「難聴で障害年金は受給できるのだろうか」「自分の聴力で何級に認定されるのか」とお調べの方は多いのではないでしょうか。

難聴による障害年金は、純音聴力レベル値と語音明瞭度という2つの検査値で等級が判定されます。感音性難聴・伝音性難聴・突発性難聴など、難聴の種別を問わず、認定基準に該当すれば受給できる可能性があります。

本記事では、難聴で障害年金を申請される方に向けて、受給の3要件・等級ごとの認定基準・令和8年度の年金額の目安・申請のポイント・「もらえない」と言われるケースまでを、社会保険労務士法人として解説します。

難聴と障害年金の関係

難聴は障害年金の対象となる疾病のひとつで、聴力の程度に応じて1級から3級、または障害手当金が支給される可能性があります。ここでは、難聴と障害年金の基本的な関係を整理します。

障害年金の対象となる難聴の種類

障害年金は、難聴の種別を問わず、認定基準への該当をもって判定されます。

具体的には、内耳や聴神経に原因がある 感音性難聴、外耳・中耳に原因がある 伝音性難聴、両方の要素を含む 混合性難聴 のいずれも対象となります。突発性難聴や加齢性難聴、騒音性難聴、先天性難聴(20歳前傷病)についても、認定基準上のデシベル値・語音明瞭度に該当すれば受給の可能性があります。

疾病名そのものではなく、聴力検査値が認定基準に該当するか が判定の中心となる点が重要です。

障害基礎年金と障害厚生年金の違い

障害年金は、初診日に加入していた公的年金制度によって受給する種類が決まります。

種類加入制度等級
障害基礎年金国民年金1級・2級
障害厚生年金厚生年金1級・2級・3級+障害手当金(一時金)

障害基礎年金の対象となるのは、初診日に国民年金に加入されていた方(自営業者・専業主婦の方・学生など)、20歳前に初診日のある方、または日本国内にお住まいで60歳以上65歳未満の間に初診日があり年金制度に加入していない期間にある方です。一方、厚生年金の加入中(会社員・公務員等)に初診日がある場合は、障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受給できる可能性があります。

難聴は 3級・障害手当金まで認定対象 となるため、初診日に厚生年金へ加入されていた方は受給できる範囲が広いという特徴があります。

難聴で障害年金を受給するための3つの要件

難聴で障害年金を申請するには、初診日要件・保険料納付要件・障害認定基準への該当という3つの要件をすべて満たす必要があります。ここでは各要件の概要を整理します。

初診日要件

初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医師の診療を受けた日 を指します。

難聴の場合、耳鼻咽喉科を受診された日が典型ですが、めまいや耳の違和感で内科を最初に受診されたケースでは、その内科の受診日が初診日となることがあります。突発性難聴のように発症日がはっきりしている場合は、その発症時の受診日が初診日です。

初診日の証明には 受診状況等証明書 が用いられます。古い初診日についてはカルテの保存期間(5年)が過ぎてしまっているケースもあるため、初診日特定の手続きが重要となります。

保険料納付要件

初診日の前日において、一定の保険料納付実績があることが求められます。

原則は 3分の2要件(初診日のある月の前々月までの被保険者期間で、保険料納付済期間と免除期間を合算した期間が3分の2以上)です。これを満たさない場合でも、初診日が令和18年(2036年)3月末日まで にあり、かつ 初診日において65歳未満 であれば、直近1年間に保険料の未納がないこと という特例(直近1年要件)で要件を満たせる可能性があります。

なお、20歳前に初診日がある方(先天性難聴や幼少期発症の方など、20歳前で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合)については、保険料納付要件は問われません。

障害認定基準への該当

障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月を経過した日)において、聴覚の障害認定基準上の等級に該当することが必要です。

障害認定日時点で該当しなかった場合でも、その後症状が悪化して認定基準に該当するに至った場合は、事後重症請求 という形で請求が可能です(原則として65歳の誕生日の前々日まで)。

