公立学校共済組合の障害年金

はじめに

はじめに

公立学校の教職員として働く中で、もし病気やけがによって障害が残った場合、「障害年金」を受け取れる可能性があります。

本記事では、公立学校共済組合の組合員(教職員等)やそのご家族を対象に、障害年金制度の基本から申請方法、知っておきたいポイントまでわかりやすく解説したいと思います。

日本全国の教職員の方に役立つ情報を網羅していますので、「もしものとき」に備えてぜひ参考にしてください。

公立学校共済組合と障害年金

公立学校共済組合と障害年金

公立学校の教職員が加入する年金制度で、従来は民間サラリーマンの厚生年金とは別体系の「共済年金」として運用されてきました。

しかし、2015年10月(平成27年)に公的年金制度の一元化が行われ、現在は厚生年金と統合されています

そのため、教職員の障害年金も基本的な受給条件や仕組みは障害厚生年金と同様です。

ただし、給付や手続きは各共済組合(この場合、公立学校共済組合)が担当します。

その結果、審査は共済組合ごとに行われるため、必要書類や審査基準が若干異なり、一般の障害年金(障害厚生年金・障害基礎年金)に比べて時間がかかるケースもあります。

教職員の方は、自分の加入する公立学校共済組合を通じて手続きを進める点を押さえておきましょう。

障害年金とは

障害年金とは

障害年金は、公的年金の加入者が病気やケガで一定の障害状態になったときに受け取れる年金給付です。

公的年金には全国民共通の障害基礎年金(国民年金)と、会社員や公務員が加入する障害厚生年金(厚生年金保険)があります。

公立学校の教職員の場合、在職中は厚生年金の被保険者でもあり、障害厚生年金(かつての障害共済年金に相当)を請求できます。

また、障害の程度が重い場合は障害基礎年金も併せて受給可能です。

障害年金は公的保険制度に基づく権利であり、労働者災害補償保険や民間の保険金とは別枠で給付されます。

(※障害年金に関しましては『障害年金とは』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

公立学校共済組合における障害年金の仕組み

公立学校共済組合における障害年金の仕組み

公立学校共済組合の障害年金は、公的年金制度の一部として位置付けられています。

具体的には「障害厚生年金(報酬比例部分)」が中心で、経過的職域加算額(経過措置の上乗せ)は、平成27年9月以前の組合員期間に初診日がある場合に対象となります。

加入していた時期だけでなく、初診日がどこに属するかで判定されます。(参考:公立学校共済組合ホームページ『障害の年金のしくみ』)

さらに、障害等級が1級または2級に該当する場合には、土台となる障害基礎年金(国民年金分)も日本年金機構から支給されます。

言い換えると、公立学校共済組合の組合員が受け取る障害年金は、「障害厚生年金(+職域加算)+障害基礎年金(※1・2級時)」という構成になっています。

※なお、平成27年10月の制度統合以降は在職中の教職員であっても障害年金を請求・受給することが可能です(統合前は在職中の支給に制限がありましたが、現在は緩和されています)。ただし、統合前からの上乗せ部分である経過的職域加算額については、在職中は全額支給停止となります。つまり、現職のまま障害状態になった場合でも、一定の年金を受け取りながら働き続けることができます。(参考:公立学校共済組合ホームページ『知っておきたい!障害厚生年金』)

障害年金を受け取れる条件(受給要件)

公立学校共済組合の障害年金(障害厚生年金)を受給するには、以下のすべての条件を満たす必要があります。

  • 初診日要件: けがや病気について最初に医師の診療を受けた日(初診日)が、公立学校共済組合の組合員として共済年金に加入している期間中であること。つまり、在職中に発症した病気・負傷である必要があります(退職後に発症した場合は通常、共済ではなく国民年金など別制度での障害年金対象となります)。
  • 保険料納付要件: 初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの期間について、保険料納付済期間(厚生年金・共済組合の期間を含む)と免除期間を合算した期間が3分の2以上あることが基本です。ただし、初診日が令和18年3月末日までで、かつ初診日に65歳未満であれば、初診日の前日において直近1年間に保険料の未納がなければ納付要件を満たします。いずれにせよ、保険料をきちんと納めていないと受給できない点に注意してください。
  • 障害状態要件: 上記の初診日から原則1年6か月経過した日(障害認定日)または障害認定日後65歳になる日の前日までに、公的年金制度で定める障害等級1級~3級の状態に該当していること。障害認定日当日に該当していなくても、65歳になる前日までに症状が悪化して1~3級相当になれば請求可能です(これを「事後重症」といい、後述します)。

