うつ病|障害基礎年金2級 

はじめに

【事例663】は、20歳前に初診日があるうつ病の方が、障害基礎年金2級に認定された事例です。

ご本人は通院以外の外出が難しく、ご家族が窓口となって申請を進めました。

初診日が20歳前であったことにより保険料納付要件が問われなかった点と、診察の場で伝えきれていなかった日常生活の状況を診断書へ反映していただくために当事務所が行った準備を中心にご紹介します。

(※うつ病で障害年金の申請をご検討の方は『うつ病で障害年金はもらえる?3つの条件と金額の目安』をご覧ください。)

対象者の基本データ

ご相談時の傷病名・障害の状態・申請結果は次のとおりです。

支給額はご相談当時の決定額であり、現在の金額とは異なります。

項目内容
傷病名うつ病
性別女性
障害者手帳なし
就労状況就労できる状態ではなかった
申請結果障害基礎年金2級
支給額ご相談当時の決定額(年額 約78万円)
障害の状態・外出は通院に限られている
・家族との会話もほとんどなく、1日の大半を自室で過ごしている
・食事や入浴、着替えなどにも支援が必要な状態

障害年金の額は毎年度改定されるため、現在の金額は障害年金でもらえる金額はいくら?をご覧ください。

ご相談までの経緯

発症から相談に至るまでには、10年以上の経過がありました。

診断名も、通院先も、この間に変わっています。

中学生の頃から不安症状があり、確認行為を繰り返したり、予定を事細かに立てたりするようになりました。

高校1年の夏休み明けからは登校できなくなりました。

同じ時期に医療機関の受診を始め、当時は「強迫性障害」と診断されています。

その後は病院を替えながら治療を続けましたが、症状の改善は乏しく、意欲の低下や憂うつな気分もみられるようになりました。

現在は「うつ病」と診断されています。

ご家族との意思疎通も限られ、通院時以外は自室で過ごすことが多くなりました。

食事や入浴、着替えなども、促されて行うことが難しい状態が続いていました。

仕事に就ける状態ではなく、将来への不安から一層ふさぎ込まれていたとうかがっています。

障害年金の制度を動画で知ったご家族から、当事務所にご相談をいただきました。

①申請のポイントと苦労した点

本事例では、ご本人と直接やり取りができる状態ではありませんでした。

そのため、ヒアリングから書類の準備まで、すべてご家族と進めています。

ご本人を支えるご家族の立場から手続きを検討されている方に、参考になる部分があるかもしれません。

手続きの順序としては、まず初診日の医療機関へ受診状況等証明書の作成を依頼しました。

完成した書類を確認したところ、事前にご家族からうかがっていたとおり、初診日が20歳前であることが明らかでした。

このため、保険料納付要件の確認は必要ありませんでした。

初診日の証明が整った段階で、次に診断書の作成を依頼します。

ここで課題となったのが、診察の場でご本人から主治医の先生へ、病状やご自宅での様子が伝えられていないという点でした。

精神の障害用の診断書には、日常生活能力の判定・日常生活能力の程度を記入する欄があります。

ご自宅での実際の状態が主治医の先生に共有されていなければ、その内容が診断書に反映されにくくなります。

そこで当事務所では、事前にヒアリングしたご自宅での様子や日常生活の状況を参考資料としてまとめ、作成をご依頼する際に主治医の先生へお渡ししました。

診断書に記載する医学的な評価そのものは、主治医の先生のご判断によるものです。

当事務所が行ったのは、ご家族が把握している事実を整理してお伝えすることまでです。

完成した診断書には、ご本人の状況が反映されていました。

医証だけでは分からない発症からの経過や障害の背景については、病歴・就労状況等申立書に詳しく記載して申請しました。

②結果

申請の結果、障害基礎年金2級として年金が決定しました。

支給額はご相談当時の決定額で、年額約78万円です。

年金額は毎年度改定されるため、現在の金額は上記の記事でご確認ください。

③担当者の振り返りと感想

本事例で当事務所が行ったのは、ご家族が把握しているご本人の状況を、書面という形にして審査の場に届けることでした。

ご本人と直接お話しできない状況では、日常生活の状況を知っているのはご家族です。

うかがった内容をそのまま診断書の作成依頼に添え、書面に残らない経過は病歴・就労状況等申立書に記載しました。

ご本人が動くことのできない状態でも、ご家族が窓口となって手続きを進められた事例として記録しています。

