診断書などに「うつ病エピソード」と記載され、この診断名で障害年金の対象になるのかを知りたい、という方は少なくありません。

結論からお伝えすると、うつ病エピソードは障害年金の対象となり得る傷病です。診断名に「エピソード」と付いているかどうかで受給の可否が決まるわけではなく、実際の病状や日常生活・就労への支障の程度などをもとに判断されます。

本記事では、うつ病エピソードが障害認定基準上どう扱われるか、受給の可能性、等級・金額の傾向、申請のポイント、そして「もらえない」と言われたケースまでを、社会保険労務士法人の視点で整理します。

うつ病エピソードとは(障害認定基準上の位置づけ)

うつ病エピソードは、障害認定基準上「気分(感情)障害」として扱われる、認定の対象となり得る傷病です。ここでは医学的な原因や治療の話ではなく、年金認定上の位置づけを整理します。

「うつ病エピソード」はICD-10の診断分類名

うつ病エピソードは、診断書に記載されるICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の診断分類名の一つで、原則として単一(初回)のうつ病エピソードに用いられます。

ICD-10では、抑うつ状態が繰り返し現れる場合は「反復性うつ病性障害」という別の分類名が用いられます。うつ病エピソードと反復性うつ病性障害は分類上の名称は異なりますが、いずれも障害年金の認定対象となり得る点は共通しています。

障害認定基準では「気分(感情)障害」として扱われる

障害年金の審査で用いられる国民年金・厚生年金保険障害認定基準では、うつ病は「気分(感情)障害」として位置づけられています。うつ病エピソード、反復性うつ病性障害、気分変調症などは、この「気分(感情)障害」に含まれるものとして扱われます。

一方で、名称に「うつ」を含んでいても、混合性不安抑うつ障害などの神経症圏(ICD-10のF40〜F48)に分類される傷病は、障害認定基準上は原則として認定の対象とされていません。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱われることがあります。いずれにしても診断名がどの分類に属するかは重要な意味を持ち、うつ病エピソードは気分(感情)障害の側に位置づけられる診断名です。

うつ病エピソードで障害年金を受給できる可能性

うつ病エピソードでも障害年金を受給できる可能性はあります。ただし、受給できるかどうかは診断名そのものではなく、障害の程度と受給要件を満たしているかによって判断されます。このセクションでは、その考え方を整理します。

受給の判断は名称ではなく状態で決まる

障害年金の等級は、傷病名だけで決まるものではありません。障害認定基準では、気分(感情)障害について、病状の経過や日常生活能力、就労状況などを総合的に見て判断するとされています。

したがって、「うつ病エピソード」という診断名だからもらえない、あるいは必ずもらえる、と一律に言えるものではありません。日常生活や仕事にどの程度の支障が生じているかが、判断の中心となります。この点は、症状が外見から分かりにくく、診断書や申立書に生活上の支障が十分に反映されないと、実態よりも軽く評価されてしまうことがある、という側面にも関わってきます。

3つの受給要件(初診日・保険料納付・障害状態)

障害年金を受給するには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 初診日要件:障害の原因となった傷病について、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(初診日)が、制度ごとに定められた期間内にあること。障害基礎年金は初診日が国民年金加入中・20歳前・日本国内在住の60歳以上65歳未満(いずれも年金制度未加入期間)のいずれか、障害厚生年金は初診日が厚生年金保険の被保険者期間中にあることが必要です(詳しくは後述の等級・金額の項をご覧ください)。
  2. 保険料納付要件:初診日の前日の時点で、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あることが原則です。この原則を満たさない場合でも、初診日が令和18年(2036年)3月末日までにあり、初診日において65歳未満であれば、直近1年間に保険料の未納がなければ要件を満たす特例があります。なお、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われません(ただし、ご本人の所得による支給制限があります)。
  3. 障害状態該当:障害認定日(原則として初診日から1年6か月経過した日)などの時点で、障害認定基準に定める等級に該当していること。

障害年金全体の受給要件については、障害年金を受け取るための条件とはもあわせてご覧ください。

受給する場合の等級・金額の傾向(令和8年度)

うつ病エピソードで受給する場合の、等級と金額の目安を整理します。実際の等級は個別の審査により判断されるため、以下はあくまで一般的な傾向としてご覧ください。

等級判定の傾向と「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」

精神の障害については、平成28年9月から運用されている「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に基づき、診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の記載内容に応じて、等級の目安が示される仕組みになっています。日常生活や就労に大きな支障がある場合ほど、上位の等級に該当する可能性が高くなる傾向があります。

ここで注意が必要なのは、受け取れる等級と年金の種類の関係です。障害基礎年金の対象等級は1級・2級のみで、3級はありません。3級は障害厚生年金にのみ設けられた等級です。そのため、初診日に国民年金に加入していた方(自営業・専業主婦(夫)・学生など)は、3級相当と判断された場合は支給の対象とならない点に留意が必要です。

令和8年度の障害年金額

障害基礎年金の年額は、令和8年度(2026年4月分〜)で次のとおりです。

等級年額(令和8年度)備考
1級1,059,125円2級の1.25倍。子の加算あり
2級847,300円子の加算あり

※昭和31年4月1日以前生まれの方は別額(1級1,056,125円、2級844,900円)です。子の加算の対象となるのは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子で、加算額は第1子・第2子が各243,800円、第3子以降が各81,300円です。

