併合認定とは

障害年金を申請する際に、複数の障害を抱えているケースも珍しくありません。

このような場合、障害年金の障害等級(重さの度合い)の認定がどのように行われるのか気になりますよね。

結論としては、複数の障害があると通常とは異なる認定方法が適用されることがあります。

例えば「併合認定」に該当すれば、一つの障害だけで申請するよりも高い等級に認定される可能性があります

この記事では、この併合認定とは何か、その仕組み手続き、注意点などについて、できるだけ専門家の立場からやさしく解説します。

複数の障害がある場合に障害年金で不利にならないよう、ぜひ最後までお読みください。

併合認定とは

併合認定とは

併合認定(へいごうにんてい)とは、複数の障害をそれぞれ個別に評価(等級判定)したうえで、それらを専用の認定表(併合認定表)に当てはめ最終的な障害等級を決定する方法です。

簡単に言うと、一人の人が複数の障害を抱えている場合に、「それぞれの障害が体全体に及ぼす影響」を総合的に評価して、適切な障害等級を決め直す制度ということになります。

この結果、本来より高い等級が認定されることもあります

日本年金機構の公式基準によれば、併合認定は例えば次のようなケースで行われます。

  • 障害認定日(初診から一定期間後に障害の状態を固定的に評価する日)において、認定の対象となる障害が2つ以上ある場合(=複数の障害が同時に存在する場合)。
  • 「初めて2級」による年金支給事由が生じた場合。これは、それぞれの障害単独では2級に達しないものの、複数の障害を合わせることで初めて障害等級2級に該当する状態になったケースを指します。
  • このほか、既に障害基礎年金または障害厚生年金を1級や2級で受給している人が新たに別の重い障害を負った場合(この場合は後述の加重認定と呼ばれます)も対象になります。

以上のように、併合認定は一度の申請時点で複数の重い障害がある場合や、複数の障害を合算しないと年金の受給要件に達しない場合などに適用される認定方法です。

要するに、複数の障害によって全体としてより重い障害状態にある人が適切に年金を受給できるようにする仕組みと言えるでしょう。

複数の障害がある場合の認定方法(併合認定・加重認定・総合認定・差引認定)

複数の障害がある場合の認定方法

複数の障害を抱える場合には、併合認定以外にもいくつかの認定方法が設けられています。

障害の種類や発生時期によって、併合認定ではなく他の認定方法が適用されることもあります。

ここでは併合認定とあわせて主要な方法を簡単に紹介します。

併合認定と加重認定の違い

「加重認定」は併合認定と非常によく似た制度ですが、主に障害の追加発生時期に注目した呼び方です。

加重認定とは、すでに障害基礎年金または障害厚生年金の1級または2級で受給している人に、さらに別の障害が生じ、その新たな障害についても本来であれば1級または2級の障害年金を支給すべき程度になった場合に行われる認定方法です。

既存の障害に新しい障害が加わることで全体として障害が重くなるため、併合認定と同じ仕組みで併合番号を求め、等級の見直し(加重)が行われます。

たとえば、もともと2級の障害年金を受給中の方に、さらに別の2級相当の障害が加わった場合などが加重認定の典型例です。

併合認定と加重認定の判定の仕組み自体は同じであり、どちらも複数の障害を併せて評価して最終等級を決める方法です。

違いは適用される場面で、申請時点で2つ以上の障害が同時に存在している場合は「併合認定」、既に1級または2級の障害年金の受給権がある人に、さらに1級または2級相当の別の障害が加わった場合は「加重認定」と呼び分けられます。

つまり、同時に複数障害を抱えているケースなら併合認定あとから別の重い障害が加わったケースなら加重認定と理解するとよいでしょう。

総合認定

総合認定」は、併合認定のように障害を個別に評価するのではなく、複数の障害全体をひとつの障害として総合的に障害等級を判定する方法です。

主に、どの傷病が原因の障害なのか切り分けにくい場合に用いられます。

例えば、複数の精神疾患内科的な疾患が併存しており、それぞれ個別に評価することが難しいケースでは、この総合認定が適用されることがあります。

総合認定では、障害をあえて分けずに全体として症状の重さを評価するため、複数の関連する疾患による障害に対応した方法と言えます。

差引認定

差引認定」は少し特殊なケースに適用される方法です。

障害認定の対象とならない既存の障害(前発障害)と同じ部位に新たな障害(後発障害)が発生した場合に、この差引認定が行われます。

具体的には、もともと障害年金の対象外だった障害がある部位に後から対象となる障害が起きたようなケースです。

差引認定では、まず複数の障害が混在した現在の全体的な障害状態を評価し、そこから前からある障害の程度を差し引いて残った後発障害の程度を改めて評価します。

この方法では、他の認定方法と異なり障害等級が下がる(軽くなる)可能性もあります。

同じ障害状態でも、以前からあった障害分は年金の対象にしない形で評価されるためで、これは一般の障害年金受給者との公平性を保つための仕組みです。

差引認定は特殊なケース向けですが、複数障害に関する認定方法のひとつとして覚えておきましょう。

なお、「はじめて2級による年金」に該当するケースについては、差引認定ではなく併合認定のルールが適用されると定められています。

併合認定の仕組み(等級の決め方)

