目次
対象者の基本データ
病名 | 統合失調症(とうごうしっちょうしょう) |
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性別 | 男性 |
支給額 | 年額 約111万円 |
障害の状態 |
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申請結果 | 障害厚生年金2級 |
ご相談までの経緯
21歳の頃、仕事のストレスから不眠、不安、頭痛を感じてメンタルクリニックを受診されました。
会社の環境が合っていないと考え、転職を行ったのですが、続けることが出来ず短期間で退職なりました。
次第に働く気力がなくなり、自宅に引き込もりがちにの生活を送っていたとのことです。
しばらくすると、幻聴、被害妄想などが現れました。
また日常生活は、一人暮らしであったため、掃除はほとんど出来ず、入浴は外出する時のみでした。
食事は日に1回程度になる事が多く、外食又はコンビニ等で済ますという生活でした。
27歳の頃、金銭的な不安から無理をして就職を行いましたが体力的に厳しく、短時間勤務にて継続しているとのことでした。
現在はかろうじて収入があるものの、いつ体調が崩れて働けなくなるかと考え、障害年金が足しになればと相談にこられました。
申請結果
依頼者からはフルタイムで就労していると聞いていた為、この点が認定のポイントになると考えていました。
初診病院がA病院(現存)であると伺っていた為、その他は容易に作業が進むと考えていましたが、A病院へ初診証明(受診状況等証明書)作成に関する協力依頼をしたところ、「初診はB病院のため、こちらでは書けない」とヒアリングしていない別のB病院名が出てくるなど、先ず初診の証明でつまづく事となりました。
その為、先ずは初診病院を特定する事から始める必要がありましたが、初診が依頼から6年以上前であった為、健康保険への開示請求といった手続きを取る事になりました。
開示請求の結果、初診と考えられる時期に「A病院を受診」していた事が判明したため、
結果を基に、再度A病院へ連絡を入れましたが、「その前にC病院にも通院している」と
またまた新たな異なるC病院が判明しました。
そこで、依頼者に初診の時期と考えられる前後に勤めていた会社が加入していた保険者(健康保険)を確認し、開示請求が出来るかどうかの確認をしました。
依頼者は傷病により、転職が多く、さらに転居も伴っていましたので、保険者(健康保険)だけでなく、市町村にも確認しましたが、やはり保管期間経過(診療録の法定保存期間は5年間)を経過していた為、いずれも取得不可となりました。
しかし、A病院へ調査結果等経緯を詳細に説明する事により、A病院の理解及び協力を得られる事となり、初診証明(受診状況等証明書)取得する事ができました。
次に、今回の事例でポイントと考えていた「就労」に関しては、就労先の協力を得て「支援状況」等を伺ったり、賃金台帳や出勤簿を提供頂きました。
出勤簿の内容から、体調不良による休職や有休休暇取得、遅刻・早退等を読み取ることが出来たたため、病歴・就労状況等申立書に細かく反映させることが出来ました。
また、依頼者へは、診察時には担当医へ病状や就労先での状態等を細かく伝えて頂くようにお願いしていたことで、診断書の内容は依頼者の病状をきちっと反映した物に仕上がっていました。
これにより、一般就労であったものの、障害年金2級の認定を受けるに至りました。
【ポイント1】医療録(カルテ)の保管義務
診療録(いわゆるカルテのことです)は、医師法24条により、5年間の保存義務が課されています。
逆に言うと、5年以上前の診療録の保管義務はないため、廃棄が可能となります。
したがって、初診日が5年以上前であり、その後同じ病院に通院していない場合には、カルテが破棄されている可能性が高くなり、初診証明(受診状況等証明書)が取得できない場合があります。
【ポイント2】保険者(協会けんぽ、国保、○○組合)への開示請求とは?
開示請求では、診療報酬明細書、調剤報酬明細書及び訪問看護療養費明細書で、診療上の支障が生じない部分で文書の交付を受ける事が可能です。
これは、
- 初診は「A病院」なのは分かっているけど、今は閉院しているので初診証明が取れない
- 初診は〇年頃だったと思うけど、病院名を忘れた
等、様々な理由で初診の証明が取れない時に、『初診の〇年頃、A病院に通院していた』ことを証明する一つの手段として有効です。
ただし、開示請求結果のみを持って、障害年金を行う傷病名の初診がA病院である、との証明にはならないため、様々な資料を使って、傷病の初診がA病院である事を証明する必要があります。
【ポイント3】フルタイムで就労していても大丈夫?
必ずしも「就労している=不支給」とは限りません。
ですが、就労の有無は審査の上でとても重要なポイントとなってきます。
就労している場合は、会社から受けている配慮措置(体調が悪くなったら休憩、早退させて貰える。通院の為の遅刻・早退。1時間ごとに休憩を設けている等)や、勤務状況(体調が悪くて休みがち、一度休むと〇日出勤できない等)、就労後の体調、帰宅後にはどのようにして過ごしているかを申立書に記入することが大切です。
生活の為、療養に専念出来ずお仕事に行かざるを得ない方々も少なくないかと思いますが、帰宅後に疲れが出て、何らやる気にならず、そのまま寝込んでしまったり、食事もままならない等、そういった事があれば、細かく申立書に記入すると共に、病院への受診時には担当医にも細かく伝えることで、診断書に反映して貰えるようにしましょう。
申立書のみでなく、医師が記載する「診断書」にも就労の配慮措置や、就労後の状況、帰宅後の様子など、細かく反映されている事がとても大切です。
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