第三者証明とは

第三者証明とは、公的な証明が用意できない場合に、第三者(本人や家族以外の第三者)がその事実を証言・証明することで補う制度です。

具体的には、障害年金の請求において初診日の証明書類が取得困難なときなどに利用されるもので、第三者が「当時その人が医療機関を受診していた」ことなどを証明する書類を提出します。

第三者証明は、従来から20歳前に初診日がある障害基礎年金では利用できましたが、2015年(平成27年)10月の省令改正により、20歳以降に初診日がある障害年金についても一定の条件のもとで活用できるように拡大された仕組みです。

現在は、日本年金機構や厚生労働省が示すガイドラインに沿って、初診日を推定するための証拠の一つとして位置づけられています。

第三者証明は、あくまで公式な証拠が手に入らない場合の救済措置です。

提出すれば必ず認められるわけではなく、記載内容の具体性や他の資料との整合性を総合的に審査した上で初診日などが認定されます。

したがって、第三者証明を利用する際は、以下で説明する対象ケースや条件、書き方のポイントをしっかり押さえておくことが大切です。

第三者証明が必要になるケース

第三者証明が必要になるケース

障害年金の初診日証明に第三者証明を使う場合

障害年金の申請では、ケガや病気による初診日(その傷病で初めて医師の診療を受けた日)が非常に重要です。

初診日は受給資格(保険料納付要件を満たしているか)や給付額の計算に関わるため、通常は最初に受診した医療機関から受診状況等証明書(初診日証明書類)を発行してもらい提出します。

しかし、次のような理由で初診日の証明書類を医療機関で取得できない場合があります。

  • 初診の病院が既に廃業している場合(病院がなくなっている)
  • 初診から長期間が経過しカルテが破棄されている場合(古い記録が残っていない)
  • その他、病院側で受診証明を発行してもらえない事情がある場合(記録紛失など)

このように公的な初診日証明が用意できないときに活用できるのが「第三者証明」です。

第三者証明(正式名称「初診日に関する第三者からの申立書」)は、請求者本人や家族以外の第三者が「請求者がその初診日頃に医療機関を受診していた状況」を証言し書面にまとめたものです。

日本年金機構では、この第三者からの申立書と「受診状況等証明書が添付できない申立書」(初診日証明書類を添付できない理由を記載する書類)を併せて提出することで初診日の特定を試みる手続きを用意しています。

第三者証明は万能ではない点に注意しましょう。

年金事務所(日本年金機構)は提出された第三者証明を鵜呑みにするのではなく、他の客観的資料と付き合わせて妥当か検証した上で初診日を認定します。

例えば、第三者証明の内容と他の資料(診察券や領収書など)に矛盾がないか確認されます。

そのため、第三者証明を提出する際は、可能な限り他の客観的な証拠資料も併せて提出し、証言内容との整合性を示すことが重要です。

第三者証明の必要書類と人数要件は、初診日がいつか・誰が証明者になるかによって異なります。

以下に日本年金機構のガイドラインに基づく条件をまとめます。

初診日の状況・証明者必要な第三者証明書の通数 (人数)他に求められる資料例
初診日が20歳以降の場合(障害厚生年金など該当)2通以上(2人以上の第三者)客観的な参考資料(診察券、受診の領収書など)
初診日が20歳前の場合(障害基礎年金)2通以上(2人以上の第三者)原則追加資料不要(初診日が20歳前であることが明らかな場合)
初診時の医療従事者が証明者の場合(主治医や看護師など)1通(1人の医療従事者原則追加資料不要(医療従事者の証言は信頼性が高いため)

上記のように、初診日が20歳以降の場合は請求者がその初診日にどの年金制度に加入していたかで給付内容が大きく変わることから厳密な特定が求められます。

そのため2名以上の第三者証明に加え、診察券や領収書など客観的な資料の提出が必要とされています。

一方、初診日が20歳前の場合は障害基礎年金の対象となり、原則として2名以上の第三者証明のみで足ります(ただし初診日が厚生年金加入期間だった場合は扱いが異なるので注意)。

また、初診時の担当医師や看護師など医療従事者が証明者となるケースでは、その証言の信頼性が高いと判断されるため1名の証明で足りる取り扱いとなっています。

参考:日本年金機構ホームページ『障害年金の初診日証明書類のご案内(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)

