糖尿病で障害年金はもらえる?3級の認定基準と金額

はじめに

はじめに

糖尿病で長く治療を続けているものの、障害年金を受給できるのか分からず不安を抱えている方は少なくありません。

糖尿病のように長期療養が必要な内科的な病気も、一定の要件を満たせば障害年金の対象になります。

ただし、糖尿病による障害年金には「治療を行ってもなお血糖コントロールが困難な状態」という認定基準があり、合併症がある場合は別の基準で判断されるなど、押さえておきたいポイントがいくつかあります。

本記事では、糖尿病で障害年金を受給するための認定基準・等級・金額の目安、申請のポイント、そして「もらえない」と言われやすいケースまでを、社会保険労務士の視点でわかりやすく解説します。

糖尿病と障害年金の関係

糖尿病と障害年金の関係

障害年金は、病気やけがで生活や仕事に支障が出たときに受け取れる公的年金です。

糖尿病も、外から見えにくい内科的な病気ですが、状態によっては障害年金の対象になります。

まずは障害年金の基本的な仕組みと、糖尿病がどのように扱われるかを確認しましょう。

障害年金とは

障害年金は、病気やけがで日常生活や就労に一定以上の支障が生じた場合に受け取れる公的年金です。

老齢年金と異なり、現役世代でも受給できるのが特徴です。

ただし、初診日や請求方法によって年齢に関する請求の制限があるため、初診日・障害認定日・請求方法の確認が大切です。

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、初診日(障害の原因となった傷病で初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日)にどの年金制度へ加入していたかで、受給できる種類が決まります。

国民年金加入中であれば障害基礎年金、厚生年金加入中であれば障害厚生年金が対象です(等級によっては障害基礎年金もあわせて支給されます)。

1型・2型で認定基準に違いはない

糖尿病には1型・2型などの種類がありますが、障害年金の認定基準では型による区別は設けられていません。

いずれの場合も、病名そのものではなく、治療内容・血糖コントロールの状況・日常生活への影響などを総合して等級が判断されます。

糖尿病で障害年金を受給できる可能性(認定基準)

糖尿病の障害認定基準は、平成28年6月1日に改正されています。

改正後は「必要な治療を行ってもなお、血糖コントロールが困難な症状の方」が対象とされています。

ここでは、現行の認定基準で3級と認定される要件を確認します。

3級と認定される要件

3級と認定される要件

日本年金機構が示す3級認定の要件は、次の①〜③をすべて満たすことです。

要件内容
①インスリン治療検査日より前に、90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていること
②検査所見など(いずれか)(1)内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満
(2)意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上
(3)インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上
③日常生活の制限一般状態区分表のイまたはウに該当すること

一般状態区分表のイ・ウは、おおむね次のような状態を指します。

  • :軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行や軽労働、座って行う作業はできる程度
  • :歩行や身のまわりのことはできるが、ときに少し介助が必要なこともあり、軽労働はできず、日中の半分以上を起きて過ごす程度

(出典:日本年金機構「『代謝疾患(糖尿病)による障害』の認定基準を一部改正します」)

『代謝疾患(糖尿病)による障害』の認定基準を一部改正します」

上位等級に認定される場合

糖尿病そのものでは3級が基本ですが、症状・検査成績・具体的な日常生活状況などによっては、さらに上位の等級に認定される場合もあります。

ご自身の状態がどの程度に該当するかは認定基準だけで一律に決まるものではなく、最終的には日本年金機構の認定医による審査で判断されます。

糖尿病の合併症は別の基準で認定される

糖尿病の合併症は別の基準で認定される

糖尿病で見落とされやすいのが、合併症の扱いです。

糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症などの合併症は、糖尿病そのものの基準ではなく、それぞれの障害の基準で認定されます。

