パーキンソン病で障害年金はもらえる?

はじめに

パーキンソン病と診断され、「これから障害年金を受給できるのだろうか」と不安を感じている方や、そのご家族は少なくありません。

パーキンソン病は進行性の疾患であり、症状の程度によっては障害年金の対象となる可能性があります。

ただし、診断を受けたからといって、すぐに受給できるわけではありません。

この記事では、パーキンソン病で障害年金を受給できる可能性、等級・金額の傾向、申請のポイント、「もらえない」と言われるケース、そして弊事務所の実際の事例までを、順を追って解説します。

パーキンソン病とはどのような病気か(障害年金の観点から)

パーキンソン病とはどのような病気か(障害年金の観点から)

はじめに、障害年金を考えるうえで押さえておきたいパーキンソン病の特徴を整理します。

ここでは医学的な詳細ではなく、障害認定に関わる範囲でご説明します。

具体的な症状や治療については、必ず主治医にご確認ください。

パーキンソン病は、脳の黒質という部分にあるドパミン神経細胞が減少し、脳内のドパミンが不足することで起こる進行性の神経変性疾患で、国の指定難病に指定されています。

発症の根本的な原因は、現時点ではまだ十分に解明されていません。

代表的な運動症状として、安静時の手足のふるえ(振戦)、筋肉のこわばり(筋固縮)、動作が遅くなる・動き出しにくい(無動・寡動)、バランスが取りにくく転倒しやすい(姿勢反射障害)の4つが知られています。

また、便秘や起立性低血圧などの自律神経症状、気分の落ち込みや意欲の低下といった非運動症状を伴うこともあります。

症状はゆっくりと進行することが多く、時間の経過とともに日常生活や就労への支障が大きくなっていく傾向があります。

障害年金では、病名そのものではなく、その障害によって日常生活や仕事にどの程度の支障が生じているかが判断の対象となります。

この点は、パーキンソン病で申請を検討されるうえで、最初に理解しておきたい考え方です。

パーキンソン病で障害年金を受給できる可能性

パーキンソン病は、障害の状態が認定基準に該当すれば障害年金の対象となり得る疾患です。

このセクションでは、どのような認定基準で判断されるのか、そして申請のタイミングについての一般的な考え方をご説明します。

なお、障害年金を受給するには、①初診日(その傷病で初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日)に関する要件、②保険料の納付要件、③障害の状態が認定基準に該当すること、の3つを満たす必要があります。

ここでは主に③の認定に関わる部分を取り上げます。

認定は主に「肢体の障害」として行われます

パーキンソン病で障害年金を受給できる可能性

パーキンソン病による障害年金は、多くの場合、障害認定基準の「第7節 肢体の障害」のうち「第4 肢体の機能の障害」に基づいて審査されます。

現行の障害認定基準(令和4年4月1日改正版)では、肢体の機能の障害は、関節の動く範囲や筋力、動作の巧みさ・速さ・持続性などを考慮し、日常生活の動作の状態から総合的に判断するとされています。

判断にあたっては、四肢の機能がどの程度制限されているか、日常生活の動作(食事、着替え、立ち上がり、歩行など)がどの程度自分でできるかが重視されます。

なお、パーキンソン病では認知機能の低下や精神症状を伴う場合もあり、その障害が中心となるケースでは、精神の障害用の診断書で申請することもあります。

どの部分の障害で申請するかは、症状の実態を踏まえて見極める必要があります。

薬でコントロールできているうちは対象になりにくい傾向があります

薬でコントロールできているうちは対象になりにくい傾向があります

パーキンソン病は、薬物療法によって症状が軽減されることが多い疾患です。

そのため、服薬によって症状がうまくコントロールされている段階では、障害年金の障害状態に該当しにくい傾向があるとされています。

一方で、病気が進行すると、次第に薬が効きにくくなったり、薬の効いている時間が短くなったりすることがあります。

こうして日常生活や就労に支障が生じるようになると、障害年金の対象となる可能性が出てきます。

申請のタイミングは、こうした症状の進行状況によって変わってきます。

なお、若い年代で発症する若年性パーキンソン病の方もいらっしゃいます。

初診時に別の病名がついていたケースなどでは、初診日の取り扱いが論点になることがあります。

若年性パーキンソン病で相当因果関係が認められ障害基礎年金2級となった事例

※個別事案により判断は異なります。

受給する場合の等級・金額の傾向

ここでは、パーキンソン病で障害年金が認定される場合の等級判定の考え方と、金額の目安をご説明します。

等級はあくまで個別の障害状態によって判断されるものであり、特定の結果を保証するものではありません。

等級判定で重視される要素

パーキンソン病の進行度を示すホーエン・ヤール(Hoehn-Yahr)重症度分類や生活機能障害度は、医療機関で用いられる医学的な指標で、指定難病の医療費助成では「ヤール3度以上かつ生活機能障害度2度以上」が対象基準とされています。