客観的な参考資料
  • 診察券
  • 入院記録や通院記録
  • 医療機関や薬局の領収書
  • 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
  • 障害者手帳の申請時に提出した診断書
  • 交通事故証明書(事故による障害の場合)
  • インフォームド・コンセントに基づく医療情報サマリー
  • 勤務先などで受けた健康診断の記録
  • 健康保険の給付記録(レセプト) など多数

これらの資料はあれば必ず提出しましょう

ただし、上記資料を提出すれば必ず初診日が認められるとは限りません。

例えば「診察券」であっても初診日や診療科が明記されていなければ決定的な証拠にはなりません。

重要なのは、第三者証明の内容と客観資料が矛盾せず補完し合うことです。

できる範囲で手元の古い診療明細やお薬手帳なども探してみて、提出できるものは全て揃えることをおすすめします。

遺族年金等で第三者証明が使われる場合

第三者証明は主に障害年金の初診日で利用されますが、遺族年金などの手続きでも第三者の証明が求められるケースがあります。

代表的なのは、遺族年金の受給要件である「生計同一関係」(亡くなった方と受給権者が生計を同じくしていた事実)を証明する場面です。

例えば、結婚はしていないが事実上の配偶者であった場合や、別居していた親族の生活維持関係を証明する場合など、戸籍や住民票などの公式書類だけでは関係性を十分証明できないケースがあります。

そのような場合、日本年金機構の定める「生計同一関係に関する申立書」において、第三者の証明欄に記入・署名をもらう形で第三者証明を活用できます。

具体的には、雇用主や近所の方、施設の職員など客観的に関係を知り得る第三者に依頼し、「この二人は生計を同じくしていた」「事実上の婚姻関係にあった」といった内容を証明してもらいます。

法人(会社や病院、施設等)や商店が証明者になる場合は、その名称・所在地、証明者の役職・氏名・連絡先を証明欄に記入する必要があります。

なお、「生計同一関係に関する申立書」そのものの提出は原則として必要ですが、健康保険の被扶養者になっていることを示す資料や、扶養手当・税法上の扶養親族であることが分かる資料、送金記録など、所定の「生計同一関係証明書類」を提出した場合には、申立書の第三者証明欄の記入は不要となる取扱いがあります。(参考:日本年金機構ホームページ『生計同一関係証明書類等について』)

遺族年金のようにデリケートな場面では、第三者証明が補強証拠として重要な役割を果たすことがあるのです。

第三者証明の証明者になれる人・なれない人

第三者証明の証明者になれる人・なれない人

第三者証明を誰に依頼できるかについては、日本年金機構のガイドラインで明確に定められています

基本的なポイントは次の二つです。

  • 請求者本人やその家族以外の第三者であること
  • 請求者の民法上の三親等内の親族ではないこと

つまり、親・配偶者・子・兄弟姉妹・祖父母・孫・叔父叔母・甥姪など三親等内の親族を除く、客観的な立場の人から証明してもらう必要があります。

いとこについては、民法上は4親等の血族であり親族に含まれますが、三親等「内」ではないため、第三者証明の証明者になることができます。

以下に、具体的な例を表にまとめました。

第三者証明の証明者になれる人(例)第三者証明の証明者になれない人(例)
職場の同僚、上司部下
学校時代の友人や恩師
近所付き合いのある人
いとこ(※血縁上は4親等)
初診当時の主治医・看護師など
請求者本人(自分自身)
配偶者(内縁含む)
父母・子供(1親等)
兄弟姉妹、祖父母、孫(2親等)
叔父叔母、甥姪など(3親等)