併合認定の仕組み

では、併合認定では具体的にどのように複数の障害から最終的な等級を決めるのでしょうか。

その仕組みは少し複雑ですが、ポイントを押さえてわかりやすく説明します。

併合認定では2つの表(基準表)を使って等級を計算します。

併合認定では、まず「別表1 併合判定参考表」で、それぞれの障害状態に対応する番号(◯号)を確認します。

この参考表には視覚・聴覚・肢体・精神などの障害が列挙されており、概ね「重い障害ほど小さい号数、軽い障害ほど大きい号数」が付けられています。ただし、この号数そのものが最終的な障害等級になるわけではありません。

次に、別表2の「併合(加重)認定表」を使って、先ほど求めた号数どうしを組み合わせ、併合番号(1〜12号)を求めます。

併合番号と最終的な障害等級との対応は、次のように定められています。

  • 併合番号1号 … 障害等級1級
  • 併合番号2〜4号 … 障害等級2級
  • 併合番号5〜7号 … 障害等級3級
  • 併合番号8〜10号 … 厚生年金の障害手当金(一時金)に相当
  • 併合番号11・12号 … 障害年金・障害手当金ともに不該当

つまり「1級=1号、2級=2〜4号…」という対応は、併合判定参考表の号数ではなく、併合表で求める“併合番号”に対するものだと理解しておく必要があります。

3級の障害が2つあるケース

例えば、2つの障害があるケースを考えてみましょう。

2つの障害があるケース

ひとつは両目の視力が0.1以下という視力障害(これは障害等級3級相当で参考表番号6号に該当)、もうひとつはうつ病で短時間勤務も困難な状態という精神障害(こちらも障害等級3級相当で参考表番号7号に該当)だとします。

この場合、参考表で得た「6号」と「7号」を併合認定表の縦軸・横軸に当てはめると、その交差する箇所に記載された併合番号は「4」になります。

そして併合番号4号は障害等級2級に対応しています。

つまり、この方はそれぞれの障害単独では3級相当ずつですが、併合認定の結果、最終的には2級と認定されることになるのです。

上記のように、併合認定では2つの障害がある場合、それぞれの障害状態を番号(号数)で把握してから併合認定表で併せて評価し、どの等級に相当するかを割り出すという手順になります。

なお結果として得られる併合番号と障害等級の関係は以下のようになります。

併合番号最終的な障害等級
1号1級(最も重い障害状態)
2号~4号2級(重い障害状態)
5号~7号3級(中程度の障害状態)
8号~10号障害手当金(一時金の支給対象)

※併合番号がさらに大きく(11号、12号など)なった場合は、障害年金や手当金の支給対象外となります。

つまり、併合認定でも等級が上がらない組み合わせや、年金対象に至らない組み合わせも存在するので注意が必要です。

障害が3つ以上あるケース

障害が3つ以上あるケース

では、障害が3つ以上ある場合はどうなるのでしょうか。

この場合も基本的な考え方は同じですが、2つずつ順番に組み合わせていく形で併合番号を求めます。

まず併合判定参考表で各障害の番号をそれぞれ求め、一番軽い障害(最大の号数)と次に軽い障害の2つを併合認定表で組み合わせて併合番号を出します。

次に、その得られた併合番号と残りの中で最も軽い障害の番号をまた併合認定表で組み合わせ…という手順を繰り返し、最終的な併合番号を算出します。

最終併合番号に対応する等級が総合的な等級となります。

例として、4つの障害を抱えているケースでは、まず軽い方から2つずつ組み合わせ、段階的に最終番号を求めた結果1号(=1級)になる、といったケースもあります。

このように障害が多い場合でも、併合認定表を用いて2つずつ順次統合評価していくルールになっています。

ポイント

併合認定だからといって「ごく軽い障害をたくさん組み合わせれば年金等級が上がる」というわけではありません。
原則として、それぞれの障害が障害認定基準に該当する程度の重さを持っている必要があります。
言い換えれば、障害認定基準に載っていないような軽微な障害をいくら組み合わせても対象にはならないので注意してください。
実際、併合認定で扱われる障害は全て日本年金機構の「併合判定参考表」に例示されているものに限られます。

併合認定の請求手続き(申請の方法)

併合認定の請求手続き

併合認定を受けるための申請手続きは、基本的には障害年金の請求と同じですが、複数の障害について個別の書類を用意する必要がある点に注意しましょう。

大きく分けて、「障害の原因が同一の場合」と「障害の原因が異なる場合」で準備すべき書類が変わります。

同一原因の障害で請求する場合

障害の原因となった傷病が一つで、その結果として複数の障害が生じているケースです。

例えば糖尿病が原因で視力障害と下肢の障害が生じている場合などが該当します。

この場合、障害の種類ごとに別々の診断書(例:眼の障害用、肢体の障害用など)と、それぞれの障害についての病歴・就労状況等申立書を準備する必要があります。

一部、視力と視野の障害のように同じ領域の障害であれば1通の診断書で済む場合もありますが、基本的には障害種別ごとに医師の診断書が求められます。

異なる原因の障害で請求する場合

複数の障害の原因となった傷病が別々で、それぞれ初診日が異なるケースです。

例えば事故による肢体不自由と病気による視力障害を併せ持つ場合などが考えられます。

この場合、上記の診断書や病歴・就労状況等申立書をそれぞれ用意するのはもちろん、初診日を証明する書類(受診状況等証明書)も原因となった傷病ごとに揃える必要があります。

