聞こえにくさが少しずつ強くなり、「自分は障害者手帳の対象になるのだろうか」とお調べになる方は多くいらっしゃいます。難聴で交付される可能性があるのは身体障害者手帳ですが、その基準は「聞こえにくさの自覚」ではなく、聴力検査の数値で細かく定められています。
この記事では、難聴で身体障害者手帳が交付される等級の基準、対象にならないケース、混同されやすい障害年金との違い、申請の流れという4つの観点から、厚生労働省と日本年金機構の一次資料に沿って整理します。
難聴で交付されるのは「身体障害者手帳(聴覚障害)」です
難聴で交付の対象となるのは、身体障害者福祉法にもとづく身体障害者手帳です。聴力検査の結果が国の定める基準に該当すると認められた場合に、聴覚障害として交付されます。まずは制度の全体像を確認します。
聴覚障害の手帳は2級・3級・4級・6級の4区分
身体障害者障害程度等級表には1級から7級までの区分がありますが、7級に該当する障害が1つのみでは手帳は交付されません。7級の障害が2つ以上重複する場合、または7級の障害が6級以上の障害と重複する場合に法の対象となるため、手帳に記載される等級は1級から6級です。
このうち、聴覚障害について定めがあるのは2級・3級・4級・6級の4つです。
1級・5級・7級には聴覚障害単独の規定がありません。ただし、聴覚障害と音声機能・言語機能の障害が重複する場合など、複数の障害を合わせて上位の等級と認定される仕組みは設けられています。
障害年金とは根拠となる法律も窓口も異なります
身体障害者手帳と障害年金は、しばしば同じものと受け取られますが、別の制度です。
身体障害者手帳は身体障害者福祉法にもとづく福祉の制度で、申請はお住まいの市区町村に行い、交付を決定するのは都道府県知事、指定都市の市長または中核市の市長です。障害年金は国民年金法・厚生年金保険法にもとづく公的年金の給付で、請求先も認定基準も別に定められています。
一方を申請しても、もう一方が自動的に決まるわけではありません。
聴覚障害の等級表と判定の基準
聴覚障害の等級は、耳鼻咽喉科で行う「平均聴力レベル(純音聴力レベル)」と「語音明瞭度」の検査結果にもとづいて判定されます。ここでは身体障害者障害程度等級表の定めと、検査の考え方を確認します。
等級表に定められた該当基準
身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)では、聴覚障害について次のとおり定められています。
| 級別 | 聴覚障害の状態 |
|---|---|
| 2級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう) |
| 3級 | 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの) |
| 4級 | 1 両耳の聴力レベルがそれぞれ80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの) 2 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの |
| 6級 | 1 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの) 2 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの |
(出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表」)
ただし、これらの数値に該当すれば直ちに交付されるわけではありません。身体障害者福祉法の別表は、聴覚の障害について「永続するもの」を対象と定めています。身体障害認定基準では、この「永続する」障害とは、その障害が将来とも回復する可能性が極めて少ないものであれば足りるという趣旨であって、将来にわたって障害程度が不変のものに限られるものではない、とされています。
このため、中耳等に急性の炎症があり耳漏等が認められる鼓膜所見では、その時点では認定をすべきではないとされています。また、慢性化膿性中耳炎等のように手術によって聴力の改善が期待できる場合も、それまでの治療・経過・年齢等を考慮して慎重に取り扱うこととされています。
なお、聴覚障害2級と、音声機能・言語機能の喪失(3級)が重複する場合には、重複障害の合計指数の考え方により1級とすることが定められています。ただし重複障害の認定には、重複して認定すべきでない場合の定めもあります。
実際の等級は、診断書・意見書の内容にもとづいて自治体が個別に判断します。数値だけで等級が確定するものではありません。
聴力レベルはどのように測るのか
聴力レベルの測定方法は、身体障害認定基準(平成15年(2003年)1月10日 障発第0110001号)に定められています。
同基準では、聴力障害を表すにはオージオメータによる方法を主体とすること、聴力測定は補聴器を装着しない状態で行うこと、検査は防音室で行うことを原則とすることが示されています。
