はじめに

障害年金の請求が不支給となり、審査請求・再審査請求でも認められなかった方から、もう障害年金を受け取る道はないのかというご相談をいただくことがあります。

不服申立ては、当初の決定が正しかったかどうかを争う手続です。

その後に症状が悪化している場合などは、不服申立てとは別に、改めて請求する方法があります(初診日の要件や保険料納付要件などを満たしていることが前提です)。

本記事では、ご自身で再審査請求まで行ったものの認められなかった反復性うつ病性障害の方が、改めて請求し、障害厚生年金2級に認定された事例をご紹介します。

(※うつ病で障害年金の申請をご検討の方は『うつ病で障害年金はもらえる?3つの条件と金額の目安』をご覧ください。)

対象者の基本データ

ご相談者様の状況と、申請の結果をまとめました。

ご自身での請求と不服申立てを経て、当事務所にご相談いただいた事例です。

項目内容
傷病名反復性うつ病性障害
性別男性
就労状況病気に理解のある知人の配慮のもとで、事業の手伝いをしている
これまでの請求ご自身で請求して不支給。審査請求・再審査請求でも認められなかった
申請結果障害厚生年金2級
支給額年額 約127万円(請求当時の決定額。現在の額は下記リンクをご覧ください)
障害の状態・過食が激しく、3か月で体重が10kg以上増加した
・うつ状態がひどいときは、3〜4日入浴しない
・薬の飲み忘れや多飲があるため、ご家族が服薬を管理している

