目次
対象者の基本データ
病名 | 両側重度感音難聴 |
---|---|
性別 | 男性 |
支給額 | 年額 約128万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金2級 |
ご相談までの経緯
ご相談者様は、25年程前に健康診断で糖尿病の疑いを指摘されたことで医療機関を受診されました。
糖尿病発症の要因としてミトコンドリア脳筋症の可能性を示唆され、入院し各種検査を実施したことでミトコンドリア脳筋症を原因として両側感音性難聴、心筋症の発症も確認されました。
当初は軽度の感音難聴であったため、日常生活に著しい支障はなく、糖尿病の治療を継続する間、難聴については経過観察となりました。
難聴は徐々に進行し、会話の聞き間違いをすることが増え、両耳に補聴器を装用するようになりました。
補聴器を装用するようになってから耳鳴りが出現するようになり、聴力も著しく低下。
医師からは改善の見込みはないと伝えられ、現在では筆談やジェスチャーで何とか意思疎通を図っている状態で人工内耳手術を予定されています。
身体障害者手帳の手続きの際に、障害年金の対象になることがわかり、ネットで弊社のホームページに辿り着き、手続き代行のご相談を頂くこととなりました。
申請結果
本事例のポイントは、初診日証明でした。
今回の申請傷病は両側重度感音難聴ですが、初めて医療機関へ受診に至った契機は糖尿病の発症でした。
糖尿病の発症要因として示唆されたミトコンドリア脳筋症は様々な臓器症状を合併する症例が多く、今回のご相談者様の場合もミトコンドリア脳筋症を原因として「糖尿病、難聴、心筋症」などの合併症を併発していました。
そのため、今回の申請傷病である両側重度感音難聴とミトコンドリア脳筋症には相当因果関係があると判断される可能性がありました。(ポイント①)
ミトコンドリア脳筋症の可能性を示唆された時点が両側重度感音難聴の治療の起点となった日(=障害年金上の初診日)と考えられ、申請書類を組み立てることとしました。
しかし、初診病院ではカルテが破棄されており、2番目の病院で受診状況等証明書を作成して頂くこととなり、初診病院からの紹介状も添付して頂けました。
紹介状には初診病院の初診日や治療経過・各種検査結果などが明記されていたため、初診日の証明はクリアできました。(ポイント②)
次は診断書依頼となります。
医師には、診断書の「傷病の原因又は誘因」の欄に「ミトコンドリア遺伝子変異によるもの」と記載して頂くようお願いしました。
診断書が完成し、聴力レベルが等級に該当するかを確認し申請しました。(ポイント③)
結果は、初診日も認められ「障害厚生年金2級」に認定されました。
*その後、心筋症が悪化し慢性心不全に至った為、CRT-D挿入手術受けることになりました。
そこで難聴により既に受給が決定している「2級」とCRT-D挿入による「2級」の併合認定により『1級』に等級改定となると考え、慢性心不全についても新たに裁定請求を行いました。
しかし、年金機構から両側重度感音難聴と慢性心不全は相当因果関係がある(同一傷病とみなされる)ため、新規の裁定請求ではなく額改定請求をするよう指示がありました。
指示に従い、額改定請求の手続きを進めることになりました。
【ポイント1】相当因果関係について
「前発の傷病がなければ、後発の傷病は起らなかったであろう」と認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病が同一の傷病として取り扱われます。
つまり、前発の傷病で最初に医師の診療を受けた日が後発傷病の初診日として取り扱われることとなります。
例えば相当因果関係があるものとしては以下のようなものがあります。
- 糖尿病→糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等
- 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎→慢性腎不全
- 肝炎→肝硬変
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害
- ステロイド投薬→大腿骨頭壊死
- 事故または脳血管疾患→精神障害
他の傷病でも相当因果関係ありとされる傷病はある為、複数傷病を発症している場合は初診日の取扱いには注意が必要です。
相当因果関係に関する事例は以下のページでご紹介していますのでご参照下さい。
【ポイント2】 初診日の証明が出来ない場合
障害年金は初診日主義とも言われており、初診日の証明が出来ないと障害年金を受給することが出来ません。
初診日の証明は受診状況等証明書という様式を用いて行います。
この受診状況等証明書は必ずカルテに基づいて記載をしてもらう必要がありますが、初診病院が廃院している場合や既にカルテが破棄されている場合等は受診状況等証明書が取得できないこととなります。
そこで受診状況等証明書が取得できない場合に使用するのが、受診状況等証明書が添付出来ない申立書です。
この受診状況等証明書が添付出来ない申立書はご自身で最初に受けた医療機関名や場所、受診期間等を記載する書類です。
ただし、この書類を作成するだけでは、客観的証拠が不十分として、申請する初診日を認めてもらうことは出来ません。
申請する初診日が明らかに確認できる客観的な証拠書類を添付して、初めて有効とされます。
客観的な証拠書類としては以下のようなものがあります。
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子健康手帳
- 健康保険の給付記録
- お薬手帳、領収書、診察券
- 盲学校、ろう学校の在学証明・卒業証書
- 第三者証明
など
受診状況等証明書が取得できない場合でも、証拠書類を積み上げ認められたケースも多くありますので諦めないことが大切です。
なお、以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
【ポイント3】 聴覚障害の測定方法
聴覚障害では、両耳それぞれの聴力で判定されます。
測定方法としては、オージオメーターという機械を使用し「純音聴力レベル値の測定・語音明瞭度の検査」を行います。
また、測定時は補助器具(補聴器等)なしの状態で測定します。
その他の精神の事例
精神の障害の新着事例
よく読まれる精神の障害の事例