ただし、これらは障害年金の等級を直接決める基準ではありません。

障害年金の肢体の障害の認定では、関節の動く範囲や筋力、動作の巧みさ・速さ・持続性、歩行や着替えなどの日常生活動作の状態から、認定基準に沿って総合的に判断されます。

障害等級の目安を整理すると、次のようになります。

制度対象となる等級障害状態の程度(概要)
障害基礎年金1級・2級1級=他人の介助を受けなければ日常生活がほぼ不可能な程度 / 2級=日常生活が著しい制限を受ける程度
障害厚生年金1級〜3級上記に加え、3級=労働が著しい制限を受ける程度
初診日にどの年金制度に加入していたか

ここで押さえておきたいのが、受給できる障害年金の種類は初診日にどの年金制度に加入していたかで決まるという点です。

障害基礎年金の対象となるのは、初診日が次のいずれかにある方です。

  • 国民年金に加入している期間(自営業・専業主婦(夫)・無職の方など)
  • 20歳前(年金制度に加入していない期間)
  • 日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で、年金制度に加入していない期間(ただし老齢基礎年金を繰上げ受給している方を除く)

一方、初診日に厚生年金に加入していた方は、障害厚生年金の対象となります。

注意したいのは、障害基礎年金には3級がないという点です。

上記の障害基礎年金の対象となる方が、障害状態が3級相当にとどまる場合は、原則として障害年金の対象にはなりません。

これに対し、初診日に厚生年金に加入していた方は、3級の対象となる可能性があります。

なお、厚生年金加入中に初診日がある方が1級・2級に認定された場合は、障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せして支給されます。

障害手当金(一時金)も厚生年金加入中に初診日がある方が対象ですが、これは初診日から5年以内に傷病が治った(症状が固定した)日に3級より軽い障害が残った場合などが要件です。

パーキンソン病は進行性の疾患で症状が固定したとはいえないことが多いため、障害手当金には通常は該当しにくいと考えられます。

障害年金の受給額の目安(令和8年度・2026年度)

障害年金の受給額の目安(令和8年度)

令和8年度(2026年度)の障害基礎年金は定額で、昭和31年4月2日以後にお生まれの方は次のとおりです。

等級障害基礎年金(令和8年度・年額)
1級1,059,125円(2級の1.25倍)
2級847,300円

昭和31年4月1日以前にお生まれの方は別額で、1級1,056,125円・2級844,900円です。

いずれも、生計を維持している子がいる場合は子の加算が上乗せされます。

初診日に厚生年金へ加入していた方は、1級・2級に該当すると、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされます。

障害厚生年金は報酬比例で計算され、1級は報酬比例の年金額×1.25、2級は報酬比例の年金額がそれぞれ支給され、一定の要件を満たす配偶者がいる場合は配偶者加給年金が加算されます(ただし、配偶者がご自身の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上等)や障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金は支給停止されます)。

3級は報酬比例の年金額のみで、最低保障額(令和8年度635,500円、昭和31年4月1日以前生まれは633,700円)が設けられています。

なお、20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には、本人の前年所得による支給制限があります。

令和8年度は、前年の所得が479万4,000円(扶養親族がいる場合は加算)を超えると全額が、376万1,000円を超えると2分の1が支給停止されます。

報酬比例部分は加入期間や報酬によって大きく異なります。

金額の詳しいシミュレーションは【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額もあわせてご確認ください。

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申請のポイント・診断書の取り方

パーキンソン病の申請では、症状の変動をいかに正確に書類へ反映するかが重要になります。

このセクションでは、診断書と申立書に関する形式的なポイントを、社会保険労務士の立場からご説明します。医学的な内容の判断は主治医にお任せください。

オン・オフ現象と「オン状態での評価」に注意します

オン・オフ現象と「オン状態での評価」に注意します

パーキンソン病では、薬の効いている時間(オン)と効き目が切れている時間(オフ)があり、症状が変動することがあります。

薬の効果が次第に切れてくるものはウェアリングオフ、効果が急に変動するものはオン・オフ現象と呼ばれ、いずれも一日のなかで動きやすさが変わります。

診断書では、どの状態を基準に評価したのかを明確にしたうえで、オンのときとオフのときそれぞれの日常生活の状況、一日のなかでの時間や頻度、転倒・介助・補助具の有無、服薬との関係を具体的に記載してもらうことが大切です。

オフのときの支障や、オンの状態が短くなっている実態が診断書に十分反映されないと、実際の生活の大変さが審査に伝わりにくいことがあります。

この点については、日常生活の困りごとを時間帯ごとに整理した資料を主治医にお渡しし、診断書へ正確に反映していただくよう橋渡しをすることが有効な場合があります。

診断書の記載内容は主治医の判断によりますので、まずは主治医とよくご相談ください。

病歴・就労状況等申立書で症状の経過と日内変動を伝えます

病歴・就労状況等申立書で症状の経過と日内変動を伝えます

病歴・就労状況等申立書は、請求者ご自身が記入する数少ない書類のひとつで、発病から現在までの経過や、日常生活で困っていることを、自分の立場から伝えられる中心的な書類です。

