てんかんの発作によって仕事や日常生活に支障があり、障害年金を受給できるか知りたいという方は多くいらっしゃいます。

てんかんは障害年金の対象となる傷病ですが、受給できるかどうかは発作の重さや回数だけで決まるわけではありません。

発作が止まっていても受給につながるケースもあれば、発作が重くても認定されないケースもあります。

この記事では、てんかんで障害年金を受給するための認定基準・等級・金額の目安、申請のポイント、不支給だった場合の対応までをわかりやすく解説します。

てんかんと障害年金の基本

てんかんは障害年金の対象です。

障害認定基準上は「精神の障害」に区分され、発作の頻度・重症度と、発作のない時期も含めた生活への支障の程度をもとに等級が判断されます。

てんかんは障害年金の対象になる

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が生じた場合に受給できる公的年金です。

てんかんも、発作や発作間欠期(発作のない時期)の症状によって日常生活や労働に著しい制限がある場合には、受給できる可能性があります。

障害認定基準上、てんかんは「精神の障害」(第8節)に区分されています。

ただし、症状の評価はてんかん発作の重症度や頻度などに着目して行われる点が、ほかの精神疾患とは異なります。

受給には3つの要件がある

障害年金を受給するには、傷病の種類を問わず、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 初診日要件:てんかんの原因となった症状で初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(初診日)に、公的年金に加入していること。なお、20歳前や、日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合も、障害基礎年金の対象となることがあります
  2. 保険料納付要件:初診日の前日において、一定の保険料を納めていること。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は問われません
  3. 障害状態該当:障害認定日などにおいて、障害認定基準に定める程度の状態にあること

なお、保険料納付要件が不要となり、かつ本人の前年所得による支給制限の対象となるのは、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金の場合です(令和8年度は、扶養親族がいない方で前年所得が3,761,000円を超えると2分の1、4,794,000円を超えると全額が支給停止)。

20歳未満であっても、就労して厚生年金に加入している期間に初診日がある場合は、通常の障害厚生年金として扱われ、所得による支給制限もありません。

要件の詳細は、障害年金を受け取るための条件もあわせてご確認ください。

てんかんで障害年金を受給できる可能性

ここでは「てんかんで障害年金はもらえるのか」という核心を整理します。

審査では発作の有無だけでなく、発作がない時期も含めた日常生活や就労への支障の程度が重視されます。

服薬・手術で発作が抑制されている場合は原則対象外

障害認定基準では、てんかん発作が抗てんかん薬の服用や外科的治療によって抑制されている場合、原則として認定の対象にならないとされています。

発作がコントロールできていることは治療として望ましい一方で、障害年金の認定上は不利に働く面があります。

ただし、これは「てんかんでは受給できない」という意味ではありません。

十分な治療を受けてもなお発作が抑えられない場合や、発作以外の症状が残っている場合には、受給につながる可能性があります。

発作が抑えられない難治性てんかんのケース

抗てんかん薬を使用しても発作のコントロールが難しい難治性てんかんでは、発作の重症度や頻度に応じて認定が検討されます。

突然意識を失って倒れる発作だけでなく、意識が一瞬途切れる発作や、手足が勝手に動く発作なども評価の対象です。

発作の頻度や内容を客観的に記録しておくことが、申請の準備として大切になります。

発作間欠期の精神神経症状・認知障害も評価される

てんかんの審査では、発作そのものだけでなく、発作間欠期に現れる精神神経症状や認知障害も重視されます。

発作が薬で治まっていても、抑うつ気分、被害妄想、記憶障害、強い不安などが残り、日常生活に支障をきたしている場合があります。

障害認定基準では、こうした精神神経症状や認知障害について「症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定するとされています。

発作が少ない方でも、発作間欠期の症状によって受給が検討される余地がある点は重要です。

てんかんの障害認定基準と等級の傾向

てんかんの等級は、発作のタイプと頻度の組み合わせ、そして日常生活・労働への制限の程度をもとに判断されます。

ここでは認定基準の枠組みを整理します。

てんかん発作の4つのタイプ(A〜D)

障害認定基準では、てんかん発作を次の4つのタイプに分類しています。

等級の目安はこのタイプを前提に示されます。

タイプ発作の内容
A意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
B意識障害の有無を問わず、転倒する発作
C意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
D意識障害はないが、随意運動が失われる発作

