社会不安障害で障害年金はもらえる?

はじめに

人前に出ると強い不安や緊張に襲われ、仕事や日常生活が思うように続けられない。

そんな社会不安障害でお悩みの方の中には、「障害年金を受け取れないか」と考える方も少なくありません。

一方で、「神経症だから障害年金の対象外」という情報を目にして、申請をためらっている方もいらっしゃいます。

社会不安障害は、障害認定基準上は原則として障害年金の対象になりません。

ただし、一定の場合には受給できる可能性があります。

本記事では、その原則と例外、等級・金額の傾向、申請の進め方を、障害認定基準に沿って解説します。

社会不安障害(社交不安障害)とは

社会不安障害(社交不安障害)とは

はじめに、社会不安障害が障害年金の制度上どのように位置づけられているかを整理します。

ここでは医学的な解説ではなく、認定基準上の分類に絞ってご説明します。

この分類が、受給できるかどうかを大きく左右するためです。

社会不安障害は、社交不安障害(SAD)とも呼ばれます。

人前で話す、注目される、といった対人場面で強い不安や恐怖が生じ、そうした場面を避けるようになる状態です。

DSM-5では「社交不安症(社交不安障害)」の呼称が用いられています。

障害年金の審査が依拠する国際疾病分類(ICD-10)では、社会不安障害は「社会[社交]恐怖(F40.1)」に分類されます。

これは「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害(F40〜F48)」に含まれる、いわゆる神経症の一つです。

この「神経症に分類される」という点が、後述する認定上の大きなポイントになります。

社会不安障害は障害年金の対象になる?

結論からお伝えすると、社会不安障害は原則として障害年金の対象外ですが、例外的に対象となる場合があります

ここでは「原則」と「2つの例外」に分けて、障害認定基準の考え方をご説明します。

制度の全体像をつかむうえで最も重要な部分です。

原則として神経症は認定の対象外

原則として神経症は認定の対象外

障害認定基準では、神経症について次のように定められています。

神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。

(出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第8節 精神の障害、認定要領(5))

社会不安障害は神経症に含まれるため、この原則にあてはまります。

つまり、症状が重く見えても、傷病名が社会不安障害のみである場合は、原則として障害年金の認定の対象になりません。

社会不安障害の例外

例外①「精神病の病態」を示している場合

例外①「精神病の病態」を示している場合

上記の認定基準には「ただし書き」があります。神経症であっても、その臨床症状から判断して精神病の病態を示している場合には、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱う、とされています。

ここでいう「精神病の病態」とは、ICD-10のF2(統合失調症圏)やF3(気分障害圏)に相当する水準の病態を指すと考えられています。

ここで注意したいのは、症状が長く続き一見重いというだけでは足りない点です。

認定基準も、神経症は「一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならない」としています。

あくまで、臨床症状から統合失調症や気分障害に相当する病態を示していると医学的に判断され、その内容が診断書に反映されていることが前提となります。

明確な数値基準はなく、日本年金機構が診断書などの書類をもとに、認定医の医学的判断を踏まえて認定します。

そのため、「症状が重ければ必ず認定される」といった断定はできません。

例外②うつ病等の精神疾患を併発している場合

例外②うつ病等の精神疾患を併発している場合

社会不安障害の方は、うつ病や双極性障害などの気分障害を併発しているケースが少なくありません。

この場合は、社会不安障害そのものが認定されるというより、認定の対象となる気分障害を含めて、障害の状態が総合的に判断されることになります。

複数の精神疾患が併存する場合、認定基準でも症状や日常生活能力などを総合して判断するとされています。

大切なのは、実際の病態が診断書に正確に反映されていることです。

社会不安障害という病名だけが記載されていると原則対象外の扱いとなるため、併発している気分障害等がある場合には、主治医とご相談のうえで正確に反映していただくことが重要になります。