パーキンソン病では、症状がどのように進行してきたか、一日のなかでどの時間帯にどれだけ動けるのか(日内変動)を具体的に記すことが大切です。

診断書だけでは伝えきれない部分を、この申立書で補うことで、実態に即した判断につながりやすくなります。

書類作成にお悩みの場合は、社会保険労務士にご相談いただくこともできます。

「もらえない」と言われた・申請が通らないケース

パーキンソン病は受給の可能性がある疾患ですが、申請が不支給となったり、想定より軽い等級で認定されたりすることもあります。

ここでは、その一般的な背景と、その後の選択肢についてご説明します。

実態が診断書に反映されていないケースが目立ちます

不支給や軽い等級の背景としてよく見られるのが、診断書の内容が実際の障害状態を十分に反映していないケースです。

たとえば、オフのときの支障や、杖・歩行補助具の使用といった実態が診断書に記載されていないと、審査では症状が軽く評価されてしまうことがあります。

診断書を受け取ったら、記載内容が現在の生活状況と合っているかを確認することが大切です。

一度不支給となった後、オン時の日常生活動作を丁寧に補足し再申請で障害厚生年金3級が認定された事例

※個別事案により判断は異なります。

再請求・審査請求・進行後の請求という選択肢があります

再請求・審査請求・進行後の請求という選択肢があります

不支給となった場合でも、その後の選択肢はあります。

決定に不服がある場合は審査請求という手続きがありますし、書類を整えて改めて請求し直す方法もあります。

また、パーキンソン病は進行性のため、申請時点では軽くても、後に症状が悪化した段階で事後重症請求(障害認定日の後に症状が重くなった場合の請求)を行うことも考えられます。

事後重症請求は65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります。

一方、障害認定日の時点ですでに等級に該当していた場合の障害認定日請求は、65歳を過ぎてからでも行えますが、さかのぼって受け取れる年金は時効により最大5年分までとなります。

すでに障害厚生年金3級などを受給している方が、症状の進行に伴って上位等級を目指す場合には、額改定請求という手続きがあります。

これは、日本年金機構に定期的に提出する診断書による更新審査とは別に、更新の時期を待たずに行える手続きで、原則として受給権を得た日または前回の審査から1年を経過した後に請求できます(明らかに症状が重くなった場合の例外もあります)。

なお、障害厚生年金3級の方は、原則として65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります(過去に障害等級2級以上に該当したことがある方は、65歳を過ぎても請求できます)。

障害年金の更新については、障害年金の更新で落ちる確率もあわせてご参照ください。

更新の際に額改定請求を行い障害厚生年金が3級から2級へ等級アップした事例

※個別事案により判断は異なります。

パーキンソン病で障害年金を受給した事例

弊事務所(わくわく社会保険労務士法人/全国障害年金サポートセンター)では、パーキンソン病の方の障害年金申請を数多くお手伝いしてきました。

ここでは、実際の事例の一部をご紹介します。

いずれも症状の変動や日常生活の実態を丁寧に書類へ反映した点が共通しています。

※上記はいずれも実際の申請事例ですが、個別事案により判断は異なります。同じ病名でも、症状や日常生活の状況によって結果は変わります。

よくあるご質問

パーキンソン病の障害年金について、よくいただく質問にお答えします。

Q. 働いていても障害年金を受給できますか?

障害年金は、就労している事実だけで一律に対象外となるものではありません。

パーキンソン病の場合も、日常生活や仕事にどの程度の支障があるかが判断の基準となります。

ただし、就労の状況は審査で考慮される要素の一つですので、実態を正確に伝えることが大切です。

Q. 身体障害者手帳がないと申請できませんか?

障害者手帳の有無と障害年金の申請は、別の制度です。

身体障害者手帳を持っていなくても、障害年金を請求することは可能です。

Q. 初診日が65歳以上でも申請できますか?

一律に対象外となるわけではありません。

障害基礎年金は、原則として初診日が65歳未満の対象期間(国民年金の加入期間など)にあることが必要です。

一方、障害厚生年金は、厚生年金の被保険者である間に初診日があれば対象となり、厚生年金の被保険者資格は原則として70歳未満まで続くため、65歳以上でも在職中に初診日があれば対象となる可能性があります。

ただし、事後重症請求は65歳の誕生日の前々日までに行う必要があるため、65歳以降に初診日がある場合は、障害認定日の時点で等級に該当しているか(障害認定日請求)がポイントになります。

ご自身の状況については、年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。

まとめ

まとめ

パーキンソン病は進行性の疾患であり、症状が進んで日常生活や就労に支障が生じている場合には、障害年金を受給できる可能性があります。認定は主に肢体の障害として行われ、日常生活動作や肢体の機能の状態を認定基準に沿って総合的に判断します(ホーエン・ヤール重症度分類などは医学的な参考指標です)。

とくにオン・オフ現象による症状の変動を、診断書と病歴・就労状況等申立書にどう反映するかが申請のポイントです。実態が正確に伝わらないと、不支給や軽い等級につながることもあります。

パーキンソン病での障害年金申請をご検討の方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年7月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

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