目次
対象者の基本データ
病名 | 乳がん |
---|---|
性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約78万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害基礎年金2級 |
ご相談までの経緯
15年程前、体調の異変などはありませんでしたが、乳頭から分泌物があり、不安になり念の為医療機関を受診されました。
各種検査より乳房外側上部に結節影、乳管狭窄と拡張が認められましたが、しばらくは経過観察となり半年に1回検査の為通院することとなりました。
経過観察中にエコーより腫瘍性病変を指摘され、MRIなどの精査で「乳がん」と診断されました。
入院し、手術治療後放射線治療を受け、その後はホルモン療法を続けていました。
放射線治療終了後は浮腫みなどの症状はありましたが、徐々に自覚症状もなくなり、日常生活も支障なく過ごせるようになり、再発も認められなかったことからホルモン療法も終了となり、定期検査の必要もないと医師から説明を受け、通院中断となりました。
再発の不安はありましたが、自覚症状もなく、日常生活もパート勤務も支障なく出来ている期間が11年程続きました。
しかし、突然右太ももの痺れを感じるようになり、次第に両下肢に症状は出現し、左下腹部痛やお腹の張りに加え、嘔吐もあり、再び医療機関を受診することとなりました。
鎮痛剤等の処方を受け、各種検査を実施したところ、乳がんの再発により、肺や胸膜、脊髄、髄膜などの他の臓器への転移が確認されました。
症状は日を増すごとに増悪し、疼痛や麻痺等によち自力で移動することも全く出来ず、終日寝たきりの状態が継続しています。
病院の医療従事者より障害年金制度について説明を受けましたが、初診日が15年以上前のことで初診病院ではカルテが破棄されており、どのように手続きを進めればいいかわからず途方に暮れていました。
ネットで当事務所にたどり着き、ご相談いただくこととなりました。
申請結果
がんという病気の特徴からいつ病状が急変するかわからないということもあり、がんによる障害年金申請はスピードが大切です。
1日も早く申請出来るようにチーム全体で申請方針を共有し、準備を行いました。
障害年金の申請ではまず初診日を特定することが大切です。
今回のご相談者様は以前も乳がんを患った経験があることから「前回発症の乳がん」と「今回発症の乳がん」に相当因果関係があるかどうかによって、初診日が変わることとなります。(ポイント①)
ご本人様よりいただいていたこれまでに主治医の先生より作成いただいていた診断書などの参考資料より、今回発症の乳がんは前発発症の再発乳がんであることがわかり、「前回発症の乳がん」の初診日時点を再発乳がんの初診日として書類を整えることとしました。
1日も早く申請出来るように、初診日を断定した段階で保険料の納付要件を概算して確認し、初診日証明書類の取得と同時進行で診断書の作成依頼を行いました。
既に初診病院ではカルテが破棄されていた為、ご本人様が保管していた「初診日のわかる入退院証明書」や現病院の医師が取り寄せてくださった「初診病院からの回答書」を初診日証明書類として整えました。
診断書については転移部位や合併症なども複数かつ多岐に渡っていたことから、がんそのものによる全身の衰弱や機能の障害、またがんに対する治療の副作用をメインとして審査で見てもらえるように「血液・造血器・その他の障害用(様式第120号の7)」に記載していただくこととしました。(ポイント②)
その他の障害用の診断書はあらゆる疾患に対応しているため、明確な記載方法がなく、診断書の様式だけを渡すと医師の裁量によって記載内容が大きく変わることがよくあります。(ポイント③)
そのため、診断書作成依頼時には「審査で重要となる事項」を明確に示すとともに、ご本人様から事前にヒアリングした内容を参考資料としてまとめて橋渡ししました。
病歴就労状況等申立書には診断書に反映しきれないことを補足する形で作成し、ご本人様の現状をより深く理解できるように工夫しました。
ご相談を受けてから1か月程で全ての申請書類が整い、申請の結果、無事「障害基礎年金2級」として認定されました。
【ポイント1】相当因果関係について
「前発の傷病がなければ、後発の傷病は起らなかったであろう」と認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病が同一の傷病として取り扱われます。
つまり、前発の傷病で最初に医師の診療を受けた日が後発傷病の初診日として取り扱われることとなります。
例えば相当因果関係があるものとしては以下のようなものがあります。
- 糖尿病→糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等
- 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎→慢性腎不全
- 肝炎→肝硬変
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害
- ステロイド投薬→大腿骨頭壊死
- 事故または脳血管疾患→精神障害
他の傷病でも相当因果関係ありとされる傷病はある為、複数傷病を発症している場合は初診日の取扱いには注意が必要です。
相当因果関係に関する事例は以下のページでご紹介していますのでご参照下さい。
以下の動画でも相当因果関係のポイントをご説明していますので是非ご覧ください。
【ポイント2】診断書の種類
障害年金請求に使用する診断書は以下の8種類あります。
①眼の障害用
②聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用
③肢体の障害用
④精神の障害用
⑤呼吸器疾患の障害用
⑥循環器疾患の障害用
⑦腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用
⑧血液・造血器・その他の障害用
受給の可能性を1%でも上げるためには、ご自身の障害状態を最も伝えることが出来る診断書を選ぶ必要があります。
症状が多岐にわたる場合は複数の診断書を使用しても構いません。
①~⑦のいずれの傷病にも当てはまらないものは、⑧その他の障害用の診断書を使用します。
その他の障害用の診断書は記載できる項目が他の診断書に比べ限られるため、限られた項目でいかに障害状態を伝えることが出来るかが大切です。
【ポイント3】医師は診断書を書くプロではない
医師は病気の治療に関するプロであって、診断書を記載するプロという訳ではありません。
とくに障害年金の診断書は、障がい者手帳等と異なり特別な訓練などもありません。
そこで大切になるのが「障害年金上の評価方法」をしっかりお伝えすることです。
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