目次
対象者の基本データ
病名 | 右被殻出血・左脳皮質下出血 |
---|---|
性別 | 男性 |
支給額 | 年額 約163万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金2級 |
ご相談までの経緯
5年程前、ベッドにて休んでいたところ左半身の痺れを感じ、立ち上がろうとしても脱力感で動くことができず、軽度の構音障害もあり、救急要請となりました。
搬送先で「右被殻出血」を認め、治療が始まりました。
左半身に軽度の麻痺が残りましたが、リハビリにより日常生活には大きな支障がないまでに回復しました。
リハビリによる治療がおわってからも高血圧傾向であった為、経過観察と投薬治療は継続するように指示を受け、2年程は欠かさず通院を継続していましたが、仕事へ復帰したことと生活への支障がないこともあり、通院を自己中断していました。
通院を中断してから約1年後、「左脳皮質下出血」を起こしたことで救急搬送され、再び治療が始まりました。
2度目の脳出血だったこともあり、リハビリをしても状態は大きく回復せず、右半身に後遺症が残りました。
仕事にはとても復帰出来る状態になく、退職に至り、歩行困難なため車椅子を使用し、着替えや入浴にも介助を必要とするようになりました。
身体が思うように動かないことで自主性がなくなり、家族に対しても自ら会話をすることもなくなったそうです。
状態が改善しないため、今後働ける見込みもなく、経済的な不安からご本人様をサポートするご家族より当事務所にご相談をいただきました。
申請結果
今回のご相談者様は「右被殻出血、左脳皮質下出血」と2回脳出血を起こしていました。
そのため、それぞれの傷病に相当因果関係があるか否かによって請求する初診日は以下のように変わります。
- 相当因果関係あり⇒1回目の脳出血で最初に医療機関を受診した日
- 相当因果関係なし⇒2回目の脳出血で最初に医療機関を受診した日
今回のご相談者様の場合、いずれの初診日時点でも加入年金制度は同じで、また納付要件も満たせていたため、まずは相当因果関係があるものとして請求を行い、万が一相当因果関係がないとして初診日が変更となった場合でも審査してもらえるように書類の準備をしました。
それぞれの傷病において初めて受診した医療機関は同じであったため、手続きではまず初診病院に初診日の証明となる受診状況等証明書の依頼を行いました。
1枚の受診状況等証明書で2つの傷病の初診日及び受診状況が確認できる形で作成していただき、初診日が確定したため、次に、現在受診している病院で診断書の作成依頼を行いました。
脳出血後遺症により、肢体障害の症状が広範囲に渡っていましたので、日常生活における動作の状況や実際の生活上での支障について事前にヒアリングしていた状況を橋渡しを行い、適格に状況の反映された診断書を作成していただくことが出来ました。
申請の結果、2つの傷病に相当因果関係はないものとして2回目の脳出血時の初診日が採用され、障害厚生年金2級として認定されました。
【ポイント1】相当因果関係について
「前発の傷病がなければ、後発の傷病は起らなかったであろう」と認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病が同一の傷病として取り扱われます。
つまり、前発の傷病で最初に医師の診療を受けた日が後発傷病の初診日として取り扱われることとなります。
例えば相当因果関係があるものとしては以下のようなものがあります。
- 糖尿病→糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等
- 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎→慢性腎不全
- 肝炎→肝硬変
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害
- ステロイド投薬→大腿骨頭壊死
- 事故または脳血管疾患→精神障害
他の傷病でも相当因果関係ありとされる傷病はある為、複数傷病を発症している場合は初診日の取扱いには注意が必要です。
相当因果関係に関する事例は以下のページでご紹介していますのでご参照下さい。
【ポイント2】肢体障害の症状が広範囲に渡る場合の認定方法
肢体の障害が四肢全体の広範囲にわたるケースで認定は『日常生活における動作』がポイントになります。参考とされる日常生活動作は、以下のとおりです。
手指の機能
(ア) つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
(イ) 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ) タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ) ひもを結ぶ
上肢の機能
(ア) さじで食事をする
(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
下肢の機能
(ア) 片足で立つ
(イ) 歩く(屋内)
(ウ) 歩く(屋外)
(エ) 立ち上がる
(オ) 階段を上る
(カ) 階段を下りる
その他の肢体の障害の事例
肢体の障害の新着事例
よく読まれる肢体の障害の事例