目次
対象者の基本データ
病名 | 不安神経症・統合失調症 |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約82万円 遡及金額 約400万円 |
障害の状態 | ・被害妄想が強く、人間関係に著しい支障がある ・家族以外とのコミュニケーションがほぼ取れない ・買い物や役所での手続き等の外出が難しい ・日中もベッドに横になって過ごすことが多く、身の回りのことにも多くのサポートが必要 |
申請結果 | 障害基礎年金2級 |
この事例を対話形式で分かりやすくご説明しています。
当事務所スタッフによる事例紹介動画
当事務所のスタッフが実際に申請した流れを動画で詳しく説明しています。
当事務所の雰囲気を感じて頂けると思いますので、是非ご覧ください。
ご相談までの経緯
今回ご相談いただいたご依頼者様は、現在20代の方で主な傷病は統合失調症と注意欠陥多動症(ADHD)です。
小学校の頃、集団登校が始まり、周囲と馴染めないことで不登校となり、受診を開始されました。
現在まで10年以上治療を継続されていますが、生来性の発達障害に加え、統合失調症の併発もあり、就労継続支援事業所への通所継続も不安定な状況で日常生活にはヘルパーさんや訪問看護による支援が欠かせない状態が続いています。
将来への不安から利用出来る支援を探していたところ、障害年金を知り、当事務所にご相談をいただきました。
①申請までの経過
初診から現在まで日常生活に支障の大きい状況が継続していてため、障害認定日に遡って請求を行う遡及請求を行う方針で書類整備を進めていきました。
しかし、障害認定日時点の診断書を取得したところ、障害認定日当時は「不安神経症」の診断でした。
「不安神経症」は原則として障害年金の認定対象外とされている傷病のため、このままの内容ですと遡っての認定は難しい可能性がありました。
ただ、診断書の内容を丁寧に確認すると、被害妄想、易怒性の高まりや興奮、希死念慮などの精神病の症状の記載があり、また認定日前後で入院歴もありました。
同時進行で取得を進めていた現在の診断書では経過から統合失調症と診断名が変更となって治療を継続していた経過から、障害認定日当時のこれらの症状は統合失調症の「陽性症状」に該当してくる可能性があるのではないかと思いました。
そこで診断書を作成した医師に現在の診断書も参考資料としてお渡しした上で「障害認定日当時において、精神病の病態を示していたと考えられないかどうか」確認を行うことにしました。
医師からは「当時の診断は不安神経症であったが、統合失調症に類する症状も認めていた」との返答がありましたので、受給の可能性を最大限高めるためにも時間がかかったとしても、その内容を診断書に追記していただくように依頼を行うこととしました。
この追記依頼を行うタイミングでは既に申請日現在時点の診断書が取得出来ており、月末が近づいていました。
事後重症請求で認定となった場合は、申請した月の翌月分から年金支給となります。
遡及請求については追記をいただけたとしても認定されるかどうか不透明な中での申請となるため、万が一に備え、ご本人様の利益を最大限考慮し1か月でも早く受給権を確保するため、先に「事後重症」の請求だけを優先して申請し、追記いただいた障害認定日の診断書が到着次第に、あとから遡及請求も追加で行う方針に転換しました。
②結果
結果として、事後重症分・認定日分の両方がいずれも2級で認定されました。
特に認定日分については、「主たる診断名が神経症であっても、追記いただいた内容から精神病の病態が認められるため、障害年金の認定対象となる」と認定調書に明記されていました。
神経症だからといって一概に不支給ではなく、診断書の「備考欄」や「症状の具体的記載」まで、審査側が丁寧に読み取っており、総合的な審査がされていることがわかりました。
また診断書の取得後に、後から訂正も必要となるとその分申請時期も遅れてしまうケースもあるため、請求者の利益を最大限考慮して柔軟に手続き方針を変えることも時には必要だと改めて実感致しました。
③社内スタッフの感想
今回の事例を通じて、スタッフからは以下のような声が上がりました。
「神経症と書かれているだけで諦めず、診断書の内容を深く読み取ることの大切さを実感した」
「診断名にこだわらず、ICD-10コードや備考欄の追記依頼など、医師とのコミュニケーションが鍵だと学べた」
「『無理だと思ったけれど、相談してよかった』とご依頼者様に感じていただける対応ができたことが嬉しい」
私たちは一つひとつの事例を通してチーム全体でスキルアップを重ね、常に進化し続けています。
だからこそ、ご相談者様により良いサポートをご提供できると自負しています。
ご不安やご不明な点等がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
【ポイント1】統合失調症の特性にも注意
統合失調症には「病識欠如」といった特性があります。自身が病気であるという認識が乏しい場合、症状や状況を正確に伝えることが難しくなってしまいます。
そのため障害年金の申請には、ご家族や職場といった周囲の支援が必要です。
統合失調症にて障害年金の申請を検討されている場合は、身近な方が窓口となることでよりスムーズに申請できる可能性があります。
【ポイント2】現在の病名の確認(神経症の場合)
当初は「不安障害」や「社会不安障害」などの神経症と診断されていた方が、その後に「うつ病」や「双極性障害」といった精神障害へ変更されることがあります。
診察時にわざわざ病名の確認をするケースが少ないことから、病名が変更された後も、当初の病名のままだと思い込んでいるケースも少なくありません。
治療期間が長い場合や転院した場合などは、病名が変わっているケースが多いため『現在の病名』を確認しましょう。
【ポイント3】強迫性障害などの神経症
強迫性障害、PTSD、パニック障害などを神経症と呼びます。
これらの神経症は、原則として障害年金の対象外となります。
但し、うつ病、統合失調症のような症状がある場合は、障害年金の対象となることもあります。
この事例に関するFAQ
1. 統合失調症による障害年金申請の主な課題は何ですか?
