全身の痛みで仕事や家事が思うようにできず、障害年金を検討されている方は少なくありません。

線維筋痛症は検査で異常が出にくく、確定診断までに時間がかかることから、「自分は受給できるのか」「初診日が分からない」と不安を抱えがちな傷病です。

この記事では、線維筋痛症で障害年金を受給できる可能性、認定の枠組み、初診日の考え方、申請のポイント、そして実際の事例までを順にご説明します。

まずは制度の全体像を確認し、ご自身の状況を整理する手がかりにしていただければと思います。

線維筋痛症と障害年金の関係

線維筋痛症は、障害認定基準のどの分類で判断されるのかを最初に押さえておくことが大切です。

ここでは、線維筋痛症がどのような傷病として扱われ、どの認定基準に沿って審査されるのかを整理します。

線維筋痛症とは

線維筋痛症は、全身の広い範囲に慢性的な痛みが続く傷病で、疲労感やこわばり、睡眠障害などを伴うことがあるとされています。

検査で明らかな異常が見つかりにくいという特徴があり、確定診断までに複数の医療機関を受診される方も多いと言われています。

なお、症状や治療に関する個別の判断は主治医の領域です。

本記事では、あくまで障害年金の認定基準と手続きの観点から解説します。

障害認定基準上の位置づけ

障害年金の審査で用いられる「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」には、線維筋痛症だけの独立した基準は設けられていません。

実務上は、「第7節 肢体の障害」の「肢体の機能の障害」に沿って審査されるのが一般的です。

そのため、提出する診断書も肢体の障害用(様式第120号の3)を使用します。

痛みそのものの強さよりも、痛みによって日常生活の動作や就労にどの程度の支障が生じているかが見られる点が、線維筋痛症の認定の特徴です。

線維筋痛症で障害年金を受給できる可能性

線維筋痛症でも、障害の状態が一定の程度に該当すれば、障害年金を受給できる可能性があります。

ここでは、どのような点が審査で重視されるのかという一般的な傾向を確認します。

病名ではなく「生活への支障」で判断される

障害年金は、病名がついていることだけで受給できるものではありません。

線維筋痛症の場合も、日常生活の動作や労働能力にどの程度の制限が生じているかが審査の中心となります。

例えば、痛みのために立つ・歩く・物を持つといった動作が大きく制限されている、就労を続けられず退職や休職に至っている、といった状況は、審査で考慮される要素になります。

一方で、症状があっても日常生活や就労への支障が小さい場合は、等級に該当しないと判断されることもあります。

最終的な認定は日本年金機構の審査によります。

「痛みの強さ」より「動作の制限」が見られる

痛みは本人にしか分からない自覚症状であり、外見からは伝わりにくいものです。

そのため審査では、痛みの数値そのものよりも、痛みの結果として何ができなくなっているかという日常生活動作の状態が重視される傾向があります。

線維筋痛症は症状に波があり、調子の良い日と悪い日の差が大きいとされます。

診断書には、たまたま調子の良い瞬間ではなく、平均的・継続的な状態が反映されることが望ましいと考えられます。

認定の枠組み(肢体の障害・重症度分類ステージ)

線維筋痛症の審査では、肢体の障害用診断書に加えて、症状の重さを示す「重症度分類試案」のステージ記載が重要になります。

ここでは、認定の柱となる2つの要素を確認します。

肢体の障害用診断書と圧痛点

前述のとおり、線維筋痛症では肢体の障害用(様式第120号の3)の診断書を用います。

肢体の機能の障害は、関節可動域・筋力・巧緻性・速さ・耐久性などを考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定するとされています。

線維筋痛症の痛みやこわばりの状態は、診断書のなかで医師に記載してもらいます。

圧痛点(指で押すと痛みが生じる箇所)などの所見も、診断書や、審査の状況に応じて求められる補足資料のなかで示されることがあります。

どの所見をどのように記載するかは、主治医のご判断によります。

重症度分類試案(ステージⅠ〜Ⅴ)の記載

線維筋痛症では、診断書の⑨欄(現在までの治療の内容・経過等)に、厚生労働省研究班の「重症度分類試案」のステージⅠ〜Ⅴのいずれに該当するかを記載してもらう必要があります。

日本年金機構は医師向けに「線維筋痛症の障害状態について診断書を作成されるお医者様へ」という資料を公表しており、ステージの記載を求めています。

日本年金機構・厚生労働省は、線維筋痛症の認定事例も公表しています。

公表されている認定事例では、ステージⅤを1級、ステージⅢを2級、ステージⅡを3級とした例がありますが、ステージと障害等級が必ず一致するわけではありません

診断書全体の記載や病歴、日常生活の状況などを含めた総合判断で等級が決まります。

(出典:国民年金・厚生年金保険障害認定基準〔令和4年4月1日改正版〕第7節 肢体の障害、日本年金機構「化学物質過敏症、線維筋痛症、脳脊髄液漏出症、慢性疲労症候群の診断書の記載例や認定事例等」)