障害年金の額は毎年度改定されるため、現在の金額は障害年金でもらえる金額はいくら?をご覧ください。

ご相談までの経緯

ご相談者様が体調を崩されたのは、平成24年ごろでした。

休職と復職を繰り返しながら、ご自身で障害年金の請求と不服申立てまでされた経過をご紹介します。

平成24年ごろから、夜間に不安感が強まり、眠れない日が続くようになったそうです。

精神的に不安定な日々が続き、すぐにイライラして、気持ちの切り替えがうまくできない状態でした。

次第に食欲が落ち、体力も低下し始めました。

仕事に支障が出て欠勤が増えたため、受診を決意され、治療を始められました。

その後、症状が悪化して自室にこもりきりとなり、身の回りのことが一切できなくなりました。

そのため、自宅に戻ってご家族のサポートを受けることにされました。

体調が戻ったタイミングで転職されましたが、わずか数か月で体調を崩し、休職することになりました。

それからも復職と休職を何度も繰り返し、働き続けることが難しい状況でした。

体調の優れないなか、ご自身で障害年金の請求に取り組まれましたが、結果は不支給でした。

審査請求、さらに再審査請求まで行われたものの、受給には至りませんでした。

ご相談の時点では、最初に請求されたころよりも症状がはるかに悪化していました。

受給に向けてサポートしてくれるところをお探しのなかで当事務所を見つけてくださり、ご相談いただくことになりました。

①申請のポイントと苦労した点

本事例では、前回の請求と不服申立ての資料を読み直すところから始めました。

そのうえで、現在の日常生活の支障を主治医にお伝えし、ご依頼者様のご不安にその都度お答えしながら手続を進めました。

前回の請求と不服申立ての資料を読み直した

最初に取り組んだのは、これまでの手続の記録を確認することです。

ご依頼者様は、再審査請求までの手続をご自身でされていました。

そこで、まずはその資料を拝見しました。

前回の申請で審査に影響したと思われる箇所を精査し、今回どのような点に注意して進めるかを検討しました。

日常生活の支障を資料にまとめ、主治医にお伝えした

次に、現在の日常生活の様子を、診断書を作成する主治医にお伝えしました。

診断書の作成をお願いする前に、ご本人様から日常生活の様子を丁寧にうかがいました。

うかがった内容をもとに日常生活への支障を資料にまとめ、主治医への橋渡しをしました。

基本データにある食事・入浴・服薬の状況は、いずれも日常生活のなかで支障が出ている場面です。

なお、診断書は主治医が医学的な判断にもとづいて作成するものであり、当事務所が記載内容を指示するものではありません。

ご依頼者様のご不安に、その都度お答えした

手続の間、ご依頼者様は次のようなご不安を抱えていらっしゃいました。

「本当に主治医は自分の様子を理解してくれているだろうか」

「この参考資料で、支障が大きいことがしっかりと伝わるだろうか」

当事務所と何度も確認作業を重ねることで、ご安心いただけました。

診断書や病歴・就労状況等申立書の記載内容についてご不安に思われることがあれば、その都度ご説明し、一つずつ解消していきました。

②結果

改めて請求した結果、障害厚生年金2級に認定されました。

ご依頼者様も、たいへんほっとされたご様子でした。

今回の請求は、前回の請求のころより症状が悪化した時期に行ったものです。

前回とは提出した診断書なども異なるため、結果を単純に比べることはできません。

上記は当法人が関与した個別の事例であり、認定の一般的な基準を示すものではありません。

※個別事案により判断は異なります。

③担当者の振り返りと感想

本事例で当事務所が行ったことと、その意味を振り返ります。

手続の出発点になったのは、ご依頼者様がご自身で残されていた記録でした。

ご依頼者様は、再審査請求までの手続の資料を手元に残されていました。

その資料を読み直し、前回の審査に影響したと思われる点を確かめたうえで、今回の手続に臨みました。

また、ご本人様からうかがった日常生活の支障を資料にまとめ、主治医にお伝えしました。

不服申立てで認められなかったあとでも、症状が悪化している場合などには、改めて請求する方法があります。

本事例は、その一つの例です。

※個別事案により判断は異なります。

本事例のポイント

本事例に関わる制度上のポイントを整理します。

不服申立ての流れと、改めて請求することとの違いを知っておくと、不支給のあとに取れる手段を選びやすくなります。

【本事例のポイント】不服申立て(審査請求・再審査請求)の流れと期限

障害年金の決定に納得できない場合は、不服申立てをすることができます。

不服申立ては、審査請求と再審査請求の2段階です。

障害年金の決定に不服がある方は社会保険審査官に審査請求をし、その決定にも不服がある方は社会保険審査会に再審査請求をすることができます(国民年金法第101条第1項・厚生年金保険法第90条第1項)。

なお、共済組合等が行った決定については、申し立てる先が異なります(厚生年金保険法第90条第2項等)。

申し立てには、次の期限があります。

手続申し立てる先期限
審査請求社会保険審査官処分(不支給などの決定)があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内
再審査請求社会保険審査会審査請求の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内

いずれも、正当な事由によって期間内に申し立てられなかったことを疎明したときは、この限りではありません(社会保険審査官及び社会保険審査会法 第4条第1項・第32条第1項・第3項)。

審査請求をした日から2か月以内に決定がないときは、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができます(国民年金法第101条第2項・厚生年金保険法第90条第3項)。

審査請求・再審査請求のいずれでも、証拠となる文書などを提出することができます(社会保険審査官及び社会保険審査会法 第10条の3・第44条)。

審査請求の決定書と再審査請求の裁決書には、結論(主文)とあわせて、その理由が記載されます(同法第14条第1項・第43条)。

再審査請求の裁決にも不服がある場合などは、裁判所に処分の取消しの訴え(取消訴訟)を起こす方法もあります。

障害年金に関する処分の取消訴訟は、審査請求に対する社会保険審査官の決定を経たあとでなければ起こせません(国民年金法第101条の2・厚生年金保険法第91条の3)。

審査請求や再審査請求をした場合、取消訴訟は、正当な理由があるときを除き、それに対する決定・裁決があったことを知った日から6か月、または決定・裁決の日から1年を過ぎると起こせなくなります(行政事件訴訟法第14条第3項)。

取消訴訟はご本人でも起こせますが、手続が複雑なため、弁護士へのご相談をおすすめします。

不服申立ての流れは、以下の動画と『障害年金の「不服申立て(審査請求・再審査請求)」とは|はじめての人にも分かりやすく解説します』でもご説明しています。

(出典:e-Gov法令検索『国民年金法』『厚生年金保険法』『社会保険審査官及び社会保険審査会法』『行政事件訴訟法』)

【本事例のポイント】再審査請求で認められなかったあとに、改めて請求する

本事例のご依頼者様は、審査請求・再審査請求のいずれでも認められませんでした。

そのうえで、症状が悪化した状態で改めて請求し、障害厚生年金2級に認定されました。

不服申立ては、当初の決定が正しかったかどうかを争う手続です。

当初の決定のあとに症状が悪化した場合は、不服申立てとは別に、悪化した状態について改めて請求する方法があります。

障害認定日に障害等級に該当しなかった方でも、その後に症状が悪化して該当するようになったときは、事後重症による請求ができます。

事後重症による請求では、年金は請求した日の翌月分からとなり、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。

