うつ病で障害年金を受給するには?申請のポイント

うつ病で日常生活や就労が思うようにいかず、経済的な不安を抱えていらっしゃる方は少なくありません。

「障害年金という制度があるらしいけれど、自分はもらえるのだろうか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

うつ病は障害年金の対象となる疾病で、所定の要件を満たせば受給できる可能性があります。

本記事では、うつ病で障害年金を受給するための 3つの要件、障害認定基準と等級判定の仕組み、令和8年度(2026年度)の年金額、診断書・申立書の準備ポイント、不支給になりやすいケースまで、申請をご検討の方が知っておきたい情報を順に解説します。

うつ病と障害年金の関係

うつ病は障害年金の対象となる代表的な疾病のひとつで、障害認定基準上は「気分(感情)障害」に分類されます。

一方で、適応障害やパニック障害といった「神経症圏」の傷病は原則として対象外とされており、診断書に記載される傷病名が認定の前提として大きな意味を持ちます。

うつ病は障害年金の対象となる病気

うつ病は、抑うつ気分や意欲・行動の障害、思考障害などにより、日常生活や労働に大きな制限が生じる疾患です。

障害年金の世界では、これらの症状の重さや経過、日常生活への影響を総合して認定が行われます。

国民年金法および厚生年金保険法に基づき、所定の障害の状態に該当すると認められた場合、障害基礎年金または障害厚生年金が支給 されます。

障害者手帳の有無は要件ではありません。

「気分(感情)障害」と「神経症圏」の区別

障害認定基準では、うつ病・双極性障害などの 気分(感情)障害は認定対象 とされる一方、適応障害・パニック障害・不安障害・強迫性障害などの神経症は原則として認定対象外 と位置づけられています。

ただし、神経症圏の傷病であっても、診断書上「精神病の病態を示している」と判断される場合には、統合失調症または気分障害に準じて取り扱われる場合があります。

診断書の傷病名は重要な要素ですが、最終的には症状・経過・日常生活状況などを含めて総合的に判断されます。

うつ病で障害年金を受給するための3つの要件

うつ病で障害年金を受給するためには、「初診日要件」「保険料納付要件」「障害認定基準該当」 の3つの要件をすべて満たしている必要があります。

いずれか1つでも欠けると、症状の重さにかかわらず受給できません。

初診日要件

初診日 とは、障害の原因となった傷病で初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。

うつ病の場合、不眠や気分の落ち込みなどで最初に医療機関を受診した日が該当することが一般的です。

初診日に 厚生年金加入中 であれば障害厚生年金の対象となり、1級・2級では障害基礎年金も併せて対象となります。

国民年金加入中、20歳前、または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間 に初診日がある場合は、障害基礎年金の対象となります。

うつ病は長期に複数の医療機関を受診しているケースも多く、初診日の特定・証明 が申請の最初の関門となります。

保険料納付要件

初診日の前日において、初診日のある月の前々月までに、次のいずれかの保険料納付要件を満たしている必要があります。

  • 原則(3分の2要件):被保険者期間のうち保険料納付済期間と免除期間を合算した期間が3分の2以上あること
  • 特例(直近1年要件):初診日が 令和18年(2036年)3月末日まで にあり、かつ初診日において65歳未満であれば、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

なお、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われません(20歳前傷病による障害基礎年金)。

障害認定基準該当

障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月経過した日、またはその期間内に症状が固定した日)時点で、障害認定基準上の等級に該当している必要があります。

障害認定日時点で該当しない場合でも、その後症状が悪化して認定基準に該当するに至れば、事後重症請求(原則として65歳の誕生日の前々日までに請求が必要)により受給を目指すことができます。

詳しくは 障害年金を受け取るための条件とは もあわせてご覧ください。

うつ病の障害認定基準と等級判定

うつ病の障害等級は、障害認定基準(国民年金・厚生年金保険障害認定基準)の「気分(感情)障害」の項に基づき、症状の重さ・経過・日常生活への影響を 総合判断 して決定されます。

診断書1枚の現症だけでなく、症状の経過や日常生活活動の状態を十分に考慮するのが特徴です。

障害認定基準(等級ごとの状態)

うつ病の等級認定の基準は、おおむね次のとおりです。

等級状態
1級気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの(障害厚生年金のみ)

(出典:厚生労働省「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」第8節/精神の障害)

3級は 障害厚生年金にのみ 設けられている等級です。初診日に国民年金加入中だった方は、1級または2級に該当しないと障害年金は支給されません。

精神の障害に係る等級判定ガイドライン

うつ病を含む精神の障害の認定では、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月1日実施)に基づき、診断書(精神の障害用)の裏面に記載される「日常生活能力の判定」(7項目の平均値)と「日常生活能力の程度」(5段階)の組み合わせから等級の 目安 が示されます。

このガイドラインは、地域による不支給率の差を是正することを主な目的として導入されたものです。

「日常生活能力の判定」では、次の7項目について4段階で評価されます。

  1. 適切な食事
  2. 身辺の清潔保持
  3. 金銭管理と買い物
  4. 通院と服薬
  5. 他人との意思伝達及び対人関係
  6. 身辺の安全保持及び危機対応
  7. 社会性

