統合失調症は、主に思考、知覚、情動、行動に影響を与える精神疾患の一種です。
症状は、現実感覚が混乱する、幻覚や妄想を経験する、感情や感情表現が鈍くなる、言語や行動の混乱などが挙げられます。
統合失調症を患っている場合、障害年金の支給の対象になる可能性があります。
統合失調症で障害年金を受給する場合のポイントを、障害年金専門社労士がわかりやすくご説明します。
目次
この記事の監修者 社会保険労務士 松岡由将
年間2,000件以上の問い合わせがある「全国障害年金サポートセンター」を運営する障害年金専門の社会保険労務士法人「わくわく社会保険労務士法人」の代表社労士。
障害年金コンサルタントとしてtwitter(まっちゃん@障害年金の悩み解決するよ)やYouTube(まっちゃんの障害年金カフェ)などでも障害年金に関するさまざまな情報を発信している。
ICD-10コードとは?
統合失調症で障害年金を申請する際は、診断書の病名の横にあるICD-10コード記入欄へコードの記載が必要になります。
ICD10コードとは、分かりやすく言うと、『精神障害には多くの傷病名があって分かり難いので、国際的にある程度分類してコードで表しましょう』ということです。
統合失調症に関する疾患の場合、主に『F2 統合失調症, 統合失調症型障害及び妄想性障害』に該当します。
ICD10コードに関しましては『ICD-10コードとは』で詳しくご説明していますので、ご参照ください。
F20 統合失調症の申請事例
F20.0 統合失調症型障害の申請事例
F20.9 統合失調症型障害の申請事例
F21 統合失調症型障害の申請事例
F23.2 急性統合失調症様精神病性障害の申請事例
F23.2 急性統合失調症様精神病性障害の申請事例一覧はこちら
F25 統合失調感情障害の申請事例
統合失調症の「障害の程度」の判定
統合失調症に対する障害年金は、統合失調症により日常生活に継続的に制限が生じて支援が必要な場合に、その障害の程度(=日常生活の制限度合いや労働能力の喪失)に応じて障害等級を決定しされ、等級に応じた障害年金が支給されます。
障害の程度は、以下にご説明する「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」を基準に判定されます。
統合失調症の申請で不支給になった事例(再申請で受給決定)
この「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」を医師にきちんと伝えられないことで、症状が本来よりも軽いと判断されて、障害年金が受給不可という審査結果になることもありますので、十分注意が必要です。
当サイトの『【無料受給判定】精神の障害年金無料診断』で必要事項を入力頂ければ、すぐに判定結果が表示されますので、是非お試しください。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
精神の障害に係る等級判定ガイドラインは、日本の厚生労働省が策定したもので、精神障害を持つ人々の状態や社会生活への影響を評価し、障害の程度に応じて等級を判定するための基準を示しています。
「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」によって障害等級を判定するための基準が示されています。
「日常生活能力の判定」とは
「日常生活能力の判定」とは、個人が日常生活において自立して行動することができるかどうかを判断することです。
『障害年金の診断書(精神の障害用)』の「⑩障害の状態(ウ 日常生活状況)」部分に記載されます。
具体的には、以下の7つの項目に関してどの程度できるかを記載します。
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応
- 社会性
「日常生活能力の程度」とは
「日常生活能力の程度」とは、個人の日常生活能力のレベルを表す指標です。
「日常生活能力の程度」は、「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における制限度合いを包括的に評価するものです。
- 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
- 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
- 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
- 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
- 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
統合失調症での障害年金の等級
先ほどご説明したように障害年金は病名で等級が決まるのではなく、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」によって障害等級が判定されます。
統合失調症で障害年金1級の受給事例
統合失調症で1級を受給されている事例は多くはありませんが、実際に受給が認められた事例はあります。
統合失調症|障害基礎年金1級
支給額 | 年額 約98万円 |
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統合失調感情障害・知的障害|障害基礎年金1級
支給額 | 年額 約120万円 |
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統合失調症|障害共済年金1級(傷病手当金を受給されていた事例)
支給額 | 年額 約245万円 |
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統合失調症で障害年金2級の受給事例
働いていたり、一人暮らしをされている場合でも、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」によっては2級の判定となる場合もあります。
統合失調症|障害基礎年金2級(約8年間アルバイトをされていた事例)
支給額 | 年額 約78万円 遡及金額 約390万円 |
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統合失調症で障害年金3級の受給事例
3級は初診日の時点で厚生年金又は共済年金に加入されている必要があります。
統合失調症での遡及請求
遡って障害年金の支給を受けることを「遡及請求」と言います。
統合失調症で遡及請求が認められた事例もあります。
統合失調症|障害基礎年金2級(現在受給中で遡及請求のみおこなった事例)
こちらは既に障害年金を受給中の方で、改めて遡及請求のみおこなって、遡及分の支給が決定した事例です。
支給額 | 遡及金額 約253万円 |
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統合失調症で働きながら障害年金を受給
統合失調症を患いながらでも働いている場合には障害年金を受給できないと思われている方もいらっしゃいますが、症状の重さなどの要件を満たす場合には障害年金を受給することができる可能性があります。
(『【社労士が解説】働きながら障害年金を受給するための注意点』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照下さい。)
申請時に統合失調症で働いていた事例
統合失調症を患われていても、就労の環境を整えている障害者雇用などで働かれている方はいらっしゃいます。
一般企業でフルタイムで働かれている場合でも、職場での配慮などがあることで何とか働くことが出来るという方もいらっしゃいます。
そのように環境のおかげでなんとか就労できているという場合には、障害年金を受給できた事例もあります。
統合失調症で働いて受給できた事例
統合失調症で障害者雇用で働いて受給できた事例
障害年金を受給後に働き始めた事例
障害年金を申請した時点では働いていなかった方が受給後に働き始めるというケースもあります。
「働き始めたら更新ができないのでは・・・」と、心配される方もいらっしゃいます。
障害年金の更新手続きでは、「障害状態確認届(更新用の診断書様式)」により引き続き障害年金が受けられる障害状態にあるのかどうか、障害状態(等級)に変更はないか確認が行われます。
更新時の症状の状態やその他の要件が受給要件を満たす場合は、働き始めた後でも更新は可能です。
統合失調症で一人暮らしをしながら障害年金を申請
一人暮らしをされている場合も、障害年金の受給はできないと思われている方もいらっしゃると思います。
一人暮らしをされている場合も、働いている場合と同じく、症状の重さなどの要件を満たす場合には障害年金を受給することができる可能性があります。
(『【社労士が解説】一人暮らしで障害年金を申請する注意点』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照下さい。)
統合失調症で一人暮らしをしながら受給できた事例
統合失調症を患われていても、さまざまな事情で一人暮らしをされている方はいらっしゃいます。
「一人暮らしをしている理由」と「一人暮らしであるが、日常生活において、決して自立できていないこと」の2点を明確にすることが重要になります。
障害年金を受給後に一人暮らしを始めた事例
障害年金を申請した時点では一人暮らしをしていなかった方が受給後に一人暮らしを始めるというケースもあります。
「一人暮らしを始めたら更新ができないのでは・・・」と、心配される方もいらっしゃいます。
これも就労と同じように、更新時の症状の状態やその他の要件が受給要件を満たす場合は、一人暮らしを始めた後でも更新は可能です。
統合失調症の障害の事例
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
統合失調症で障害年金を申請する場合の注意点をお分かりいただけたかと思います。
特に「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」を医師にきちんと伝えることが重要になります。
障害年金の申請にお悩みの方はお気軽に当事務所にお問い合わせください。