ただし、診断名が加われば必ず受給できるというわけではなく、障害の程度が等級に該当するかどうかで判断されます。

受給できる場合の等級・金額の傾向

例外的に障害年金の対象となる場合、等級や金額はどう判断されるのでしょうか。

ここでは、統合失調症・気分障害に準じて認定される場合の考え方と、令和8年度(2026年度)の金額の目安をご説明します。

等級判定の考え方

等級判定の考え方

障害の程度は、傷病名だけで決まるものではありません。

日常生活能力、就労状況、症状の経過などを総合的に見て判断されます。

精神の障害については、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月1日実施)も参考にされます。

なお、障害基礎年金の等級は1級・2級、障害厚生年金の等級は1級〜3級です。

障害基礎年金には3級がありません

初診日に国民年金へ加入していた方などが3級相当の状態と判断された場合、原則として障害基礎年金の支給対象にはならない点にご注意ください。

就労している場合でも、それだけで不支給と判断されるわけではありません。職場の配慮を受けてようやく勤務を継続できているようなケースでは、その実態が考慮されることがあります。

障害年金の受給額の目安(令和8年度・2026年度)

障害年金の受給額の目安(令和8年度)

令和8年度(2026年度)の障害基礎年金は定額で、昭和31年4月2日以後にお生まれの方は次のとおりです。

等級障害基礎年金(令和8年度・年額)
1級1,059,125円(2級の1.25倍)
2級847,300円

昭和31年4月1日以前にお生まれの方は別額で、1級1,056,125円・2級844,900円です。

いずれも、生計を維持している子がいる場合は子の加算が上乗せされます。

初診日に厚生年金へ加入していた方は、1級・2級に該当すると、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされます。

障害厚生年金は報酬比例で計算され、1級は報酬比例の年金額×1.25、2級は報酬比例の年金額がそれぞれ支給され、一定の要件を満たす配偶者がいる場合は配偶者加給年金が加算されます(ただし、配偶者がご自身の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上等)や障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金は支給停止されます)。

3級は報酬比例の年金額のみで、最低保障額(令和8年度635,500円、昭和31年4月1日以前生まれは633,700円)が設けられています。

なお、20歳前の年金未加入期間に初診日がある障害基礎年金には、本人の前年所得による支給制限があります。

令和8年度は、前年の所得が479万4,000円(扶養親族がいる場合は加算)を超えると全額が、376万1,000円を超えると2分の1が支給停止されます。

報酬比例部分は加入期間や報酬によって大きく異なります。

金額の詳しいシミュレーションは【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額もあわせてご確認ください。

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申請のポイント|診断書と病歴・就労状況等申立書

障害年金は書類による審査です。特に社会不安障害のように原則対象外とされる傷病では、書類の内容がより重要になります。

ここでは診断書と、社会保険労務士の専門領域である病歴・就労状況等申立書のポイントをご説明します。

診断書のポイント

診断書のポイント

診断書は、実際の病態が正確に反映されていることが何より大切です。

前述のとおり、傷病名が社会不安障害(神経症)のみの場合は、原則として対象外の扱いとなります。

うつ病などの気分障害を併発している場合は、その病態が診断書に適切に反映されているかがポイントになります。

具体的な症状や日常生活への支障については、主治医とよくご相談ください。

医学的な判断は主治医が行うものであり、当事務所が診断内容を左右することはありません。

病歴・就労状況等申立書のポイント

病歴・就労状況等申立書のポイント

病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの経過や日常生活の状況を、ご本人側から伝える書類です。作成支援は社会保険労務士の専門領域です。