また、平均聴力レベルは会話音域の値とされ、周波数500・1,000・2,000ヘルツの純音に対する聴力レベルをそれぞれa・b・cとして、(a+2b+c)÷4の算式で算定します。
補聴器を装着した状態の聞こえ方ではなく、装着しない状態の聴力で判定される点は、誤解されやすいところです。
語音明瞭度で4級に該当する場合があります
等級表の4級には、聴力レベルによる基準(4級の1)とは別に、語音明瞭度による基準(4級の2)が置かれています。
そのため、平均聴力レベルが70デシベルに届かず6級の基準に当てはまらない場合でも、両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下であれば、4級に該当する可能性があります。
語音明瞭度の検査は、決められた検査語のうち正しく聞き取れた語数の割合を求めるものです。どのような検査を受けられるかは主治医とご相談ください。
難聴でも障害者手帳の対象にならないケース
聞こえにくさで日常生活に支障が出ていても、等級表の基準に該当しないため手帳が交付されないことがあります。ここでは代表的な2つのケースと、その場合に確認していただきたい制度を整理します。
片耳のみの難聴(一側性難聴)
等級表の聴覚障害は、原則として両耳の状態で判定されます。
6級の2に「一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの」という定めがありますが、これは片方が90デシベル以上であることに加えて、もう一方も50デシベル以上であることを求める規定です。
したがって、片方の耳がまったく聞こえない場合でも、もう一方の耳の聴力が保たれているときは、聴覚障害としての身体障害者手帳の交付対象にはならないのが原則です。
両耳70デシベルに届かない場合
平均聴力レベルが両耳とも70デシベルに届かず、語音明瞭度も4級の基準に当てはまらない場合、身体障害者手帳の交付対象にはなりません。
ただし、手帳の対象外となる軽度・中等度の難聴の方を対象に、補聴器の購入費用を独自に助成している自治体があります。
実施の有無、対象年齢、所得要件、申請の順序(購入前の申請が必要かどうか)は自治体によって大きく異なります。お住まいの市区町村の障害福祉担当課にご確認ください。
手帳の等級と障害年金の等級は一致しません
難聴で身体障害者手帳を検討される方から、「手帳が○級なら障害年金も同じ等級ですか」というご質問をよくいただきます。結論として、両者の等級は一致しません。日本年金機構も、障害等級表のページで、障害年金の等級は身体障害者手帳の等級とは異なると明示しています。
同じ聴力レベルでも位置づけが変わります
障害年金の聴覚の障害は、国民年金・厚生年金保険障害認定基準(以下「障害認定基準」)の第2節に定められています。手帳の等級表と同じ聴力レベルの軸で並べると、次のようになります。
| 聴力・語音明瞭度の状態 | 身体障害者手帳 | 障害年金 |
|---|---|---|
| 両耳100デシベル以上 | 2級 | 1級 |
| 両耳90デシベル以上 | 3級 | 2級 |
| 両耳80デシベル以上 | 4級の1 | 最良語音明瞭度30%以下なら2級。そうでない場合も70デシベル以上のため3級の基準に該当(障害厚生年金のみ) |
| 両耳70デシベル以上 | 6級の1 | 3級(障害厚生年金のみ) |
| 両耳50デシベル以上かつ最良語音明瞭度50%以下 | 語音明瞭度が50%以下なら4級の2 | 3級(障害厚生年金のみ) |
| 一側耳90デシベル以上かつ他側耳50デシベル以上 | 6級の2 | 純音聴力の数値だけでは一律に判断できません(下記の注記を参照) |
| 一耳80デシベル以上 | 他耳の状態によります | 障害手当金(一時金)の対象となる場合がある |
(出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表」、日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第2節 聴覚の障害・令和4年4月1日改正版)
この表について、次の3点にご注意ください。
- この表は数値の対応関係を示したものであり、両制度が連動するという意味ではありません。実際の判定は、それぞれの制度の診断書等にもとづく個別の判断によります。
- 障害年金の1級・2級は、初診日に国民年金のみに加入していた方は障害基礎年金、初診日に厚生年金保険の被保険者であった方は障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされます。3級と障害手当金は障害厚生年金にのみ設けられています。
