うつ病で障害年金を申請される場合の注意点などは『【社労士が解説】うつ病で障害年金を申請するポイント』でも詳しくご説明していますので、是非ご参照ください。
目次
対象者の基本データ
病名 | 鬱病(うつびょう) |
---|---|
性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約59万円 遡及金額 約68万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金3級 |
ご相談までの経緯
20年程前、家庭内の問題で不眠症状が出現しました。
A病院を受診し、半年程治療を継続することで症状は改善し、通院を中断しました。
その後、約15年程の長期間に渡って自覚症状もなく、日常生活にも仕事にも何ら支障なく過ごせていました。
安定した生活が続いていましたが、職場で業務内容が変わったことを契機に仕事に対して大きなストレスを感じるようになり、耳鳴りや動悸、眩暈等の症状が現れ始めました。
内科や耳鼻科を受診しましたが、異常はなく、治療も受けることが出来ませんでした。
心因性を疑い、再びA病院を受診することとなりました。
「適応障害」と診断され、医師の指示ですぐに休職となり、治療が始まりました。
自覚症状はやや軽減しましたが、引きこもり傾向は徐々に強まり、仕事の継続は困難なため、退職に至りました。
仕事を退職後、抑うつ症状は悪化傾向にあり、診断名が「うつ病」に変更されました。
現在も家族の付き添いの下で月1回程度の通院を継続していますが、症状改善は乏しく、1日中自室に引きこもって横になって過ごしています。
回復の見込みがない為、ご本人様を支援するご家族が障害年金の申請を検討していました。
知人の社労士より障害年金業務を専門とする社労士への相談を勧められ、当事務所までお問い合わせいただきました。
申請結果
今回の事例では、「初診日」が申請のポイントとなりました。
病歴経過から初診日として考えられる時点が以下の2つありました。
①20年程前に初めてA病院を受診した日
②現在から3年程前に再びA病院を受診した日
初診日は障害年金の請求において、様々な基準となる為、要件やご本人様の病歴経過を考慮し、方針を検討する必要があります。(ポイント①)
今回のご相談者様の場合、①から②の間の期間が15年程と長期間あり、当該期間は自覚症状もなく、日常生活も就労にも支障なく過ごせていた為、社会的治癒の法理を用いて、②の時点を初診日として申請を進めることとしました。(ポイント②)
申請方針が決まり、早速A病院へ診断書の作成依頼を行います。
A病院にて作成していただく診断書の内容には①時点の受診状況も記載していただきます。
診断書では、①時点と②時点以降の病歴経過はおおむね把握することが出来ますが、①~②の間の期間の状況については不明瞭である為、病歴就労状況等申立書にて①~②の間の期間の経過について詳述しました。
申請の結果、無事申し立てた②時点が初診日として認められ、約1年半分遡って年金が支給されることとなりました。
【ポイント1】初診日が大切な理由
障害年金では、初診日が最も重要とされています。
なぜ重要なのかというと、初診日は以下のように様々な『基準』となる為です。
①制度加入要件
初診日にどの制度に加入していたかで、受けられる年金が決まります。
②保険料納付要件
障害年金を申請するには、初診日の前々月から数えて一定期間の保険料を納めている必要があります。
③障害認定日の起算点
原則として『初診日から1年6ヵ月経過した日』に障害の程度を認定します。
これを障害認定日と言い、この日以降で無ければ障害年金の請求が出来ません。
初診日が大切な理由に関しては、以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
【ポイント2】社会的治癒
社会的治癒が認められると、初診日が変わります。
社会的治癒とは、「症状無し・生活に支障無し・就労可能な状態」が一定期間続いている場合などは、医学的には治癒とは言えなくとも治癒していると認めましょう!という制度です。
今回のケースのように「一度ケガや病気」となったが、しばらくの間問題なく生活していた後に「再度、症状が悪化・支障が出た」とき、最初のケガや病気は「治癒」その後「再発した」ものとして取り扱います。
障害年金上、再発した場合は「再発した後に初めて診察を受けた日」が初診日になります!
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