人工透析で障害年金を受給するには?条件・金額・申請のポイントを解説

はじめに

透析を受けている、あるいは近く透析の導入が必要と言われ、障害年金を申請できるのか気になっているという方は多いです。人工透析を続けている方は、障害年金の対象になる可能性が高い状態にあります。障害認定基準上、人工透析療法を続けている場合は原則として2級と定められているためです。

この記事では、人工透析で障害年金を受給できる可能性、原則2級とされる根拠、いつから請求できるのか(障害認定日の特例)、そして人工透析特有の難しさである「初診日の証明」と申請のポイントを、社会保険労務士の視点から解説します。

人工透析(慢性腎不全)と障害年金の関係

人工透析を受けている方は、障害認定基準上、原則として障害年金2級に該当する状態とされています。他の傷病では障害の程度を個別に細かく審査しますが、人工透析の場合は「透析を受けている」という事実が認定の大きな根拠になる点が特徴です。

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が生じた場合に受給できる公的年金制度です。腎臓の機能が大きく低下し、人工透析によって腎臓の働きを補っている方は、日常生活や就労に一定の制限を受けているとみなされます。

人工透析とは(形式的な位置づけ)

人工透析は、低下した腎臓の機能を補うための治療で、血液透析・腹膜透析などの方法があります。原因となる病気としては、糖尿病性腎症、慢性腎炎(糸球体腎炎)、腎硬化症などが多く見られます。

なお、治療の内容や病状の見通しといった医学的な事柄は主治医の領域です。本記事では、あくまで障害年金の認定に関わる範囲で解説します。

障害認定基準上の位置づけ

障害年金の等級は、厚生労働省が定める「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下、障害認定基準)に基づいて判断されます。人工透析を含む腎臓の障害は、このうち 第12節 腎疾患による障害 で扱われます。

人工透析を受けている方は「原則2級」

ここでは、人工透析を受けている方が障害年金で何級に該当するのかを解説します。障害認定基準では、人工透析療法を続けている場合は原則2級とされており、症状や検査成績によってはさらに上位の等級となる場合があります。

障害認定基準の定め

障害認定基準の第12節では、人工透析療法施行中の方の取り扱いについて、次のように定められています。

人工透析療法施行中のものは2級と認定する。なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

(出典:厚生労働省・日本年金機構「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」第12節 腎疾患による障害〔令和4年4月1日改正版〕)

つまり、受給要件(初診日・保険料納付要件)を満たしたうえで、人工透析を受けている事実があれば、原則として2級に該当すると判断される取り扱いです。

症状や合併症によっては1級となる場合も

人工透析を受けている方でも、症状が特に重い場合には1級と認定されることがあります。長期透析にともなう合併症(心不全、視力障害、骨の障害など)があるケースや、検査成績と日常生活の状況の両面から重い状態と判断されるケースなどが考えられます。

ただし、1級に該当するかどうかは検査成績や日常生活状況をふまえた個別の審査によります。個別事案により判断は異なりますので、一律に「必ず1級」「必ず2級」と断定はできません。

透析の方式は問わない

障害認定基準上、血液透析・腹膜透析・血液濾過といった透析の方式による違いは設けられていません。いずれの方式であっても、人工透析療法施行中であれば原則2級として扱われます。

人工透析の障害年金はいつから?障害認定日の特例

人工透析を受けている方が気になるのが「いつから請求できるのか」という点です。障害年金には「障害認定日」という基準日があり、人工透析には通常より早く請求できる特例が設けられています。ここで注意したいのは、「透析を開始した日」がそのまま認定日になるわけではない という点です。

障害認定日の原則と人工透析の特例

障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。ただし人工透析療法については、次のように特例が定められています。

ケース障害認定日
原則(特例に該当しない場合)初診日から1年6か月を経過した日
人工透析療法の特例人工透析療法を初めて受けた日から起算して3か月を経過した日(その日が初診日から1年6か月を超える場合を除く)

