【事例55】自閉スペクトラム症|障害基礎年金2級(ご自身でおこなった申請を取り下げた事例)

自閉スペクトラム症|障害基礎年金2級

対象者の基本データ

病名 自閉スペクトラム症
性別 女性
支給額 年額 約78万円
障害の状態
  • 言語的なコミュニケーションが苦手で社会的な関係を築くことが困難
  • 段取りよく物事を進めることが苦手で臨機応変な対応やマルチタスクは困難
  • 家庭内の家事も十分に出来ない為、家族の援助が必要
  • 発達障害に伴い、抑うつ傾向も認める
申請結果 障害基礎年金2級

 

ご相談までの経緯

幼少期より周囲の会話に入れず、友達を作るのが苦手で孤立することが多かったそうです。

自分では普通に会話しているつもりでも周囲から笑われることが多く、勉強は苦手で特に計算が不得意でした。

高校卒業後、親戚が経営する会社で働いたり、保険の営業、農作物の栽培、工場、レジなど職を転々していましたがいずれも人間関係がうまくいかず、短期間で離職していました。

対人関係がうまくいかないことについて、発達障害とは疑いもしなかったため、医療機関を受診することもなく、これまで過ごしていました。

30代後半になり職場での対人トラブルから抑うつ気分が強くなり、当時勤めていた職場を退職。

退職後も状態が改善しない為メンタルクリニックへ受診するようになり、気分変調症と診断を受け通院を続けていました。

不安感が強く、処方された薬を服用することで何とか自分を保ってはいましたが、子供の同級生の保護者との対人関係もうまく築けなかったり、家庭内では夫から理解してもらうことが出来ず、義母からは口うるさく言われることもあり、どこにいても休まる場所がなく、症状は悪化する一方でした。

症状の改善がない為、転院することとなり、転院先の病院で大人の発達障害の疑いを指摘され、検査を受けたところ、自閉スペクトラム症と診断されました。

以降、一般就労ではなく、就労支援施設のA型事業所で働くようになりました。

事業所内でも責任者や他の利用者との人間関係をうまく築くことが出来ず、トラブルとなることもしばしばありました。

そんな中、障害年金の事を知り、一度自分で請求していました。

しかし知人から「絶対に社労士に依頼すべき」と言われたため、結果が出る前に審査を取り下げ、当事務所にご相談を頂きました。

 

申請結果

審査結果がまだ出ていない時点で請求を取り下げたため、まずは取り下げた書類を拝見させていただくとともに、現在の状態についてヒアリングを行いました。

既に取得していた診断書は期限切れであった為、新たに診断書を取得する必要があり、改めて受診歴を整理し、病歴就労状況等申立書を作成しなおして、再度請求する方針となりました。

Aさんのように社会で生活をしていく過程で発達障害を原因とした二次障害として精神疾患を発症し、精神疾患の治療を受ける中で発達障害と分かるケースもあります。

幼少期より明らかに症状が現れていても、大人になってから二次障害を発症し、その後発達障害と診断された場合は、二次障害で初めて受診した日が初診日として取り扱われます。

ただし、病歴就労状況申立書には「出生から現在まで」の病歴、通院歴、日常生活、就労状況等の様子などを記入する必要があります。

既にご本人様が作成していた申立書は初診日からの記載となっていたため、それを基盤に出生から現在までの状況について一から作成しなおしました。

また今回の請求では就労をしていることがポイントになりました。

大人になってから発達障害と分かったケースでは、2級以上の認定は難しい傾向にあります。

障害年金の認定基準では就労については以下のように明記されています。

労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事しているものについては、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分に確認した上で日常生活能力を判断する。

Aさんは就労支援施設A型事業所にて軽作業に従事していましたが、周囲からの支援を受けながら単純作業であればなんとか出来ているという状況で、他の従業員とは意思疎通は困難でトラブルに発展しやすく、対人面での支障は大きいものでした。

これらの状況を審査員に客観的に書面上で伝える事が出来れば、受給の可能性はあると判断しました。

日常生活及び就労の状況を改めて医師に伝え、新たに取得した診断書には現状を反映してもらうことが出来ました。

請求の結果、無事『障害基礎年金2級』として認定されました。

 

【ポイント1】発達障害と初診日

発達障害の初診日は「発達障害のために初めて医療機関を受診した日」です。

先天性の疾病のため、知的障害と同様に生まれた日が初診日になるという誤解が多いのでご注意ください。

また、20歳未満では親元で生活をしていることも多く症状が目立たないものの、社会に出てから、周りと上手くコミュニケーションが取れないなどの悩みが原因でメンタルクリニックを受診して発達障害と診断されるケースも多くあります。

このように幼少期より明らかに症状が現れていても、20歳を超えてから発達障害と診断された場合は、その初めて通院した日が初診日になります。

 

【ポイント2】発達障害の病歴就労状況申立書

発達障害は、先天的な脳機能の障害とされています。

幼少期から症状が現れるのことも多いですが、近年は大人になってから発覚するケースも増えています。

いずれの場合であっても、病歴就労状況申立書には『生まれてから現在まで』の病歴・通院歴・症状・日常生活の様子などを記入する必要があります。

 

【ポイント3】精神疾患と就労

発達障害の中でも、大人になり社会に出てから生きづらさを感じ発達障害と分かるケースが増えています。

このようなケースでの障害年金は、2級以上の認定は難しい傾向にあります。

しかし、障害年金の認定基準にも「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない」と明記されているように「就労している=不支給」とされるわけではありません。

就労の現場で従事している仕事内容、受けている援助や配慮、周囲との意思疎通の状況などを整理し、それらの配慮や援助がない環境下で予想される状態までも考慮し、受給の可能性を検討していく必要があると考えられます。

 

その他の精神の事例

 

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