てんかんの発作があり、仕事や外出に不安を抱えながら生活されている方から、「障害者手帳は取得できるのでしょうか」というご質問をいただくことがあります。

てんかんは障害者手帳の対象となる疾患ですが、等級は診断名だけで決まるものではありません。発作の重さと回数だけでなく、発作が起きていない時期の状態や、日常生活・社会生活での困りごとの程度もあわせて判断されます。

この記事では、てんかんで取得できる障害者手帳の種類、等級の判定基準、申請の方法と必要書類、受けられる支援、そして混同されやすい障害年金との違いまでを、公的な通知に基づいて整理してご説明します。

てんかんは障害者手帳の対象になるのか

てんかんのある方が対象となるのは、3種類ある障害者手帳のうち「精神障害者保健福祉手帳」です。ただし、てんかんと診断されていれば自動的に交付されるわけではなく、症状と生活への支障の程度をあわせた総合的な判定によって等級が決まります。この章では、その前提となる仕組みを確認します。

てんかんで対象となるのは「精神障害者保健福祉手帳」

障害者手帳は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類の総称です。

てんかんは、このうち精神障害者保健福祉手帳の対象に位置づけられています。厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」では、判定の対象となる精神疾患の区分として、統合失調症・気分(感情)障害・非定型精神病と並んで「てんかん」が独立した項目として挙げられています。

精神障害者保健福祉手帳は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第45条に基づく制度です。等級は1級から3級まであり、1級が最も重い状態を指します。

なお、厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」によると、令和6年度末現在の精神障害者保健福祉手帳の交付台帳登載数は1,547,433人(1級139,406人、2級897,292人、3級510,735人)です。この統計の母集団は精神疾患全体であり、疾患別の内訳は公表されていないため、この数値からご自身の等級を推し量ることはできません。

手帳制度そのものの全体像は、精神障害者保健福祉手帳とは?わかりやすく解説しますおよび障害者手帳とは?制度やメリットをわかりやすく解説でも扱っています。

診断名だけでは等級は決まらない

精神障害者保健福祉手帳の等級は、次の2つの軸から総合的に判定されます。

  • 精神疾患(機能障害)の状態 — てんかんの場合は、発作の状況や、知能障害その他の精神神経症状
  • 能力障害(活動制限)の状態 — 日常生活・社会生活を営むうえでの困難の程度

つまり、「発作が月に何回あるか」だけで等級が決まるのではありません。発作の状態と、発作が起きていない時期の症状・日常生活上の制限は、いずれも審査の対象となります。てんかんの場合、原則として両者のうち高い方の等級が採用される取扱いです(詳しくは後述します)。

てんかんの症状や治療方針についての医学的な判断は、主治医にご確認ください。

てんかんの障害者手帳の等級と判定基準

ここでは、てんかんの等級がどのような基準で判定されるのかを、厚生労働省の通知に沿って具体的に見ていきます。判定は4つの段階を追って進められ、てんかんについては「発作のタイプと頻度」を整理した目安も示されています。ご自身の状況がどのあたりに位置するかを確認する材料としてご覧ください。

等級判定は4つのステップで行われる

判定基準では、精神障害者保健福祉手帳の等級判定は次の順序で行うとされています。

  1. 精神疾患の存在の確認
  2. 精神疾患(機能障害)の状態の確認
  3. 能力障害(活動制限)の状態の確認
  4. 精神障害の程度の総合判定

また、機能障害・能力障害のいずれの判定にあたっても、現時点の状態だけでなく、おおむね過去2年間の状態や、おおむね今後2年間に予想される状態も考慮するとされています。

各等級の全体像は、次のように定められています。

  • 1級:精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  • 2級:精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  • 3級:精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

てんかんの等級ごとの基準

判定基準(別紙)では、てんかんによる場合の各等級の状態が次のように定められています。

等級てんかんによるものにあっては
1級ひんぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状が高度であるもの
2級ひんぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの
3級発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの

