精神障害者手帳3級では障害年金はもらえない?

はじめに

はじめに

「精神障害者保健福祉手帳の3級を持っているけれど、障害年金はもらえないのでは」と不安に感じて検索される方は少なくありません。

3級は手帳の中で最も軽い等級とされるため、年金には手が届かないと思い込んでしまう方も多いようです。

しかし、障害者手帳と障害年金は別の制度であり、手帳が3級だからといって年金がもらえないと決まっているわけではありません。

結論から申し上げると、手帳が3級でも障害年金を受給できる可能性はあります

実際に、手帳3級の方が障害年金を受給された例もあります。

本記事では、手帳3級と障害年金の関係、「もらえない」と言われやすい理由、そして受給できる場合の条件について、社会保険労務士法人の視点で整理して解説します。

精神障害者保健福祉手帳3級とは

まずは、精神障害者保健福祉手帳の3級がどのような等級なのか、そして障害年金とどう違うのかを確認します。

両者を混同しないことが、受給の可能性を正しく判断する第一歩です。

手帳3級の判定基準

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患により日常生活や社会生活に一定の制約がある方に交付される手帳です。

等級は1級・2級・3級に分かれ、3級が最も軽い区分とされています。

厚生労働省の判定基準では、3級は精神障害によって日常生活または社会生活に制限を受けるか、制限を加えることを必要とする程度のものとされています。

等級は、精神疾患(機能障害)の状態と、能力障害(活動制限)の状態を総合して判定されます。

(出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」健医発第1133号)

手帳と障害年金は別の制度

障害者手帳と障害年金は、目的も判定主体も異なる別の制度として運用されています。

手帳は都道府県・指定都市が交付し、税の控除や各種割引など福祉サービスの対象を判定するものです。

一方、障害年金は日本年金機構が認定し、年金として給付されます。

そのため、手帳の等級がそのまま年金の等級になるわけではありません。

手帳と障害年金の関係そのものについては、障害年金と障害者手帳の関係でも詳しく解説しています。

手帳3級でも障害年金はもらえる?

手帳3級でも障害年金はもらえる?

