目次
対象者の基本データ
病名 | 鬱病(うつびょう) |
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性別 | 男性 |
支給額 | 年額 約71万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
ご相談者様は、15年ほど前に、仕事中に過呼吸発作が起こり、救急搬送されました。
病院ではパニック障害と診断され、薬物療法が始まります。
その後、他の傷病が発症し服薬が中止となったことで、受診を中断されたそうです。
3年間ほど受診を中断していましたが、何事に対しても意欲がわかず、身の回りのことさえできなくなり、再び、受診を始めます。
今回は、うつ病と診断されます。
定期的に通院し薬物療法、精神療法を受けていましたが、離婚を機に症状は急激に悪化しました。
離婚後は一人暮らしとなったため、ご両親に定期的に訪問して頂き、日常生活の介助・支援を受けておられます。
仕事も休職、復職を繰り返していましたが、現在は、長期休職となり籍だけ会社に残っている状態で収入も無くなりました。
いつまでもご両親に頼ることもできず、将来の不安をお持ちでした。
そこで、生活保護についてネットで調べていたところ、障害年金の制度についての記載を見つけ、受給資格があるのなら障害年金にチャレンジしたいと考え、地元の社労士事務所にご相談されました。
しかし、初診証明が困難という理由で依頼を断られます。
一度は障害年金の申請を諦めましたが、当事務所のホームページをご覧になり、藁をもつかむ思いで、依頼の問い合わせを頂きました。
申請結果
ご相談者様は、15年前にA病院を受診し、8年前にB病院(現在も受診中)に転院されました。
障害年金の手続きにおいて、初診日の証明は非常に大切です。
この事例では、A病院で「受診状況等証明書」(初診日の証明)を記載して頂く事になります。
しかし、カルテが残っておらず、受診状況等証明書を取得できませんでした。
そこで、現在も通院中のB病院のカルテにA病院についての記載がないかを問い合わせしました。
すると、B病院初診時のカルテに、A病院を受診した時期等について、詳細な記入があることが分かりました。
5年以上前のカルテに記載されていることは初診証明の証拠となります。
<初診日の証明が出来ない場合については、ポイント①もご参照ください。>
早速、B病院に、A病院を受診した時期等について「照会書」に記載していただき、「受診状況等申立書が添付できない申立書」に「照会書」を添付することで、困難であった、初診証明にこぎつけました。
(「照会書」は、医療機関に前医についての記載をお願いするため、当事務所が任意に作成した書式です。)
続けて、診断書依頼です。
障害認定日の診断書が取れないため、事後重症請求での申請となります。
<申請方法につきましては、ポイント②をご参照ください。>
事後重症請求の場合は「現在の障害の程度を現す診断書」が必要になります。
そこで、B病院の医師に診断書依頼の際、ご相談者様の日常生活の状況をまとめた資料をお渡しすることで橋渡しを致しました。
最後のハードルは、「一人暮らし」です。
「一人暮らし」をしているという事で、家事や身の回りの事が出来ていると見られ、審査ではマイナス要素になってしまいます。
その為、「病歴就労状況等申立書」に、離婚されたことで余儀なく一人暮らをしていること、母親に定期的に訪問してもらい、家事などをサポートしてもらうことで、なんとか日常生活が保たれていることを記載しました。
<一人暮らしについては、ポイント③をご参照ください。>
診断書をはじめ全ての書類が満足できるものとなっており、自信を持って申請することができました。
結果は、2か月間のスピード審査で、初診日の証明も認められ、『障害厚生年金3級』に認定となりました。
【ポイント1】初診日の証明が出来ない場合
障害年金は初診日主義とも言われており、初診日の証明が出来ないと障害年金を受給することが出来ません。
初診日の証明は受診状況等証明書という様式を用いて行います。
この受診状況等証明書は、本来であればカルテに基づいて記載をしてもらう必要がありますが、初診病院が廃院している場合や既にカルテが破棄されている場合等は受診状況等証明書が取得できないこととなります。
そこで受診状況等証明書が取得できない場合に使用するのが、受診状況等証明書が添付出来ない申立書です。
この受診状況等証明書が添付出来ない申立書はご自身で最初に受けた医療機関名や場所、受診期間等を記載する書類です。
ただし、この書類を作成するだけでは、客観的証拠が不十分として、申請する初診日を認めてもらうことは出来ません。
申請する初診日が明らかに確認できる客観的な証拠書類を添付して、初めて有効とされます。
客観的な証拠書類としては以下のようなものがあります。
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子健康手帳
- 健康保険の給付記録
- お薬手帳、領収書、診察券
- 盲学校、ろう学校の在学証明・卒業証書
- 第三者証明
など
受診状況等証明書が取得できない場合でも、証拠書類を積み上げ認められたケースも多くありますので諦めないことが大切です。
なお、以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
【ポイント2】「事後重症請求」と「遡及請求」
本来、障害年金は障害認定日(原則初診日から1年6ヵ月後)より請求することが出来ますが、何らかの理由で請求しないまま現在に至った場合は『今後の障害年金』に加えて『過去の障害年金』を請求することも可能です。
『これからの年金』を請求する方法を事後重症請求、『過去の年金』を請求する方法を遡及請求と言い、審査の結果は、上記請求を同時に行った場合であっても、それぞれに別個に結果がでます。
つまり「これからの年金は支給」するけれど、「過去の年金は不支給」という結果もあり得ます。
注意点としては『遡及請求』は事後重症が認められて初めて認定されるため、必ず事後重症請求を『最初または同時』に行う必要があります。
遡及請求を行う時は通常よりも診断書代等の費用がかかりますので、認定の可能性や費用等を考慮しつつ、検討してみてください。
【ポイント3】単身の精神疾患の審査について
うつ病や発達障害などの精神疾患で障害年金を請求しようとする場合、単身で生活している場合は注意が必要です。
というのも、精神による障害年金は日常生活をどの程度周りから助けてもらっているかが審査の基準になるためです。
もし、このような一人暮らしに該当する場合は、やむを得ない理由や身内・友人その他福祉サービスの利用状況などを訴えることで認定の可能性があります。
一人暮らしの申請事例は以下のページでご紹介していますので、ご参照下さい。
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