線維筋痛症とうつ病の併合認定で障害年金を受給できる可能性はあります。
障害年金における併合認定とは、認定の対象となる障害が2つ以上ある場合の認定方法のことを言います。
併合認定の基準は、日本年金機構が定める「併合のルール」によって決まります。
詳細については、日本年金機構の公式サイト(https://www.nenkin.go.jp/)で確認できます。
「線維筋痛症」の認定基準
「線維筋痛症」は障害認定基準 第18節/その他の疾患による障害が適用されます。
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 |
国年令 別表 | 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を 加えることを必要とする程度のもの | |
厚年令 別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
その他の疾患による障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、 原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり、日常生活の用 を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか 又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働 が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当す るものと認定する。
障害認定基準 第18節/その他の疾患による障害
(5) いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定 するものとする。 なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況 等を把握して、総合的に認定する。
障害認定基準 第18節/その他の疾患による障害
線維筋痛症とうつ病が併合認定されるケースとは?
線維筋痛症は全身の疼痛を主症状とする疾患であり、不眠、うつ病などの精神神経症状や過敏性大腸炎、膀胱炎などの症状も随伴することが知られています。
一方、うつ病は憂うつ気分や意欲低下が続く精神疾患です。
線維筋痛症が『2級』相当、うつ病が『2級』相当に該当する場合は、併合認定にて上位等級の『1級』に認定される可能性があります。
審査では、線維筋痛症が◯級、うつ病が△級というように、まずはそれぞれの傷病ごとに等級審査がされ、決定した等級をあわせて、最終的な障害の程度(等級)が定められます。
イメージ:「◯級(線維筋痛症)」+「△級(うつ病)」=◇級
障害認定基準において、この等級の組み合わせによる基準が定められているため、複数の傷病を併せれば、必ずしも上位等級に該当するというわけではないことに注意が必要です。
例えば、線維筋痛症(3級)、うつ病(2級)という場合では、併合認定においても『2級』となり、上位等級の1級には該当しません。
つまり、複数傷病での申請が必ずしもメリットとなり得るとは言えないということです。
また、複数の傷病がある場合、それぞれの傷病の症状が複雑に交わり、どの傷病の症状によって日常生活や就労に支障や制限がかかっているのか区別は難しいと思います。
当事者本人が感じるのと同様に審査される側も傷病が混同していると、どの傷病によって申請者の生活に影響・支障があるのか判断ができず、審査が出来ないとなってしまうケースがあります。
複数の傷病・症状があるとその分、制限や支障が増え、受給には有利と思われるかもしれませんが、審査上、まずはそれぞれの傷病ごとに等級審査がされるため、申請内容はそれぞれの傷病を区別して記載しなければ、傷病混同として審査では逆に不利となってしまうケースもあります。
そのため、まずは複数傷病で申請を行うメリットがあるのかどうか検討すること、複数傷病で申請を行う場合は提出する書類の内容整備も通常の申請と比較して、一層慎重に進めていく必要があります。
申請時に注意すべきポイントと必要書類
障害年金の申請では、診断書や病歴・就労状況等申立書が重要な役割を果たします。
特に併合認定を受けるためには、
- 線維筋痛症とうつ病それぞれの診断書を準備する
- 医師にそれぞれの傷病ごとの日常生活や就労への影響を具体的に記載してもらう
- 病歴・就労状況等申立書は線維筋痛症とうつ病それぞれ傷病ごとに作成するなどの書類整備が必要です。
また、線維筋痛症は客観的な診断基準が確立されていないため、診断の経緯や治療歴を詳細に記載し、症状の持続性や重症度を証明することが求められます。
線維筋痛症は明確な診断基準はありませんが、厚生労働省の線維筋痛症研究班は国際的に用いられている 米国リウマチ学会(ACR)が1990年に発表した分類基準を参考に重症度分類案を示すなど、主に1990年基準を採用していることからこの基準に沿った診断書の作成やその他の書類整備を行うことが重要となります。
また、審査においては、まずは個々の障害ごとに等級審査がされるため、それぞれの傷病ごとの症状や支障・制限の程度の棲み分けができていなければ、障害の程度が軽度と判断されたり、傷病近藤のため認定不能とされてしまうケースもあります。
そのため、線維筋痛症の診断書には、うつ病に起因する活動制限は評価対象に含めず、線維筋痛症による症状・活動制限の程度を、うつ病の診断書には、線維筋痛症に起因する活動制限は評価対象に含めず、うつ病による症状・活動制限の程度を、明確に示してもらうことが重要です。
また、申請者が作成する病歴・就労状況等申立書の記載内容についても同様です。
障害年金の受給を成功させるための具体的な手続き
診断書の書き方と主治医への伝え方
診断書は障害年金申請において最も重要な書類の一つです。主治医に適切な診断書を書いてもらうためには、
- 具体的な日常生活の困難さ(例:食事の準備ができない、外出が困難)を伝える
- 疾患が労働能力に与える影響を明確に説明してもらう
- 定期的な診療で、症状の経過や治療内容を記録してもらう ことが重要です。
また、主治医が障害年金の申請に不慣れな場合は、日本年金機構の診断書記載要領を提示し、必要事項を正確に記載してもらうよう依頼しましょう。
結果に納得がいかない時の不服申立て
万が一、納得のいく結果でなかった場合でも不服申立て(審査請求・再審査請求)を行うことで、認定される可能性があります。
不服申し立ての際には、
- 不服申立ての争点となる決定の理由や根拠を把握する
- 必要に応じて医師の意見書など客観的資料を追加提出する
- 社会保険労務士に相談し、適切な手続きを進める
といった対応が有効です。
結果を知った日から3か月以内に行う必要があるため、速やかに手続きを進めましょう。
まとめ
線維筋痛症とうつ病の併合認定による障害年金の受給は、適切な書類準備と申請手続きが鍵となります。
特に、診断書の内容や日常生活の制約を具体的に示す証拠を十分に準備することが重要です。
また、申請が却下された場合でも、不服申し立てを通じて再審査を求めることが可能です。
障害年金の申請は複雑ですが、適切な手続きを踏むことで受給の可能性を高めることができます。専門家の支援を受けながら、慎重に準備を進めましょう。