冒頭で申し上げたように、手帳が3級でも障害年金を受給できる可能性はあります

手帳の等級と年金の受給可否は直接連動しておらず、年金は独自の認定基準で判断されるためです。

このセクションでは、その判断の仕組みを解説します。

受給可否を決めるのは「障害認定基準への該当性」

障害年金がもらえるかどうかは、手帳の等級ではなく、障害年金の認定基準に該当するかどうかで決まります。

手帳3級であることは、年金の審査において有利にも不利にも直接は働きません。

審査では、傷病名だけでなく、現在の症状の程度、日常生活でどの程度の制限があるか、就労の状況などが総合的に見られます。

精神障害や知的障害については、平成28年9月1日から実施されている等級判定ガイドラインが用いられます。

ただし、てんかんはこのガイドラインの対象から除かれ、発作の重症度や頻度などを踏まえて障害認定基準により判断されます。

そのため、手帳を持っていなくても障害年金を受給している方は大勢いますし、逆に手帳を持っていても年金の受給要件に該当しない場合もあります。

手帳の有無や等級から、年金の結果を断定することはできません。

手帳3級でも年金2級に該当する例がある

手帳が3級であっても、日常生活に著しい制限があり、就労が困難な状態であれば、障害年金では2級に該当すると判断される可能性があります。

手帳と障害年金では、目的や提出書類、認定基準が異なるため、同じ方でも等級が一致しないことがあるためです。

実際に、手帳は3級でも、診断書や病歴・就労状況等申立書を通じて生活の実態が正確に伝わった結果、障害基礎年金2級が認められた例もあります。

就労の状況が気になる方は、障害年金2級ではどれくらい働けるのかもあわせてご覧ください。

ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、個別事案により判断は異なります。

最終的な認定は日本年金機構の認定医によって行われます。

「手帳3級だともらえない」と言われやすい3つの理由

一方で、手帳3級の方が「障害年金はもらえない」と言われやすいのも事実です。

これには制度上の構造的な理由があります。

あらかじめ理由を理解しておくと、ご自身が申請の対象になるかを判断しやすくなります。

【理由1】障害基礎年金には3級が存在しない

【理由1】障害基礎年金には3級が存在しない

最も重要なのが、障害基礎年金には3級が存在しないという点です。

障害基礎年金の対象等級は1級と2級のみで、3級という区分はありません。

3級があるのは障害厚生年金だけです。

初診日(障害の原因となった傷病で初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日)に国民年金へ加入していた方や、自営業・専業主婦(主夫)・学生・無職などで国民年金の第1号・第3号被保険者だった方は、原則として障害基礎年金の対象になります。

この場合、症状の程度が年金の「3級相当」にとどまると、1級・2級に届かないため支給の対象になりません。

手帳3級の方の症状が、年金では2級まで至らないと判断されると、「もらえない」という結果になりやすいのです。

【理由2】初診日の加入制度で結論が変わる

【理由2】初診日の加入制度で結論が変わる

障害年金は、初診日にどの年金制度へ加入していたかによって、受給できる年金の種類が変わります。

初診日に厚生年金へ加入していた方(会社員など)であれば、障害厚生年金の対象となり、3級も支給の対象に含まれます。

一方、初診日が国民年金加入中、20歳前の年金未加入期間、または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の未加入期間にある場合は、3級相当の症状では支給の対象になりません。

つまり、同じ手帳3級でも、初診日の加入制度によって「3級でも年金が出る方」と「3級相当では出ない方」に分かれます。

受給の前提となる要件は、障害年金を受け取るための条件で確認できます。

【理由3】年金3級は「労働の制限」が基準

【理由3】年金3級は「労働の制限」が基準

障害厚生年金の3級は、労働が著しい制限を受けるか、制限を加えることを必要とする程度が基準とされています。

日常生活にはほとんど支障がなくても労働に制限がある状態が3級の目安とされており、日常生活の制限を中心に見る手帳3級とは、評価の観点が異なります。

そのため、手帳3級を持っていても、就労の状況によっては年金の3級に届かないと判断されることがあります。

逆に、就労に大きな支障が出ている場合は、3級に該当する可能性があります。

「もらえない」と言われた場合の考え方は、障害年金がもらえない人もご参照ください。

受給する場合の等級・金額の傾向

障害年金に該当した場合、受け取れる金額は等級によって異なります。

ここでは令和8年度(2026年度)の金額を目安として整理します。

手帳の等級ではなく、年金の認定等級で金額が決まる点にご注意ください。

等級別の年金額(令和8年度)

令和8年度(2026年度)の障害年金額の目安は、以下のとおりです。

年金の種類・等級年額の目安(令和8年度)
障害基礎年金1級1,059,125円+子の加算
障害基礎年金2級847,300円+子の加算
障害厚生年金3級報酬比例の年金額(最低保障額 635,500円)

※昭和31年4月1日以前にお生まれの方は別額です(障害基礎年金1級1,056,125円・2級844,900円、障害厚生年金3級の最低保障額633,700円)。

障害基礎年金には、子がいる場合に子の加算が付きます(2人までは1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円)。