支給される年金の種類と障害等級

支給される年金の種類と障害等級

障害の程度(等級)に応じて、受け取れる年金の種類や金額が異なります。

公立学校共済組合の組合員の場合も基本的な仕組みは厚生年金の障害年金と同じで、1級・2級・3級が障害年金の対象等級です。

1級・2級は(障害基礎年金+障害厚生年金)、3級は障害厚生年金(報酬比例部分)のみで、障害基礎年金は支給されません。

令和7年度の障害基礎年金(定額部分)は、1級が約104万円、2級が約83万円で、これに障害厚生年金(報酬比例部分)や各種加算が上乗せされます。

一方、3級は日常生活が送れる程度の中程度障害のため、公的年金からの給付は限定的です。

しかし働きづらさを補償する趣旨で最低保障が設けられており、最低でも年間約62万円前後(2025年度)の受給が見込めます。

それ未満の軽い障害の場合は年金ではなく一時金(障害手当金)が支給されることがあります。

各等級ごとの受給内容の概要は次のとおりです。

障害等級1級

他人の介助なしにはほとんど日常生活ができないような最も重度の障害状態です。

受給できるのは障害基礎年金(1級)+障害厚生年金の計2階部分です。

障害厚生年金の額は後述の報酬比例部分の1.25倍に増額され、さらに65歳未満の配偶者を扶養している場合は年額約23.93万円の加給年金が加算されます。

例えば令和7年度(2025年度)時点の障害基礎年金1級は年額約103万9,625円(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)と定められており、これに自身の給与に応じた厚生年金部分が上乗せされます。

なお、障害基礎年金には、受給者に生計維持されている子がいる場合、子の加算(2人まで各239,300円、3人目以降各79,800円)が加算されます。

障害等級2級

日常生活は何とか送れるものの極めて困難で、労働による収入を得られない程度の重い障害です。

受給できるのは障害基礎年金(2級)+障害厚生年金です。

障害基礎年金2級は令和7年度で年額約83万1,700円(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)。

厚生年金部分は本人の給与・加入期間によって計算され、配偶者加給年金(約23.93万円/年)が条件により加算される点は1級と同様です。

なお、障害基礎年金には、受給者に生計維持されている子がいる場合、子の加算(2人まで各239,300円、3人目以降各79,800円)が加算されます。

障害等級3級

日常生活に大きな支障はないものの、働く上では著しい制限や制約を受ける程度の障害状態です。

障害厚生年金(報酬比例部分)のみが支給され、障害基礎年金は付きません。

厚生年金部分の金額は基本的に自身の平均給与と加入期間に応じて算出されますが、金額が低すぎる場合には一定の最低保障額が設けられています。

たとえば昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、3級の年金は最低でも年額623,800円(令和7年度)支給されるよう法律で保障されています。

障害手当金

上記1~3級に該当しない比較的軽度な障害が残った場合に、一度きり支給される一時金です。

公立学校共済組合では、初診日が厚生年金加入中であること、かつその傷病が初診日から5年以内に症状固定(治癒)し、その時点で障害厚生年金を受けられるほどではない障害が残ったこと等を条件に支給されます。

要件に該当すれば治った時点で請求でき、支給額は障害の程度に応じた計算(一時金にも最低保障額があります)となります。

なお、治った日(症状固定日)に老齢年金や他の障害年金を受け取っている場合や、その障害について公務災害補償を受ける場合は支給されません。

障害手当金はあくまで年金では補えない軽度障害への救済措置と位置付けられます。

公立学校共済組合の障害年金の請求手続き

公立学校の教職員の方々が障害年金を申請する場合、どのような流れで申請準備を進めるかをご説明します。

請求のタイミング

障害年金の申請が可能になるという基準日を「障害認定日」と言います。(※障害認定日に関しましては『障害認定日とは』のページで詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

