)
障害の程度は、診断書の傷病名だけでなく、日常生活能力・就労状況・症状の経過などを総合して判断されます。精神障害・知的障害については「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が定められており、診断書裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」をもとに、等級の目安が示されています。
一般的には、日常生活に著しい制限がある状態は2級程度、労働に著しい制限がある状態は3級程度(障害厚生年金の場合)と判断される傾向があります。ただし、これはあくまで目安であり、最終的な判断は日本年金機構の認定医によります。
双極性障害の初診日の考え方
双極性障害は、最初に「うつ病」などと診断され、後から診断名が変わることが少なくありません。このため初診日がいつになるかは、受給を左右する重要な論点です。ここでは初診日の考え方を整理します。
うつ病から診断名が変わった場合の初診日
双極性障害は、うつ状態で最初に受診し、その後に躁状態が現れて診断名が変わるという経過をたどることがあります。この場合、診断名が変わったというだけで初診日が変わるわけではありません。前後の傷病に相当因果関係があり、医学的に同一の傷病(一連の病態)と判断される場合には、変更前の傷病で最初に受診した日が初診日となります。
気分(感情)障害の範囲内での診断名の変更は、同一傷病として取り扱われることが多いものの、最終的には個別に判断されます。相当因果関係の考え方は <a href="/sotoingakankei/" target="_blank" rel="noopener">相当因果関係とは</a> で詳しく説明しています。
不眠・頭痛などで内科を先に受診していた場合
双極性障害では、不眠や頭痛などの症状で先に内科などを受診し、その後に精神科・心療内科で診断されるケースもあります。この場合、精神科を受診した日ではなく、最初に内科などを受診した日が初診日となることがあります。
初診日は受給できる年金の種類や要件を左右する重要な情報のため、初診の医療機関の証明(受診状況等証明書)で確認するのが原則です。
受給できる場合の等級と年金額の目安(令和8年度)
受給が認められた場合、等級に応じて年金額が決まります。年金額は毎年改定されるため、ここでは令和8年度(2026年度)の水準を前提に、目安として整理します。
等級の目安(1級・2級・3級)
障害年金は、初診日に加入していた年金制度によって受給できる種類が異なります。
- 障害基礎年金(初診日に国民年金):1級・2級
- 障害厚生年金(初診日に厚生年金):1級・2級・3級+障害手当金(一時金)
3級は障害厚生年金のみにある等級です。初診日に国民年金に加入していた方や、20歳前の年金未加入期間に初診日がある方は、1級または2級に該当しないと障害年金は支給されません。なお、20歳前の年金未加入期間に初診日がある場合の障害基礎年金には、保険料納付が不要な代わりに本人の前年所得による支給制限があり、扶養親族がいない場合は前年所得が3,761,000円を超えると2分の1、4,794,000円を超えると全額が支給停止となります(令和8年度・10月分から翌年9月分まで)。
一方、初診日が厚生年金加入中で1級・2級に該当する場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金(報酬比例部分)が上乗せされます。
年金額の目安と確認先
令和8年度(2026年度)の障害基礎年金は、2級が年額847,300円(月額70,608円)、1級はその1.25倍の年額1,059,125円(月額88,260円)です(昭和31年4月2日以後生まれの場合。昭和31年4月1日以前生まれは2級844,900円・1級1,056,125円)。これに加えて、要件を満たす場合は次の加算・給付があります。
- 子の加算(18歳到達年度末までの子。障害等級1・2級の場合は20歳未満の子)
- 配偶者加給年金額(障害厚生年金1・2級で、生計を維持される65歳未満の配偶者がいる場合。なお、配偶者が老齢厚生年金(加入期間20年以上等)や障害年金を受けられる間は支給停止となります)
- 年金生活者支援給付金(障害等級2級以上が対象。令和8年度は1級が月額7,025円、2級が月額5,620円)
障害厚生年金の報酬比例部分は、加入期間や過去の報酬により異なります。具体的な金額は <a href="/faq/sokyokuseishogai-kingaku/" target="_blank" rel="noopener">双極性障害でもらえる障害年金の金額</a>、および <a href="/faq/2026-shogainenkin-kingaku/" target="_blank" rel="noopener">令和8年度(2026年度)の障害年金額</a> で確認できます。
申請のポイントと診断書作成の留意点
双極性障害は症状に波があるため、申請のタイミングや書類の内容が結果に影響しやすい傷病です。ここでは、医学的判断には立ち入らず、形式面・実務面のポイントを整理します。
診断書で押さえたい点
双極性障害の申請では「精神の障害用」の診断書を使用します。審査では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」(食事・清潔保持・金銭管理など7項目)と「日常生活能力の程度」が特に重視されます。「日常生活能力の判定」は、単身で生活した場合を想定して医師が記載することになっています。
診察の場では実際より元気に振る舞ってしまい、生活上の支障が十分に伝わらないこともあります。普段の状態や、躁状態のときの行動も含めて、主治医に率直に伝えることが大切です。診断書の詳しい考え方は <a href="/shogainenkin-shindansho/" target="_blank" rel="noopener">障害年金は診断書で9割が決まる</a> をご覧ください。
なお、障害認定日による請求で、認定日と請求日が1年以上離れている場合は、認定日後3か月以内と請求日前3か月以内の2通の診断書が必要になります。
病歴・就労状況等申立書のポイント
病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの病歴・就労状況・日常生活の支障を時系列で記載する書類で、診断書を補う重要な役割を持ちます。双極性障害では、うつ状態と躁状態それぞれの支障を整理して書くことがポイントです。