障害基礎年金の対象となるのは、初診日が①国民年金加入中、②20歳前(年金制度に加入していない期間)、③日本国内にお住まいの60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間、のいずれかにある場合です(③は老齢基礎年金を繰上げ受給していない方に限ります)。厚生年金加入中に初診日がある場合は、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金のみとなります(なお、65歳以降に厚生年金加入中の初診日がある場合は、1級・2級でも障害厚生年金のみとなることがあります)。

障害厚生年金は報酬比例の年金額が基礎となり、1級は報酬比例の年金額×1.25、2級・3級は報酬比例の年金額です。1級・2級で生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合は、配偶者加給年金額(令和8年度243,800円)が加算されます。ただし、配偶者が一定期間以上加入した老齢厚生年金・退職共済年金を受け取る権利があるときや、障害年金を受けられる間は、この配偶者加給年金額は支給停止となります。3級には最低保障額として令和8年度で635,500円(昭和31年4月1日以前生まれの方は633,700円)が定められています。金額には個人差があります。

金額のより詳しい解説は、うつ病で障害年金を受給した場合の金額(3級)もあわせてご覧ください。

申請のポイントと診断書

うつ病エピソードの申請では、病状や生活の支障をいかに正確に書類へ反映できるかが重要になります。審査は原則として書類で行われるため、診断書と申立書の役割を理解しておくことが大切です。

診断書(様式第120号の4)で見られるポイント

うつ病を含む精神の障害では、「精神の障害用」の診断書(様式第120号の4)を使用します。この診断書の裏面には「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」という欄があり、前述の等級判定ガイドラインにおける等級の目安に直結します。

こうした欄に、実際の生活状況が過不足なく反映されることが望まれます。ただし、診断書の内容は医師が医学的に判断して作成するものです。どのような症状か、どのような記載になるかは主治医とよくご相談ください。弊事務所でも、日々の生活状況が主治医に正確に伝わるよう、受給を検討される方をサポートしています。

病歴・就労状況等申立書の役割

病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの病歴や日常生活・就労の状況を、ご本人側の視点で時系列に記載する書類です。診断書を補い、生活上の支障を具体的に伝える役割を持ちます。

この申立書は、ご本人やご家族でも作成できます。日本年金機構が様式や記入案内を公開していますので、まずは公式の様式を確認するとよいでしょう。記載の負担が大きい場合や、書き方に不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家に相談する選択肢もあります。書き方の詳細は、【自分で書ける】病歴・就労状況等申立書の書き方もご参照ください。

「もらえない」と言われた・申請が通らないケース

うつ病エピソードでも、申請が通らないケースはあります。ここでは一般的な不支給の理由と、その後にとり得る選択肢を整理します。不安を感じている方も、対応の道筋を知っておくことが大切です。

一般的な不支給理由

不支給や想定より低い等級となる背景には、いくつかの共通したパターンがあります。日常生活の支障が診断書や申立書に十分に反映されていない、就労している事実の伝え方によって実態より軽く受け取られてしまう、初診日の証明が難しい、といったケースです。

なお、働いていることが直ちに不支給につながるわけではありません。職場の配慮を受けてようやく勤務を続けている場合など、就労の実態によっては受給が認められることもあります。就労と障害年金の関係については、障害年金2級(精神疾患)でどれくらい働ける?障害年金がもらえない人の特徴で詳しく解説しています。

不支給後・認定日に該当しなかった場合の選択肢

審査の結果に納得できない場合は、決定を知った日の翌日から3か月以内に審査請求を行う方法があります。また、内容や状況を整えて再度申請し直す(再請求)という選択肢もあります。

障害認定日の時点では等級に該当しなかったものの、その後に症状が悪化した場合は、事後重症請求という方法があります。事後重症請求は、請求した月の翌月分から支給が始まる(過去に遡っての受給はできない)請求方法で、原則として65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。期限を過ぎると請求できなくなるため、注意が必要です。

うつ病(気分障害)で障害年金を受給された事例

弊事務所では、うつ病をはじめとする気分(感情)障害の方の障害年金申請を数多く手がけています。実際の事例は、ご自身の状況を考えるうえでの参考になります。以下は事例の一部です。

※個別事案により判断は異なります。

関連するよくある疑問

うつ病エピソードで障害年金を検討する際に、あわせて確認しておきたい関連記事を紹介します。金額や受給の可否など、疑問に応じてご参照ください。

まとめ

うつ病エピソードは、「気分(感情)障害」として障害年金の対象となり得る傷病です。「エピソード」という名称そのものが受給の可否を決めるわけではなく、日常生活や就労への支障の程度、そして初診日・保険料納付・障害状態の3要件を満たすかどうかが判断の中心となります。

障害基礎年金は1級・2級が対象で、初診日の加入制度によって受け取れる年金の種類や金額が変わります。申請では、診断書と病歴・就労状況等申立書に生活の実態を正確に反映することが大切です。

初めての障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年7月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。