(出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第8節/精神の障害)

等級別の認定の目安(1〜3級)

各等級に相当するとされる状態は、認定基準で次のように例示されています。

あくまで目安であり、実際の認定は総合的に判断されます。

等級障害の状態(例示)
1級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ常時の援助が必要なもの
2級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくはC又はDが月に1回以上あり、かつ日常生活が著しい制限を受けるもの
3級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくはC又はDが月に1回未満あり、かつ労働が制限を受けるもの

発作の回数だけで等級が決まるわけではなく、発作間欠期の症状や日常生活・労働への支障とあわせて総合的に判断される点にご注意ください。

なお、てんかんは「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の対象傷病からは除外されており、障害認定基準により発作の重症度・頻度等を踏まえて認定されます。

障害基礎年金には3級がない点に注意

障害年金の等級は障害基礎年金が1級・2級、障害厚生年金が1級〜3級です。障害基礎年金には3級がありません。

そのため、初診日に国民年金に加入していた方や、20歳前または日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間に初診日がある方は、症状が3級相当にとどまる場合、原則として支給の対象になりません。

一方、初診日に厚生年金に加入していた方は、3級でも障害厚生年金の対象となります。

20歳未満であっても、厚生年金に加入している期間に初診日がある場合は障害厚生年金の対象となり、3級も対象に含まれます。

てんかんで受給できる金額の目安(令和8年度・2026年度)

受給できる金額は、等級と、初診日に加入していた年金制度(国民年金か厚生年金か)によって異なります。

本記事では令和8年度(2026年度)の金額で解説します。

障害年金の受給額の目安(令和8年度・2026年度)

障害年金の受給額の目安(令和8年度)

令和8年度(2026年度)の障害基礎年金は定額で、昭和31年4月2日以後にお生まれの方は次のとおりです。

等級障害基礎年金(令和8年度・年額)
1級1,059,125円(2級の1.25倍)
2級847,300円

昭和31年4月1日以前にお生まれの方は別額で、1級1,056,125円・2級844,900円です。

いずれも、生計を維持している子がいる場合は子の加算が上乗せされます。

初診日に厚生年金へ加入していた方は、1級・2級に該当すると、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされます。

障害厚生年金は報酬比例で計算され、1級は報酬比例の年金額×1.25、2級は報酬比例の年金額がそれぞれ支給され、一定の要件を満たす配偶者がいる場合は配偶者加給年金が加算されます(ただし、配偶者がご自身の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上等)や障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金は支給停止されます)。

3級は報酬比例の年金額のみで、最低保障額(令和8年度635,500円、昭和31年4月1日以前生まれは633,700円)が設けられています。

なお、20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には、本人の前年所得による支給制限があります。

令和8年度は、前年の所得が479万4,000円(扶養親族がいる場合は加算)を超えると全額が、376万1,000円を超えると2分の1が支給停止されます。

報酬比例部分は加入期間や報酬によって大きく異なります。

金額の詳しいシミュレーションは【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額もあわせてご確認ください。

申請のポイントと診断書・申立書

てんかんは、発作の実態や生活への支障が書類に正しく反映されているかどうかで結果が左右されやすい傷病です。

ここでは申請準備のポイントを、形式面を中心に整理します。

診断書は「精神の障害用」を使用する

てんかんで障害年金を請求する場合、診断書は精神の障害用(様式第120号の4)を使用します。

診断書には、発作のタイプや頻度、発作間欠期の症状、日常生活への影響などが記載されます。

発作の状況や日常生活の支障が診断書に十分に反映されるよう、受診時に主治医へ具体的に伝えることが大切です。

なお、医学的な判断や診断の内容については、主治医とご相談ください。

診断書の重要性については、障害年金の申請は「診断書」で9割が決まるでも解説しています。

病歴・就労状況等申立書のポイント

病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの病歴や日常生活の状況を、ご本人や家族(または社会保険労務士)が時系列で記載する書類です。発作の頻度や内容、発作後の状態、生活上の困りごとをできるだけ具体的に記載します。