ここでいう「ひんぱんに繰り返す発作」には定義があります。運用に関する通知では、2年以上にわたって、月に1回以上、主として覚醒時に反復する発作を指すとされています。

なお、上の表は「精神疾患(機能障害)の状態」の欄にあたるものです。実際にはこれと「能力障害(活動制限)の状態」を突き合わせた総合判定になるため、表の記述に当てはまることをもって等級が確定するわけではありません。

発作のタイプと頻度からみた等級の目安

てんかんについては、発作を4つのタイプに分けたうえで、頻度と組み合わせた等級の目安が示されています。以下はあくまで機能障害の面から見た目安であり、能力障害(活動制限)の状態とあわせた総合判定になります。

記号発作のタイプ
意識障害はないが、随意運動が失われる発作
意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
意識障害の有無を問わず、転倒する発作
意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
等級発作のタイプと頻度
1級程度ハ、ニの発作が月に1回以上ある場合
2級程度イ、ロの発作が月に1回以上ある場合/ハ、ニの発作が年に2回以上ある場合
3級程度イ、ロの発作が月に1回未満の場合/ハ、ニの発作が年に2回未満の場合

転倒をともなう発作や、意識障害があって状況にそぐわない行為を示す発作は、身体的な危険が大きいため、より重い区分として扱われている点が特徴です。

発作がない時期(発作間欠期)の状態も評価される

てんかんの判定では、発作そのものだけを見るわけではありません。運用に関する通知には、次の3点が明記されています。

  • 発作区分と頻度、あるいは発作間欠期の精神神経症状・能力障害(活動制限)のいずれか一方のうち、より高い等級を障害等級とする
  • 知能障害その他の精神神経症状が中等度であっても、これが発作と重複する場合には、てんかんの障害度は高度とみなされる
  • てんかんの発作症状及び精神神経症状の程度の認定は、長期間の薬物治療下における状態で認定することを原則とする

発作の回数だけを見ると軽く見えても、発作間欠期の症状や生活上の制限が大きい場合には、そちらの評価によって等級が判断されることがあるということです。

能力障害(活動制限)の状態は、診断書の「日常生活能力の判定」欄で、次の8つの項目について評価されます。

  1. 適切な食事摂取
  2. 身辺の清潔保持、規則正しい生活
  3. 金銭管理と買い物
  4. 通院と服薬
  5. 他人との意思伝達・対人関係
  6. 身辺の安全保持・危機対応
  7. 社会的手続や公共施設の利用
  8. 趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加

(判定基準の別添1では、1と2を一体として7つの観点に整理していますが、内容は同じものです。)

ここでいう「援助」とは、助言、指導、介助等をいいます。また、この判定は年齢相応の能力と比較のうえで判断するとされているため、お子さんの申請を検討されているご家族は、同年代のお子さんと比べてどうかという視点で状況を整理していただくとよいでしょう。

さらに、能力障害の判定は、入院中のような保護的な環境ではなく、アパート等で単身生活を行った場合を想定して判断するものとされています。ご家族の支えがあって成り立っている生活の場合、その支えがなかったらどうなるかという視点で見られることになります。

(出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」平成7年9月12日健医発第1133号〔平成25年4月26日 障発0426第5号による一部改正後〕別紙・別添1・別添2/同「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準の運用に当たって留意すべき事項について」平成7年9月12日健医精発第46号〔平成23年3月3日 障精発0303第2号による一部改正後〕別紙)

てんかんの情報を調べていると、発作を「A・B・C・D」の4タイプに分類した説明を目にすることがあります。これは障害年金の障害認定基準で使われている分類で、障害者手帳の「イ・ロ・ハ・ニ」とは記号の並び順が逆です。取り違えると等級の見当が正反対になってしまうため、この章で整理しておきます。