請求方法には大きく2つあります。

障害認定日による請求:障害認定日に所定の障害状態にあるときは、障害認定日の翌月分から年金を受給できます。請求は障害認定日以降いつでもできますが、遡って受け取れる年金は時効により5年分が限度です。

事後重症による請求:障害認定日に該当しなくても、その後重くなった場合は、請求日の翌月分から受給できます。ただし請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出が必要です。

一方、障害手当金については該当要件を満たした時点で請求可能ですが、初診日から5年以内に治癒していることが条件となるため、タイミングを逸しないよう注意が必要です。

いずれの場合も65歳以降は新たに障害年金を請求することはできませんので(老齢年金との制度切替のため)期限内の手続きを心がけましょう。

どこに請求するか

どこに請求するか

公立学校共済組合の障害年金は、市区町村や日本年金機構ではなく、公立学校共済組合の各支部を通じて請求します。

現職の組合員の場合は在職都道府県の共済組合支部、すでに退職している場合は退職時に在籍していた都道府県の共済組合支部が窓口となります。

まず支部に電話等で連絡し、年金請求に必要な書類一式を取り寄せます。

支部への連絡時には、年金待機者番号(退職者の場合)、氏名、生年月日、障害年金を請求したい旨、送付先住所、連絡先電話番号、退職年月日(退職者の場合)などを伝えることになります。

在職中の方も基本的には同様で、所属先のある都道府県支部に連絡します。

準備する書類

障害年金の申請に必要な主な書類

共済組合支部から送付されてくる書類には、所定の年金請求書、医師が作成する診断書(障害状態を証明するもの)、本人が記入する病歴・就労状況等申立書、そして障害給付請求事由確認書などが含まれます。

これらを受け取ったら、主治医に診断書の作成を依頼し、自身でもこれまでの治療経過や現在の生活状況を申立書に詳しく書きます。

ポイントは、初診日の証明と障害の状態を客観的に示すことです。

初診日の証明は、初診時の医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらう形で行います(ただし初診医療機関が廃業等の場合は別途相談)。

診断書や受診状況証明書の取得には時間がかかることもあるため、早めに動きましょう。

注意‼

身体障害者手帳などを既に取得している場合でも、それだけで障害年金が受給できるわけではありません。
障害年金の等級判定は年金制度独自の基準で行われ、提出された診断書等をもとに共済組合が委嘱する専門医(認定医)が審査します。
そのため、「手帳を持っているから自動的に年金ももらえる」と思い込まず、必ず正式に請求手続きを行う必要があります。
実際に請求してはじめて審査が行われ、受給の可否や等級が決定されます。

公立学校共済組合の障害年金の審査と給付の流れ

公立学校の教職員の方々が障害年金を申請した後、どのような流れで審査から受給まで進んでいくのかをご説明します。

障害年金の審査の流れ

提出した請求書類一式は、公立学校共済組合の年金給付担当部署で審査されます。

前述のとおり、共済組合ごとに審査基準や求められる資料が若干異なる場合があり、審査には時間を要することもあります

例えば、ある共済では20年分のカルテ提出を求められたケースも報告されており、障害厚生年金(一般の厚生年金)に比べ手続きが煩雑になることもあるようです。

提出後しばらくして追加資料の請求が来る場合もありますので、指定された書類は漏れなく準備するとともに、主治医から詳しい診療情報提供書をもらうなど万全の書類準備を心がけると良いでしょう。

審査結果の通知と年金の受給

審査が完了すると、共済組合から結果が通知されます。

無事認定された場合は支給開始決定通知書が届き、障害等級や年金額などが知らされます。

年金は原則として請求した翌月分から支給対象となり、支給は偶数月に2か月分ずつ指定の銀行口座に振り込まれます(他の年金と同様です)。

例えば4月に請求し6月に認定された場合、6月分・7月分の年金が8月にまとめて振り込まれる、といった形になります。

継続給付に関する手続き

一度障害年金の受給権を得た後も、障害の状態について定期的な確認が行われる場合があります。

症状が固定しておらず改善の可能性があるケースでは、1〜5年おき(等級により異なる)に障害状態確認届(診断書)の提出が求められ、現在の障害等級に該当するかをチェックされます。

