障害年金の請求を考えるとき、「住んでいる都道府県によって通りやすさが違うのではないか」と気になる方は少なくありません。インターネット上には特定の県名と数値を挙げた記事も見られます。

結論から申し上げると、障害年金の認定に地域差があることは、かつて国の調査で公式に確認されました。ただしその後、認定の仕組みそのものが変更されています。現在の公表統計でも、認定結果の割合に都道府県ごとの差があること自体は確認できます。ただしその差から、特定の都道府県の審査が厳しい、あるいは緩いと判断することはできません。

この記事では、次の4点を順に整理します。①かつて確認された地域差の中身、②その後に取られた制度上の対応、③現在のデータで何が分かり何が分からないか、④お住まいの地域と申請の見通しの関係です。

障害年金の認定に地域差はあるのか

都道府県ごとの認定結果の割合の差は、現在の公表統計から確認できます。ただしその差だけで、どの都道府県の審査が厳しいかを判断することはできません。

時期を3つに分けると分かりやすくなります。

1つ目は、平成27年(2015年)1月です。厚生労働省が「障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査結果」を公表し、不支給割合に差があることを明らかにしました。よく見かける県名と数値は、このときのものです。

2つ目は、平成28年(2016年)から令和元年(2019年)にかけてです。等級判定ガイドラインの策定、審査業務の一元化、複数の認定医が関与する仕組みの導入という3つの対応が取られました。

3つ目は現在です。都道府県別の件数と割合は今も毎年公表されています。ただし、その数字が何を表しているかを確認すると、「通りやすい県」を探す用途には使えないことが分かります。

地域差が公式に確認された平成27年の調査

地域差は、うわさや印象ではなく、国が公表した調査で確認された事実です。ただし、その調査には対象とデータの性質に限定があります。数値だけが一人歩きしやすい部分ですので、限定とあわせてご確認ください。

調査で示された数値

この調査で、不支給割合が最も高かったのは大分県の24.4%、最も低かったのは栃木県の4.0%でした。調査結果は「地域差が認められる」としています。

ただし、この数値には次の限定が付いています。

  • 対象は 障害基礎年金のみ です。障害厚生年金は対象に含まれていません
  • 対象期間は 平成22年度から平成24年度まで の3年分です
  • ここでいう不支給割合は「日本年金機構の 都道府県ごとの事務センター において不支給と決定された件数の割合」と定義されています
  • 注記として「日本年金機構の 本部において不支給と決定された件数を除く」とされています
  • 表1は平成22年度から平成24年度までの平均を集計したものです。表2以降の詳細な分析は、平成24年度の サンプル調査 に基づいています

つまりこの数値は、各都道府県の事務センターが審査を行っていた時期の、障害基礎年金についての記録 です。後述するとおり、審査の体制はその後に変わっています。

(出典:厚生労働省「障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査結果」平成27年1月14日公表・年金局事業管理課給付事業室/日本年金機構給付企画部)

地域差の中心にあったのは精神障害・知的障害の判断

同じ調査は、地域差がどこで生じていたのかにも踏み込んでいます。

まず、**平成24年度のサンプル調査では、調査の対象となった決定事例の 66.9% を精神障害・知的障害が占めていました。**件数の多い区分です。

そのうえで、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」が(2)相当だった方について、県別の比較が行われています。不支給割合の低い10県では 5.3% が等級非該当だったのに対し、高い10県では 70.8% が等級非該当でした。同じ程度の記載でも判断が分かれていたことになります。

一方で、次の2点については、調査で地域差を確認できませんでした。

  • 初診日不明による却下処分 となった割合は、全体で 0.7% でした。件数が少ないため、初診日の判定にかかる地域差の傾向を確認することは困難であったとされています
  • 就労状況の記載の有無 による等級非該当割合は、記載がある場合 12.5%、記載がない場合 11.9% で、大きな差異はありませんでした

**ただし、これらの結果から、初診日の判定や就労状況の評価が地域差に影響していなかったとまでは断定できません。**同じ調査のヒアリングでは、就労について「審査のポイントは就労の継続期間、頻度、収入など様々である」とも報告されています。

この結果を、あらゆる障害について特定の県の審査が一律に甘い、あるいは厳しいという意味に一般化することは適切ではありません。

地域差に対して取られた3つの制度対応

調査結果が公表されたまま放置されたわけではありません。平成28年から令和元年にかけて、認定の仕組み自体に3つの変更が加えられました。現在のデータを読むうえで、この経緯を押さえておく必要があります。

精神の障害に係る等級判定ガイドラインの策定

1つ目は、精神の障害に係る等級判定ガイドラインです。平成28年(2016年)9月1日から実施されています。

ガイドラインは、その趣旨として「この調査結果を踏まえ、認定に地域差による不公平が生じないようにするため」と述べています。地域差の調査が、そのまま策定の契機になっています。

内容は、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定の平均」の組み合わせごとに、障害等級の 目安 を示すものです。