つまり、障害ごとに「いつどこで初めて医師の診察を受けたか」を証明する書類が別途必要になるということです。

上記のように、併合認定を念頭に複数の障害で年金請求する場合は、通常よりも準備する書類が多くなります。

診断書だけでなく各種証明書の取得にも時間と手間がかかりますので、早めに準備を進めることをおすすめします。

また、不備なく申請するためにも、年金事務所や専門家に事前に相談して必要書類の漏れがないか確認すると安心です。

まとめ

まとめ

最後に、併合認定で障害年金を受給する際の注意点や知っておきたいポイントを整理します。

組み合わせても等級が上がらないケースがある

組み合わせても等級が上がらないケースがある

前述のとおり、併合認定を行っても必ずしも障害等級が上がるとは限りません

例えば、身体の障害3級と精神の障害3級を組み合わせても、実際の号数の組み合わせによっては併合番号が5~7号の範囲にとどまり、最終等級が3級のままになるケースがあります。

このような場合、障害基礎年金(国民年金)では3級では受給できないため、併合認定を狙って両方の障害で請求の準備をしても労力と費用が無駄になってしまう可能性があります。

一方で、3級相当の障害をいくつか組み合わせることで2級に上がるケースもあるため、「3級どうしなら必ず3級のまま」というわけではありません。

併合認定をするべきか、あるいはあえて一方の障害に絞って申請するべきかは、事前によく検討する必要があります。

同一部位の複数障害は等級の上限に制限がある

同一部位の複数障害は等級の上限に制限がある

一人の人が同じ部位に複数の障害を抱えている場合(例えば片腕に二つの障害があるようなケース)、併合認定の結果として算出された等級が法律で明示された等級を上回る場合は、その明示されている等級(上限)を超えて認定することはできないと定められています。

簡単に言えば、その部位に関して法律で定められた最大の重さ以上に重いと評価することはできないという制限です。

例えば片上肢の障害でいえば、「一上肢を肘関節以上で欠くもの(上肢を失う)」が2級に相当すると明示されていますが、仮に同じ腕に複数の障害が併存して併合認定上は1級相当になり得るとしても、法令上2級と規定されている以上1級とは認定されないといった具合です。

このような併合認定の特例的な制限もありますので留意してください。

どの認定方法が適切か迷ったら専門家に相談を

どの認定方法が適切か迷ったら専門家に相談を

複数の障害がある場合、併合認定・総合認定・差引認定のどれが適用されるかや、そもそも併合認定を狙って請求すべきか判断が難しいこともあります。

障害の種類や状態によっては制度のルールが複雑で、適切な請求方針を決めるのは容易ではありません。

そのようなときは、一人で悩まずに年金事務所や障害年金に詳しい社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。

専門家であればあなたの個別状況に応じて最善の選択肢をアドバイスしてくれるでしょう。

公式情報の活用

併合認定に関する基準や具体的な認定表は、日本年金機構が公開している「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の中で確認することができます。

該当のPDF資料には併合判定参考表・併合認定表の詳細が掲載されていますので、興味のある方は目を通してみるとよいでしょう。

また、厚生労働省や日本年金機構の公式サイトにも障害年金制度の説明やQ&Aが掲載されていますので、最新の情報を確認するようにしてください。

以上、併合認定についてその概要から仕組み、手続き、注意点まで解説しました。

複数の障害をお持ちの方でも、適切に併合認定が行われればより有利な等級で障害年金を受給できる可能性があります。

大切なのは、公式の基準に基づいて正しく評価してもらうことです。

不明点があれば遠慮せず専門機関に相談し、確実な申請につなげてください。

併合認定の仕組みを理解し、ぜひ障害年金の受給に役立てていただければ幸いです。

「入院中なので事務所へ行けない」「家から出られない」「人と話すのが苦手・・・」という場合は、ホームページのお問合せフォーム以外にも電話やLINEなどでお気軽にご連絡下さい。

電話やメール、LINEなどでご質問いただいても、必ず当事務所にご依頼頂かなければいけないということではございません。
お問合せ頂いた後に当センターから営業の電話などをすることもございませんので、その点はご安心下さい。
ゆっくりご検討下さい。

お電話での無料相談はこちら

無料診断・相談はコチラ

LINE@での無料相談はこちら

当事務所では面会やお電話に加えてLINEでのやりとりも対応しております。
いろいろな事情で面会やお電話でのやりとりが難しい場合は、お気軽にラインでお問合せ下さい。

LINE友達追加