記号の並び順が逆になっている

両制度の発作分類を並べると、次のとおりです。

手帳の記号発作のタイプ障害年金の記号
意識障害はないが、随意運動が失われる発作D
意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作C
意識障害の有無を問わず、転倒する発作B
意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作A

内容そのものは同じですが、手帳では軽い区分から「イ」、障害年金では重い区分から「A」と振られています。手帳の「ニ」が障害年金の「A」に、手帳の「イ」が障害年金の「D」に対応するという関係です。

そのため、障害年金の解説記事に書かれた「A・Bの発作が年2回以上」といった記述を、そのまま手帳の「イ・ロ」に読み替えてしまうと、結論が大きくずれてしまいます。ご自身の状況を確認される際は、どちらの制度の説明を読んでいるのかを意識していただくと安心です。

手帳の等級と障害年金の等級は一致しない

そもそも、精神障害者保健福祉手帳と障害年金は、根拠となる法律も、判定を行う機関も異なる別々の制度です。手帳が2級だから障害年金も2級になる、という関係にはありません。

日本年金機構も、障害年金の等級は身体障害者手帳等の等級とは異なるものであると案内しています。手帳の等級は、あくまで手帳制度のなかでの区分としてお考えください。

より詳しくは、【知らないとマズい】「障害年金」と「障害者手帳」の関係および精神障害者手帳3級では障害年金はもらえない?をご参照ください。

障害者手帳の申請方法と必要書類

精神障害者保健福祉手帳の申請は、お住まいの市町村の担当窓口を経由して行います。そろえる書類は、障害の状態をどの資料で確認するかによって変わります。ここでは制度上の枠組みをご説明しますので、実際の手続きの詳細はお住まいの窓口でご確認ください。

申請にはどの書類をそろえるかで3つのパターンがある

申請の際は、申請書と写真が共通して必要です。そのうえで、障害の状態を確認するための書類として、次のいずれかをそろえることになります。

パターン障害の状態を確認する書類精神保健福祉センターの判定
①医師の診断書による申請診断書(別紙様式2)あり
②年金関係書類による申請年金証書等の写し(+直近の年金振込通知書または年金支払通知書)なし
③マイナンバーを活用した情報連携①②の添付を省略できるなし

②③は、精神障害を支給事由とする年金給付を受けている方が利用できる方法です。この場合、年金における障害等級が1級であれば手帳も1級、2級であれば2級、3級であれば3級として判定を行うとされています。

先ほど「手帳と年金の等級は一致しない」とご説明しましたが、このルートを使う場合だけは例外的に等級が連動します。

ここで押さえておきたいのは、③で省略できるのはあくまで診断書・年金証書等であり、申請書と写真は省略できないという点です。また、③への対応状況は自治体によって異なり、年金事務所や共済組合等へ照会するための同意書の提出を求められることもありますので、窓口でご確認ください。

写真は、申請前1年以内に撮影した上半身脱帽のものが原則です。宗教上または医療上の理由により頭部を布などで覆うことを知事が認める場合や、やむを得ない理由がある場合には写真を表示しない手帳の交付も可能とされていますが、その場合は受けられるサービスに差異が生じることがあります(後述する交通機関の割引などが該当します)。

なお、年金給付を受けている方が、あえて医師の診断書によって申請することも可能です。

このルートについては、精神の障害年金を受給していると同じ等級の障害者手帳が取得できる?で詳しく扱っています。

診断書は「初診日から6か月経過後」のものが必要

医師の診断書によって申請する場合、その診断書は精神障害に係る初診日から6か月を経過した日以後のものである必要があります。

ここでいう初診日は、診断が確定した日ではありません。手帳の交付を求める精神疾患について、初めて医師の診療を受けた日が起算点となります。前の医療機関での治療経過がある場合は、原則としてその前医の初診日を記載することとされています。診断書の様式にも「主たる精神障害の初診年月日」と「診断書作成医療機関の初診年月日」の欄が分かれて設けられています。