- 障害年金の3級には2つの基準があります。①両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの、②両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ最良語音明瞭度が50%以下のもの、のいずれかです。したがって、手帳6級の2(一側90デシベル以上・他側50デシベル以上)にあたる状態でも、他側が70デシベル以上であれば①に、最良語音明瞭度が50%以下であれば②に該当する可能性があります。純音聴力の数値だけを見て「障害年金の対象外」と判断しないでください。
- 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害は併存することがあり、この場合は併合認定の取扱いを行うことが障害認定基準に定められています。めまいやふらつきを伴う難聴の方は、聴覚の障害だけで判断されるとは限りません。
- 障害認定基準では、平均純音聴力レベル値が境界値に近い場合に、4,000ヘルツの値をdとして(a+2b+2c+d)÷6の算式により得た値を参考とする取扱いも示されています。
手帳が取れても障害年金が出ないことがある理由
同じ聴力の状態でも結果が分かれるのは、障害年金に手帳とは別の要件があるためです。障害年金では、次の3つをすべて満たす必要があります。
- 初診日要件:障害の原因となった傷病で初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日が、次のいずれかの間にあること。障害基礎年金は、①国民年金の加入期間、②20歳前(年金制度に加入していない期間)、③日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間(老齢基礎年金を繰上げ受給している方を除く)のいずれか。障害厚生年金は、厚生年金保険の被保険者である間。
- 保険料納付要件:初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。ただし初診日が令和18年(2036年)3月末日までで、初診日において65歳未満であれば、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ要件を満たします。なお、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、納付要件は問われません。
- 障害状態要件:障害認定日(原則として初診日から1年6か月を経過した日等)などにおいて、障害認定基準に定める障害の状態にあること。
(出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)
特に注意が必要なのが、手帳6級に相当する両耳70デシベル以上の状態です。障害年金では3級に相当しますが、3級は障害厚生年金にしかありません。初診日に国民年金のみに加入していた方は、この段階では対象外となります。
障害手当金についても、厚生年金保険の被保険者である間に初診日があること、保険料納付要件を満たすこと、初診日から5年以内に傷病が治り(症状が固定し)その日に3級より軽い一定の障害が残ることが必要です。また、国民年金・厚生年金・共済年金を受け取っている方や、その傷病について労働基準法・労働者災害補償保険法等による障害補償を受ける権利がある方などは、障害手当金を受け取ることができません。
なお、1級・2級であれば必ず障害基礎年金と障害厚生年金の二階建てになるとは限りません。65歳以降に厚生年金保険の被保険者期間中の初診日がある場合は、1級・2級であっても障害基礎年金が支給されず、障害厚生年金のみとなることがあります。
逆に、身体障害者手帳をお持ちでなくても障害年金の請求は可能で、手帳の有無は障害年金の要件ではありません。
また、精神障害者保健福祉手帳には、精神障害を支給事由とする障害年金等を受給している方が年金証書等の写しによって申請する方法がありますが、身体障害者手帳にはその仕組みがありません。聴覚障害では、手帳と障害年金それぞれに所定の診断書を用意して申請することになります。
受給要件の詳細は 障害年金を受け取るための条件 でも解説しています。手帳と障害年金の関係全般については 「障害年金」と「障害者手帳」の関係 もあわせてご覧ください。
難聴で障害者手帳を申請する流れ
ここでは身体障害者手帳の申請手続の流れを整理します。なお、身体障害者手帳の交付申請は福祉の手続であり、当事務所がお手伝いできるのは障害年金に関するご相談です。
窓口と必要書類
申請の窓口は、お住まいの市区町村の障害福祉担当課です。まず窓口で申請書と診断書・意見書の用紙を受け取ります。
診断書・意見書は、身体障害者福祉法第15条にもとづく指定医(いわゆる15条指定医)が作成したものである必要があります。かかりつけの耳鼻咽喉科の医師が指定医であるとは限らないため、事前に窓口や医療機関にご確認ください。
申請時には、申請書と診断書・意見書のほか、顔写真、個人番号(マイナンバー)の確認書類や本人確認書類が必要になるのが一般的です。作成費用は原則として自己負担です。必要書類の細部や交付までの期間は自治体によって異なりますので、窓口でご確認ください。