初診日から1年6か月を経過する前に、人工透析の開始から3か月を経過した場合は、その3か月経過日が障害認定日になります。たとえば、初診日から8か月後に透析を開始した場合、透析開始から3か月後(初診日から11か月後)が障害認定日です。

ただし、その3か月を経過した日が初診日から1年6か月を超える場合は、原則どおり初診日から1年6か月を経過した日を基準に判断します。透析を開始した日そのものが認定日になるわけではない点にもご注意ください。

認定日に該当しなかった場合・事後重症請求

障害認定日の時点で認定基準に該当しなかった方でも、その後に症状が重くなり現在は基準に該当する場合には、事後重症請求 という方法があります。事後重症請求では、請求した月の翌月分から年金が支給され、過去にさかのぼっての受給はできません。また、原則として 65歳の誕生日の前々日までに請求する必要 があります。

過去にさかのぼって請求する遡及請求の可否については、人工透析で障害年金の遡及請求はできますか?もあわせてご覧ください。

受給できる金額の目安と年金の種類

人工透析で受給できる金額は、初診日にどの年金制度に加入していたかによって変わります。ここでは概要をお伝えします。金額の詳しい早見表は、金額に特化した記事にまとめていますのであわせてご覧ください。

初診日が国民年金加入中、20歳前、または日本国内在住の60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間にある場合は、障害基礎年金の対象となります(20歳前に初診日がある場合は、本人の所得による支給制限があります)。初診日が厚生年金加入中の場合は障害厚生年金の対象で、1級・2級に該当するときは障害基礎年金もあわせて支給されます。人工透析は原則2級のため、次のような組み合わせが基本です。

  • 初診日が国民年金加入中・20歳前・国内在住の60歳以上65歳未満の非加入期間:障害基礎年金2級
  • 初診日が厚生年金加入中:障害基礎年金2級 + 障害厚生年金2級(要件を満たす配偶者がいれば配偶者加給年金額が加算)

障害基礎年金2級の年額は 847,300円(令和8年度・2026年度。昭和31年4月1日以前生まれの方は844,900円) です。生計を維持している子がいる場合は、子の加算が付きます。障害厚生年金2級は、これに報酬比例の年金額が上乗せされるため、加入期間や過去の報酬によって金額が異なります。

具体的な金額は、人工透析でもらえる障害年金の金額はいくら?で詳しく解説しています。

申請のポイント|最大の壁は「初診日の証明」

人工透析での申請では、初診日の証明が最も大きな壁になりやすい点に注意が必要です。原因が糖尿病などの場合、発症から透析の開始まで10〜20年と長い年月がかかることが多く、当時のカルテが廃棄されていたり、医療機関が廃院していたりするためです。

なお初診日とは、障害の原因となった傷病で 初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日 を指します。障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを請求できるかは、この初診日にどの制度に加入していたかで決まります。また、初診日の前日の時点で、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち3分の2以上について保険料が納付または免除されていること(または初診日の前日時点で直近1年間に未納がないこと)という 保険料納付要件 も必要です。詳しくは障害年金の受給要件をご覧ください。

相当因果関係|原疾患の初診日が起点になる

人工透析に至った原因疾患が別にある場合、その原疾患で初めて受診した日が初診日になることがあります。これを 相当因果関係 といいます。

たとえば糖尿病性腎症で透析に至った場合は、糖尿病で初めて医師の診療を受けた日が初診日となるのが一般的です。また、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む)、腎硬化症、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎などから慢性腎不全に至った場合は、両者の期間が長くても相当因果関係があると認められます。

どの傷病を起点とするかで初診日が大きく変わるため、判断に迷う場合は社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

カルテが廃棄・廃院で証明できない場合の対処

初診日は、原則として初診の医療機関が作成する 受診状況等証明書 で証明します。カルテの廃棄などで受診状況等証明書が取得できない場合には、受診状況等証明書が添付できない申立書 を提出したうえで、初診日を推定できる参考資料を集めます。