これにより、障害状態が軽減した場合は等級の変更や支給停止となる可能性もありますので、指示されたタイミングで必ず届出をしてください。

障害の程度が軽くなって3級にも該当しない状態になった場合は支給停止となりますが、受給権が消滅する時期は、「不該当となった日から3年を経過したとき」または「65歳に達したとき」のいずれか遅いときです。

一方で、症状が重く改善見込みがないと判断された場合などは診断書提出が免除され、そのまま継続受給となるケースもあります。

また、受給中は毎年1回、生存と所定の障害状態を確認する書類(現況届等)が送付されることがあります。

これは年金を適正に支給し続けるための定期確認ですので、忘れず提出しましょう。

提出を怠ると年金が一時止められてしまうこともあります。

教職員の障害年金に関するQ&A

最後に公立学校の教職員の障害年金に関してよくあるご質問をご紹介したいと思います。

Q: 教職員以外の公務員や私学教職員の場合は?

国家公務員や地方公務員(消防・警察等)、私立学校の教職員も、それぞれ共済組合に加入していれば基本的に同様の障害年金制度があります。

平成27年10月の一元化以降、どの共済組合でも受給要件は厚生年金と共通化されました。

ただ、請求先は各所属先の共済組合になり、審査方法に多少の違いがある点も教職員共済と同様です。

私立学校の教員であれば私学共済(現在は名称変更して国家公務員共済に統合)での手続きとなります。

基本的な考え方は共通なので、本記事の内容は他の共済加入者にも参考になります。

Q: 公務上の災害で障害が残った場合はどうなりますか?

授業中や通勤中の事故など公務災害に該当する事由で障害を負った場合、公立学校共済組合の年金とは別に地方公務員災害補償の対象となることがあります。

その場合、災害補償から公務障害年金などの給付(労災の公務員版のようなもの)が支給される仕組みです。

公務災害補償による年金を受ける場合、公立学校共済組合の障害手当金は支給されません(制度上の調整措置です)。

しかし障害年金そのもの(障害厚生年金部分と障害基礎年金)は、公務上の事故であっても通常どおり請求可能です。

つまり、公務災害による補償と公的年金による障害年金は両方受給できる場合があります

該当するケースでは、職場経由で公務災害の手続きも並行して進めるようにしましょう。

Q: 障害年金の請求は社労士など専門家に依頼すべき?

初めての方には手続きや書類準備が複雑に感じられるため、社会保険労務士(年金専門の社労士)に代行を依頼する方もいます。

特に精神疾患や複数の傷病にまたがるケース、書類作成に不安がある場合などは専門家のサポートを検討してもよいでしょう。

一方で、公立学校共済組合の障害年金請求はまず支部に相談することが第一歩です。

支部の担当者が親切に必要書類の案内をしてくれますし、不明点も教えてくれます。

請求そのものはご自身でも十分可能ですので、費用をかけたくない場合は支部と主治医の協力を得ながら手続きを進めてみましょう。

おわりに

まとめ

公立学校共済組合の障害年金は、教職員の生活と家族の暮らしを支える大切な制度です。

受給条件や手続きには少し専門的な知識が必要ですが、本記事で解説したポイントを押さえておけば、「いざというとき」に落ち着いて行動できると思います。

悩んだときはまず共済組合支部に連絡し、公式の案内に沿って進めることが肝心です。

また、公的な制度である以上、申請しなければ給付は受け取れません。障害年金の制度を正しく理解し、必要なときには遠慮せず請求して、長年勤めてきた教職員としての権利をぜひ活用してください。

読者の皆さまの不安や疑問が少しでも解消し、安心して将来に備えられることを願っています。

万一の際には、本記事の情報がお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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