目次
対象者の基本データ
病名 | 化学物質過敏症 |
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性別 | 女性 |
支給額 | 年額 約113万円 |
障害の状態 |
|
申請結果 | 障害厚生年金2級 |
ご相談までの経緯
ご相談者様は25年ほど前から、香水やシャンプーなどの臭いに対しくしゃみや咳が出るようになり、接着剤の臭いに対しては頭痛や眩暈を起こすようになりました。
食品添加物などを摂取すると舌先に強い痺れも感じるようになります。
症状が改善せず、受診したところ、化学物質過敏症と診断されました。
ただ、医師からは薬物療法は無効で、主に、化学物質過敏症の原因物質を避ける生活習慣などの生活指導中心の受診を現在まで継続しています。
しかし、化学物質を浴びることのない環境での社会生活を送るために日常生活、就労ともに大きな支障があります。
特に、仕事は月に4日ほどしかできず、経済的に大きな不安をお持ちでした。
自分が受けられる社会保障の制度を探している時に障害年金に辿り着きますが、ネットで化学物質過敏症での認定は難しいという書き込みを目にします。
そこで、本当に化学物質過敏症での申請は難しいのかを確認したくて、障害年金に実績のある弊社にご相談頂くことになりました。
申請結果
化学物質過敏症の申請は弊社では初めてであり、病気の特性などについてスタッフ全員で調べました。
勿論、難病ということで薬物療法は無効で、いかに原因物質を避けるための環境調整ができるかが過敏症を抑えることのポイントであることが見えてきました。
そこで、ご相談者様には原因物質を浴びた時の症状だけでなく、化学物質を避けるために日常生活や就労でどのような制限があるかヒアリングさせて頂きました。
そうしますと化学物質を体に取り込まないために住居、食品、衣服、家具など日常生活全般に大きな制限があり、市販品が利用できないときは安全な素材で手作りをしているとの事でした。
また、マンションに白蟻防止の薬剤がまかれたことで、体調不良になり引っ越しもしたそうです。
就労も通勤バスで他人の香水や洋服の柔軟剤などの臭いのため気分が悪くなり途中下車することが度々あるため30分で行けるところが2時間以上かかるとの事でした。
以上のことから、今まで申請した経験がないものの認定される可能性が高いことをお伝えしご契約いただきました。
手続きとしては受診状況等証明書の取得から始めますが、初診病院は廃院となっていました。
しかし、幸いなことに、初診から現在まで同じ医師に診てもらっていることが分かり、診断書の備考欄に医師に「請求人が初診のA病院の診察を行った主治医は私であり、本日の障害年金診断書を作成したのも私です。」と記載して頂くことで初診日の証明としました。(ポイント①)
診断書を依頼する際はご相談者様からのヒアリング内容をまとめた資料と日本年金機構が出している診断書の見本(認定例)を添付して医師に橋渡しをしました。
また、化学物質過敏症で申請する際は、「照会様式」も必要になりますので、診断書と合わせて医師に記載をお願いしました。
完成した診断書と照会様式はいずれもご相談者様の症状を正確に反映しており、また、診断書の一般状態区分表と照会様式のPS値(重症度分類)の整合性もとれていました。(ポイント②、③)
最後に、暴露物質を避けるための生きづらさを中心に病歴就労状況等申立書に詳述し申請しました。
結果は、初診日も認められ「障害厚生年金2級」に認定されました。
なお、化学物質過敏症はアレルギー科を受診されることが一般的ですが、今回、診断書を作成して頂いたのは内科の先生でした。
25年間、ご相談者様に寄り添い、診察を続けておられたこともあり、ご相談者様の苦しみを我が事のように思っておられており、今回、障害年金の申請にあたり、ご理解、ご協力を頂戴しました。
末筆ではございますが、厚く御礼申し上げます。
【ポイント1】初診日の証明が出来ない場合
障害年金は初診日主義とも言われており、初診日の証明が出来ないと障害年金を受給することが出来ません。
初診日の証明は受診状況等証明書という様式を用いて行います。
この受診状況等証明書は必ずカルテに基づいて記載をしてもらう必要がありますが、初診病院が廃院している場合や既にカルテが破棄されている場合等は受診状況等証明書が取得できないこととなります。
そこで受診状況等証明書が取得できない場合に使用するのが、受診状況等証明書が添付出来ない申立書です。
この受診状況等証明書が添付出来ない申立書はご自身で最初に受けた医療機関名や場所、受診期間等を記載する書類です。
ただし、この書類を作成するだけでは、客観的証拠が不十分として、申請する初診日を認めてもらうことは出来ません。
申請する初診日が明らかに確認できる客観的な証拠書類を添付して、初めて有効とされます。
客観的な証拠書類としては以下のようなものがあります。
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子健康手帳
- 健康保険の給付記録
- お薬手帳、領収書、診察券
- 盲学校、ろう学校の在学証明・卒業証書
- 第三者証明
など
受診状況等証明書が取得できない場合でも、証拠書類を積み上げ認められたケースも多くありますので諦めないことが大切です。
なお、以下の動画でもご説明していますのでご参照下さい。
【ポイント2】「化学物質過敏症 照会様式」とは
化学物質過敏症は、障害年金上難病に分類されます。
症状が多岐に渡るため「この症状があれば〇級」と一律に規定することは難しく、どのような症状や程度、日常および就労への影響などを総合的に考慮して審査されます。
そのため化学物質過敏症で障害年金を請求する場合には、診断書と一緒に「障害年金の請求にかかる照会について」を提出が必要です。
この様式は、片面A4で4ページあり、診断書だけでは確認できない細やかな質問事項が列挙されています。
診断書と同じく主治医が記入し、年金事務所やネットで取得することが可能です。
この様式があることによって、より正確な障害状態などを伝えることができ審査でもしっかり考慮されます。
重要な書類であるため、日々の状況をしっかり主治医に伝え、反映してもらうことが大切です。
なお、照会様式では重症度分類がとても重要です。
重症度分類はPS0~PS9の10段階に分類されており、おおむね、障害年金の等級との目安は次のようになります。
PS4~PS5 3級
PS6 3級または2級
PS7~PS8 2級
PS9 1級
■「障害年金の請求にかかる照会について」↓のリンクから様式を確認いただけます!
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/2021040101.files/02.pdf
【ポイント3】一般状態区分表について
診断書によっては、一般状態区分表の記載が必要なものがあります。
主治医の先生が、次のア~オの中で該当するものを一つ選び〇で囲みます。
どれに該当するかが、審査の上では大きなポイントとなります。(アの場合は、不支給の可能性が非常に高いです。)
ア.無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
イ.軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
ウ.歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
エ.身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出はほぼ不
可能となったもの
オ.身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
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