「ICD-10コード」とは

精神疾患の診断書に必要な「ICD-10コード」を徹底解説します!

精神疾患で障害年金を申請する際は、診断書の病名の横にあるICD-10コード記入欄へコードの記載が必要になります。

診断書は病院へ提出して記載してもらうものなので、ICD-10コードなど気にしていない方も多いのではないでしょうか?

しかし、この『ICD-10コード』が実はとても重要なんです!

記載が無いとどうなるのか?それぞれのコードが意味するもの等を詳しくご説明します。

動画で紹介

ICD-10コードとは?

ICD-10コードとは、厚生労働省のホームページでは以下のように定義されています。

 「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)」とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類である。
最新の分類は、ICDの第10回目の改訂版として、1990年の第43回世界保健総会において採択されたものであり、ICD-10(1990年版)と呼ばれている。
厚生労働省:「疾病、傷害及び死因の統計分類

少しに分かり難いですね。

簡単に解説すると、『精神障害といっても多くの傷病があり、分かり難いので、国際的にある程度分類してコードで表しましょう。』ということです。

このICD-10による分類では、様々な精神障害を約100種のカテゴリーに分類して、F0~F9までの大分類コードに振り分けられています。

クリックすると、より詳細なICD-10コードがご覧いただけます。

精神および行動の障害のICD-10コード
F0 症状性を含む器質性精神障害 F0の申請事例
F1 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 F1の申請事例
F2 統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 F2の申請事例
F3 気分[感情]障害 F3の申請事例
F4 神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害 F4の申請事例
F5 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群 F5の申請事例
F6 成人のパーソナリティおよび行動の障害 F6の申請事例
F7 知的障害 F7の申請事例
F8 心理的発達の障害 F8の申請事例
F9 小児および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
特定不能の精神障害
F9の申請事例

特に『F2・F3・F4』は注意が必要ですので、後ほど詳細をご説明いたします。

それぞれのコードが意味するものは?

ICD-10のコードは、「アルファベット」と「数字」で構成されています。

コードによって疾病や傷害の部位、原因などを表すことができます。

また、より詳細なコードで特徴や部位・症状の重症度が表されています。

一般的に診断書に記載されるICDコードは「アルファベット+2ケタの数字」で表記され、詳細は省略されることが多くあります。

(例)中等度うつ病
中等度うつ病

障害年金の申請において、ここまで詳細なコードの記載は必ず必要とはされていないため、記載した方が良いか否かは医師と相談うえご検討ください。

このあと特に注意が重要となる疾病を詳しくご説明したいと思います。

F2 統合失調症

精神疾患の中でも入院患者数が最も多いのが統合失調症です。

ひとことで”統合失調症”といっても症状などにより以下のように分類されます。

コード 病名
F20 統合失調症
F21 統合失調症型障害
F22 持続性妄想性障害
F23 急性一過性精神病性障害
F24 感応性妄想性障害
F25 統合失調感情障害
F28 その他の器質性精神病性障害
F29 特定不能の非器質性精神病

F2 統合失調症の申請事例

統合失調症の申請事例一覧

【事例842】統合失調症|障害厚生年金2級(更新の事例)
【事例766】うつ病・統合失調感情障害|障害基礎年金2級
【事例808】統合失調感情障害|障害厚生年金2級(更新の事例)
【事例749】統合失調症|障害基礎年金2級
【事例718】統合失調症|障害基礎年金2級(更新の事例)

F3 気分(感情)障害

「気分(感情)障害」というとわかりづらいですが、よく耳にする「うつ病」や「双極性感情障害」がこのカテゴリーに属します。

コード 病名
F30 躁病エピソード
F31 双極性感情障害<躁うつ病>
F32 うつ病エピソード
F33 反復性うつ病性障害
F34 持続性気分 [感情] 障害
F38 その他の気分 [感情] 障害
F39 詳細不明の気分 [感情] 障害

詳細なコード~症状の程度がわかる~

うつ病エピソード(F32)については、詳細コードを記載することで、軽度や重度というような症状の程度がわかるようになっています。

重症度 コード 病名
F32.0 軽症うつ病エピソード
F32.1 中等症うつ病エピソード
F32.2 精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード
F32.3 精神病症状を伴う重症うつ病エピソード

一般的には省略されていることがほとんどですが、省略しないほうが良いケースもあります。

たとえば「日常生活能力の判定」や「日常生活能力の程度」が重たく評価されている場合は、重症うつ病に該当する場合があります。

この場合、詳細コードがあると審査の際により現状が伝わるため記載をおすすめします。

F3 気分(感情)障害の申請事例

気分(感情)障害の申請事例一覧

【事例981】中等症うつ病エピソード(過去に別の傷病で不支給だった事例)|障害基礎年金2級
【事例963】うつ病|障害厚生年金3級
【事例911】うつ病・社交不安障害|障害基礎年金2級
【事例973】うつ病|障害厚生年金2級(既にカルテが破棄されていた事例)
【事例949】うつ病・強迫性障害|障害基礎年金2級

F4 神経症性障害

病気が”神経症”のグループに該当すると障害年金の申請にはとても注意が必要となります。

神経症に該当する傷病としては以下のようなものがあります。その他にもニュースなどでも良く聞く傷病のうち、パニック障害、適応障害、広場恐怖、多重人格障害といったものも、この神経症グループに該当します。

コード 病名
F40 恐怖症性不安障害
F41 その他の不安障害
F42 強迫性障害<強迫神経症>
F43 重度ストレスへの反応及び適応障害
F44 解離性 [転換性] 障害
F45 身体表現性障害
F48 その他の神経症性障害