請求が遅くなると、年金の受給開始時期も遅くなります。

また、老齢年金の繰上げ請求をした日以後は、事後重症による障害年金の請求はできません。

いずれの請求でも、初診日の要件や保険料納付要件などを満たしていることが前提です(障害年金をもらえる人|3つの受給要件をわかりやすく解説)。

改めて請求するときは、前回の請求と不服申立ての資料が手がかりになります。

審査請求の決定書や再審査請求の裁決書には判断の理由が記載されるため、次の請求で何に注意すべきかを考える材料になるからです。

不支給の詳しい理由を確認する方法は、『障害年金が不支給になった詳しい理由を確認する方法は?』でご説明しています。

また、反復性うつ病性障害(ICD-10のF33)は気分(感情)障害に分類され、障害認定基準の「気分(感情)障害」として扱われます。

障害認定基準は、気分(感情)障害の認定について、次のように定めています。

気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。

(出典:厚生労働省『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』第8節 精神の障害 2 認定要領 A(2)イ、令和4年4月1日改正)

本事例のご依頼者様も、復職と休職を何度も繰り返されていました。

発病から現在までの経過は、ご本人やご家族でも作成できる病歴・就労状況等申立書に、時系列で記載します(「病歴・就労状況等申立書」の書き方|記入例と自分で書く9つのコツ)。

※個別事案により判断は異なります。

本事例に関するよくあるご質問

本事例に関連して、よくいただくご質問にお答えします。

不服申立てのあとの請求や、不支給の理由の確認方法についてまとめました。

Q. 再審査請求で棄却されたら、もう障害年金は請求できませんか

再審査請求で認められなかった場合でも、その後に症状が悪化しているときなどは、改めて請求することができます。

ただし、初診日の要件や保険料納付要件などを満たしていることが前提です。

障害認定日に障害等級に該当しなかった方でも、その後に症状が悪化して該当するようになったときは、事後重症による請求ができます。

事後重症による請求では、年金は請求した日の翌月分からとなり、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。

請求が遅くなると年金の受給開始時期も遅くなるため、症状が悪化している場合は、時期を空けずに検討することをおすすめします。

また、老齢年金の繰上げ請求をした日以後は、事後重症による障害年金の請求はできません。

※個別事案により判断は異なります。

Q. 不支給になった理由は、どこで確認できますか

審査請求をした場合は社会保険審査官の決定書に、再審査請求をした場合は社会保険審査会の裁決書に、それぞれ理由が記載されます(社会保険審査官及び社会保険審査会法 第14条第1項・第43条)。

不支給の決定を受けた段階で詳しい理由を確認する方法は、『障害年金が不支給になった詳しい理由を確認する方法は?』でご説明しています。

Q. 反復性うつ病性障害は、障害年金の対象になりますか

反復性うつ病性障害は気分(感情)障害に分類され、障害年金の認定の対象になります。

障害認定基準は、気分(感情)障害による2級の例として、次の状態を挙げています。

気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

(出典:厚生労働省『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』第8節 精神の障害 2 認定要領 A(1)(2級の例示)、令和4年4月1日改正)

障害等級は1級から3級まであり、3級は障害厚生年金のみです(障害基礎年金に3級はありません)。

認定にあたっては、症状の経過や日常生活の状態などが考慮されます。

反復性うつ病性障害で不支給になる理由については、『反復性うつ病性障害で障害年金が不支給になる理由は?』をご覧ください。

※個別事案により判断は異なります。

関連する記事

本事例に関連する解説記事をご紹介します。

うつ病での障害年金の全体像、反復性うつ病性障害で不支給になる理由、不服申立ての流れについて、それぞれ詳しく解説しています。

不支給後の再請求や審査請求のご相談も、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)で承っております。


※本記事は2026年10月時点の年金法令・障害認定基準(令和4年4月1日改正版)に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。記載の支給額は請求当時の決定額であり、現在の金額とは異なります。申請に必要な書類は個別の事情により異なりますので、詳細は年金事務所等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

「入院中なので事務所へ行けない」「家から出られない」「人と話すのが苦手・・・」という場合は、ホームページのお問合せフォーム以外にも電話やLINEなどでお気軽にご連絡下さい。

電話やメール、LINEなどでご質問いただいても、必ず当事務所にご依頼頂かなければいけないということではございません。
お問合せ頂いた後に当センターから営業の電話などをすることもございませんので、その点はご安心下さい。
ゆっくりご検討下さい。

お電話での無料相談はこちら

無料診断・相談はコチラ

LINE@での無料相談はこちら

当事務所では面会やお電話に加えてLINEでのやりとりも対応しております。
いろいろな事情で面会やお電話でのやりとりが難しい場合は、お気軽にラインでお問合せ下さい。

フォームからのお問い合わせはこちら

フォームに質問事項などを入力してお問い合わせ頂く場合は以下のページからお問い合わせください。