診断書を作成する医師は、原則として精神保健指定医または精神科医とされていますが、これに限られるわけではありません。厚生労働省の通知では、てんかんの患者について内科医が主治医となっている場合のように、精神科以外でも精神障害の診断又は治療に従事していると言える医師は含まれるとされています。

てんかんで神経内科や小児科に通院されている方も少なくありませんので、この点は押さえておくとよいでしょう。診断書の作成をお願いする際は、日ごろの発作の状況や生活上の困りごとを、あらかじめ整理して主治医にお伝えいただくとスムーズです。

申請先・交付までの期間・様式・有効期限

申請は、居住地を管轄する市町村長を経て、都道府県知事(指定都市にあっては指定都市の長)に提出します。申請は本人が行うのが原則ですが、ご家族や医療機関の職員による代行も可能です。

交付の可否の決定は、実施要領上「申請書を受理した日から概ね1か月以内に行うことが望ましい」とされています。実際に要する期間は自治体によって異なります。

手帳の様式は紙の様式(別紙様式4)とカードの様式(別紙様式5)の2種類があり、希望する場合はカード様式を選ぶことができます。取扱いは自治体により異なります。

手帳の有効期限は、交付日から2年が経過する日の属する月の末日です。継続して所持するには更新の手続きが必要で、更新申請は有効期限の日の3か月前から行うことができます。有効期限を過ぎてしまった後も、申請を行うこと自体は可能とされています。

更新の実務については、障害者手帳に更新は必要ですか?もあわせてご覧ください。

(出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」平成7年9月12日健医発第1132号〔令和7年10月29日 障発1029第2号による一部改正後〕/同「精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項について」平成7年9月12日健医精発第45号。いずれも厚生労働省「障害者手帳について」に掲載)

手帳を取得すると受けられる支援

精神障害者保健福祉手帳を取得すると、税制上の優遇や交通機関の割引など、さまざまな支援を利用できるようになります。ただし、それぞれに適用条件があり、自治体や事業者ごとに内容が異なります。代表的なものを条件とあわせてご紹介します。

税制上の優遇

障害者控除などの対象となります。国税庁の案内では、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方は障害者控除の対象となり、このうち手帳に障害等級1級と記載されている方は特別障害者に該当するとされています(所得税法第79条、同法施行令第10条)。

控除額や具体的な申告方法については、国税庁「No.1160 障害者控除」をご確認いただくか、お住まいの地域の税務署へお問い合わせください。

交通機関の割引

JRグループでは、2025年(令和7年)4月1日から精神障害者割引制度が導入されています。

対象となるのは、手帳の「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額」欄に第1種または第2種の記載があるものです。第1種は手帳1級の方、第2種は手帳2級・3級の方が該当します。

ただし、記載があれば足りるわけではありません。割引を受けるには、有効期限内の手帳であることが必要で(JR各社の割引規則は「有効な精神障害者保健福祉手帳」の呈示を求めています)、原則として顔写真が貼付されている必要もあります。顔写真のない手帳では割引を受けられないとする事業者があるため、写真なしで手帳の交付を受けた方は、再交付の申請をご検討ください。

割引率は5割です。ご本人が単独で普通乗車券を利用される場合は、営業キロが100キロメートルを超える区間に限られます。一方、第1種の方が介護者(1名まで)とともに乗車される場合は、この距離の条件はありません。このほか、第1種の方または12歳未満の第2種の方が介護者とともに乗車される場合の定期乗車券など、券種ごとに取扱いが定められています。

なお、JRグループの割引規則では、国土交通省の通知(令和8年5月14日 国鉄事第217号)に基づき、マイナンバーカードを活用した障害者手帳等情報による本人確認を、割引乗車券類の購入申込みの際、および乗降の際・乗車船中の呈示に限って手帳に代わるものとすることができるとされています。対応状況や利用方法は事業者により異なりますので、各社の最新の案内をご確認ください。

