目次
対象者の基本データ
病名 | 変形性股関節症(人工関節) |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約58万円 |
障害の状態 |
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申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
出生して間もなく歩き方に異変があった為、近医を受診したところ『先天性股関節脱臼』と診断されました。
しばらくはギプス固定をしていたそうですが、3歳頃には歩き方も正常となり痛み等も無く、通院は中断となったとの事でした。
小学校に入ってからも、体育の授業などの運動にも制限無く、通常の生活を過ごせていたそうです。
以降も症状は無く、社会人となって婚姻し出産を迎えましたが、産後も股関節に異常は無く医師から注意をされることもありませんでした。
その後、45歳頃より少しずつ股関節が痛むようになったそうです。
とは言え、頻繁に痛むわけでも無く仕事もしていたため、とりあえず整体に通うにして病院へは受診しませんでした。
しかし月日の経過とともに痛みは増していき、整体にて相談した結果、病院で診てもらうように言われ整形外科を受診。
検査にて『両変形性股関節症』と診断。
治療については、年齢が若いこともあり、しばらくは温存療法にて経過観察し、いずれは人工関節にとの話でまとまりました。
しかし約2年後に急激に痛みが増悪したため、予定よりも早く人工関節置換術を行うことになったそうです。
手術後、知り合いが見舞いに来た際「人工関節にて障害年金を受給することができる」と知らされ、気になったためネットで調べたところ当事務所を見つけ、相談のご連絡がありました。
申請結果
今回の申請で問題となるのが『いつが初診日なのか』という点です。
障害年金は、初診日に加入していた年金制度によって請求する障害年金が異なります。(ポイント①)
そこでまずは『初診日』について検討するため、これまでの経過を整理することにしました。
- 幼少期:先天性股関節脱臼と診断
- 長い間症状も支障も無く、また通院もしなかった
- 45歳頃:痛みが出始めたことを機に病院を受診
もし幼少期が初診とされた場合は年金未加入期間のため『障害基礎年金』になり、45歳頃を初診とした場合は厚生年金に加入していたため『障害厚生年金』になります。
人工関節は原則3級と決められているため、初診が幼少期となると障害年金を受給することが出来ません。(ポイント②)
そこで注目したのが『長い間、症状・支障・通院が無かったこと』です。
このようなケースは『社会的治癒』が認められる可能性があります。(ポイント③)
社会的治癒が認められると、幼少期の症状は治ったものとして扱われ、45歳頃に再発したとき受診した日を『初診日』とすることができます。
お手続きではこの社会的治癒を証明するため、幼少期から現在までの様子を記載しました。
また通院していなかった間も『症状が無かったこと』等がわかるように、当時の様子を記載し、積極的に社会的治癒を主張していきました。
結果、審査では社会的治癒が認められ45歳頃が初診日となり、無事に『障害厚生年金3級』との認定を得ることができました。
【ポイント1】障害年金の種類
障害年金は「初診日に加入していた年金制度」によって、請求できるものが違います。
請求できる障害年金は主に3つで、以下のとおりです。
①障害基礎年金(初診日に「国民年金に加入」または「3号、20歳未満、未加入」の場合)
②障害厚生年金(初診日に「厚生年金に加入」している場合)
③障害共済年金(初診日に「共済年金に加入」している場合)
種類によって、申請先や申請内容に違いがあります。
【ポイント2】人工関節は原則3級
人工関節は「原則3級」と決められています。
ただし、症状によって上位等級(2級以上)に認定される可能性もあります。
また3級に該当するためには初診日に厚生年金や共済年金に加入していることが条件となります。
つまり、初診日が国民年金・20歳未満・第3号といった障害基礎年金が対象の場合は人工関節の手術のみでは障害年金の受給は出来ないというものになります。
【ポイント3】 社会的治癒
社会的治癒が認められると、初診日が変わります。
社会的治癒とは、「症状無し・生活に支障無し・就労可能な状態」が一定期間続いている場合などは、医学的には治癒とは言えなくとも治癒していると認めましょう!という制度です。(※詳しくは『社会的治癒とは』をご参照下さい。)
今回のケースのように「一度ケガや病気」となったが、しばらくの間問題なく生活していた後に「再度、症状が悪化・支障が出た」とき、最初のケガや病気は「治癒」その後「再発した」ものとして取り扱います。
障害年金上、再発した場合は「再発した後に初めて診察を受けた日」が初診日になります!
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