申立書の書き方は、【自分で書ける】病歴・就労状況等申立書もあわせてご参照ください。

働きながらでも受給できる場合がある

就労していることだけを理由に、障害年金が支給されないと決まるわけではありません。

発作のために危険な作業や運転を避けている、勤務時間を短縮している、職場から配慮を受けているなど、就労に制限や配慮の実態がある場合は、その状況が評価される余地があります。

ただし、こうした実態は書類に反映されていなければ審査で考慮されません。

働きながらの受給については、働きながら障害年金をもらえる人もご参照ください。

「もらえない」と言われた・不支給だったケース

てんかんでは、ご自身で申請したものの不支給となり、その後に弊事務所へご相談に来られる方もいらっしゃいます。

ここでは不支給になりやすい背景と、その後の選択肢を整理します。

よくある不支給の背景

不支給となる背景としては、次のようなケースが見られます。

  • 服薬や手術によって発作が抑制されている状態だった
  • 診断書に発作の実態や生活への支障が十分に反映されていなかった
  • 発作間欠期の精神神経症状が審査側に伝わっていなかった

これらは症状そのものというより、書類への反映の問題であることも少なくありません。発作のない時期の症状を含め、生活への支障を具体的に示すことが重要です。

初診日の証明・社会的治癒

てんかんは小児期に発症するケースもあり、初診日が古く証明が難しいことがあります。

また、いったん発作が治まって長期間受診していなかった後に再発した場合、過去の受診との関係の整理が必要になることもあります。

傷病の前後の関係については、相当因果関係とはもご参照ください。

初診日の証明が難しいケースは、専門家へのご相談をおすすめします。

再請求・審査請求という選択肢

障害認定日の時点では認定基準に該当しなかった方が、その後症状が悪化して基準に該当するようになった場合は、事後重症請求という方法があります。

事後重症請求は65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があり、支給は請求した月の翌月分から(過去にさかのぼっての支給はありません)となるため、症状が該当する場合は早めの請求が大切です。

なお、事後重症請求は障害の状態が悪化した場合の制度であり、初診日や保険料納付要件そのものが認められなかったケースを、症状の悪化だけで解決できるものではありません。

一方、当初の決定そのものに不服がある場合は、審査請求という方法もあります。

審査請求は処分があったことを知った日の翌日から3か月以内、その決定にさらに不服がある場合の再審査請求は、決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に行う必要があります。

不支給の理由を確認したうえで、どの方法が適しているかを検討することが大切です。

考え方は障害年金がもらえない人でも解説しています。

てんかんで障害年金を受給した事例

弊事務所(全国障害年金サポートセンター)では、てんかんの方の障害年金申請を多く手がけています。

発作が抑えられず日常生活に支障があった方、ご自身で申請して不支給となった後に再請求された方、てんかんに精神症状を併発された方、小児期に発症し初診日が古かった方など、状況はさまざまです。

実際の申請者様の事例は、随時ご紹介しています。

※個別事案により判断は異なります。

てんかんの障害年金に関するよくあるご質問

最後に、てんかんの障害年金についてよく寄せられるご質問にお答えします。

Q. 障害者手帳を持っていなくても申請できますか?

申請できます。障害者手帳と障害年金は別の制度であり、審査の基準も異なります。

手帳の有無にかかわらず、障害年金の認定基準を満たしていれば受給できる可能性があります。

手帳との関係は、「障害年金」と「障害者手帳」の関係をご参照ください。

Q. 受給が決まった後、更新で支給が止まることはありますか?

てんかんも有期認定の場合は原則として1〜5年ごとに更新(再認定)があり、障害の状態によって等級が見直されることがあります。

更新の仕組みは、障害年金の更新で落ちる確率で解説しています。

Q. 発作の回数が少ないと受給できませんか?

発作の回数だけで決まるわけではありません。発作間欠期の精神神経症状や認知障害、日常生活・労働への支障も含めて総合的に判断されます。

発作が少ない方でも、生活への支障を具体的に示すことが大切です。

まとめ

てんかんで障害年金を受給するうえでは、発作の重さや回数だけでなく、「発作によってどのような生活上の支障が生じているか」「発作のない時期も含めてどの程度の制限があるか」を具体的に示すことが鍵となります。

服薬で発作が抑えられている場合は原則として認定の対象になりませんが、発作間欠期の症状が残っている場合などは受給につながる可能性があります。

てんかんの障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年6月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。