目次
対象者の基本データ
病名 | 変形性股関節症(人工関節) |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約59万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
幼少期に股関節の形成不全が判明し、2~3ヵ月程度ギプス固定を行っていたそうです。
ギプスが外れた後は特に問題も無く成長し、以降は通院も無くなったとの事でした。
長女を出産した際も股関節の異常を指摘されることは無く、また痛み等の自覚症状が現れることもありませんでした。
そんな生活が続いていた中、50歳の頃より股関節付近に痛みを感じるようになったそうです。
日々痛みは増していきましたが生活は何とか出来ており、仕事も座業であった事から多少の不自由さを感じつつもこなせていたとの事でした。
痛みを発症してから約3年後、どうにも痛みが酷くなり、耐え切れなくなったことから整形外科を受診。
『変形性股関節症』と診断され、しばらく温存療法となった後、55歳の時に人工関節置換術を受けました。
リハビリの甲斐あって術後の経過は良好で、職場にも復職を果たしました。
その後定期検査のために病院を受診した際に、院内にあった障害年金のパンフレットを見て制度の存在を知り、ネットで見つけた当事務所へご相談がありました。
申請結果
人工関節による障害年金は、原則として3級と定められています。(ポイント①)
初診時は社会保険に加入しており厚生年金だったことから、3級として認定される可能性が高いと判断出来ました。(ポイント②)
しかしご相談者さまは幼少期に『股関節形成不全』にて治療を受けており、『過去の形成不全』と『今回の変形性股関節症』に繋がりがあった場合、初診日は幼少期に遡ることとなります。
幼少期が初診日となると、当然年金制度には加入しておらず、認定を受けるためには2級以上と認められる必要がありました。
ところが、ご相談者さまの術後経過は良好で2級以上と認定される程度ではありません。
よって今回の申請では、過去の疾病は一度完治し、その後今回の疾病を新たに発症したと主張していく事になりました。
このようなケースを『社会的治癒』と言います。
初診証明や診断書の取得を行っている間、形成不全とされた幼少期から現在までの経過をヒアリングし、病歴就労状況等申立書にて当時の治療内容や経過、その後の通院歴、自覚症状の有無、生活状況を明らかにし、それぞれの疾病には繋がりは無いことを申し立てていきました。(ポイント③)
もし提出後に申請内容に疑問があれば年金事務所等より連絡がありますが、問い合わせも無く審査は順調に進み、結果、主張通り社会的治癒が認められ『障害厚生年金3級』と認定されました。
【ポイント1】人工関節は原則3級
人工関節は「原則3級」と決められています。
ただし、症状によって上位等級(2級以上)に認定される可能性もあります。
また3級に該当するためには初診日に厚生年金や共済年金に加入していることが条件となります。
つまり、初診日が国民年金・20歳未満・第3号といった障害基礎年金が対象の場合は人工関節の手術のみでは障害年金の受給は出来ないというものになります。
【ポイント2】『初診日に加入していた年金制度』と『受給できる等級』
障害年金には主に3種類あり、いずれを申請するかは『初診日に加入していた年金制度』により決まります。
①初診日に国民年金に加入していた場合は『障害基礎年金』
- 対象:20歳未満のため未加入、アルバイト、自営業、主婦等の第3号被保険者、免除申請中等
- 等級:1,2級のいずれかに該当(※)3級はありません。
- 加算:2級以上で子の加算
②初診日に厚生年金に加入していた場合は『障害厚生年金』
- 対象:会社員、社会保険に加入しているアルバイト等
- 等級:1,2、3級のいずれかに該当
- 加算:2級以上で子・配偶者加算
③初診日に共済年金に加入していた場合は『障害共済年金』
- 対象:公務員等
- 等級:1,2、3級のいずれかに該当
- 加算:2級以上で子・配偶者加算
初診日による等級の違いは、以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
【ポイント3】社会的治癒
社会的治癒が認められると、初診日が変わります。
社会的治癒とは、「症状無し・生活に支障無し・就労可能な状態」が一定期間続いている場合などは、医学的には治癒とは言えなくとも治癒していると認めましょう!という制度です。
今回のケースのように「一度ケガや病気」となったが、しばらくの間問題なく生活していた後に「再度、症状が悪化・支障が出た」とき、最初のケガや病気は「治癒」その後「再発した」ものとして取り扱います。
障害年金上、再発した場合は「再発した後に初めて診察を受けた日」が初診日になります!
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