目次
対象者の基本データ
病名 | 腎不全(じんふぜん) |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約78万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害基礎年金2級 |
ご相談までの経緯
30歳頃、突然顔が真っ赤に腫れあがり倒れてしまったそうです。
翌日、皮膚科にて診察を受けたところ、ストレスによる皮膚炎と言われ外用薬が処方されました。
薬を塗り続けましたが、1週間経っても顔の赤みは引かず、全身の倦怠感や関節痛といった症状も出始めたため、総合病院の皮膚科を受診。
検査の結果『全身性エリテマトーデス(SLE)』と診断を受けました。
治療を開始しましたが徐々に症状は増悪し、むくみや尿が出にくいといった腎機能の障害が出てきたそうです。
そこで腎生検を行ったところ『SLEからくるループス腎炎』と診断。
退院後、腎機能の治療を開始するも、自宅にて倒れて救急搬送されました。
原因は末期腎不全とされ、そのまま人工透析となりました。
以降、週に3回の頻度で人工透析をしていましたが、40歳頃に実施した『腎移植』に伴い、人工透析も終了。
その後、状態は安定しており自覚症状なく生活していましたが、55歳頃に抗体関連型拒絶反応が見られ、免疫力低下により寝たきり状態となりました。
医師から人工透析を勧められ、再び人工透析を開始したとの事です。
現在は外来にて週3回の人工透析を行っており、病院から人工透析で障害年金が貰えると説明を受けたことを機に、当事務所にご連絡がありました。
申請結果
経過が複雑だったため、まずは病歴の整理から始めました。
- 全身性エリテマトーデスを発症
- 全身性エリテマトーデスによる腎不全にて人工透析
- 腎移植により人工透析中断
- 抗体関連型拒絶反応により再び人工透析
次に、上記の一連の症状に関連性があるか検討する必要がありました。
というのも障害年金では互いの病気に強い関連性がある場合、一つの疾患として取り扱うことになっています。
これを『相当因果関係』と言い、相当因果関係が認められるかどうかで初診日等も変わるため、大変重要なポイントとなります。
相当因果関係の可能性について障害年金では明らかにされていないものの、それぞれかなり高い確率で関連性がある症状だったため、一連の症状は関連性があるものとして申請を行うことにしました。
そこで一連の症状の『初診日』を特定する作業に入りましたが、ご本人さまは「およその日付と場所」しか覚えておらず、病院名もわからない状態でした。
よってこの情報をもとにネット等で病院の所在地・病院名と特定。
その後、2番目に通院した病院のカルテを取り寄せて日付を特定、証明書に日付を明記して貰う形で初診日を証明していきました。
その他、一貫性のある内容となるよう現病院にも説明を行ったうえ協力してもらい申請を行いました。
結果、当方が主張した初診日や相当因果関係等が全て認められ、無事に『障害基礎年金2級』の認定を得ることが出来ました。
【ポイント1】相当因果関係
「前発の傷病がなければ、後発の傷病は起らなかったであろう」と認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病が同一の傷病として取り扱われます。
つまり、前発の傷病で最初に医師の診療を受けた日が後発傷病の初診日として取り扱われることとなります。
例えば相当因果関係があるものとしては以下のようなものがあります。
- 糖尿病→糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等
- 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎→慢性腎不全
- 肝炎→肝硬変
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害
- ステロイド投薬→大腿骨頭壊死
- 事故または脳血管疾患→精神障害
他の傷病でも相当因果関係ありとされる傷病はある為、複数傷病を発症している場合は初診日の取扱いには注意が必要です。
【ポイント2】初診日の証明
障害年金は初診日主義とも言われています。
つまり、障がいがどんなに重たくても初診日の証明が出来なければ障害年金を受給することが出来ないということです。
カルテの法定保存期間が5年と定められている為、初診日の証明が出来ず悔しい思いをする方が多くおられるのも事実です。
そんな時でも証拠を積み上げて、間接的に初診日を証明出来たケースが多くありますので諦めない事が大切です!
【ポイント3】障害年金と就労
人工透析は「原則2級」と決められています。
(※)症状によっては上位等級になる可能性もあり。
透析には時間を要するため、どうしても「労働可能時間に制限」が生じます。
また透析後は強い倦怠感を感じる方も多く、肉体労働は避けるようにと指示されることも多く「就労内容にも制限」が出てきてしまいます。
このように透析を行っていることでの制限が多いため『就労の有無に関わらず2級』が認められます。
今回のご相談者様は、会社から「短時間休などの許可・倦怠感などの対策としてこまめな休憩」などの支援が大きかったため、正社員としての勤務が可能でした。
このように「正社員」として勤務している場合であっても、受給が可能です。
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