このほか、バス・航空・タクシーなどの事業者や、自治体独自の割引制度もあります。手当や割引の全体像は、精神障害者手帳2級でもらえるお金はいくら?でも整理しています。

障害者雇用枠での就労

障害者雇用促進法上、実雇用率の算定対象となる精神障害者は、精神障害者保健福祉手帳を所持する方とされています。

勤務先に手帳の所持を伝えるかどうかは基本的にご本人の判断ですが、障害者雇用枠で雇用され、雇用率の算定対象となる場合には、手帳の提示・確認が通常必要になります。

手帳がなくても使える制度

支援のなかには、手帳がなくても利用できるものがあります。通院医療費の自己負担を軽減する自立支援医療(精神通院医療)や、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスがこれにあたります。

手帳の取得を迷っておられる方も、これらの制度は別途ご検討いただけます。

てんかんで障害年金も受給できる?手帳との違い

障害者手帳を調べる過程で、障害年金についても知りたくなる方は多くいらっしゃいます。両者は別の制度であり、片方の結果がもう片方を決めるものではありません。この章では制度の違いと、てんかんの障害年金がどのように判定されるのかを整理します。

障害者手帳と障害年金の違い

精神障害者保健福祉手帳障害年金
根拠法精神保健福祉法国民年金法・厚生年金保険法
交付・決定都道府県知事(指定都市市長)厚生労働大臣(請求先・審査事務は日本年金機構)。ただし初診日に共済組合等に加入していた場合は、その実施機関
判定精神保健福祉センター(診断書による申請の場合)日本年金機構の認定医(共済組合等が実施機関となる場合は当該機関の認定医)
等級1級・2級・3級障害基礎年金は1級・2級/障害厚生年金は1級〜3級
内容福祉サービス・割引等の対象証明年金の給付

※障害厚生年金は、初診日に加入していた実施機関(日本年金機構、国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合、私立学校教職員共済)が決定・支給を行います。障害給付の請求は、他の実施機関では受け付けられません。

ここで注意していただきたいのが等級の構造です。障害基礎年金には3級がなく、1級と2級のみです。3級は障害厚生年金にのみ設けられており、初診日に厚生年金保険に加入していた方が対象となります。手帳の3級と障害年金の3級は、意味するところが異なります。

なお、障害基礎年金の対象となるのは、初診日が次のいずれかにある場合です。

  • ①国民年金の加入期間
  • ②20歳前の年金制度に加入していない期間
  • ③日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間(老齢基礎年金を繰上げ受給していない場合に限ります)

てんかんは小児期に発症される方が多いため、②に該当するケースが少なくありません。ただし、20歳前であっても厚生年金保険の被保険者期間中に初診日がある場合は障害厚生年金の対象となり、20歳以降と同じ取扱いになります。また、②に該当する場合は保険料納付要件が問われない一方で、20歳前傷病による障害基礎年金には本人の所得による支給制限があります。

てんかんの障害年金はどう判定されるのか

障害年金では、てんかんは障害認定基準の第8節「精神の障害」のなかで、独立した区分として認定されます。

認定基準には、次のように記されています。

てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。

(出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第8節 精神の障害)

障害者手帳の判定基準には、これに相当する明文の規定は置かれていません。手帳側は「長期間の薬物治療下における状態で認定することを原則とする」と定められているにとどまります。この違いは、両制度を比較するうえで押さえておきたい点です。

もう一点、てんかんは「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の対象傷病から除かれています。精神疾患の障害年金というとこのガイドラインが話題になりますが、てんかんについては障害認定基準で発作の重症度や頻度等による判定が別途規定されているため、ガイドラインの対象外とされています。

てんかんの障害年金については、認定基準・等級・金額・申請の進め方を別記事で詳しくまとめています。

てんかんで障害年金を受給された事例

弊事務所では、てんかんの方の障害年金申請を数多くお手伝いしてまいりました。実際にどのような点が判断の材料となったのか、事例の一部をご紹介します。なお、申請の結果は一人ひとりの状況によって異なります。