対人場面でどのような支障が生じているか、仕事が続かない実態、家事や外出の困難など、日常生活の制限を時系列で具体的に記載することが大切です。

就労中の方は、職場でどのような配慮を受けているかも書き添えると、実態が伝わりやすくなります。

診断書との整合を意識しながら作成することが望まれます。

「対象外」と言われた・不支給になったケース

社会不安障害で申請を検討する中で、「神経症だから難しい」と言われたり、実際に不支給になったりする方もいらっしゃいます。

ここでは、不支給になりやすいケースと、その後の選択肢を整理します。

不支給になりやすいケース

代表的なのは、傷病名が神経症のみで、精神病の病態が診断書から読み取れないケースです。

また、症状は重くても、日常生活や就労の支障が書類に十分反映されていない場合も、認定につながりにくくなります。

このほか、初診日の保険料納付要件を満たしていない場合や、初診日を証明できない場合も、そもそも申請のハードルとなります。

保険料納付要件は、原則として初診日の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の納付・免除が必要です。

これを満たさない場合も、初診日が令和18年(2036年)3月末日以前で、かつ初診日において65歳未満であれば、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納がなければよいとする特例があります。

受給の3つの要件については、障害年金を受け取るための条件とはをご覧ください。

再請求・審査請求という選択肢

再請求・審査請求という選択肢

不支給となった場合でも、あらためて請求し直す再請求や、決定に不服がある場合の審査請求という選択肢があります。

両者は目的と効果が異なる点に注意が必要です。

症状が悪化したことを理由に、現在の状態であらためて請求する場合は、事後重症請求という扱いになります。

この場合、認められても原則として請求した月の翌月分からの支給となり、過去にさかのぼっての支給はありません。

また、事後重症請求は原則として65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります。

一方、元の不支給決定そのものに誤りがあり、当初の障害認定日にさかのぼった支給を求める場合は、審査請求を検討します。

審査請求は、原則として処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に行う必要があります。

その決定にも不服がある場合は、決定書の謄本が送られた日の翌日から2か月以内に再審査請求ができます。

神経症のみの傷病名であっても、審査請求などを経て認定された裁決例がまれに存在します。

ただし、こうした結果を保証するものではなく、個別の事案により判断は異なります。

不支給の理由を丁寧に確認し、書類を見直したうえで、早めに次の一手を検討することが大切です。

社会不安障害・不安障害に関連する事例

ここでは、弊事務所が実際に関わった事例の一部をご紹介します。

いずれも精神疾患に関する事例で、社会不安障害を含む不安障害の方の申請を考えるうえで参考になるものです。

弊事務所では、不安障害やうつ病など精神疾患の方の障害年金申請を数多く手がけています。

これらの事例では、傷病名や診断書の内容、日常生活・就労の状況などをふまえて認定が判断されています。

※個別事案により判断は異なります。

よくあるご質問

社会不安障害と障害年金について、よく寄せられるご質問にお答えします。

Q. 社会不安障害だけの診断名でも申請できますか?

傷病名が社会不安障害(神経症)のみの場合、原則として障害年金の認定の対象にはなりません。

ただし、精神病の病態を示している場合や、うつ病等の気分障害を併発している場合は、対象となり得ます。

まずは実際の病態について主治医にご確認いただくことをおすすめします。

Q. 働きながらでも受給できますか?

働きながらでも受給できますか?

就労していることだけを理由に不支給となるわけではありません。

職場の配慮を受けて勤務を続けているような場合は、その実態が考慮されることがあります。

詳しくは「働きながら障害年金をもらえる人」をご覧ください。

Q. いくらもらえますか?

令和8年度の障害基礎年金は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です。

厚生年金に加入していた方は、これに障害厚生年金が上乗せされます。

金額の詳細は【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額でご確認ください。

まとめ

まとめ

社会不安障害は、障害認定基準上は原則として障害年金の対象外です。

ただし、精神病の病態を示している場合や、うつ病等の気分障害を併発している場合には、受給できる可能性があります。

大切なのは、実際の病態と日常生活・就労の支障が、診断書や病歴・就労状況等申立書に正確に反映されることです。

「神経症だから」と諦める前に、ご自身の状況を一度整理してみることをおすすめします。

社会不安障害での障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年7月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

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