合併症の状態によっては、3級より上位の等級に該当する場合もあります。

主な合併症と認定の枠組み

代表的な合併症と、認定に用いられる基準の対応は次のとおりです。

合併症認定に用いる基準等級の傾向
糖尿病性腎症(人工透析)腎疾患による障害人工透析療法施行中は原則2級(上位等級の場合あり)
糖尿病性網膜症眼の障害視力・視野の検査値で判定
糖尿病性神経障害神経系統の障害激痛・著明な知覚障害・重度の自律神経症状等で判定
糖尿病性壊疽による運動障害・切断肢体の障害切断・機能障害の程度で判定

合併症は対象疾患ごとの基準で判断されるため、糖尿病そのものは比較的安定していても、合併症の状態によって受給に至るケースがあります。

初診日の「相当因果関係」に注意

初診日の「相当因果関係」に注意

糖尿病が原因で合併症に至った場合、障害年金上の初診日は、合併症で受診した日ではなく、もとの糖尿病で初めて受診した日までさかのぼることがあります。

これを「相当因果関係」といいます。

初診日がいつになるかは、受給の可否や年金の種類に関わる重要なポイントです。

詳しくは障害年金の「相当因果関係」とはをご参照ください。

合併症で受給に至った事例

弊事務所でも、糖尿病の合併症で受給に至った事例を手がけています。

※個別事案により判断は異なります。

受給する場合の等級・金額の傾向

糖尿病そのもので障害年金を受給する場合、原則として3級が中心になります。

ただし、3級は障害厚生年金にのみある等級です。

初診日にどの年金制度へ加入していたかによって、受給できるかどうかが変わる点に注意が必要です。

国民年金加入中の場合、3級は支給対象外

障害基礎年金には1級・2級しかなく、3級はありません。

3級は障害厚生年金だけにある等級です。

そのため、初診日が国民年金加入中(自営業・専業主婦・学生など)や、20歳前・60歳以上65歳未満で国内在住の、年金制度に加入していない期間にある方で、症状が3級相当にとどまる場合は、障害基礎年金に3級がないため、原則として支給の対象になりません。

一方、初診日が厚生年金加入中にある方は、3級でも障害厚生年金を受給できる可能性があります。

なお、20歳前であっても、厚生年金保険の被保険者期間中に初診日がある場合は、障害厚生年金3級の対象となる可能性があります。

金額の目安(令和8年度)

障害厚生年金3級は、過去の報酬や加入期間に応じた「報酬比例の年金額」が基本で、最低保障額が設けられています。

区分金額(令和8年度・2026年4月〜)
障害厚生年金3級報酬比例の年金額(最低保障額635,500円、昭和31年4月1日以前生まれは633,700円)
障害基礎年金2級年額847,300円(+子の加算)
障害基礎年金1級年額1,059,125円(+子の加算)

※障害基礎年金の上記額は昭和31年4月2日以後生まれの方の金額です。昭和31年4月1日以前生まれの方は、1級1,056,125円・2級844,900円となります。

合併症などで1級・2級に該当し、初診日が厚生年金加入中にある場合は、障害基礎年金に障害厚生年金があわせて支給されます。

障害厚生年金は、1級が報酬比例の年金額×1.25(+配偶者加給年金額)、2級が報酬比例の年金額(+配偶者加給年金額)です。

糖尿病(1型)の金額の詳しい目安は1型糖尿病でもらえる障害年金の金額はいくら?もご参照ください。

申請のポイント|初診日の証明と診断書

糖尿病は長い時間をかけてゆっくり進行することが多く、初診日の証明が難しくなりがちです。

ここでは、申請でつまずきやすい初診日の証明と、診断書・申立書のポイントを整理します。

初診日の証明(受診状況等証明書)

初診日の証明(受診状況等証明書)

初診日は、初診の医療機関で作成する「受診状況等証明書」で証明するのが原則です。

ただし糖尿病は経過が長く、初診の医療機関のカルテが廃棄されているなどで取得できないことがあります。

受診状況等証明書が添付できない申立書

その場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」に、診察券・お薬手帳・領収書などの参考資料を添えて申請します。