なぜ、神経症での障害年金申請に注意が必要かというと、神経症は原則として障害年金の対象とならないとされています。

(5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その診療症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。

引用:障害認定基準より

※精神病= 知的障害とは別の概念であり、「神経症」「人格障害」「心因反応」を除く精神障害の総称
※病 態=症状、病気のようす

上記の認定基準にも「その診療症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。」と示されている通り、精神病の症状が認められる場合認定の対象となる可能性があります。

F4 神経症性障害の申請事例

神経症性障害の申請事例一覧

【事例1333】自閉症スペクトラム障害・社交不安障害|障害基礎年金2級(自分で申請して不支給になった事例)
【事例949】うつ病・強迫性障害|障害基礎年金2級
【事例922】適応障害・発達障害|障害基礎年金2級
【事例811】遷延性抑うつ反応・軽度知的障害|障害基礎年金2級
【事例817】解離性障害・うつ病|障害基礎年金2級(他の社労士事務所で申請して不支給となった事例)

ICD-10コードが必要な理由

医療機関は患者が訴える症状を「治療」することが目的です。

医師が患者の不調がある部分を治そうと誠心誠意尽くしてくれます。

その症状は患者ひとりひとり違い、人によって様々です。そのため医師によっては「病名にこだわらず不調を治しましょう。」とおっしゃる方もいます。

ではなぜ障害年金の世界ではICD-10コードを使い病名をつけるのか、その理由のひとつが「画一的な審査の必要性」です。

人によって様々な症状をひとりひとり審査していては莫大な時間を費やしてしまい、必要な方に障害年金が届かなくなってしまいます。

そのため症状はひとそれぞれですが、ある程度の基準に沿って病名をつけ審査を効率的に行います。

その基準が「ICD-10」であり、障害年金ではとても重要な役割を果たしてくれています。

診断書に記載する際の注意点

実は精神医学では病気の定義や診断基準(疾病の分類方法)が統一されていません。

つまり、「同じ症状でも分類の方法に仕方によって病名」が変わってきます。

代表的な分類法は今までご説明してきた世界保健機構が作成した「ICD‐10」、アメリカ精神医学会が作成した「DSM-5」です。

この2つの分類方法ですが、別の機関が作成した分類法のため「どちらかにある疾病が、どちらかにはない」といった状況や基準も似ていますが全く同じではありません。

分類方法が異なると同じ症状でも異なる病名がついたりしてしまいます。

DSMで分類するドクターも多い

先にお伝えしたように医師は患者の症状を改善することを目的としているため、

病名は一番重要なものではありません。

また、障害年金の診断書で使用するのは「ICD-10」は、研究や統計に使われることが多く臨床診断ではあまり使用されません。

日本国内でも「ICD-10」で分類する医療機関と「DSM(精神障害の診断と統計マニュアル:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」で分類される医療機関といずれも存在します。

分類方法が異なると問題があるの?

疾病の分類方法の代表である「ICD-10]と「DSM-5」ですが、定義や位置付け・概念が異なるものもあります。

例えば統合失調症では下記のような違いがあります。

ICD-10 DMS-5
発表 WHO(世界保健機構) APA(アメリカ精神医学学会)
表記 F21 Schizophrenia
持続期間 1ヶ月 6ヶ月

また、上記の分類方法は、診断に必要となる症状にも違いがあります。

同じ症状であっても、分類法が異なれば、傷病名が異なることもありえます。

医師にあらかじめ相談することは大切なこと

普段使用しない分類方法で病名を表すことは簡単なことではありません。

そのためICD-10のコードを間違って記載してしまったり、通院期間が短すぎると病名がつけられないこともあり、注意が必要です。

また、基準も全く同じではないため障害年金の診断書を記載してもらう際は、余裕をもって障害年金の申請を考えていると相談し、改めてこういった症状があると医師に伝えることも大切です。

診断書に記載が無いとどうなるの?

今まで重要だとご説明してきたICD-10コードですが、診断書に記載がなかった場合はどうなるのでしょうか。

このICD-10コード抜けがあった場合、受理してもらえません

つまり年金事務所の窓口で受取ってもらえないことになります。

また提出し直せばいい話しですがちょっとした問題もあります。

ICD-10コードの記載漏れがあったときどんなリスクがあるのか

それではICD-10コードの記載漏れがあったときどんなリスクがあるのでしょうか。

提出までに月をまたぐとその分の年金が貰えなくなる

年金の受給は受付した月の翌月から発生するので、受け付けが遅れればその分の年金は貰えなくなってしまいます。

提出が遅れた分、年金が手元に入るのも遅れてしまう

経済的にゆとりがあればいいのですが、ほとんどの方が病気のため仕事ができず経済的に不安定です。

年金が手元に入るのが遅れるほど生活に負担がかかってしまいます。

ICD-10コードの記載が無い場合の対処法

もう一度診断書を病院に持っていき、追記してもらう必要があります。

※ 改めて一から診断書を記載してもらう必要はありませんので、安心してください。

また、一般的に『追記』程度であれば、費用を支払う必要のない医療機関が多いです。しかし、医療機関によっては費用が発生するためあらかじめ聞いておきましょう。

窓口で受取ってもらえなかったからと言って不支給となった訳ではありませんので、落ち着いて再度提出してくださいね。

また、ひとりで不安な場合はお手伝いいたしますのでいつでもお問い合わせください。

    お問合せから申請までの流れ

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