※個別事案により判断は異なります。

てんかんの申請では、発作が起きていない期間の生活の様子をどう伝えるかが論点になることがあります。発作間欠期だけを切り取ると日常生活に支障がないように見えるため、いつ発作が起こるか分からないことによる制限が伝わりにくいためです。

よくあるご質問

てんかんと障害者手帳について、当事務所によくお寄せいただくご質問にお答えします。手続きの細部は自治体によって運用が異なりますので、最終的にはお住まいの窓口でご確認ください。

Q. 軽いてんかんでも障害者手帳はもらえますか?

判定基準では、3級の状態は「発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」とされており、発作の頻度に下限は設けられていません。運用上の目安でも、3級程度としてイ・ロの発作が月に1回未満の場合、ハ・ニの発作が年に2回未満の場合が挙げられています。

ただし、これは機能障害の面から見た目安にすぎません。能力障害(活動制限)の状態とあわせた総合判定になりますので、発作があれば必ず該当するというものではない点にご留意ください。

Q. 服薬で発作が止まっていますが、対象になりますか?

手帳の判定基準では、認定は長期間の薬物治療下における状態で行うことが原則とされています。発作が抑制されている場合を対象外とする明文の規定は置かれていません。

一方、障害年金の障害認定基準には、抗てんかん薬の服用や外科的治療によって発作が抑制される場合は原則として認定の対象にならないという規定があります。この点は手帳と障害年金で扱いが異なるとお考えください。

Q. 手帳と障害年金は同時に申請できますか?

別々の制度ですので、それぞれに申請することができます。順序の決まりもありません。

ただし、障害年金を先に受給している場合は、手帳の申請で年金証書等の写しやマイナンバーの情報連携を利用でき、診断書を用意せずに済むことがあります。逆に手帳を先に取得していても、それによって障害年金の審査が有利になるわけではありません。

Q. 手帳を取得すると勤務先に知られますか?

手帳の所持を勤務先に伝えるかどうかは、基本的にご本人の判断です。ただし、障害者雇用枠で就労され、雇用率の算定対象となる場合には、手帳の提示・確認が通常必要になります。

Q. 手帳が3級だと障害年金はもらえないのですか?

そのようなことはありません。手帳と障害年金は判定の主体も基準も異なるため、手帳3級の方が障害年金を受給されているケースもあります。判断の材料となるのは手帳の等級そのものではなく、診断書や病歴・就労状況等申立書から読み取れる症状と生活の実態です。

詳しくは精神障害者手帳3級では障害年金はもらえない?もご参照ください。

まとめ

てんかんと障害者手帳について、押さえておきたいポイントを整理します。

  • てんかんで対象となるのは精神障害者保健福祉手帳で、等級は1級から3級まで
  • 等級は発作のタイプと頻度発作間欠期の症状能力障害(活動制限)の状態をもとに判定され、てんかんでは原則として高い方の等級が採用される
  • 申請には申請書と写真が共通して必要で、マイナンバーの情報連携で省略できるのは診断書・年金証書等
  • 手帳の発作分類「イ・ロ・ハ・ニ」と障害年金の「A〜D」は並び順が逆なので読み間違えに注意
  • 手帳と障害年金は別制度で等級も連動しない。ただし年金証書等による申請では例外的に等級が一致する

障害者手帳の交付申請そのものは、市町村の窓口を経由して行う福祉の手続きです。手続きの詳細はお住まいの自治体へ、症状についての医学的な判断は主治医へご相談ください。てんかんでの障害年金については、てんかんで障害年金はもらえる?認定基準と金額を解説もあわせてご覧ください。

てんかんでの障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年7月時点の年金法令・障害認定基準および厚生労働省の関係通知に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイトおよび厚生労働省「障害者手帳について」でご確認ください。障害者手帳の運用は自治体により異なる場合があります。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。