うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。
目次
対象者の基本データ
病名 | 鬱病(うつびょう) |
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性別 | 男性 |
支給額 | 年額 約58万円 |
障害の状態 |
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申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
15年程前、転勤による業務内容の変更が契機となり、抑うつ症状、不安などが出現するようになりました。
A病院を受診して間もなく仕事は休職となりました。
抗うつ剤等による治療が行われましたが、症状改善は乏しく、仕事は退職し、外出も億劫となり、約5年程病院への通院も中断してしまいました。
通院出来ていない期間においても不安や憂うつ気分を認めており、短期間で職を転々とするようになりました。
将来への不安が強く、抑うつ症状や不眠などの症状も増悪したため、このままではいけないと思い、B病院を受診しました。
現在も通院治療を継続していますが、抑うつ症状は一進一退に経過し、4年程前より傷病に対して十分理解を示してもらったうえで、一般企業にて非常勤で雇用されるようになりました。
雇用形体系は一般雇用ですが、相当の配慮や支援のある環境下で就労が成り立っている状況です。
日によって症状は不安定で、今後も安定して仕事が続けられるかどうかわからず、経済的な不安がありました。
障害者手帳の交付を受けた際に、障害年金制度を知り、申請サポートの為、当事務所にご相談をいただきました。
申請結果
障害年金の手続きではまず初診日を特定することが大切です。
今回のご相談者様は、発病から現在に至る15年の間にA病院、B病院と現在に至るまで2箇所の医療機関への受診歴がありました。
A病院の終診日からB病院の初診日まで間に約5年間いずれの医療機関へも受診できていないブランク期間がありました。
この通院期間のブランクの理由によっては、初診日がA病院ではなく、B病院の初診日時点として申し立てが出来る可能性があります。(ポイント①)
ご本人様に通院出来ていなかった理由を確認すると自覚症状はあったものの、外出することすら億劫なため自己判断で通院治療を中断してしまったとのことでした。
そのため、ブランク期間が一度傷病が治癒したとみなす社会的治癒期間(ポイント②)であったとは認めがたく、通常通りA病院を初診日として申請していくこととなりました。
A病院にて初診日証明を取得後、B病院へ診断書の取得へと進めます。
診断書の取得に当たり、現在に至るまで一般雇用で約4年程就労継続しているということに懸念点がありました。(ポイント③)
障害年金の精神の障害用の診断書には勤務先や雇用体系、勤続年数、ひと月の給与、仕事の内容など就労状況を記載する欄があります。
一般企業で一般雇用において、月十数万の給与が支給されているという表面的な情報を記載してもらうだけでは、十分に仕事が出来ていると捉えられかねません。
今回のご相談者様は表面的な雇用体系において障害者雇用制度を利用していない一般企業での就労であっても、実際の就労環境においては障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けていました。
診断書の就労状況に関する欄に、恵まれた環境下であるために就労が成り立っていることを明記していただきました。
さらに、診断書の記載内容だけではわからない職場における具体的な支援の状況については病歴就労状況等申立書にて詳述し、申請しました。
結果「障害厚生年金3級」として認定されました。
※就労している方の障害年金申請のポイントは『「働きながら障害年金をもらえる人」をわかりやすくご説明します』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。
【ポイント1】通院期間のブランク
長期に渡って、疾患を患っている場合、通院期間にブランクがある方もいらっしゃると思います。
『通院出来ていなかった期間はなぜ通院出来ていなかったのか?』
病状が回復していた、症状はあったが自己判断で中断してしまった、何度も受診しようと試みたけど外出困難で家から出ることが出来なかったなど、この通院出来ていなかった期間の長さや理由によっては、初診日が変更となる可能性があります。
通院経過も審査では見られますので、判断に困った場合はぜひ一度ご相談ください。
【ポイント2】社会的治癒
社会的治癒が認められると、初診日が変わります。
社会的治癒とは、「症状無し・生活に支障無し・就労可能な状態」が一定期間続いている場合などは、医学的には治癒とは言えなくとも治癒していると認めましょう!という制度です。
今回のケースのように「一度ケガや病気」となったが、しばらくの間問題なく生活していた後に「再度、症状が悪化・支障が出た」とき、最初のケガや病気は「治癒」その後「再発した」ものとして取り扱います。
障害年金上、再発した場合は「再発した後に初めて診察を受けた日」が初診日になります!
【ポイント3】精神疾患と就労
必ずしも「就労している=不支給」とは限りません。
とはいえ、精神疾患の場合は、審査上、就労の有無が重要なポイントとなってきます。
就労している継続年数や、就労形態についても審査では見られます。
就労している場合は、会社から受けている配慮や、帰宅後や休日の体調などを申し立てることも必要です。
たとえば、体調が悪化した場合の早退、通院のための遅刻や、その他、業務を行う上での配慮を受けていれば、そのあたりも記載します。
また、なんとかがんばって会社に行けても、帰宅した途端どっと疲れが出て寝込んでしまう場合や、休日は家事も一切できない場合なども、医師にしっかり伝え、診断書に反映していただくことも大切です。
障害年金と就労に関しては以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。