将来の申請に備え、こうした記録を保管しておかれることをおすすめします。

診断書の記載ポイント

診断書の記載ポイント

糖尿病の診断書は、認定基準の改正にあわせて様式が見直され、インスリン治療の実施状況や、血清Cペプチド値・重症低血糖・ケトアシドーシスなどの記載欄が設けられています。

これらの検査所見や治療状況が、認定基準に沿って正確に反映されることが重要です。

診断書の作成は主治医にお願いするものですので、記載をお願いしたい項目について主治医とよくご相談ください。

診断書の基本は障害年金の申請は「診断書」で9割が決まるもあわせてご覧ください。

病歴・就労状況等申立書

診断書に書ききれない日常生活や就労上の支障は、「病歴・就労状況等申立書」で時系列に沿って具体的に伝えます。

書き方は自分で書ける病歴・就労状況等申立書で詳しく解説しています。

「もらえない」と言われやすいケース

「もらえない」と言われやすいケース

糖尿病で申請を考えていても、状態によっては受給が難しいケースもあります。

あらかじめ理由を知っておくことで、申請の準備に役立てられます。

不安を煽る意図はありませんが、一般的に不支給となりやすいパターンを整理します。

不支給になりやすい一般的なパターン

一般的に、次のようなケースでは認定が難しくなる傾向があります。

  • インスリン治療などで血糖コントロールが保たれており、日常生活への支障が小さい場合
  • 初診日が国民年金加入中などで、症状が3級相当にとどまる場合(障害基礎年金に3級はないため)
  • 経過が長く、初診日を証明する資料が用意できない場合

いずれも個別の事情によって結論は変わります。

該当しそうな場合でも、まずは認定基準と初診日を確認することが大切です。

「もらえない人」の傾向は障害年金がもらえない人でも解説しています。

不支給になった場合の選択肢

不支給になった場合の選択肢

申請が不支給となった場合でも、症状の悪化があれば改めて請求する「再請求」や、決定に不服がある場合の「審査請求」(決定があったことを知った日の翌日から3か月以内)という選択肢があります。

なお、これらは、すでに障害年金を受給中の方が上位等級への変更を求める「額改定請求」とは異なる手続きです。

混同しないようご注意ください。

糖尿病で障害年金を受給した事例

弊事務所(全国障害年金サポートセンター)では、糖尿病やその合併症の障害年金申請を数多く手がけてきました。

実際にサポートさせていただいた事例の一部をご紹介します。

いずれも、初診日の証明や診断書・申立書の準備を丁寧に行ったうえで認定に至ったケースです。
※個別事案により判断は異なります。

関連するご質問

糖尿病の障害年金に関連して、よくお寄せいただく疑問と参考記事をまとめました。

あわせてご確認ください。

Q:合併症で人工透析になった場合は何級ですか?

人工透析療法を受けている場合は、腎疾患の基準で原則として2級と認定されます。

主要症状や長期透析による合併症、具体的な日常生活状況などによっては、さらに上位の等級に認定される場合があります。

詳しくは人工透析でもらえる障害年金の金額をご覧ください。

Q:受給できる要件を最初から確認したい

障害年金には、初診日要件・保険料納付要件・障害認定基準該当という3つの要件があります。

障害年金を受け取るための条件とはで全体像を解説しています。

まとめ

まとめ

糖尿病による障害年金は、原則として3級が中心となります。

3級は障害厚生年金にのみある等級のため、初診日が国民年金加入中などで症状が3級相当にとどまる場合は、原則として支給の対象になりません。

一方、糖尿病性腎症(人工透析)や糖尿病性網膜症などの合併症は、それぞれの障害の基準で判断され、上位の等級に該当する場合もあります。

経過が長く初診日の証明が難しいことも多いため、早めに記録を整え、認定基準に沿った診断書・申立書を準備することが大切です。

糖尿病や合併症での障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年6月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

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