ここで大切なのは、目安と認定結果の関係です。ガイドライン自身が次のように定めています。

障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり得ることに留意して用いること。

(出典:厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」)

目安に当てはめれば等級が決まる仕組みではない という点は、ガイドライン自身が明記しています。

また、このガイドラインには対象傷病の限定があります。

このガイドラインの対象とする傷病は、障害認定基準第3第1章第8節精神の障害に定める傷病とする。ただし「てんかん」については、てんかん発作の重症度や頻度等を踏まえた等級判定を行うことについて障害認定基準で規定していることから、このガイドラインの対象傷病から除く。

てんかんは対象傷病から除かれており、障害認定基準に基づいて判定されます。

障害年金センターへの審査業務の一元化

2つ目は、審査を行う組織の変更です。厚生労働省は次のように説明しています。

障害年金の審査業務について、審査の適正性の向上、認定業務の標準化、職員の専門知識・スキルの向上や体制集約による効率化を実現するため、本部及び各都道府県事務センターまたは広域事務センターにおいて実施してきた審査業務を全国1か所の拠点である障害年金センターに集約し、2017年4月には審査業務を一元化した。

(出典:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第12 障害年金」)

この変更は、地域差というテーマを考えるうえで決定的です。平成27年の調査が前提としていた「都道府県ごとの事務センターが審査を行う」という体制は、2017年4月以降は存在しません。

なお、ここでいう審査業務は日本年金機構が行うものです。共済組合等に加入していた期間に初診日がある場合の取扱いは、加入していた実施機関にご確認ください。

複数の認定医が関与する仕組みの導入

3つ目は、認定に関わる体制です。2019年には、複数の障害認定医が認定に関与する仕組み(セカンドオピニオン)の導入と、障害認定審査委員会の設置が行われました。

これらを踏まえ、厚生労働省は同じ資料で「ガイドラインを踏まえつつ、診断書の記載内容に基づき個別の事案に即して総合的な評価を実施することにより、認定業務の集約化と相まって、地域差は着実に縮小してきている」としています。

公表されている表現は「縮小してきている」であり、「解消した」ではありません。この記事でも、それ以上のことは申し上げられません。

現在公表されているデータで何が分かるか

都道府県別の数値は、現在も毎年公表されています。ただし、その数値が何を表しているかを確認してから読む必要があります。

業務統計の「都道府県別件数」に載っているもの

日本年金機構は「障害年金業務統計」を公表しています。そのなかに 3.都道府県別件数5.都道府県別・診断書種類別件数 という集計があります。

区分掲載されている列
新規裁定決定数・支給・非該当
再認定(更新)決定数・支給・支給停止

いずれも障害基礎年金・障害厚生年金の別に分かれており、障害厚生年金の支給欄はさらに1級・2級・3級・障害手当金に分かれています。

表の注記には「各欄の上段は件数、下段は構成比(%)」「都道府県別に分類されない件数は除いている」と記載されています。つまり、都道府県ごとの非該当の件数と、その構成比の両方が印字されています。

この統計は、各年度のデータが翌年度の秋頃に公表 されます。令和5年度決定分は令和6年9月、令和6年度決定分は令和7年9月、令和7年度決定分は令和8年9月の公表です。手元の数字がいつのものかを確認する目印になります。

(出典:日本年金機構「障害年金業務統計(令和7年度決定分)」)

このデータからどこまで読み取れるか

前の項目のとおり、この統計には支給・非該当の件数と構成比が都道府県別に載っています。したがって、集計された認定結果の割合に都道府県ごとの差があること自体は、統計から確認できます。

しかし、そこから先には進めません。理由は2点です。

1つ目は、この表が条件をそろえた比較ではないことです。 請求された方の障害の状態や傷病の構成は、都道府県ごとに異なります。**割合の違いが分かることと、その違いが審査の厳しさから生じたと分かることは、別のことです。**同じ組織が審査していても、請求者の構成が異なれば結果の割合は変わり得ます。

2つ目は、統計に「何を基準に分類されているか」の説明がないことです。 同統計の用語の解説には、障害基礎年金・障害厚生年金の決定件数、新規裁定・再認定、診断書種類の定義が置かれています。しかし、分類の基準についての記載は見当たりません。請求された方の住所地なのか、書類を受け付けた窓口の所在地なのか、公表資料からは確認できません。**その割合が何を単位とした割合なのかも、確定できないことになります。**加えて、表には「都道府県別に分類されない件数は除いている」という注記も付いています。

なお、日本年金機構の審査業務は2017年4月に障害年金センターへ一元化され、都道府県ごとに審査の主体が分かれる体制ではなくなりました。

これらを踏まえると、**割合の違いから「◯県は通りやすい」「△県は通りにくい」と判断することはできません。**同じ状態の方がどの都道府県なら認定されやすいか、引っ越すことで有利になるかを、現在の統計から判断することもできません。

