【事例829】両眼網膜色素変性症|障害厚生年金1級

網膜色素変性症|障害厚生年金1級

対象者の基本データ

病名 両眼網膜色素変性症
性別 男性
支給額 年額 約188万円
遡及金額 約826万円
障害の状態
  • 広範囲に渡る視野障害
  • 周囲の人や物への衝突、転倒などが日常的にある
  • 身体障害者手帳2級
申請結果 障害厚生年金1級

 

ご相談までの経緯

15年程前より、仕事で検品作業に支障をきたしたり、足元の物に気付かず怪我をしてしまう、夜間の車の運転がしづらくなるなど、視力や視野の低下を自覚し始めました。

家系的に遺伝性疾患の可能性があると考えられたため、病院を受診し、検査を受けることになりました。

A病院での眼底検査より両眼網膜色素変性症を疑う所見があり、精査加療が必要との判断で紹介状を貰い、B病院へ転院されました。

B病院にて両眼網膜色素変性症と確定診断され、根本的な治療方法が確立されていないことから3回の受診だけで通院を中断。

治療方法がない為、10年程通院していない期間がありましたが、その間も視野はどんどん狭くなり、視力の低下も伴い、日常生活や就労への支障も大きくなりました。

著しい機能の低下に伴って障害者手帳の申請を検討し、C病院で検査の上、身体障害者手帳2級が交付されました。

手帳交付を受けた際に障害年金制度を知り、自分で手続きを進めていましたが、C病院にて診断書を取得したものの記載事項に不足が多く、また初診日が10年以上前でA病院ではカルテがなく、初診日の証明も取得できない状況でした。

こんな状況でも障害年金を受給することができるのか不安になり、当事務所までご相談をいただくこととなりました。

 

申請結果

既に取得されている診断書の内容から申請時点現在の状態は障害年金上、1級相当に該当する障害状態でした。

しかし、障害年金は初診日主義とされている為、どんなに障害状態が重たくても初診日の証明ができなければ障害年金を受給することが出来ません。(ポイント①)

当事務所にサポートのご依頼をいただいた後、再度A病院へ問い合わせを行い、何か残っている書類がないか確認をお願いしましたがA病院では本当に何も残っておらず、初診日の証明を取得することが出来ませんでした。

初診病院で初診日の証明が取得できない場合は、取得可能な限り受診歴の古い病院で初診日証明を取得する必要がある為、B病院へご連絡を取ったところ、A病院からの紹介状を持ってB病院へ受診していることが分かり、当該紹介状の内容からA病院の初診日を特定することが出来ました。

また、特定できた初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)時点において、医療機関への通院歴はありませんでしたが、B病院の3回目の受診日(初診日から4ヶ月程経過した日頃)時点の障害状態が障害年金上、2級相当に該当する状態であることがB病院のカルテから確認できました。

通常、障害認定日による請求(遡及請求)を行う場合、障害認定日時点の診断書が審査では有効とされますが、今回の請求傷病である網膜色素変性症という疾患の病態は進行性であり、状態の改善は考えられない傷病であるという傷病の特性を活かし、有効期間外ではありますがB病院の3回目受診時の状態について診断書を作成していただき、遡及請求を行うことにしました。

申請の結果、想定通り障害認定日時点は「2級」、現在時点は「1級」として認定され、過去5年遡って障害年金が支給されることとなりました。

 

【ポイント1】初診日の証明

障害年金は初診日主義とも言われています。

つまり、障がいがどんなに重たくても初診日の証明が出来なければ障害年金を受給することが出来ないということです。

カルテの法定保存期間が5年と定められている為、初診日の証明が出来ず悔しい思いをする方が多くおられるのも事実です。

そんな時でも証拠を積み上げて、間接的に初診日を証明出来たケースが多くありますので諦めない事が大切です!

 

【ポイント2】障害認定日の診断書が取得できない場合

障害認定日による請求を行う場合、原則、初診日から1年6月経過した日(障害認定日)時点の診断書が求められます。

しかし、これはあくまでも原則論である為、障害認定日時点の障害の程度を判断するための合理的資料が得られる場合には、障害認定日時点の診断書が取得出来なくても認定される余地があります。

障害認定日頃の診断書が取得できないからといってすぐに諦めることなく、傷病の性質や病態、考えられる症状の経過等により障害の程度を推認できないか検討する方法も有効となり得ます。

ただし、全ての傷病で診断書が取得出来なくても認められるというものではありませんので、ご注意ください。

 

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