難聴の障害認定基準と等級判定

難聴の障害年金は、純音聴力レベル値と語音明瞭度という2つの検査値に基づいて等級が判定されます。ここでは現行の障害認定基準(聴覚の障害については平成27年6月1日改正で1級新規請求時の他覚的聴力検査等が追加された現行基準)に沿って、等級ごとの基準を整理します。

等級ごとの認定基準

聴覚の障害における等級ごとの認定基準は、おおむね次のとおりです。

等級認定基準(聴覚の障害)
1級両耳の聴力レベルが 100デシベル以上 のもの
2級両耳の聴力レベルが 90デシベル以上 のもの、または両耳の平均純音聴力レベル値が 80デシベル以上 で、かつ最良語音明瞭度が 30%以下 のもの
3級(障害厚生年金のみ)両耳の平均純音聴力レベル値が 70デシベル以上 のもの、または両耳の平均純音聴力レベル値が 50デシベル以上 で、かつ最良語音明瞭度が 50%以下 のもの
障害手当金(障害厚生年金のみ・一時金)一耳の平均純音聴力レベル値が 80デシベル以上 のもの

(出典:厚生労働省「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」第2節 聴覚の障害、平成27年6月1日改正)

純音聴力レベル値と語音明瞭度の役割

聴覚の障害認定では、純音聴力レベル値と語音明瞭度の 両方 が用いられます。

純音聴力レベル値 は、JIS規格のオージオメータで周波数500・1,000・2,000ヘルツの純音への聴力レベル(dB値)をそれぞれa・b・cとし、次式で算出します。

平均純音聴力レベル値 =(a + 2b + c)÷ 4

なお、この算式で得られた値が等級判定の境界値に近い場合には、4,000ヘルツの値(d)も含めた次式が参考とされることがあります。

参考算式:(a + 2b + 2c + d)÷ 6

語音明瞭度 は、語音(言葉)をどの程度聞き分けられるかを示す検査値です。例えば「両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上+最良語音明瞭度30%以下」のように、純音聴力レベルが2級基準にわずかに届かなくとも、語音明瞭度が低い場合は2級に該当する可能性があります。

なお、1級に該当する診断を行う場合(障害年金を受給していない方が対象)には、オージオメータによる検査に加えて、聴性脳幹反応検査(ABR)等の他覚的聴力検査 を実施し、その結果データの添付が求められます。

平衡機能の障害との併合認定

内耳の傷病による聴覚障害と 平衡機能障害 が併存している場合、両者は併合認定の対象となります。

障害認定基準上、「聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがあり、この場合は併合認定の取扱いを行う」とされています。聴覚単独では認定基準に届かなくとも、平衡機能障害との併合により上位等級になる可能性があります。めまいや平衡感覚の症状がある方は、聴覚の診断書に加えて平衡機能の状態も合わせて評価してもらうことが重要です。

難聴で受給できる障害年金の金額の目安

難聴で障害年金が認定された場合、等級と加入制度により受給額が決まります。年金額は毎年改定されるため、ここでは令和8年度(2026年度)の金額を整理します。

等級別の年金額(令和8年度)

令和8年度の障害年金の年額目安は次のとおりです。

等級障害基礎年金(年額)障害厚生年金(報酬比例部分・1〜2級は障害基礎年金に上乗せ)
1級1,059,125円(月額換算 88,260円)+ 子の加算報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者加給年金(該当時)
2級847,300円(月額換算 70,608円)+ 子の加算報酬比例の年金額 + 配偶者加給年金(該当時)
3級(該当なし)報酬比例の年金額(最低保障 635,500円)
障害手当金(一時金)(該当なし)報酬比例の年金額 × 2(最低保障 1,271,000円)