全国の水準を知りたい場合

地域別ではなく、全国でどのくらいの割合が非該当となっているかをお探しの場合は、別の記事で扱っています。

また、報道で取り上げられた不支給率の変化については、別途整理した記事があります。

住んでいる地域で申請をためらう必要はありません

地域差があったという事実と、ご自身の申請の見通しとは、別の軸の話です。ここでは、実際の審査で何が見られているのかと、決定に納得できない場合の手続きを整理します。

審査の中心にあるのは提出書類の内容

障害認定基準は、障害の程度の認定について次のように定めています。

障害の程度の認定は、診断書及びX線フィルム等添付資料により行う。ただし、提出された診断書等のみでは認定が困難な場合又は傷病名と現症あるいは日常生活状況等との間に医学的知識を超えた不一致の点があり整合性を欠く場合には、再診断を求め又は療養の経過、日常生活状況等の調査、検診、その他所要の調査等を実施するなどして、具体的かつ客観的な情報を収集した上で、認定を行う。

(出典:厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第2「障害認定に当たっての基本的事項」3「認定の方法」(1))

必要に応じて調査等が行われることもありますが、審査の出発点となるのは提出された書類 です。中心となるのは 診断書病歴・就労状況等申立書 の2つです。

**地域別の数字だけを気にするのではなく、ご自身の日々の状況が書類に具体的かつ正確に記載されているかをご確認ください。**記載がないと、その事情は適切に評価されにくくなります。

なお、障害年金には初診日要件・保険料納付要件・障害状態要件の3つの受給要件があります。非該当という結果は、障害の状態だけで決まるものではありません。

決定に納得できないときの手続き

決定の内容に納得できない場合は、不服申立ての手続きがあります。

審査請求 は、決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内 に、社会保険審査官に対して行います。その決定にも不服がある場合の 再審査請求 は、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内 に、社会保険審査会に対して行います。いずれも期限がありますので、お早めにご検討ください。

なお、症状が悪化した場合などに改めて請求する「再請求」は、当初の決定そのものを争う審査請求とは目的が異なります。どちらを選ぶかは状況によって変わります。

よくあるご質問

地域差に関して、ご相談の際によくいただくご質問をまとめました。

Q. 障害年金が通りやすい都道府県はありますか?

集計された認定結果の割合には、都道府県ごとの差が見られます。ただしこの表は、請求された方の障害の状態などを同条件にそろえた比較ではありません。**割合の違いだけから、特定の都道府県の審査が厳しい、あるいは緩いと判断することはできません。**また、分類の基準についての記載がないため、その割合が何を単位としたものかも確定できません。審査業務は2017年4月に障害年金センターへ一元化されています。

Q. 引っ越してから申請したほうが有利になりますか?

日本年金機構の審査は障害年金センターで一元的に行われています。引っ越しによって認定されやすくなるとは、現在の公表統計から判断できません。

一方、**請求を先延ばしにすると、支給の開始が遅れる可能性があります。**事後重症による請求は、請求した日の翌月分からの支給となり、さかのぼりはありません。**また、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。**引っ越しのご予定がある場合も、請求方法・支給開始時期・期限を先にご確認ください。

Q. 昔と今で、地域差のデータの意味は同じですか?

同じではありません。平成27年の調査は、都道府県ごとの事務センターが審査を行っていた時期の、障害基礎年金についてのものです。現在の業務統計は、審査が一元化された後の決定件数を集計したものです。同じ「都道府県別」という言葉でも、数値が表しているものが異なります。

Q. 都道府県別のデータはどこで見られますか?

日本年金機構のホームページで公表されている「障害年金業務統計」に、都道府県別の決定件数と構成比(%)が掲載されています。

地域ではなく書類の内容が論点になった事例

弊事務所がお手伝いした事例のなかから、お住まいの地域ではなく、提出する資料の内容が論点になったものをご紹介します。

※個別事案により判断は異なります。上記は弊事務所が関与した個別の事例であり、公的な統計ではありません。

まとめ

障害年金の地域差について、この記事で整理した内容を4点にまとめます。

  1. かつて地域差は公式に確認されました。 平成27年1月の調査で、不支給割合が最も高い大分県24.4%、最も低い栃木県4.0%という差が示されました。ただし対象は障害基礎年金のみで、平成22〜24年度のデータです
  2. その後、制度上の対応が取られました。 平成28年9月1日からの等級判定ガイドラインの実施、2017年4月の障害年金センターへの一元化、2019年の複数認定医による仕組みの導入です。厚生労働省は「地域差は着実に縮小してきている」としています
  3. 都道府県ごとの割合の差は統計から確認できますが、そこから審査の厳しさは判断できません。 条件をそろえた比較ではないこと、分類の基準の説明がないことが理由です。同じ状態の方がどの都道府県なら認定されやすいかは、現在の統計からは分かりません
  4. お住まいの地域と、ご自身の申請の見通しは別の軸です。 審査の出発点となるのは診断書と病歴・就労状況等申立書の内容であり、3つの受給要件を満たしているかどうかです

障害年金申請のご相談は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年9月時点の年金法令・障害認定基準・公表統計に基づき作成しています。
法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は
日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。
個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。
医学的判断は主治医にご確認ください。