障害厚生年金は過去の報酬に応じた報酬比例の金額で、個人差があります。

年度ごとの詳しい金額は、2026年度(令和8年度)の障害年金額をご確認ください。

手帳3級でも2級が認められれば年金の対象に

繰り返しになりますが、金額を決めるのは手帳の等級ではなく、年金として認定された等級と初診日の加入制度です。

初診日が国民年金加入中などの場合、年金で2級に該当すれば障害基礎年金2級が支給されます。

初診日が厚生年金加入中の場合は、2級に該当すると障害基礎年金2級に加えて、障害厚生年金2級(報酬比例の年金額。

要件を満たす配偶者がいれば配偶者加給年金額が加算)も支給の対象になります。

3級(障害厚生年金のみ)に該当する場合は、報酬比例の年金額が支給されます。

ご自身がどの等級・どの年金に該当しそうかは、初診日の加入制度と現在の状態によって変わります。

申請のポイント

申請のポイント

手帳3級の方が障害年金を申請する際は、現在の状態を正確に伝える書類づくりが重要になります。

障害年金は申請書類のみの審査となるため、本来は障害年金を受給出来る状態にある方であっても、それが申請書類上で確認出来なければ、不支給となってしまう事もあります。

そのため、現在の状態を正確に伝える書類づくりが重要になります。

以下のように、当事務所にご依頼頂いた精神障害者保健福祉手帳3級をお持ちの方で、過去にご自身で申請して不支給となった事例が多数あります。

ここでは、診断書と病歴・就労状況等申立書のポイントを、形式面を中心に解説します。

【ポイント1】診断書は現在の状態を正確に反映してもらう

障害年金の審査では、主治医が作成する診断書が大きな役割を果たします。

手帳用の診断書と障害年金用の診断書は様式が異なるため、年金用の診断書を改めて主治医に依頼する必要があります。

診断書は、請求方法に応じた時点の状態について作成してもらいます。

障害認定日は原則として初診日から1年6か月を経過した日ですが、その期間内に症状が固定したと認められる場合はその日になることがあります。

障害認定日にさかのぼって請求する場合は、障害認定日から3か月以内の状態の診断書が必要で、障害認定日と請求日が1年以上離れているときは、請求日前3か月以内の現在の診断書もあわせて必要になります。

診断書には、日常生活能力や就労の状況が記載されます。

普段の困りごとや生活上の支障が診断書に反映されるよう、受診時にご自身の状態を具体的に伝えておくことが大切です。

なお、症状の評価や診断は医師が行うものです。

具体的な症状や治療については主治医にご相談ください。

弊事務所がお手伝いできるのは、申請手続きや書類の組み立てといった社会保険労務士の領域です。

【ポイント2】病歴・就労状況等申立書で生活の実態を伝える

【ポイント2】病歴・就労状況等申立書で生活の実態を伝える

病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの病歴や日常生活・就労の状況を、ご本人(またはご家族・社会保険労務士)が時系列で記載する書類です。

診断書では伝えきれない生活の実態を補う、重要な書類です。

手帳3級の方の場合、日常生活でどのような支障があるかを具体的に記載することが、認定基準への該当性を判断してもらううえで役立ちます。

書き方の詳細は、自分で書ける病歴・就労状況等申立書で解説しています。

手帳3級から障害年金を受給した事例

手帳3級から障害年金を受給した事例

当法人がこれまでお手伝いした中にも、精神障害者保健福祉手帳3級をお持ちの方が障害年金を受給されたケースがあります。

うつ病や双極性障害、発達障害などで、手帳は3級でも、診断書や病歴・就労状況等申立書を通じて日常生活や就労の状況が正確に伝わった結果、受給につながった例です。

こうした事例に共通するのは、手帳の等級そのものではなく、現在の症状や生活の実態が認定の判断材料になっている点です。

厚生年金加入中に発症された方が、障害厚生年金3級と認められたケースもあります。

※個別事案により判断は異なります。

同じ手帳3級でも、初診日の加入制度や現在の状態によって結果は変わります。

関連する疑問

手帳3級と障害年金に関連して、よく寄せられる疑問について、参考になる記事をご紹介します。

まとめ

まとめ

精神障害者保健福祉手帳3級と障害年金について、要点を整理します。

  • 手帳と障害年金は別の制度で、手帳3級だから年金がもらえないと決まっているわけではありません。
  • 「もらえない」と言われやすいのは、障害基礎年金に3級がないこと、初診日の加入制度で結論が変わること、年金3級は労働の制限が基準であることが主な理由です。
  • 手帳3級でも、日常生活や就労に著しい支障があれば、年金で2級などに該当する可能性があります。受給可否は手帳の等級ではなく、障害年金の認定基準への該当性で決まります。

初めての障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年6月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

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