※ 障害厚生年金1級・2級の方は、障害基礎年金(1級または2級の額)と障害厚生年金(報酬比例部分)が併給 されます。総額イメージは「障害基礎年金 + 報酬比例の年金額(× 1.25 または通常)+ 加算(該当時)」となります。3級・障害手当金は障害厚生年金のみが対象です。
※ 障害厚生年金の報酬比例部分は、厚生年金加入期間が300月(25年)未満の場合は 300月とみなして計算 されます。
※ 上記は 昭和31年4月2日以後にお生まれの方 の額です。昭和31年4月1日以前にお生まれの方 は別額となります(障害基礎年金1級 1,056,125円、2級 844,900円、障害厚生年金3級最低保障 633,700円、障害手当金最低保障 1,267,400円)。
(出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」、令和8年1月23日発表)

詳しい金額や計算方法は 【2026年度(令和8年度)】障害年金でもらえる金額はいくら? や、難聴に特化したケースは 難聴でもらえる障害年金の金額はいくら? をご参照ください。

配偶者加給年金・子の加算

受給者の方に 生計を維持されている65歳未満の配偶者 がいる場合、障害厚生年金1級・2級には配偶者加給年金が加算されます(令和8年度:243,800円)。ただし、配偶者がご自身の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上等)や障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金は支給停止 されます。

また、生計を維持されている 18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子 がいる場合は、障害基礎年金1級・2級に子の加算が付きます(令和8年度:1人・2人目 各243,800円、3人目以降 各81,300円)。

障害年金生活者支援給付金

障害基礎年金1級・2級を受給される方は、所得制限等の要件を満たすと 障害年金生活者支援給付金 が上乗せ支給されます(令和8年度:1級 月額7,025円、2級 月額5,620円)。受給には別途請求手続きが必要です。

申請のポイント・診断書の取り方

難聴の障害年金申請では、年金請求書・診断書・病歴・就労状況等申立書の3点が重要書類となります。ここでは申請書類のポイントを整理します。

年金請求書の様式(令和7年6月1日改訂)

難聴の障害年金請求では、初診日にどの公的年金制度に加入されていたかで使用する年金請求書の様式が異なります。

  • 障害基礎年金のみを請求される方:年金請求書(国民年金障害基礎年金)様式第107号
  • 障害厚生年金・障害手当金を請求される方:年金請求書(国民年金・厚生年金保険障害給付)様式第104号

なお、令和7年(2025年)6月1日からは様式が改訂され、従来「障害給付 請求事由確認書」として別添付していた内容は、請求書本体の「事後重症請求に関する確認事項」欄に統合されました。

診断書(様式第120号の2)

聴覚の障害は、「聴覚、鼻腔機能、平衡機能、そしゃく・嚥下機能、音声又は言語機能の障害用」(様式第120号の2) の診断書で申請します。

ポイントとなるのは次の項目です。

  • 純音聴力レベル値:オージオメータによる検査結果(500・1,000・2,000ヘルツ)
  • 語音明瞭度:語音による聴力検査値
  • 検査時の条件:補聴器・人工内耳を装着 しない 状態での測定値であること
  • 1級該当の場合:他覚的聴力検査(ABR等)の結果データの添付

医学的な数値の判定は医師の専門領域です。検査値の解釈や治療方針については、必ず主治医にご相談ください。

病歴・就労状況等申立書の書き方

病歴・就労状況等申立書には、発症から現在までの経過と、日常生活・就労での具体的な支障を記載します。

難聴の場合は、次のような点を具体的に書くことが重要です。

  • 会話の聞き取りでどのような支障があるか(対面・電話・複数人での会話など)
  • 補聴器・人工内耳の使用状況と、それでも残る困難
  • 就労における配慮(筆談・FAX対応・障害者雇用枠など)
  • 日常生活での支障(放送・アナウンスの聞き取り、危険察知など)

書き方の詳細は 【自分で書ける】病歴・就労状況等申立書 でも解説しています。

「難聴では障害年金がもらえない」と言われるケース

難聴で障害年金を申請しても、認定基準に届かず受給に至らないケースがあります。ここでは「もらえない」と言われやすいパターンと、その場合の選択肢を整理します。

認定基準のデシベル値に届かないケース

軽度〜中等度の難聴では、3級の認定基準に届かず障害年金の対象とならないケースがあります。ただし、3級の認定基準は 「両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上」だけでなく、「両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上、かつ最良語音明瞭度が50%以下」でも該当 します。