参考資料としては、健康診断の記録、お薬手帳、身体障害者手帳を作成した際の診断書、第三者による申立書などが考えられます。初診日ごろの受診状況を直接知っていた医師や看護師などの証明は、初診日を認める有力な資料として扱われます。ただし、これらの資料は提出すれば必ず初診日が認められるものではなく、証明者の立場や他の客観的な資料との整合をふまえて総合的に判断されます。

診断書・病歴・就労状況等申立書のポイント

障害年金は書類による審査です。透析の実施状況や検査成績、日常生活への支障が診断書や申立書に正しく反映されていることが大切です。診断書は主治医に作成を依頼し、記載内容についてはご相談のうえで進めてください。

病歴・就労状況等申立書 は、発症から現在までの経過や日常生活・就労の状況をご自身で時系列に記載する書類です。書き方のポイントは病歴・就労状況等申立書の書き方で詳しく解説しています。

「人工透析でも障害年金がもらえない」と言われるケース

人工透析は原則2級に該当しますが、それでも受給に至らない、あるいは注意が必要なケースがあります。あらかじめ理解しておくことで、対策を立てやすくなります。

主なケースとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 初診日が特定できない:相当因果関係の判断も含め、初診日を証明できないと請求が難しくなります。
  • 保険料納付要件を満たしていない:初診日の前日時点での納付状況が要件を満たさない場合、原則として請求できません。
  • 昭和61年3月以前に年金の受給権が発生する方:旧法の取り扱いにより、人工透析を行っていても3級での認定となる場合があります。

なお、「働いているから対象外」と考えている方もいますが、これは誤解です。人工透析を受けながら就労している方でも、原則2級として受給できます。夜間透析を受けながら勤務している方も対象となります。この点は働きながら障害年金を受給する方法もあわせてご覧ください。

受給できるかどうかの詳しい考え方は、人工透析では障害年金をもらえない?でも解説しています。審査の結果に納得できない場合は、審査請求(原則として処分があったことを知った日の翌日から3か月以内)、その結果にも納得できない場合は 再審査請求(決定書の謄本が送られた日の翌日から2か月以内)という不服申立ての手続きがあります。

人工透析で障害年金を受給した事例

弊事務所では、人工透析を受けている方の障害年金申請を数多く手がけています。

実際の事例をご覧いただくことで、申請の流れやポイントをイメージしていただけます。

※個別事案により判断は異なります。

よくあるご質問

人工透析での障害年金について、お問い合わせの多いご質問にお答えします。個別のご事情によって取り扱いが変わる場合もありますので、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。

Q. 人工透析をしながら働いていても受給できますか?

原則として受給できます。人工透析療法施行中は原則2級とされており、就労している方も対象です。ただし、就労の状況は審査で考慮される要素の一つとされています。

Q. 障害者手帳を持っていなくても申請できますか?

申請できます。障害年金と障害者手帳は別の制度で、手帳の有無や等級は障害年金の受給要件ではありません。障害年金は障害認定基準に基づいて判断されます。

Q. 腎移植を受けたら年金はどうなりますか?

障害年金を受給している方が腎臓移植を受けた場合、臓器が生着して安定的に機能するまでの間を考慮し、術後1年間は従前の等級とする取り扱いがあります。その後は、術後の症状・治療経過・検査成績・予後などをふまえて総合的に判断されます。

まとめ

人工透析を受けている方は、障害認定基準上、原則として2級に該当します。症状や合併症によっては1級となる場合もあります。透析方式による違いはありません。

障害認定日には特例があり、人工透析療法を初めて受けた日から3か月を経過した日が障害認定日となります(その日が初診日から1年6か月を超える場合を除く)。一方で、人工透析特有の難しさとして「初診日の証明」があり、相当因果関係の判断もふくめ、専門的な検討が必要になる場合があります。

初めての障害年金申請や、初診日の証明にご不安がある方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年7月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。

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