2級(両耳全ろう)を新規に申請する場合の検査
聴覚障害の認定方法は、平成27年(2015年)4月1日から一部が見直されています。
改正後の身体障害認定要領は、診断書・意見書の「参考となる経過・現症」欄について次のように定めています。
なお、聴覚障害で身体障害者手帳を所持していない者に対し、2級を診断する場合には、聴性脳幹反応等の他覚的聴覚検査又はそれに相当する検査を実施し、その結果(実施した検査方法及び検査所見)を記載し、記録データのコピー等を添付すること。
つまり、すでに聴覚障害で手帳をお持ちの方や、3級から6級の申請をされる方には、この取扱いは及びません。
(出典:厚生労働省「『身体障害認定基準の取扱い(身体障害認定要領)について』の一部改正について」平成27年(2015年)1月29日 障企発0129第1号・平成27年4月1日適用。厚生労働省「身体障害者手帳」に掲載)
障害年金にも同趣旨の定めがあります。障害認定基準は、聴覚の障害により障害年金を受給していない方に1級に該当する診断を行う場合には、オージオメータによる検査に加えて聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査またはそれに相当する検査を実施し、その結果を診断書に記載して記録データの写し等を提出することとしています。
なお、障害年金で聴覚の障害を請求する場合の診断書は、聴覚・鼻腔機能・平衡機能・そしゃく・嚥下機能・音声又は言語機能の障害用(様式第120号の2)を用います。手帳の診断書・意見書とは別の様式です。
手帳で受けられる支援と適用条件
身体障害者手帳をお持ちの方が利用できる支援は幅広くありますが、いずれも等級や利用条件が定められています。「手帳があれば一律に受けられる」ものではない点を押さえておくことが大切です。
税の障害者控除
所得税・住民税には障害者控除があり、身体障害者手帳に身体上の障害がある方として記載されている方は対象となります。手帳に1級・2級と記載されている方は「特別障害者」、3級から6級と記載されている方は「障害者」として取り扱われます(所得税法第79条、同法施行令第10条、国税庁「No.1160 障害者控除」)。
障害者控除の対象は手帳をお持ちの方に限られるわけではなく、他の要件によって対象となる場合もあります。具体的な適用は税務署または税理士にご確認ください。
補装具費の支給・割引・助成
障害者総合支援法にもとづく補装具費支給制度では、補聴器などが支給の対象となります。支給の対象や自己負担額は、障害の程度や世帯の所得の状況によって異なります。
このほか交通機関・公共施設の割引、放送受信料の免除、通信料の割引などがありますが、対象となる等級、利用区間、同伴者の有無などの条件が制度ごとに定められています。手帳側にも、割引の利用時に顔写真の貼付や所定欄の記載が求められる場合があります。医療費助成や福祉サービスの内容は自治体差が大きいため、お住まいの市区町村でご確認ください。
身体障害者手帳の制度全般については 身体障害者手帳とは?やさしくわかりやすく解説 をご覧ください。
不承認だった場合・障害の程度が変わった場合
申請したものの手帳が交付されなかった場合や、交付後に聞こえの状態が変化した場合にも、手続上の選択肢があります。ここではその2つを整理します。
不服がある場合の審査請求・取消訴訟
手帳を交付しないという処分に納得できない場合、行政不服審査法にもとづく審査請求を行うことができます。処分の取消しを求める訴訟を提起することもでき、どちらを選ぶかは原則として申請された方が選択できます。
審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に行う必要があります(行政不服審査法第18条第1項)。あわせて、処分があった日の翌日から起算して1年を経過するとできなくなります(同条第2項)。いずれも正当な理由があるときの例外が定められています。
審査請求では、処分時の障害の状態を裏づける資料を追加で提出することが認められています(行政不服審査法第32条第1項)。
一方、聞こえの状態がその後に悪化した場合は、あらためて申請を行うことになります。手元の資料が「処分時の状態を裏づけるもの」か「処分後の変化を示すもの」かによって、選ぶべき手続が変わります。
訴訟はご本人でも提起できますが、手続が複雑なため弁護士へのご相談をおすすめします。
再認定と等級変更の申請
身体障害者手帳には、原則として有効期限はありません。ただし、更生医療の適用や機能回復訓練等によって障害の状態に変化が予想される場合には、障害を認定した日または再認定を実施した日から1年以上5年以内の期間内に再認定が行われることがあります。
聴覚障害では、将来障害が進行する可能性のあるもの、手術等により障害程度に変化が予測されるもの、確定的な検査の望めない乳幼児の診断について、将来再認定の必要性があるものとして扱われます。慢性化膿性中耳炎等、手術によって聴力の改善が期待できる場合も、慎重な取扱いと再認定の指導が求められています。