本事例のポイント

本事例で特にご参考になると思われる点を3つに整理しました。

いずれも本事例に限った話ではなく、同じような状況の方に共通する論点です。

【本事例のポイント】20歳前に初診日がある場合の障害基礎年金

障害年金には、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの保険料の納付状況を確認する「保険料納付要件」があります。

ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、この保険料納付要件は問われません。

20歳前の年金制度に加入していない期間については、納めるべき保険料がないためです。

なお、20歳前であっても厚生年金保険の被保険者期間中に初診日がある場合は、保険料納付要件が問われます。

「20歳前」であればすべて納付要件が不要になるわけではありません。

障害の状態を判定する日についても、通常とは異なる取扱いがあります。

日本年金機構は受給要件を「障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること」と定めています。

支給が始まる時期も同様で、「障害認定日の翌月分から(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日の翌月分から)」となります。

なお、ここでいう「20歳に達した日」とは、20歳の誕生日の前日を指します。

(出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」更新日2026年4月1日/日本年金機構「国民年金には20歳から加入すると聞いていますが、20歳の誕生日の前日に資格を取得したとなっています。誤りではないのですか。」

一方で、20歳前傷病による障害基礎年金には、ご本人の前年の所得による支給制限があります。

保険料の納付を要件としていない給付であるため、所得額に応じて年金額の2分の1または全額が支給停止となります。

前年の所得額支給停止の内容
3,761,000円超年金額の2分の1が支給停止
4,794,000円超年金額の全額が支給停止

この所得の限度額は政令で改定されることがあり、令和8年10月分からは、2分の1支給停止が3,858,000円超、全額支給停止が4,918,000円超に改定されます。

扶養親族がいる場合は、1人につき38万円が加算されます。

対象となる扶養親族が老人控除対象配偶者または老人扶養親族であるときは1人につき48万円、特定扶養親族または控除対象扶養親族(19歳未満の者に限る)であるときは1人につき63万円が加算されます。

支給停止の判定は前年の所得にもとづいて行われ、対象となる期間は10月分から翌年9月分までです。

(出典:日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」更新日2026年4月1日/厚生労働省 令和8年7月15日 障発0715第2号・年発0715第1号

20歳前に初診日がある場合の取扱いは20歳前障害年金とは|はじめての人にも分かりやすく解説しますで詳しく解説しています。

ほかの20歳前傷病に関する事例もあわせてご覧ください。

※個別事案により判断は異なります。

【本事例のポイント】ご本人が手続きを進められないときの、ご家族による申請

障害年金の請求は、ご本人が行うことが原則です。

ただし、ご家族が書類の準備や医療機関とのやり取りを手伝うことはできます。

ご家族が代理人として年金相談や手続きを行う場合は、ご本人が作成した委任状と、代理人の方の本人確認ができる書類が必要です。

ご本人の基礎年金番号やマイナンバーが分からない場合は、あわせてご本人の本人確認書類の写しが必要になります。

障害基礎年金の年金請求書の提出先は、原則としてお住まいの市区町村役場の窓口です(初診日が国民年金第3号被保険者期間中である場合は、年金事務所または街角の年金相談センターとなります)。

本事例では、ご本人が受診以外の外出も意思疎通も難しい状態であったため、当事務所とのやり取りはすべてご家族と行いました。

ご本人が動けない状況でも、手続きを進める方法はあります。

(出典:日本年金機構「年金相談や手続きを代理人に委任するとき」日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」