上記のように、家族や近い親戚は第三者証明の証人にはなれません

たとえ事実関係を知っていたとしても、親族では客観性に欠けると判断されるためです。

一方、親族ではない友人や同僚、隣人などであれば証明者になることができます。

実際、初診日当時に身近にいて状況を知っていた友人・同僚・ご近所の方などにお願いしているケースが多く見られます。

また、上表の左列にもあるように初診時の担当医師や看護師など医療関係者が証明者となることも認められています。

むしろそれが可能であれば最も確実です。

医療従事者は当時の受診状況を直接知り得た立場であり信頼度が高いため、前述の通りこの場合は1名の証明で足りる特例となります。

例えば「カルテは残っていないが、当時診察した医師が覚えており証明書を書いてくれた」という場合、非常に有力な証拠となります。

ただ現実には、時間が経っていたり転院・退職され所在が分からなくなっていることも多いため、難しい場合もあるでしょう。

第三者証明を作成・提出するときの注意点

第三者証明を作成・提出するときの注意点

第三者証明を書くことを引き受けてもらう際や、書類を作成するときには、以下のポイントに注意してください。

当時知っていた事実のみを書いてもらうこと

日本年金機構の記入要領では、「請求者や家族から最近聞いた話は書かず、申立者(第三者)が当時見聞きして知っていた内容のみ記入してください」と明記されています。

なお、厚生労働省の通知では、請求時から概ね5年以内に請求者から初診日頃の話を聞いただけの第三者証明は、原則として認められないとされています。

ただし、その場合でも診察券や領収書など他の資料と併せて初診日が合理的に推定できるときには、例外的に認められることがあります。(参考:『「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」の一部改正について〔国民年金法〕

このため、「最近聞いた話」だけでなく、当時の見聞や、少なくともかなり前の時点で聞いていた事実を中心に書いてもらうことが重要です。

第三者証明はあくまで当時の記憶に基づく証言であり、後になって聞いた話を書いてしまうと信頼性が損なわれる恐れがあります。

証明を依頼する際は、「○○さん(第三者)が当時直接見たり聞いたことだけを書いてください」と説明し、決して無理に話を作ったりせず事実に即して記載してもらいましょう。

具体的なエピソードや状況を書くこと

証明書には可能な範囲で具体的な状況を書くことが求められます

例えば「〇年〇月頃に〇〇病院の待合室で一緒になった」「医師から『糖分を控えるように』と指導され、お菓子を食べないようにしていたと聞いた」など、当時知り得たエピソードがあれば詳細に記載してもらいましょう。

漠然と「病院に通っていると聞いた」だけでなく、いつ・どこで・何を見聞きしたかを書くことで証明内容の信ぴょう性が高まります。

証明者には事前に連絡と確認を

第三者証明を書いてもらったら、年金事務所から証明者本人に確認の電話が入る可能性があることを伝えておきましょう。

実際、提出後に年金事務所の担当者が「本当に○○さんが書きましたか」「当時のことを詳しく教えてください」といった確認を行うケースがあります。

突然役所から電話があると証明者も驚いてしまいますので、「もしかしたら年金事務所から問い合わせの電話があるかもしれない」とあらかじめ知らせておく配慮が大切です。

記憶があいまいな部分は無理をしない

記憶があいまいな部分は無理せず「○○だったと思う」程度でも大丈夫です。

昔の出来事を書く以上、「正直はっきり覚えていない…」という点も出てくるかもしれません。

年金機構もその点は承知しており、「分からない項目は無理に埋めなくても構いません。

自信がないことは『~だったと記憶しています』のように書いて大丈夫です」と案内しています。

事実と異なる内容を書いてしまうのが一番問題なので、証明者には「覚えている範囲で正直に書いてください。

不確かなところは『たぶん~』という書き方で構いません」とお伝えしましょう。

書類の形式や記入漏れにも注意

第三者証明を書く用紙は年金事務所で入手するか、日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます(日本年金機構:「初診日に関する第三者からの申立書を提出するとき」)。

作成時には氏名や生年月日、連絡先など基本情報の記入漏れがないよう注意しましょう。

また、様式には「申立者(第三者)が請求者と知り合ったきっかけ」「知った時期」などチェック項目があります。

該当する項目に忘れず丸印を付け、最後に署名・捺印ももらいます。

不明点がある場合は年金事務所や専門家に確認しながら書類を完成させてください。

まとめ

第三者証明とは

第三者証明は、公的証明書類が揃わない場合に年金請求をあきらめずに済むよう用意された救済策です。

特に障害年金では初診日の証明がないと支給決定が下りないため、この第三者からの証明制度によって多くの方が救われています。

ただし、第三者証明だけで簡単に認められるわけではなく、複数人の証言や他資料との整合性が重視されます。

不正な申請を防ぐ観点から審査は慎重に行われるため、できる限りの資料集めと丁寧な証明書作成が必要です。

本記事では第三者証明を中心に説明しましたが、実務上は「2番目以降の医療機関の証明」「障害者手帳の交付日」「一定期間内に初診日があることを示す各種資料」など、第三者証明以外の方法で初診日を推定する仕組みも用意されています。

どの方法が使えるかはケースによって異なるため、困ったときは、一人で抱え込まずに年金事務所の相談窓口や障害年金専門の社労士などに相談し、適切なアドバイスを受けるとよいでしょう。

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