初診日の特定が最大のポイント

線維筋痛症の申請では、初診日をいつにするかが結果を大きく左右します。

確定診断が遅れやすい傷病であるため、ここでつまずく方が多いのが実情です。

線維筋痛症ならではの初診日の考え方を整理します。

なぜ初診日が問題になるのか

障害年金では、傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を「初診日」といい、受給できる年金の種類や保険料納付要件の判定が初診日を基準に決まります。

線維筋痛症は、最初の症状で受診しても検査で異常が見つからず、整形外科や内科などを転々とした末に、数年後にようやく確定診断に至るケースが少なくありません。

このため「どの受診日を初診日とするか」「初診の記録が残っているか」という点が、申請上の大きな課題になります。

なお、初診日は保険料納付要件の判定基準にもなります。

いずれも初診日の前日の時点で判定し、原則として、初診日の前々月までの被保険者期間のうち3分の2以上で保険料を納付または免除されていることが必要です。

また、初診日が令和18年3月末日までにあり、初診日において65歳未満の場合は、初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとする特例もあります。

要件の詳細は障害年金を受け取るための条件とはをご参照ください。

確定診断前の「申立初診日」が認められる場合

こうした実情を踏まえ、令和3年8月、日本年金機構に対し「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」(厚生労働省の事務連絡)が示されました。

線維筋痛症などでは発症直後に確定診断がされない事例があることから、一定の要件を満たせば、確定診断より前の請求者が申し立てた初診日(申立初診日)を初診日として取り扱うとされています。

主な要件は、おおむね次の3点です。

  1. 申立初診日の医療機関が作成した診断書または受診状況等証明書から、その日に身体の広範囲に及ぶ慢性疼痛などの症状で診療を受けていたと認められること
  2. 確定診断を行った医療機関の診断書に、申立初診日が線維筋痛症等で初めて受診した日として記載されていること
  3. 発症直後に確定診断が行われなかった理由の申立てがあること(受診が途切れた期間がある場合は、その間も症状が続いていた旨の申立てが必要で、途切れた期間が6か月を超えるときは、診断書など医療機関が作成する書類からも症状の継続が確認できることが求められます)

なお、上記の3点をすべて満たさない場合でも、個別の事情に応じて提出書類を総合的に考慮した結果、申立初診日が一連の診療のうち初めての診療と認められれば、初診日として取り扱われることがあります。

(出典:厚生労働省「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」令和3年8月24日事務連絡)

どの受診日が初診日と認定されるかは、受給できる年金の種類にも関わります。

初診日は申請者が任意に選べるものではなく、線維筋痛症に関する一連の診療のうち最初に受診した日を、提出資料に基づいて認定するものです。

初診日が厚生年金の加入期間中と認定されれば障害厚生年金(1〜3級および障害手当金)の対象となり、国民年金の加入期間中であれば障害基礎年金(1級・2級)の対象です。

例えば、最初に痛みで受診したときは会社員で厚生年金に加入していたものの、確定診断のころには退職して国民年金に切り替わっている、というケースでは、どの受診日が初診日と認定されるかで受給範囲が変わることがあります。

受給できる場合の等級・金額の目安

線維筋痛症で認定された場合の等級と金額の考え方を確認します。

金額は年度ごとに改定されるため、ここでは令和8年度の額を一例として示し、詳しくは金額の専門記事でご案内します。

等級の傾向と制度別の受給範囲

線維筋痛症は、日常生活動作の制限の程度に応じて1級から3級までの可能性があります。

ただし、3級は障害厚生年金のみに設けられた等級です。

初診日に国民年金に加入していた方(20歳前や、国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間に初診日がある方を含みます)は、障害基礎年金の対象です。

障害基礎年金には3級がないため、1級または2級に該当しなければ受給はできません。

障害年金の受給額の目安(令和8年度・2026年度)

障害年金の受給額の目安(令和8年度)

令和8年度(2026年度)の障害基礎年金は定額で、昭和31年4月2日以後にお生まれの方は次のとおりです。

等級障害基礎年金(令和8年度・年額)
1級1,059,125円(2級の1.25倍)
2級847,300円

昭和31年4月1日以前にお生まれの方は別額で、1級1,056,125円・2級844,900円です。

いずれも、生計を維持している子がいる場合は子の加算が上乗せされます。

初診日に厚生年金へ加入していた方は、1級・2級に該当すると、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされます。

障害厚生年金は報酬比例で計算され、1級は報酬比例の年金額×1.25、2級は報酬比例の年金額がそれぞれ支給され、一定の要件を満たす配偶者がいる場合は配偶者加給年金が加算されます(ただし、配偶者がご自身の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上等)や障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金は支給停止されます)。

3級は報酬比例の年金額のみで、最低保障額(令和8年度635,500円、昭和31年4月1日以前生まれは633,700円)が設けられています。

なお、20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には、本人の前年所得による支給制限があります。

令和8年度は、前年の所得が479万4,000円(扶養親族がいる場合は加算)を超えると全額が、376万1,000円を超えると2分の1が支給停止されます。

報酬比例部分は加入期間や報酬によって大きく異なります。

金額の詳しいシミュレーションは【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額もあわせてご確認ください。

