目次
対象者の基本データ
病名 | 注意欠陥多動性障害(ADHD) |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約120万円 遡及金額 約190万円 |
障害の状態 |
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申請結果 | 障害厚生年金2級 |
ご相談までの経緯
ご相談者様は幼少期から検診で注意力散漫で物忘れが多いことを指摘され、受診を勧められていました。
しかし、障害を認めたくないというご両親のお気持ちが強く受診には至りませんでした。
小学校から高校までは普通学級で過ごされます。
ただ、感情の起伏が激しいことや、他人との距離感を取れなかったり、相手の気持ちを汲み取ることができないため、友人を作れずクラスでは常に浮いた存在になっていました。
就職しても、注意力散漫、物忘れ、コミュニケーション欠如などが原因で単純なミスを繰り返していました。
毎日、上司から注意を受けることでストレスを強く感じる様になり、頭痛、嘔吐、過呼吸などの症状が現れたり、壁に頭をぶつけるような自傷行為も始まりました。
症状が徐々に酷くなってきたため、家族に付き添われ受診することになります。
病院では注意欠陥多動障害、不安障害と診断されました。
現在も就労は続けていますが、仕事で体力を消耗し症状は一向に改善しません。
こんな状態では、いつまで就労が続けられるか分からず将来への不安をお持ちでした。
病院で障害年金の制度を教えて頂き、認定されれば仕事を辞め静養しながら治療に専念できるとお考えになり、いろいろな社会保険労務士事務所にご相談になりました。
しかし、どの事務所でも、就労しているので認定は難しいと言われ申請を諦めていらっしゃいました。
そんな時に、当事務所のホームページで、就労しながら受給されたという事例をご覧になり、藁をもすがる思いでご依頼のお問い合わせを頂く事になりました。
申請結果
この事例では、初診から現在まで、ご相談者様の病状、日常生活や就労の状況などに大きな変化もないため遡及請求をすることにしました。
<申請方法につきましては、ポイント①をご参照ください。>
ご相談者様からのヒアリングで、受給の可能性も高いと判断できましたが、大きく立ちはだかった壁が「就労」でした。
<就労につきましては、ポイント②をご参照ください。>
障害者雇用での勤務とはいえ、フルタイム勤務を継続されています。
また、職種も介護職で、決して軽作業とは言えません。
そこで、「病歴就労状況等申立書」において、職場では、障害の特性を理解して頂いており、常に、特定の指導者の下で、食器洗いやお茶の用意などの単純作業に従事していることや、電話対応やクレーム処理などは免除されている事を記載しました。
また、家族の車での送迎のおかげで通勤できていることなども記載しました。
そして、ご相談者様は、マルチタスクもできず、新しい仕事を覚えられないため、仕事内容も限定されているが、人手不足の業種という事もあり、手厚い配慮の元で、なんとか就労が続けられていることを主張しました。
診断書依頼の際にも、就労については、「病歴就労状況等申立書」に記載した内容を医師に伝え、診断書に反映して頂きました。
なお、ご相談者様は、障害認定日頃は事実婚の状態で入籍していませんでした。
そこで、遡及の年金にも配偶者加算を認めてもらうために、「障害給付加算額・加給年金額開始事由該当届」を提出するとともに、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」に同居していたが入籍していなかった理由等を記載し、他の申請書類とともに提出しました。
<配偶者加算につきましては、ポイント③もご参照ください。>
結果は、『障害厚生年金2級』に認定され、遡及も認められました。
そして、事実婚も認められ、遡及の年金額にも配偶者加算がついていました。
【ポイント1】「事後重症請求」と「遡及請求」
本来、障害年金は障害認定日(原則初診日から1年6ヵ月後)より請求することが出来ますが、何らかの理由で請求しないまま現在に至った場合は『今後の障害年金』に加えて『過去の障害年金』を請求することも可能です。
『これからの年金』を請求する方法を事後重症請求、『過去の年金』を請求する方法を遡及請求と言い、審査の結果は、上記請求を同時に行った場合であっても、それぞれに別個に結果がでます。
つまり「これからの年金は支給」するけれど、「過去の年金は不支給」という結果もあり得ます。
注意点としては『遡及請求』は事後重症が認められて初めて認定されるため、必ず事後重症請求を『最初または同時』に行う必要があります。
遡及請求を行う時は通常よりも診断書代等の費用がかかりますので、認定の可能性や費用等を考慮しつつ、検討してみてください。
【ポイント2】精神疾患と就労
必ずしも「就労している=不支給」とは限りません。
とはいえ、精神疾患の場合は、審査上、就労の有無が重要なポイントとなってきます。
就労している継続年数や、就労形態についても審査では見られます。
就労している場合は、会社から受けている配慮や、帰宅後や休日の体調などを申し立てることも必要です。
たとえば、体調が悪化した場合の早退、通院のための遅刻や、その他、業務を行う上での配慮を受けていれば、そのあたりも記載します。
また、なんとかがんばって会社に行けても、帰宅した途端どっと疲れが出て寝込んでしまう場合や、休日は家事も一切できない場合なども、医師にしっかり伝え、診断書に反映していただくことも大切です。
障害年金と就労に関しては以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
【ポイント3】加算の条件、生計維持関係とは
生計維持とは「生活(家計)が同じ」ということです。
障害年金を受けることができるようになったと時、要件を満たすことで『子の加算』や『配偶者の加算』が付くことがあります。
原則として同居していることが条件ですが、もし住民票の登録地が異なる場合でも、家計等が同じであることを証明できれば加算が付く可能性があります。
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