そのため、純音聴力レベル値が70デシベルに届かなくとも、語音明瞭度が低い場合は3級該当の可能性があります。聴力レベル・語音明瞭度の両方の検査値を必ず確認することが大切です。

片耳のみの難聴の場合

片耳のみが聞こえない(一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上)場合、障害手当金 の対象となる可能性があります。

障害手当金は障害厚生年金の制度であるため、初診日に厚生年金に加入されていたことに加え、初診日から5年以内に傷病が治った日(症状が固定した日を含む)に、障害厚生年金3級に該当しない程度の障害が残った場合に支給される一時金 です。

不支給だった場合の選択肢

申請の結果、不支給または希望と異なる等級で決定された場合、次のような選択肢があります。

  • 審査請求:決定を知った日の翌日から3ヶ月以内に、地方厚生(支)局の社会保険審査官へ
  • 再審査請求:審査請求の決定に不服がある場合、社会保険審査会へ
  • 事後重症請求:症状が悪化して認定基準に該当するに至った場合

特に難聴は症状が進行性のケースもあるため、初回不支給後に再度申請するという選択肢も検討されます。

難聴で障害年金を受給された方の事例

弊事務所(わくわく社会保険労務士法人)では、難聴の方の障害年金申請を多く手がけています。実際の事例の一部をご紹介します。

事例にはそれぞれ、初診日の証明方法・診断書のポイント・遡及請求の判断など、申請ノウハウが含まれています。ただし、個別事案により判断は異なります。同様の症状であっても認定結果が異なる場合があるため、ご自身のケースについては個別にご相談いただくことをおすすめします。

※個別事案により判断は異なります。

難聴の障害年金に関するよくあるご質問

難聴で障害年金を検討される方からよくいただくご質問をまとめました。

Q1. 突発性難聴でも障害年金は受給できますか?

突発性難聴であっても、認定基準上の聴力レベル・語音明瞭度に該当すれば受給できる可能性があります。発症から1年6ヶ月経過後(障害認定日)の聴力状態が等級該当かどうかが判断のポイントとなります。

Q2. 補聴器や人工内耳を装着している場合、聴力検査はどう測定されますか?

聴覚の障害認定における聴力測定は、補聴器・人工内耳を装着しない状態 で行います。日常生活で機器を使用していても、検査値そのものは裸耳での測定値で判定されます。

Q3. 身体障害者手帳の聴覚等級と、障害年金の等級は同じになりますか?

身体障害者手帳と障害年金は 別制度 であり、認定基準も異なります。手帳の等級と障害年金の等級が一致しないケースは少なくありません。詳しくは 障害年金と障害者手帳の関係 をご参照ください。

まとめ

難聴で障害年金を受給できるかは、純音聴力レベル値と語音明瞭度の検査値が認定基準に該当するかが判断の中心となります。1級は両耳100デシベル以上、2級は両耳90デシベル以上(または平均純音聴力レベル値80デシベル以上+語音明瞭度30%以下)、3級は両耳の平均純音聴力レベル値70デシベル以上(または50デシベル以上+語音明瞭度50%以下)、障害手当金は一耳の平均純音聴力レベル値80デシベル以上が目安です。

検査値だけでなく、診断書の記載精度や病歴・就労状況等申立書での日常生活・就労の支障の伝え方も結果に影響します。最終判断は日本年金機構の認定によりますが、適切な書類準備で受給できる可能性を高めることができます。

難聴での障害年金申請でお悩みの方は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年5月時点の年金法令・障害認定基準(聴覚の障害は平成27年6月1日改正以降の現行基準)・令和8年度の年金額に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は 日本年金機構の公式サイト 等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。