統合失調症の障害年金申請では、「病識欠如」という特性が大きな課題となることがあります。
これは、ご本人が自身の病状や状況を正確に把握し、医療機関や申請担当者に伝えることが難しい場合があるためです。
また、認定日時点の診断書がご本人の実際の症状よりも軽めに記載されることや、高額な診断書費用、金銭管理の困難さなども申請を躊躇させる要因となり得ます。
2. 診断書の内容が実際の症状と食い違う場合、どのように対応すべきですか?
診断書の内容がご本人の実感と異なる場合でも、諦めずに申請を進めることが重要です。
医療機関は過去のカルテに基づいて診断書を作成するため、症状が十分に反映されないことがあります。
このようなケースでは、「額改定請求書」を最初の裁定請求時に添付して提出することが有効です。
これにより、事後の症状が悪化した場合に再審査(等級改定)や不服申し立ての道が残されます。
また、認定日と事後重症の2枚の診断書を準備し、ご本人の「後悔しない申請」という意思を尊重して手続きを進めることが大切です。
3. 「認定日請求」と「事後重症請求」の違いは何ですか?
「認定日請求」は、病気やけがによって初めて医師の診療を受けた日(初診日)から1年6ヶ月経過した日(認定日)時点での障害の状態に基づいて年金を請求する方法です。
一方、「事後重症請求」は、認定日時点では障害等級に該当しなかったものの、その後症状が悪化して障害等級に該当する状態になった場合に、その時点から年金を請求する方法です。
今回の事例では、ご本人の強い希望により認定日請求も行われ、事後重症の診断書も提出されています。
4. 「額改定請求書」を添付するメリットは何ですか?
「額改定請求書」を裁定請求時に添付する最大のメリットは、初回の決定で望む等級が得られなかった場合でも、後の審査でより高い等級への改定を期待できる点です。
特に、認定日時点の症状が軽めに判断され、現在の症状がより重いと見込まれる場合、この書類があることで、現在の状態に基づいた再審査が行われ、等級が変更される可能性があります。
添付していなければ、例え2級相当の症状であっても等級変更の機会を失うリスクがあります。
5. 障害年金の申請結果が通知された後も確認すべきことはありますか?
年金証書が届いた後も、それで終わりではありません。特に複数の診断書を提出した場合(認定日と事後重症など)、届いた証書の内容が必ずしも最新の症状を反映しているとは限りません。
今回の事例のように、当初3級と通知されても、事後重症の診断書の内容が2級相当であれば、実際には原簿上で2級に改定されていることがあります。
そのため、支給額変更通知書の確認や、必要であれば年金事務所に原簿の取得を依頼し、最終的な等級や支給額が妥当であるかを確認することが重要です。
6. 統合失調症の特性により、申請プロセスでどのような支援が必要とされますか?
統合失調症の「病識欠如」という特性から、ご本人が自身の症状や状況を正確に伝えることが難しい場合があります。
そのため、障害年金の申請には、ご家族や職場関係者など、周囲のサポートが不可欠です。身近な方が窓口となって情報収集や申請手続きを進めることで、よりスムーズな申請が期待できます。
専門家(社会保険労務士など)への相談も、適切な情報提供や手続きの代行を通じて、ご本人やご家族の負担を軽減する上で有効です。
7. 遠方からの相談や外出が困難な場合でも障害年金の申請は可能ですか?
はい、可能です。多くの社会保険労務士事務所では、電話やメール、LINEなど、来所不要な手段での相談に対応しています。
入院中の方、外出が困難な方、人との対話が苦手な方でも、これらのオンラインツールを活用することで、自宅から気軽に相談や手続きを進めることができます。
初回の相談は無料で行われる場合も多く、安心して利用できます。
8. 今回の事例から得られた最も重要な教訓は何ですか?
今回の事例から得られた最も重要な教訓は、「年金証書が届いても終わりではない、最後まで見届ける支援の重要性」です。
診断書の内容が期待より軽い場合でも諦めず、ご本人の意思を尊重し、最大限の支援を行うこと。
そして、特に認定日と事後重症の両方を申請する際には「額改定請求書」を忘れずに添付することで、結果の妥当性に疑義がある場合に再検討してもらえる道を残すことの重要性が示されました。
申請後の支給額変更通知書の確認や原簿の取得など、最終的な支給まで伴走する支援が、申請者の不安を軽減し、適切な年金受給につながることを強調しています。
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