これらの平均値と「日常生活能力の程度」(5段階評価)を組み合わせて等級の目安が決まり、最終的には次に述べる総合評価で判定されます。

(出典:厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」平成28年9月1日実施)

総合評価で考慮される要素

ガイドラインの目安はあくまで参考であり、最終的な等級は 総合評価 によって決定されます。

具体的には、以下のような要素が考慮されます。

  • 現在の病状および状態像
  • 療養状況(通院・服薬の状況、治療への反応等)
  • 生活環境(単身か家族と同居か、援助の有無等)
  • 就労状況(就労形態、配慮の有無、勤続年数等)
  • その他(発病からの経過、年齢、職歴等)

診断書の記載と申立書の内容が整合し、ガイドラインの目安と矛盾しない申請であることが、認定上重要なポイントとなります。

うつ病の障害年金でもらえる金額(令和8年度)

障害年金の年金額は毎年4月分から改定されます。本記事では 令和8年度(2026年度) の金額をご紹介します。

年度別の詳細は 【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額 もあわせてご覧ください。

等級別の年金額(令和8年度)

令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の主な障害年金額は次のとおりです。

等級障害基礎年金(年額)障害厚生年金(報酬比例部分・1〜2級は障害基礎年金に上乗せ)月額の目安
1級1,059,125円報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者加給年金(該当時)障害基礎年金のみで月額約88,260円
2級847,300円報酬比例の年金額 + 配偶者加給年金(該当時)障害基礎年金のみで月額約70,608円
3級(支給なし)報酬比例の年金額(最低保障額 635,500円)約52,958円(最低保障額)
障害手当金(一時金)(支給なし)報酬比例の年金額 × 2(最低保障額 1,271,000円)一時金として1回限り

(出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」令和8年1月23日発表)

なお、本表は昭和31年4月2日以後生まれの方の金額です。初診日に厚生年金加入中で1級または2級に該当する方の総額イメージ は次のとおりです。

  • 1級:障害基礎年金1級 1,059,125円 + 子の加算(該当時) + 報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者加給年金 243,800円(該当時)
  • 2級:障害基礎年金2級 847,300円 + 子の加算(該当時) + 報酬比例の年金額 + 配偶者加給年金 243,800円(該当時)

子の加算・配偶者加給年金

障害基礎年金を受け取る方に生計を維持されている子がいる場合、子の加算 が付きます。

ここでいう「子」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または 20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子 をいいます。

対象加算額(年額・令和8年度)
子1人目・2人目(1人につき)243,800円
子3人目以降(1人につき)81,300円

また、障害厚生年金1級・2級を受給する方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金額 年額243,800円(令和8年度) が加算されます。

ただし、配偶者が一定の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上等)や障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額が支給停止される場合があります。

障害年金生活者支援給付金

障害基礎年金を受給している方で前年の所得が一定額以下の場合、障害年金生活者支援給付金 が上乗せ支給されます。

令和8年度の月額は、1級 7,025円、2級 5,620円 です。障害年金とは別の請求手続きが必要です。

うつ病で申請する場合のポイント(診断書・申立書)

うつ病の障害年金請求では、診断書と病歴・就労状況等申立書の 内容の整合性 がきわめて重要です。

書類のどこに何を記載するかによって、認定結果が大きく変わることがあります。

「精神の障害用」診断書の作成依頼で意識したいこと

うつ病の場合は 「精神の障害用」診断書(様式第120号の4) を使用します。

診断書は主治医が作成するものですが、ご自身の日常生活の困りごとを正確に伝えなければ、実態より軽い内容で作成されてしまうことがあります。

  • 診察時に伝えきれない症状や日常生活の状況は、メモを用意して主治医にお渡しすることが有効です
  • 「日常生活能力の判定」7項目について、ご家族や支援者のサポートがなければ困難な点を漏れなく伝えることが大切です
  • 「自分でできる」と過小申告しがち な傾向があるため、客観的に状況を整理する意識が求められます

医学的な判断は主治医とご相談のうえお願いしていただく形になります。診断書の 形式面・記載漏れ のチェックは、社会保険労務士の専門領域です。

より詳しくは 障害年金の申請は「診断書」で9割が決まる!? もご参照ください。

病歴・就労状況等申立書の書き方

病歴・就労状況等申立書 は、発症から現在までの病歴・治療経過・日常生活・就労状況を、ご本人またはご家族が時系列で記載する書類です。

診断書を補強する役割を担います。

  • 発症から現在まで、おおむね3〜5年ごとに区切って具体的なエピソードを記載します
  • 通院の中断・再開、転職・休職・退職、家事や対人関係への影響を時系列で示します
  • 診断書の内容と矛盾しないことが重要です(例:診断書で「重度」とされている期間に「普通に生活できていた」と書かない)