働いている場合は、就労継続支援や障害者雇用の利用、職場の配慮の有無など、どのような状況で働いているかを具体的に記載します。書き方は <a href="/byoreki-shurojokyo-moshitatesho/" target="_blank" rel="noopener">病歴・就労状況等申立書の書き方</a> で解説しています。
「もらえない」「不支給だった」ときの選択肢
双極性障害は症状が外から分かりにくく、申請が思うように通らないこともあります。ここでは、通りにくくなる背景と、不支給だった場合の選択肢を冷静に整理します。
通りにくくなる主な理由(傾向)
双極性障害で申請が通りにくくなる背景には、いくつかの傾向があります。
- 症状の落ち着いた時期に診断書を作成し、生活上の支障が反映されにくい
- 就労している事実だけが先に見られ、就労の実態(配慮・欠勤など)が伝わりにくい
- 初診日を特定できる資料がそろわない
これらは病気が軽いということではなく、状態が書類に反映されにくいことが要因になりやすい、という整理です。受給が難しくなりやすいケース全般は <a href="/shogainenkin-moraenai/" target="_blank" rel="noopener">障害年金をもらえない人</a> でも解説しています。
審査請求・再請求の使い分け
申請の結果に対する対応は、目的によって異なります。
- 当初の決定そのものに不服がある場合:審査請求(決定があったことを知った日の翌日から3か月以内)を行い、認められなければ再審査請求(決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内)に進む方法があります。手続きの詳細は <a href="/fufukumoshitate/" target="_blank" rel="noopener">障害年金の不服申立て(審査請求・再審査請求)</a> をご覧ください。
- 症状が悪化した場合:不必要に時間を空けず、事後重症請求を検討します。事後重症請求は請求した月の翌月分からの支給で、過去にさかのぼっての支給はありません。
期限や手続きの判断は専門的なため、迷う場合は早めにご相談ください。
双極性障害で障害年金を受給した事例
弊事務所(全国障害年金サポートセンター)では、双極性障害の方の障害年金申請を多く手がけてきました。状況はさまざまで、たとえば次のような事例があります。
- 厚生年金加入中に初診があり、障害認定日による請求で2級が認められたケース
- 初診日が古く、社会的治癒が認められて障害基礎年金2級となったケース
- 正社員として就労しながら、就労の実態が考慮され3級が認められたケース
- 一度ご自身で申請して不支給となった後、書類を整え直して認められたケース
※個別事案により判断は異なります。
双極性障害の障害年金に関するよくあるご質問
双極性障害と障害年金について、特によく寄せられる質問にお答えします。詳しい解説は、それぞれの関連記事もあわせてご覧ください。
Q. 双極性障害ではいくらもらえますか?
等級と加入していた年金制度によって異なります。金額の目安は <a href="/faq/sokyokuseishogai-kingaku/" target="_blank" rel="noopener">双極性障害でもらえる障害年金の金額</a> で確認できます。
Q. 2級ではどれくらい働けますか?
就労の状況は審査に影響しますが、配慮を受けながら働いているケースなどでは認定される例もあります。詳しくは <a href="/faq/2kyu-dorekurai-hatarakeru/" target="_blank" rel="noopener">障害年金2級でどれくらい働ける?</a> をご覧ください。
Q. 働きながらでも受給できますか?
働きながら受給している方もいます。考え方は <a href="/shurou-shougainenkin/" target="_blank" rel="noopener">働きながら障害年金をもらえる人</a> で解説しています。
Q. うつ病や統合失調症とは扱いが違いますか?
いずれも精神の障害として審査されます。うつ病は <a href="/faq/utsu-3kyu-kingaku/" target="_blank" rel="noopener">うつ病3級の障害年金</a>、統合失調症は <a href="/faq/togoshicchosho-kingaku/" target="_blank" rel="noopener">統合失調症の障害年金</a> を参照ください。
まとめ
双極性障害は「気分(感情)障害」として障害年金の対象となり、要件を満たし一定の状態にある場合には受給できる可能性があります。診断名だけでなく、日常生活能力・就労状況・症状の経過を総合して判断される点、うつ病からの診断名変更では相当因果関係に基づき初診日が判断される点が大きなポイントです。もし不支給となっても、審査請求や再請求といった選択肢があります。
症状の波があるからこそ、状態を正確に伝える準備が大切になります。
障害年金申請のご相談は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年6月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。年金額は <a href="https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html" target="_blank" rel="noopener">日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」</a>、20歳前傷病の所得制限は <a href="https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20200805.html" target="_blank" rel="noopener">日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」</a>、等級判定ガイドラインは厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に基づきます。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は <a href="https://www.nenkin.go.jp/" target="_blank" rel="noopener">日本年金機構の公式サイト</a> 等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