【本事例のポイント】診察で伝えきれない日常生活の状況を、診断書にどう届けるか

精神の障害用の診断書(様式第120号の4)には、日常生活能力の判定・日常生活能力の程度を記入する欄があります。

限られた診察時間のなかで、ご自宅での状態をすべて伝えることは簡単ではありません。

主治医の先生を前にすると、うまく話せないという方もいらっしゃいます。

ご自宅での実際の状況が主治医の先生に共有されていないと、その事情が診断書に反映されにくくなります。

診断書の作成前に医師から詳しく状況を尋ねられることもありますが、そうしたヒアリングがない場合は、ご自身やご家族から伝えることが大切です。

伝え方はさまざまですが、口頭で伝えることが難しい場合は、日常生活の様子をメモにまとめてお渡しする方法があります。

本事例でも、当事務所が事前にヒアリングした内容を参考資料として整理し、診断書の作成依頼にあわせて主治医の先生へお渡ししました。

診断書の内容は主治医の先生がご判断のうえ作成されるものです。

診断書そのものについては『障害年金の診断書とは|種類・重要性と準備のポイントを解説』もあわせてご覧ください。

本事例に関するよくあるご質問

本事例に関して、同じような状況の方からよくいただくご質問をまとめました。

制度の詳細は、それぞれの解説記事もあわせてご確認ください。

Q. 20歳前に初診日がある場合、保険料を納めていなくても障害年金を請求できますか?

20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、保険料納付要件は問われません。

ただし、請求できるかどうかが納付要件だけで決まるわけではありません。

初診日を明らかにできること、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に障害等級表に定める1級または2級に該当していることが必要です。

あわせて、ご本人の前年の所得による支給制限があります。

Q. 障害者手帳を持っていなくても障害年金を請求できますか?

障害年金の受給要件に、障害者手帳の所持は含まれていません。

本事例のご本人も、精神障害者保健福祉手帳はお持ちではありませんでした。

障害者手帳と障害年金は、根拠となる法令も、申請の窓口も、審査の仕組みも異なる別の制度です。

ただし、精神障害を支給事由とする年金を受けている方が年金証書等の写しで手帳を申請する場合など、等級が連動する取扱いもあります。

なお、手帳の申請時に作成された診断書の控えなどが、初診日を確認する際の参考資料として役立つ場合があります。

Q. ご本人が受診も手続きも進められない状態でも申請できますか?

請求はご本人が行うことが原則ですが、ご家族が書類の準備を手伝うことはできます。

ご家族が代理人として年金相談や手続きを行う場合は、ご本人が作成した委任状と、代理人の方の本人確認ができる書類が必要です。

本事例では、ご本人と直接やり取りができる状態ではなかったため、すべてご家族と進めました。

Q. 初診時の診断名と現在の診断名が違う場合、初診日はどう扱われますか?

診断名が変わったというだけで、初診日が変わるわけではありません。

前後の傷病に相当因果関係があり、医学的に同一の傷病と判断される場合には、変更前の傷病で最初に受診した日が初診日となります。

最終的には個別の判断となりますので、詳しくは『障害年金の「相当因果関係」とは|「初診日」との関係をわかりやすく解説します』をご覧ください。

関連する記事

うつ病での障害年金について、制度の全体像や金額、受給要件を確認したい方は、次の記事もあわせてご覧ください。

上記は当法人が関与した個別の事例であり、認定の一般的な基準を示すものではありません。

※個別事案により判断は異なります。

障害年金申請のご相談は、わくわく社会保険労務士法人(全国障害年金サポートセンター)までお気軽にお問い合わせください。


※本記事は2026年9月時点の年金法令・障害認定基準に基づき作成しています。法令改正等により内容が変更される可能性があるため、最新の情報は日本年金機構の公式サイト等でご確認ください。個別の事案については社会保険労務士・弁護士等の専門家へのご相談を推奨します。医学的判断は主治医にご確認ください。