聞こえの状態が変わり等級の変更を希望される場合は、あらためて診断書・意見書を添えて申請します。変更の申請でも、あらためて写真の提出を求められるのが一般的です。必要書類は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
なお、ここでいう手帳の「障害を認定した日」は、障害年金の「障害認定日」(原則として初診日から1年6か月を経過した日等)とは別の制度上の概念です。用語が似ているため、混同しないようご注意ください。
難聴で障害年金を申請された方の事例
当事務所では、難聴の方の障害年金申請を数多くお手伝いしてまいりました。以下は当事務所が関与した個別の事例であり、公的な統計ではありませんが、実際の申請の進み方を知る参考になります。
感音性難聴が進行し、厚生年金保険に加入して働きながら障害厚生年金3級が認定された事例があります。また、生まれつきの難聴で、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日があるものとして障害基礎年金が認定された事例もあります。初診日が数十年前にさかのぼり、証明資料の収集に時間を要した事例も少なくありません。
難聴の障害年金では、聴力検査の数値だけでなく、いつから聞こえにくさが始まり、どの医療機関を最初に受診したかという初診日の証明が大きな論点になります。幼少期から聞こえにくさがあった方の場合、学校の健康診断の記録やろう学校の在学証明・卒業証書などが、初診日を確認する資料として用いられることがあります。
※個別事案により判断は異なります。
難聴と障害者手帳に関するよくあるご質問
難聴と身体障害者手帳について、当事務所によくお寄せいただくご質問をまとめました。障害年金に関する詳しい解説は、それぞれの記事もあわせてご覧ください。
Q. 難聴の障害年金はいくらもらえますか?
障害年金の額は等級と加入していた年金制度によって異なり、毎年4月に改定されます。具体的な金額は年度ごとに別の記事で解説しています。
詳しくは 難聴でもらえる障害年金の金額はいくら? をご参照ください。
Q. 生まれつきの難聴でも障害年金の対象になりますか?
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、保険料納付要件は問われず、障害基礎年金の対象となる可能性があります。
ただし、この場合はご本人の前年所得による支給制限があり、所得に応じて2分の1が支給停止、または全額が支給停止となります。支給停止であって受給権が失われるわけではなく、所得が下がれば支給が再開されます。
前年所得にもとづく判定の対象期間は、10月分から翌年9月分までです。所得の限度額は政令で定められており、改定されることがありますので、最新の額は日本年金機構の公式サイトでご確認ください。
初診日が古い場合の考え方は 初診日が20年以上前で障害年金を請求する方法 もご参照ください。
Q. お子さんの難聴でも手帳の対象になりますか?
お子さんも対象になり得ますが、乳幼児の聴覚障害の認定は慎重に取り扱われることとされています。乳幼児の聴力検査には熟練を要するため、他覚的聴力検査の結果など、他に参考となる所見を総合して判断されます。まずは指定医のいる医療機関にご相談ください。
Q. 身体障害者手帳の申請もお願いできますか?
身体障害者手帳の交付申請は福祉の手続であるため、当事務所ではお受けしておりません。お住まいの市区町村の障害福祉担当課にご相談ください。当事務所では障害年金に関するご相談を承っております。
まとめ
難聴で交付されるのは身体障害者手帳(聴覚障害)で、等級は2級・3級・4級・6級の4区分です。判定は平均聴力レベルと語音明瞭度の検査結果にもとづき、聴力は補聴器を装着しない状態で測定されます。
片耳のみの難聴は原則として対象になりませんが、純音の検査で6級に届かない場合でも、語音明瞭度によって4級に該当する可能性があります。
そして、手帳の等級と障害年金の等級は一致しません。手帳6級のうち「両耳70デシベル以上」にあたる状態は、聴力の数値上は障害年金3級の基準にも該当します。ただし3級は障害厚生年金にしかないため、初診日にどの年金制度に加入していたかで結果が変わります。
一方、手帳6級のもう一つの基準である「一側90デシベル以上・他側50デシベル以上」は、純音聴力の数値だけでは障害年金の該当・非該当を判断できません。最良語音明瞭度によって3級の基準に該当する場合があります。身体障害者手帳をお持ちでなくても、障害年金の請求は可能です。
障害年金申請のご相談は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年7月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は 日本年金機構の公式サイト 等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