書き方の詳細は 【自分で書ける】病歴・就労状況等申立書の書き方 をご覧ください。

なお、令和7年6月1日施行の様式変更により、「障害給付 請求事由確認書」は独立した書類としては統合 され、年金請求書本体(障害基礎年金は様式第107号、障害厚生年金・障害手当金は様式第104号)の「事後重症請求に関する確認事項」欄に組み込まれています。

最新の様式・記載要領は、日本年金機構の公式案内でご確認ください。

うつ病で「もらえない」と言われるケース・不支給になる理由

うつ病で障害年金を申請しても、結果が不支給となる場合があります。

不支給に至る主なパターンを整理しておくと、申請前の準備で対策できる部分が少なくありません。

神経症圏の病名(適応障害・パニック障害等)で診断書が作成された場合

診断書の傷病名が「適応障害」「パニック障害」「不安障害」「強迫性障害」など 神経症圏の傷病名 で作成された場合、原則として障害年金の対象外となります。

ただし、神経症圏の傷病であっても、診断書に記載された症状・状態像から 精神病の病態を示していると判断される場合 には、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱われることがあります。診断書には傷病名だけでなく、症状や状態像を具体的に記載してもらうことが重要です。

ご自身では「うつ病」と思っていても、診断書上の傷病名が異なるケースが少なくないため、申請前に主治医に診断書上の傷病名を確認 することが望ましいでしょう。

就労していると必ず不支給?

「働いていると障害年金はもらえない」と耳にしたことがある方は多いかもしれません。

しかし、就労していること自体が直ちに不支給につながるわけではありません

精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、就労状況も総合評価の一要素とされ、次のような状況は、認定上 1級または2級の可能性を検討する 要素として考慮されます。

  • 障害者雇用での就労
  • 短時間勤務・業務軽減等の 会社からの配慮 を受けながらの就労
  • 就労継続支援事業所などの福祉的就労

一方、配慮なくフルタイムで就労を継続できている場合は、ハードルが上がる傾向があります。

詳しくは 「働きながら障害年金をもらえる人」 をご覧ください。

不支給後の選択肢(審査請求・再請求)

不支給決定を受けた場合でも、選択肢があります。

  • 審査請求:決定を知った日の翌日から起算して 3か月以内 に、地方厚生局内に置かれた社会保険審査官に対して請求します
  • 再請求:症状の悪化や追加資料がある場合に、改めて事後重症請求等を行います

書類の内容を見直すことで結果が変わる事案もあり、不支給だからといって諦める必要はありません。

障害年金がもらえない人の主なパターン もあわせてご参照ください。

うつ病で障害年金を受給された方の事例

弊事務所では、うつ病の方の障害年金申請を多く手がけています。

就労状況・初診日からの期間・家族の支援状況など、状況はさまざまです。

以下は実際に受給に至った事例の一部です。

※個別事案により判断は異なります。

うつ病の障害年金に関するよくあるご質問

申請をご検討の方からよくいただくご質問をまとめました。

それぞれの詳細ページもあわせてご参照ください。

Q. うつ病で障害年金3級だといくらもらえますか?

障害厚生年金3級は 報酬比例の年金額(最低保障額 年額635,500円・令和8年度) が支給されます。

報酬比例部分は厚生年金加入期間や過去の標準報酬月額により決まります。

3級は障害厚生年金のみに設けられた等級 で、初診日に国民年金加入中だった方は対象になりません。

詳しくは うつ病でもらえる障害年金3級の金額はいくら? をご覧ください。

Q. うつ病で障害年金2級だといくらもらえますか?

障害基礎年金2級は 年額847,300円(月額70,608円・令和8年度) が定額で支給されます。

初診日に厚生年金加入中だった方 は、これに障害厚生年金(報酬比例の年金額)が上乗せされます。

詳しくは うつ病でもらえる障害年金2級の金額はいくら? をご覧ください。

Q. うつ病で働きながら障害年金は受給できますか?

就労しているからといって直ちに不支給になるわけではありません。

障害者雇用・短時間勤務・配慮を受けての就労 などは、認定上の評価要素として考慮されます。

詳しくは 「働きながら障害年金をもらえる人」 をご覧ください。

まとめ

うつ病は障害年金の対象となる疾病で、所定の3要件(初診日要件・保険料納付要件・障害認定基準該当)を満たせば受給できる可能性があります。

  • 等級認定は「気分(感情)障害」の障害認定基準と、精神の障害に係る等級判定ガイドラインに基づく総合評価で行われます
  • 令和8年度の障害基礎年金は1級 年額1,059,125円、2級 年額847,300円。厚生年金加入中の方は3級(最低保障額 年額635,500円)も対象となります
  • 診断書と病歴・就労状況等申立書の 整合性 が認定上きわめて重要です
  • 「就労していると必ず不支給」「神経症だから絶対に対象外」と決めつけず、診断書の傷病名や就労状況の実態を整理することが大切です
  • 不支給となった場合も、審査請求・再請求の選択肢があります

申請の進め方の詳細は うつ病で障害年金を申請するポイント もあわせてご覧ください。

うつ病での障害年金申請をご検討中の方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年5月時点の年金法令・障害認定基準・年金額に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は 日本年金機構の公式サイト 等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

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