うつ病と思いクリニックに通うと「あなたは持続性気分障害です」と診断された方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この持続性気分障害はメンタル疾患の中で「うつ病」と同じ「気分(感情)障害」にカテゴライズされている病気です。
当事務所に寄せられるご相談の中には持続性気分障害の患者様はその病気の特徴から本来障害年金を受けられるのに受けられなかったり、下級等級に認定されるといったケースがみられます。
なぜ、うつ病に比べ持続性気分障害による障害年金は難しいと言われているのでしょうか?
その理由と持続性気分障害による障害年金の受給ポイントを徹底解説します!!!!
(うつ病全般に関しては『うつ病での障害年金の受給事例』で詳しくご説明しておりますのでご参照下さい。)
持続性気分障害とは
人は、生活を送っていると良い事や、嫌な出来事に出くわしてしまいます。
そういった出来事に左右され、気分が高まったり、落ち込むという事は誰しもが当たり前の事です。
しかし、このような感情のコントロールが困難な状態が続いて仕事や日常生活に支障が出る心の病気を気分障害といいます。
そのような気分障害の中でも、持続性気分障害とは「気分循環症・気分変調症をまとめて指す疾患」をいいます。
うつ病や躁病といった症状には当てはまらないけれど、明らかに気分が変わっている症状が持続性気分障害の特徴とされています。
持続性気分障害はICD-10コード「F34」に該当します。
ICD-10コードの詳細は『精神疾患の診断書に必要な「ICD-10コード」を徹底解説します!』をご覧ください。
持続性気分障害の障害認定基準
厚生労働省にり公表されている認定基準にでは持続性気分障害の症状がいかに該当する場合には障害年金が支給されるとされています。
1級 | 高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の介護が必要なもの |
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2級 | 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、なおかつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの ※日常生活が著しい制限を受ける程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。 |
3級 | 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
持続性気分障害の認定基準の補足
- そううつ病は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。
- 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能、特に、知情意面の障害も考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、その療養状況を考慮し、その仕事の種類・内容、従事している期間、就労状況及びそれらによる影響も参考とする。
上記の基準に該当するようであれば、障害年金を受給できる可能性がありますので、ご自身の症状と照らし合わせて確認してください。
持続性気分障害と障害年金の関係
持続性気分障害では認定されずらいと聞かれた事がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
たしかに、持続性気分障害では障害年金は認められにくいとも言われています。
書籍「ICD-10 精神および障害」によると持続性気分障害を以下のように説明されています。
なお、ここで使われている「エピソード」とは、「症状が現れている状態」という意味合いになります。
持続性で、かつ通常波動性の気分障害であり、個々のエピソードは軽躁病エピソードあるいは軽症うつ病エピソードと記述されるほど重症になることは、たとえあったとしてもまれである。
何年にもわたって、時には患者の成人期の大部分にわたって持続するので、かなりの主観的な苦悩と無力感をもたらす。
何か気付かれましたでしょうか?
分かりやすく要約するとこのようになります。
持続性気分障害とは「軽い躁病」または「軽いうつ病」という症状で、重症になることは、ほとんど無い。
実際の症状として軽度であれば正しい診断と言えます。
中には、発病当初は症状が軽かった為「持続性気分障害」だったが、その後悪化したにも関わらず病名はそのままというケースがみられます。
ドクターの中には、病名に捕らわれることなく治療を行う方針の先生がいらっしゃるのは理解できます。
しかし、障害年金では持続性気分障害のように症状が軽いことを意味する病名を理由に不支給や下級等級として認定されるといったケースがあるのです。
なお、気分変調症(抑うつ神経症)という病気の場合でも同様のことが言えます。
当事務所に寄せられた相談の中には厚生労働省より以下のような照会依頼が届いたというケースもありました。
『○○医師作成の診断書に関しまして、傷病名「持続性気分障害」ICD-10コード(F34)とされており「軽度のうつ」であるように思われますが、日常生活能力の判定および程度を重く判断した理由をご教示ください』
明らかに「持続性気分障害」は経度とされているのがわかると思います。
当事務所では日常生活の状況が障害認定基準に該当しているのあれば、持続性気分障害という病名だけに捕らわれるのではなく、適切に審査がされるべきと考えます。
しかし、持続性気分障害による障害年金では、その病名から軽く審査をされてしまう傾向があります。
だからこそ、最初の申請の段階から、不納得な認定を受け、審査請求や再審査請求に進む事も視野に入れた計画的な準備が重要と考えています。
持続性気分障害での障害年金の受給事例
当事務所で申請した持続性気分障害での受給事例をご紹介します。
病名 | 持続性気分障害 |
年齢 | 52歳 |
性別 | 男性 |
症状 | 日常生活のほとんどが家族の助けで成り立っている |
これまでの経緯
45歳頃より仕事以外は無気力となる症状が現れたとのことです。
家族からの進めですぐに心療内科で治療を開始したとのことです。
50歳を超えたあたりから症状が悪化し、仕事を退職し家で引きこもった生活を送るようになりました。
心配した家族がインターネットで調べたところ、障害年金という制度をしり自力で申請を行ったところ遡りは不支給となったのですが請求月の翌月より障害厚生年金3級で支給されることとなったとのことでした。
その後、遡り分についても障害年金を受けることが出来るのではないかと考え当事務所への相談に至りました。
サポート内容と結果
まずはご相談者様の希望に沿った、過去5年分の遡りの可能性について検討しました。
初診日から1年6カ月を経過した時点ではフルタイムでの就労ができており、診断書上も経度であったため、遡りでの受給は困難と判断しました。
しかし、障害年金の請求時点の状況を確認すると傷病名は「持続性気分障害」とされているものの、日常生活はままならず到底就労はできる状況ではありませんでした。
そのため、障害厚生年金3級を審査請求により2級へと改定を求めることであれば可能性があるとご案内したところ、ご依頼となりました。
争点としては「持続性気分障害と診断されているものの、日常生活の状況は2級に該当する」という点でした。
また立証のため、主治医やソーシャルワーカーの方にもご協力を頂きながら主張を行ったところ、再審査請求にて当方の主張が認められました。
現在では障害厚生年金2級として約12万円/月の年金を受給されています。