申請のポイント・診断書の取り方

線維筋痛症は書類の作り込みで結果が分かれやすい傷病です。

ここでは、診断書と病歴・就労状況等申立書を準備する際に押さえておきたい形式面のポイントをご紹介します。

なお、診断書の医学的な記載内容は主治医のご判断によります。

診断書に反映してもらいたい形式面のポイント

線維筋痛症の診断書では、前述の重症度分類試案のステージが記載されていないと、内容の確認のために返戻される場合があります。

診断書の依頼時には、ステージの記載が必要であることをお伝えするとよいでしょう。

また、痛みは外見から伝わりにくいため、日常生活でどの動作にどの程度の支障があるかを、ご自身で書面に整理して主治医にお渡しする方法も考えられます。

症状に波がある場合は、調子の良い日だけでなく、悪いときの状態も含めて伝わるようにすることが大切です。

診断書の重要性については障害年金の申請は「診断書」で9割が決まる!?もご参照ください。

病歴・就労状況等申立書で支障を具体的に

病歴・就労状況等申立書は、初診から現在までの経過や、日常生活・就労の状況を申請者側から伝える書類です。

線維筋痛症のように客観的な検査所見が乏しい傷病では、この申立書で生活上の支障を具体的に記載することが特に重要になります。

例えば、痛みのために外出や家事が困難になった、就労の時間や内容に制限が必要になった、といった事実を、いつ頃からどのように生じたかを具体的に記すことが望まれます。

病歴・就労状況等申立書の書き方は、【自分で書ける】病歴・就労状況等申立書の書き方でも解説しています。

「もらえない」と言われた・申請が通らないケースと対処

線維筋痛症は「障害認定が難しい傷病」とされることもあり、不支給になるケースもあります。

ここでは、通りにくい背景と、その場合に取りうる選択肢を整理します。

一般的な不支給の背景

線維筋痛症で不支給となる背景としては、検査で異常が出にくいために客観的な所見が乏しいと判断される、診断書に日常生活の支障が十分に反映されていない、初診日を証明する資料が整わない、といった点が挙げられます。

いずれも、書類の準備の段階で生活上の支障や経過を具体的に示せるかどうかが影響します。

なお、初診日が認められないなどの理由で要件の審査に至らない場合は、不支給ではなく却下となることもあります。

事後重症請求・審査請求などの選択肢

障害認定日(原則として初診日から1年6か月を経過した日)の時点では等級に該当しなくても、その後に症状が悪化した場合は、事後重症請求として現在の状態で申請できる場合があります。

事後重症請求は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があり、支給は請求した月の翌月分からとなります。

過去にさかのぼっての支給はないため、請求が遅れるほど受給開始も遅くなります。

また、決定の内容に納得できない場合は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に審査請求という不服申立てができます。

その決定にも納得できない場合は、決定書の謄本が送られた日の翌日から2か月以内に再審査請求が可能です。

どの選択肢が適しているかは、初診日や経過、診断書の内容によって異なります。

線維筋痛症の障害年金の事例

弊事務所では、線維筋痛症の方の障害年金申請を多く手がけてまいりました。

確定診断までに複数の医療機関を受診されたケースや、初診日の整理が認定につながったケースなど、状況はさまざまです。

確定診断より前の受診日が初診日として認められた事例、障害厚生年金2級・3級が認定された事例など、初診日の整理や、日常生活の支障を書類に反映する工夫が結果に結びついたケースがあります。

これから申請を検討される方の参考にしていただければと思います。

※個別事案により判断は異なります。

線維筋痛症の障害年金に関するよくあるご質問

最後に、線維筋痛症の障害年金について、よくお寄せいただくご質問にお答えします。

Q. 検査で異常が出ないのですが、申請できますか?

線維筋痛症は検査で明らかな異常が見つかりにくい傷病ですが、それだけで申請ができないわけではありません。

日常生活や就労への支障の程度が認定の中心となるため、その実態を診断書や申立書で具体的に示すことが重要になります。

Q. 病院を何度も変わって初診日が分かりません。

確定診断までに複数の医療機関を受診された場合でも、令和3年8月の取扱いにより、一定の要件を満たせば確定診断前の受診日が初診日として認められることがあります。

当時の診察券やお薬手帳など、受診の記録が手がかりになる場合がありますので、早めに整理されることをおすすめします。

初診日の考え方は障害年金を受け取るための条件とはもご参照ください。

まとめ

線維筋痛症は、障害認定基準上は「肢体の障害」として審査され、日常生活動作の制限や就労への支障の程度が重視されます。

ポイントは、初診日を早めに整理すること、診断書に重症度分類のステージと生活上の支障を反映してもらうこと、そして病歴・就労状況等申立書で実態を具体的に示すことです。

検査で異常が出にくく、痛みが理解されにくい傷病だからこそ、書類で実態を丁寧に伝えることが受給への近道となります。

線維筋痛症での障害年金の申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年6月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。