目次
対象者の基本データ
病名 | 変形性股関節症・線維性骨異形成症(人工関節) |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約58万円 |
障害の状態 |
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申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
小学校頃から脚に痛みを感じ、病院にて検査したところ『線維性骨異形成症』と診断されたそうです。
大腿骨の手術・骨移植を実施すると痛みも無くなり、以降は元の生活へと戻ったとのことでした。
そのまま時が過ぎ、40歳頃より片足に痛みを感じるようになったそうです。
仕事に育児家事と多忙であったことから、しばらく様子を見て生活していたそうですが、あまりの痛みに耐えきれなくなり整形外科を受診。
『変形性股関節症』と診断を受け、発症から2年後に人工関節置換術を受けました。
しかし48歳頃に再び痛みが出始め、病院で検査したところ人工関節の緩んでおり、いずれは再手術が必要とのこと。
よって翌年に再手術を実施しましたが、リハビリが思うように進まず入院生活が長引いていました。
仕事も辞めようかと考えていたところ、たまたま障害年金のことを知って当事務所にご相談がありました。
申請結果
今回の申請傷病である『人工関節』は、原則として3級と定められています。(ポイント①)
もし人工関節を挿入してもなお、著しい筋力低下や可動域制限があるときは、2級以上と認められる可能性もありますが、検査結果などから今回は3級認定を目指すこととなりました。
しかし3級は、初診日が国民年金に加入中または未加入であった方には用意されていない等級で、初診日に厚生年金・共済年金等に加入している必要があります。(ポイント②)
そこで問題となるのが『線維性骨異形成症』の存在です。
ご相談者様は、線維性骨異形成症のため10代に手術を行っていました。
今回の変形性股関節症にて手術したのも、同じ部位です。
もし今回の変形性股関節症の原因が、線維性骨異形成症によるものと判断されると、初診日は10代の頃、つまり年金未加入時となり申請しても不支給となります。
両者の間に関連性があると評価される可能性は大いにあったため、申請ではこの問題をクリアするため『社会的治癒』を主張していきました。(ポイント③)
長年の間、症状・支障・通院も無く、一般就労も出来る状況が続いていることを『社会的治癒』と言い、認められた場合は『今回の変形性股関節症にて初めて病院を受診した日』が初診日となります。
事実として10代の手術以降は症状も無く、通院もしていませんでした。
学生生活に制限も無く、趣味でスポーツしたり、出産時も股関節の異常を指摘されたことは無かったとのことです。
その事実を申請内容に記載し、社会的治癒の要件を満たしている事を申し立てました。
結果、社会的治癒が認められ無事に『障害厚生年金3級』と認定を得ることが出来ました。
【ポイント1】人工関節は原則3級
人工関節は「原則3級」と決められています。
ただし、症状によって上位等級(2級以上)に認定される可能性もあります。
また3級に該当するためには初診日に厚生年金や共済年金に加入していることが条件となります。
つまり、初診日が国民年金・20歳未満・第3号といった障害基礎年金が対象の場合は人工関節の手術のみでは障害年金の受給は出来ないというものになります。
【ポイント2】相当因果関係について
「前発の傷病がなければ、後発の傷病は起らなかったであろう」と認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病が同一の傷病として取り扱われます。
つまり、前発の傷病で最初に医師の診療を受けた日が後発傷病の初診日として取り扱われることとなります。
例えば相当因果関係があるものとしては以下のようなものがあります。
- 糖尿病→糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等
- 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎→慢性腎不全
- 肝炎→肝硬変
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害
- ステロイド投薬→大腿骨頭壊死
- 事故または脳血管疾患→精神障害
他の傷病でも相当因果関係ありとされる傷病はある為、複数傷病を発症している場合は初診日の取扱いには注意が必要です。
【ポイント3】社会的治癒
社会的治癒が認められると、初診日が変わります。
社会的治癒とは、「症状無し・生活に支障無し・就労可能な状態」が一定期間続いている場合などは、医学的には治癒とは言えなくとも治癒していると認めましょう!という制度です。
今回のケースのように「一度ケガや病気」となったが、しばらくの間問題なく生活していた後に「再度、症状が悪化・支障が出た」とき、最初のケガや病気は「治癒」その後「再発した」ものとして取り扱います。
障害年金上、再発した場合は「再発した後に初めて診察を受けた日」が初診日になります!
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