目次
対象者の基本データ
病名 | 癲癇(てんかん) |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約78万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害基礎年金2級 |
ご相談までの経緯
高校1年生の頃から、頭痛が続くようになったそうです。
また、無意識のうちに持っていたペンなどを落としていることが度々あり、不安になって受診しました。
脳波の検査でてんかん波が認められ、抗てんかん薬、漢方薬の処方が始まりましが、薬を服用すると頭痛が酷くなり自己判断で服薬を中断しました。
しかし、中断後、大発作を起こし救急搬送されます。
再び、薬物療法を始めますが、症状は改善せず、発作も繰り返し起こります。
高校卒業後、てんかんの事を隠して就職しますが、仕事中に発作が起こり、職場に居づらくなり退職しました。
その後は、てんかんの事を隠さずに就職活動をしますが、面談で不採用となってしまいます。
一般就労も望むことができず、現在は、家業の手伝いをしています。
日常生活も常に発作の恐怖があり、家族の見守りが必要な状態が続いています。
就労の目途も立たず、経済的なご不安を抱えていらっしゃいましたが、病院で「てんかん患者が利用できる福祉制度」というパンフレットで障害年金の制度を知ります。
ぜひ申請しようと思い母親と市役所に説明を聞きに行きましたが、手続きの内容が煩雑で理解できず、弊社にお問い合わせを頂きました。
申請結果
ご相談者様は発作のたびに、それ以前の記憶がなくなるため、LINEやメールなど記録が残る方法での対応をご希望でした。
まず、LINEでてんかん発作の程度と頻度、日常生活状況等をお伺いし、受給の可能性が高いことをご説明し手続き代行のご契約を頂きました。
なお、最初のてんかん発作が30年以上前で、現在までの経緯についても記憶が曖昧なためお母様にもご協力を頂き手続きを進めていくことになりました。
手続きを始めるにあたって、大きなハードルとなったのは受診状況等証明書(初診日の証明)の取得です。(ポイント①)
初診日が30年以上前ということで、カルテが残っているかどうか心配でしたが、病院の方のご協力で倉庫から紙カルテを見つけて頂き、受診状況等証明書を記載して頂くことができました。
次は、申請方法の検討になります。
障害認定日(初診日から1年6ヵ月経過した日)の診断書が取得できれば遡及請求が可能となります。(ポイント②)
早速、障害認定日頃に通院されていた病院に診断書を依頼しましたが、当時のカルテが残っておらず、遡及請求から事後重症請求に切り替えて申請することにしました。
事後重症請求では、現在の障害の程度を現す診断書1通が必要となります。
てんかんで申請する場合は、精神の診断書を使います。
そして、「発作の程度と頻度」と「日常生活の状況」が審査のポイントになります。(ポイント③)
ご相談者様は「発作の程度と頻度」は等級に該当する程度ですが、問題は「日常生活の状況」です。
発作が起こっていないときは、外見上、全ての動作が「できる」に見えてしまいます。
ただ、いつ発作が起こるか分からず、常に家族の見守りが必要であり、日常生活には大きな制限があります。
従って、診断書依頼の際には、発作により、日常生活にどの様な支障が生じているかを具体的に医師に説明しました。(例えば、食事の際に発作が起こると誤嚥の恐れがある為、1人で食事はできず家族の見守りが必要など)
しかし、完成した診断書は、日常生活の状態が正確に反映されておらず軽い内容になっていました。
医師に変更をお願いしましたが、聞き入れてもらえず、診断書で伝えられていない日常生活の支障や生きづらさについて、病歴就労状況等申立書に詳述し申請しました。
診断書の内容は気になっていましたが、無事、「障害基礎年金2級」に認定されました。
【ポイント1】初診日の証明が出来ない場合
障害年金は初診日主義とも言われており、初診日の証明が出来ないと障害年金を受給することが出来ません。
初診日の証明は受診状況等証明書という様式を用いて行います。
この受診状況等証明書は必ずカルテに基づいて記載をしてもらう必要がありますが、初診病院が廃院している場合や既にカルテが破棄されている場合等は受診状況等証明書が取得できないこととなります。
そこで受診状況等証明書が取得できない場合に使用するのが、受診状況等証明書が添付出来ない申立書です。
この受診状況等証明書が添付出来ない申立書はご自身で最初に受けた医療機関名や場所、受診期間等を記載する書類です。
ただし、この書類を作成するだけでは、客観的証拠が不十分として、申請する初診日を認めてもらうことは出来ません。
申請する初診日が明らかに確認できる客観的な証拠書類を添付して、初めて有効とされます。
客観的な証拠書類としては以下のようなものがあります。
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子健康手帳
- 健康保険の給付記録
- お薬手帳、領収書、診察券
- 盲学校、ろう学校の在学証明・卒業証書
- 第三者証明
など
受診状況等証明書が取得できない場合でも、証拠書類を積み上げ認められたケースも多くありますので諦めないことが大切です。
なお、以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
【ポイント2】「事後重症請求」と「遡及請求」
本来、障害年金は障害認定日(原則初診日から1年6ヵ月後)より請求することが出来ますが、何らかの理由で請求しないまま現在に至った場合は『今後の障害年金』に加えて『過去の障害年金』を請求することも可能です。
『これからの年金』を請求する方法を事後重症請求、『過去の年金』を請求する方法を遡及請求と言い、審査の結果は、上記請求を同時に行った場合であっても、それぞれに別個に結果がでます。
つまり「これからの年金は支給」するけれど、「過去の年金は不支給」という結果もあり得ます。
注意点としては『遡及請求』は事後重症が認められて初めて認定されるため、必ず事後重症請求を『最初または同時』に行う必要があります。
遡及請求を行う時は通常よりも診断書代等の費用がかかりますので、認定の可能性や費用等を考慮しつつ、検討してみてください。
以下の動画でものポイントをご説明していますので是非ご覧ください。
【ポイント3】癲癇(てんかん)の注意点
てんかんで障害年金を申請する際には「精神の診断書」を使用します。
その中でも、認定の基準として重要となるのが以下のポイントとなります。
①発作の重症度と頻度
②日常生活能力の判定
病気の特徴として、発作の起きない期間(発作間欠期)は、日常生活は問題なく見えます。
例えば、食事を作ったり、お風呂に入ったり、散歩をすることも出来るのです。
その部分だけを切り取って診断書の日常能力を「できる」と評価されてしまうと「発作はあるけど生活には問題がないんだね」と不支給とされるケースがあるのです。
それを防ぐためにも、発作の無い期間であっても、いつ発作が起きるか分からない事から、どのような影響があるのかを、しっかりとわかるように申請を行う事が大切となります。
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